2024.4.18 参議院 国土交通委員会「飛行機の緊急時 支援の必要な人への対応は?」

○木村英子君
 れいわ新選組の木村英子です。
 本日は、飛行機の緊急時の避難について質問いたします。
 公共交通機関の中でも、支援の必要な障害者の方にとって、飛行機の利用は窓口での手続や搭乗時などのトラブルが多く、いつも無事に乗れるのかという不安を当事者は抱えています。
 順番が前後しますが、まずは資料2をご覧ください。

資料2

 JAXAの行ったアンケートによると、緊急時の対応が不安で航空機の利用ができないことという当事者の声が上がっています。例えば、飛行機利用の経験のない障害者の方が飛行機に乗ったときに不安なこととして、途中で何かアクシデントや不測の事態が起こった際に対処できないかもしれないが最も多く、障害者の人が航空機の緊急時に大きな不安を抱えていることが示されています。
 障害のある方にとっては、ふだんから他者の支援が必要な方が多く、もし事故が起きた場合どうやって避難したらよいのか、また誰が避難を手伝ってくれるのか、とても不安に思い、飛行機の利用を躊躇してしまう方もいます。
 このような中で、今年元日に起きた能登半島地震に関連して、羽田空港で航空事故が発生しました。この事故では、民間機の搭乗者全員が無事に避難できたと報道されていましたが、その中には車いすを使用している人が二人含まれていたと聞いています。私にとっても人ごとではなく、二人の車いすの方がどうやって避難されたのかが心配でした。
 そこでお聞きしますが、事故が起きた際、車いすを使用している人の避難に当たって航空会社の方がどのように対処されてきたのか、教えていただきたいと思います。お願いします。

○政府参考人(平岡成哲君)
 お答えをいたします。
 一月二日に発生いたしましたあの羽田空港での航空機衝突事故におきまして、JAL機に搭乗していた旅客のうち車いすを使用されていた方は2名いらっしゃいました。この方々は、ほかの旅客とともに、客室乗務員の誘導により、おけがをすることもなく脱出されたというふうに伺っております。

○木村英子君
 今回の事故では、車いすの方を含め全員が無事に避難することができたということですので、よかったと思いますが、事故は予測できませんから、平時から障害者や高齢者などの支援が必要な方の緊急時の避難について対策しておくべきだと考えます。
 しかし、今まで飛行機に関しては、ほかの交通機関と違って、障害者や高齢者など支援の必要な方との意見交換をする場や国の会議体が開かれたことがほとんどなく、近年では航空会社が独自で訓練などのマニュアルを作り、職員研修を行っているということも聞いております。
 例えば、資料3では、ANAが2018年に視覚障害者向けの緊急時の対応の流れなどを体験するANAユニバーサル体験会が行われたそうですが、ここでは緊急時に使用するライフベストを触ってみたいという当事者からの要望があり、実際に着用し、ベストを膨らませる体験を行ったそうです。

資料3

参加者からは、ライフベストがこんな形をしているとは思わなかった、膨らむときに音が出るのに驚いた、想像と全く違ったなどの感想があったそうです。さらに、緊急時に機内から外に脱出するために使用する脱出スライドを実際に触っていただき、形状や傾斜を確かめ、スライドを滑る姿勢や立ち上がる際にどのようなサポートが必要なのかも確認したそうです。
 また、JALでは、資料4のとおり、2019年に盲導犬協会などと一緒に緊急脱出時の訓練を実施し、シューターでの緊急脱出、救命胴衣の着用、救命ボートの実証を行ったそうです。

資料4

 このように、民間の航空会社のANAやJALでは、視覚障害者の方を交えての体験会などは行っていますが、資料5のように、定期救難訓練において、体の不自由な方の脱出訓練を健常者の乗務員同士で行っているものの、当事者が参加しての訓練は行っていないそうです。

資料5

 しかし、実際に事故が起きた場合、あらかじめ避難訓練をしているか、またしていないかで命が左右されます。障害によって緊急時の対応が異なりますので、身体障害者、知的障害者、精神障害者など様々な障害当事者の方が参加した避難訓練や体験会などを行い、それぞれの障害に合わせた脱出方法が検証されなければ、いざとなったときに対応できず、危険が及びます。
 ですから、当事者が参加しての避難訓練は、支援の必要な人の命を守るために重要だと考えます。今月一日から民間事業者の合理的配慮の提供が義務化されましたので、国交省主導の下、航空会社に対して、配慮の必要な方への緊急時の避難について当事者を含めての避難訓練や体験会などを定期的に行うように働きかけをしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(平岡成哲君)
 お答えをいたします。
 ご指摘のとおり、既にANA及びJALにおきましては、障害者の方から非常脱出についてご意見、ご体験をいただく機会を設けたことがあるというふうに伺っております。
 このような取組は、国土交通省としても、航空機からの非常脱出に関し航空会社と障害者の双方が理解を深め、訓練等に必要な改善を図る上で有効と考えております。
 このため、今年4月より、事業者による障害者への合理的配慮の提供が義務化されたことを踏まえまして、航空会社に対し、多様な障害者の方からご意見、ご体験をいただく機会を更に設けることを推奨してまいりたいというふうに考えております。

○木村英子君
 是非進めていただきたいと思います。
 次に、航空機における平時の対応についてお聞きします。
 突然の事故などに備えるためには、緊急時を想定した避難訓練を定期的に行うことが重要なのは言うまでもありませんけれども、平時から現場のトラブルに対応する中で、どのような支援や配慮が必要かを当事者と一緒に検討し、その実績を積み上げていかなければ、緊急時にも適切な対応はできないと思います。
 資料1をご覧ください。

資料1

 これは障害者団体が行ったアンケートですが、自力歩行が困難な方は3歳未満の乳幼児との単独搭乗不可という航空会社の内規によって障害のある母とその子供の搭乗を拒否される、電動車椅子のバッテリーチェックを理由に2時間近く待たされた、呼吸器などの医療機器を置く場所として複数席の購入を求められるといった様々なトラブルや差別事例があることは示されています。
 このような差別的な対応は何十年も前から変わっておらず、このアンケートを行った団体の2002年の記事を見ても同じような当事者の声が掲載されています。平時から支援の必要な当事者の意見を聞き、トラブルに対応していないために、問題は解決しないどころか繰り返してしまっています。
 そのような中で、今月5日に電動車いすを使用している方が沖縄から台湾に向かうピーチ・アビエーションの航空機に搭乗しようとしたとき、電動車いすのバッテリーチェックのために事前提出を求められていた書類を提出していたにもかかわらず、バッテリーを実際に目視確認できないという理由で搭乗拒否されたという事件が起きました。資料6のとおり、今回は国交省が各航空会社に対し通知を出し改善が図られましたが、まだまだ航空機におけるバリアや差別的取扱いはなくなっていません。

資料6

 このような搭乗拒否などのバリアをなくしていくには、当事者が参画した意見交換会や避難訓練などを行うことにより、お互いを知らないことから生まれてくる心のバリアをなくしていくことが重要な解決策だと思っています。
 国交省としては、2020年にバリアフリー法の中に心のバリアフリーを取り入れましたし、今月から差別解消法の施行により民間事業者も合理的配慮の提供が義務となりましたから、障害者、高齢者など支援の必要な方が安心して飛行機を利用できるように、国交省としても航空会社に対して心のバリアを解消するようにしっかりと指導していただきたいと思います。
 その責任を果たすためにも、各当事者の生の声に耳を傾けることがとても重要だと思いますので、支援の必要な障害者、高齢者の平時や緊急時の対応について検討するために、国交省と当事者団体、各航空会社の三者での意見交換会などの会議体を早急に設置していただきたいと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(斉藤鉄夫君)
 国土交通省といたしましても、今年4月より事業者による障害者への合理的配慮の提供が義務化されたことを踏まえ、多様な障害者の方に安心して航空機を利用していただくために、国土交通省、航空会社、そして障害者の方の三者において、それぞれの立場から意見を聞き理解を深めた上で必要な改善を図ることは大変重要だと、このように認識しております。
 こうした考えに基づきまして、また委員のご指摘も踏まえ、国土交通省としては、非常脱出について障害者の方にご意見、ご体験をいただく機会を設けるよう航空会社に対して推奨するとともに、本年中に国土交通省、障害者団体及び航空会社が参画する意見交換の場を設けたいと考えております。
 今後とも、こうした意見交換の機会などを通じて当事者の生の声をしっかりと伺い、必要な改善を図ってまいりたいと考えております。

○木村英子君
 大臣、前向きな答弁ありがとうございます。
 今後、当事者の参画によってより飛行機が安心して乗れるように、そういうことを強く求めまして、質問終わりたいと思います。ありがとうございます。

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