2024.3.22参議院 国土交通委員会「誰一人取り残さない インクルーシブ防災」

○木村英子君
 れいわ新選組の木村英子です。
 本日は、災害時に自宅などに取り残されてしまう障害者や高齢者の支援について質問いたします。
 1月1日の能登半島地震から2か月が経過し、いまだに1万人近くの方々が避難所での避難生活を余儀なくされています。災害があった能登半島全体では高齢化率が5割を超える地区が多く、障害者の方は1万人以上いますが、避難所に行くにしても家族やヘルパーの介護が必要なために避難することが難しく、崩壊のおそれのある自宅での避難を余儀なくされている方は少なくありません。
 資料1をご覧ください。

資料1

これはJDFという障害者団体から出された要望書ですが、今年1月に起きた能登半島地震について、避難所に行くことができず自宅、自家用車などで自主避難を行う方も把握し、必要な支援が届くようにしてくださいとの要望が出され、自宅で避難する人たちへの支援が障害当事者から強く求められています。
 災害が起きたときに取り残されてしまうことが多い障害者にとって、平時からの対策が最も重要です。しかし、数年前までは、支援される側の障害当事者が行政などの様々な会議体に参加することが認められない状況がありました。そんな中、国連の障害者権利条約の批准や国内法の障害者差別解消法の施行、そして障害当事者の訴えによって各自治体でも障害福祉計画などに当事者の参画を行っている自治体が少しずつ増えてきています。そして現在、自治体の防災会議においても、東日本大震災を経験した仙台市や東京都などでは身体障害者や聴覚障害者の方などが委員として参加しており、災害時の在宅避難者への物資支援や避難訓練への当事者参画の推進など、当事者が参加することによって支援の必要な人を取り残さない防災に向けた計画が作られています。
 このように各自治体が防災会議に支援を要する当事者の参画を進めている背景には、資料2の、あるように、2015年の国連防災世界会議において取りまとめられた仙台防災枠組みの中で、防災について女性、障害者、高齢者などの当事者を政策、計画、基準の企画立案や実施に関与させるべきとして当事者の参画を促しているところにあります。

資料2

 しかし、内閣府が在宅避難者への支援をするために立ち上げた避難生活の環境変化に対応した支援の実施に関する検討会には障害者などの当事者は委員として参加がされておらず、いつ災害が起きるか分からない現状において、支援の必要な当事者の意見が取り残されていることに重度障害のある私自身も強い危機感を感じています。支援がなければ避難できない障害者や高齢者が災害時に取り残されないためにはどのような支援や対策が必要なのかを、支援する側の立場だけではなく、支援を受ける側の立場からの意見を取り入れて検討しなければ災害関連死はなくならないと思います。

 岸田総理が本会議の代表質問で約束されたインクルーシブ防災の推進を実行に移すには、検討会への当事者参画は急務であると考えます。内閣府は防災の要の省庁ですから、障害者や高齢者など支援を要する側の意見を積極的に取り入れ、誰も取り残さないインクルーシブ防災を実行するために、現在行われている検討会を含め、今後行われる内閣府の検討会においても障害当事者など、参画を強く進めていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○大臣政務官(平沼正二郎君)
 委員のご質問にお答えいたします。
 ご指摘の検討会については、避難生活をめぐる環境の変化に対応した支援の実施方策について実務的な検討を行うため、委員は自治体職員を中心としつつ、学識、医療、福祉、NPOなどの各分野の有識者で構成をさせていただいております。検討会の議論を進めるに当たっては、支援に携わるNPOや民間企業、先進的に取り組む自治体等を事務局からヒアリングを行ってその内容を盛り込むなど、様々な視点が反映されるように取り組んできたところでございまして、ご指摘の当事者の方にも意見を伺い、議論に反映をしたいと考えております。
 防災政策の検討過程等における障害者や高齢者の皆様などの参画を促し、多様な視点を取り入れることは重要でございますし、国の防災基本計画では、地方防災会議の委員への任命など、政策決定過程や防災の現場における参画の必要性を明記しております。
 今後とも、様々な立場の当事者の皆様が参画する意図を、意義を、意図、意義を十分に踏まえ、インクルーシブ防災の推進を図ってまいります。

○木村英子君
 災害時には日頃の備えが重要だと考えますので、会議体への当事者参画、早急に検討していただきたいと思います。

 次に、在宅避難者への物資や福祉支援についてお聞きします。
 厚労省は支援の届かない被災者をつくらないように、令和2年から被災高齢者等把握事業という予算事業を開始しています。そして、今回の能登半島地震でも石川県が相談支援専門員協会や民間団体へ委託して、災害時に自宅での避難をせざるを得ない障害者や高齢者の状況把握に努めていると聞いています。
 しかし、この被災高齢者等把握事業は、あくまで自宅に取り残されている要支援者の状況を把握し、介護や福祉サービスなどにつなげるまでの支援策であり、在宅避難者に食料や水などの支援物資を直接届ける経費には使えない制度となっています。また、内閣府が所管する災害救助法の救助費についても、避難所や支援拠点における炊き出しなどの食料支援や水の支援が対象となっており、在宅避難者への物資や福祉的な支援を届けるための救助費としては対象外となっています。
 また、被災地では、行政だけでは対応できないため、被災者への福祉的な支援をしている団体としてDWATに委託して被災者への支援活動を行ってもらっていますが、救助費が出るのが避難所での支援に限定されているために、在宅で避難している人へは福祉的支援が行き届かない現状があります。
 このような状況の中、資料3のとおり、先月、全国社会福祉協議会は、防災担当である松村大臣に宛てて、DWATにおける在宅避難者への支援活動を災害救助法の救助費の対象とし、財政支援を拡充することを要望しています。

資料3


 現在の避難所でしか認められない救助の在り方では、在宅にしかいられない障害者や高齢者などに救済の手が届かない現状があります。DWATや民間団体などが在宅避難者へ食料や水などの物資を直接届けるための経費や福祉的な支援をする経費についても国庫負担の対象とするよう災害救助費のメニューに入れていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○大臣政務官(平沼正二郎君)
 ご質問にお答えいたします。
 当然、避難生活においても障害者の方も含め在宅の被災者にも必要な食事や飲料水が届くことが非常に重要であると考えております。このため、避難所で食事等を配布することに加え、在宅避難者の方にとって身近な取りに来やすい場所に支援拠点を設けて、こうした場所に炊き出しや食事の配布をするように取組を促しているところでございます。
 また、在宅での避難等を余儀なくされている要配慮者の皆様方に関しては、被災地において、厚労省所管の被災者、高齢者等把握事業の活用等により、関係団体とも連携し、相談支援の専門員やNPO団体等が個別訪問し、要支援者の状況の把握や必要な福祉サービスなどへのつなぎ支援を行っているところでございます。在宅でホームヘルパーによる家事援助が必要な要支援者については、その支援の一環として支援物資の受取や買物等、買物支援による支援が可能と承知をしております。
 地域に取り残される方がいらっしゃらないようにするためには、福祉関係者やDWAT、NPOとの連携、平時から支援を行っている方や地域の方の共助の取組を進めていくことが非常に重要であると考えておりまして、ご指摘である在宅避難者への支援の観点も含めて振り返りを行い、制度面や運用面での改善に今後もつなげていきたいと思っております。

○木村英子君
 在宅避難者への支援については、近所の方とかボランティア、民間の支援団体の善意だけに頼っている状態ですので、内閣府として実施している災害救助費の活用の中に一刻も早くメニューとして含めることを早急に検討してください。

 次に、国交省では、被災地での道路の復旧支援や給水支援など、緊急災害対策派遣隊であるテックフォースや地方整備局が行っており、被災者の生活を支える重要な役割を担っていると思います。震災のときの給水活動による水の支援は、飲み水だけではなくトイレやお風呂など、お風呂支援など、被災地で生活している方にとっては命の危機を救う重要な支援であると考えます。
 そんな中、今年の4月から上水道の所管が厚労省から国交省に移管されます。今後、災害が起きたときに、誰も取り残さないインクルーシブ防災の理念に基づき、自宅で避難生活をしている方への支援を含め、被災者救済を第一とした給水支援を行っていただきたいと考えていますが、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(斉藤鉄夫君)
 自宅にいらっしゃる障害者や高齢者に対する給水支援についてご質問がございました。
 能登半島地震におきましては、この応急給水につきまして、国土交通省も日本水道協会、自衛隊などと連携して避難所や病院などへの給水支援を行ってきたところです。災害時に自宅に取り残された障害者や高齢者に対する支援につきましては、現在、内閣府の有識者検討会におきまして、避難する場所にかかわらず、必要な人に必要な支援が届くよう、例えば在宅避難を余儀なくされる障害者や高齢者の方々にも、方々などにも利用しやすい避難所以外の支援拠点の設置などについて検討されていると承知しております。
 国土交通省としても、4月からの水道行政の移管を見据え、災害時の給水支援の在り方につきまして、内閣府と連携しつつ、そして現在この議論が行われております内閣府の有識者検討会の議論も一緒に行いながら幅広く検討してまいりたいと、このように思います。

○木村英子君
 災害時には様々な支援が必要なんですけれども、特に在宅で残されてしまった障害者や高齢者には支援が行き届かないという現状があります。せめて水の支援だけでも在宅のところにまで届けていただきますよう、それを検討していただきたいと思います。
 以上で質問を終わります。

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