2024.3.22参議院 国土交通委員会「災害時のトイレ問題について」

○木村英子君
 れいわ新選組の木村英子です。
 災害時に深刻な問題となっているトイレについて質問いたします。
 災害時のトイレの問題は、水や食料と同じように生命線であり、避難所生活によっては関連死を引き起こすほど命を左右しかねない重要な問題です。
 資料1をご覧ください。

資料1

 大正大学の岡山教授が行った熊本地震の避難生活におけるトイレに関するアンケートによると、避難生活の初期において最も困ったことの2番目にトイレが挙がっており、トイレに行かないように食事や水分を控えてしまうことで様々な生活上のストレスが加わって血栓を形成するような病気になりやすくなり、その結果、災害関連死につながるおそれもあると指摘もあります。
 内閣府が作成している避難所におけるトイレの確保・管理ガイドラインでは、避難所には発災直後は50人に1つ、そして避難が長期化する場合には20人に1つのトイレが必要と書かれています。
 阪神・淡路大震災では約75人に対して1つのトイレが設置され、新潟県中越地震では約40人に対して1つで、熊本地震では約120人に対して1つとなっているなど、災害時のトイレが足りていないことが明らかです。
 特に障害者や高齢者は、災害が起きたとき、誰かの支援がなければ逃げることもできず、また避難所に避難しても車いすでいられる場所の確保が困難であったり、バリアフリートイレがないことで、人に迷惑を掛けたくなくてトイレを我慢して体を壊すなど、関連死と隣り合わせの状況です。
 日本で今まで起きた災害の避難者数は、2011年の東日本大震災で40万人、2016年の熊本地震で18万人となっており、そのときもトイレが足りないことが大きく問題になりました。今後起こると想定されている首都直下型地震では700万人、南海トラフ地震では950万人が被災した場合、現在、自治体が整備している避難所のトイレだけでは足りないので、今から災害時におけるトイレについて準備をしていく必要があると思います。

 そこで、被災地でのトイレ支援についてお尋ねします。
 令和2年の熊本豪雨災害では、国はプッシュ型支援で、バリアフリーの仮設トイレを被災地に10基送ったとされています。しかし、今回の能登半島地震では、政府がプッシュ型支援で自治体に送った仮設のトイレのうち、バリアフリートイレはゼロだったと聞いております。なぜ1つもバリアフリートイレが被災地に送られなかったのでしょうか。

○政府参考人(上村昇君)
 お答えいたします。
 仮設トイレの支援をプッシュ型で行うに当たりましては、設置場所に関するニーズ、被災地からの物資要請の優先度を踏まえ、被災自治体と調整しつつ、必要と見込まれる量をプッシュ型支援で対応してきたところであります。
 委員ご指摘のとおり、バリアフリートイレにつきましては、例えば令和2年の熊本県豪雨災害でのプッシュ型支援の対応において搬送した実績がございます。一方、今般の能登半島地震においては、被災自治体からのトイレに関する様々なニーズが来る中、バリアフリートイレについては特段のニーズが寄せられなかったことなどから支援実績はございません。
 今後とも、時間の経過とともに変化する被災地ニーズに対応するため、被災自治体に派遣している国職員や物資調達を行う関係省庁等とも連携し適切に対応してまいります。

○木村英子君
 能登半島全体で支援の必要な障害者や高齢者はたくさん住んでいるにもかかわらず、バリアフリートイレのニーズがないという理由はあり得ないと思います。今まで何度も災害が起こり、そのたびに積み重ねてきた教訓が今回の能登半島地震でなぜ生かされなかったんでしょうか。プッシュ型支援というのは、自治体からの要請がなくても国が必要と思われる物資を被災地に送ることになっていると認識しています。内閣府は、障害者差別解消法で合理的配慮の提供や、障害者権利条約ではバリアフリー化を掲げているのですから、災害時においても障害者の命を守るために率先してバリアフリー化を進めることが責務だと思います。
 障害者や高齢者、妊婦さんやお子さんなどのいる家族など、支援を必要な人たちが安心して一次避難所で生活が送れるようにプッシュ型支援で仮設のバリアフリートイレを必ず被災地に送るようにしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(上村昇君)
 仮設トイレの支援をプッシュ型で行うに当たりましては、設置場所に関するニーズ、被災地からの物資要請の優先度を踏まえ、被災自治体と調整しつつ、必要と見込まれる量をプッシュ型支援で対応してきたところであります。
 今後につきましては、令和2年度に導入しまして、今般の能登半島地震へのプッシュ型支援において本格運用を開始しました国と被災自治体との間で物資支援の迅速な発送、在庫管理や連絡調整に資するDXシステムであります物資調達・輸送調整等支援システムにおきまして、バリアフリートイレについてもより現地のニーズを拾いやすくできるよう改善に努めてまいります。具体的には、例えば同システムにおける仮設トイレの選択欄に明示的にバリアフリートイレの項目を追加し、支援物資としてバリアフリートイレを選択できるようにするなど、より柔軟な対応が可能となるよう運用システムの改善に努めてまいります。

○木村英子君
 トイレは命にも関わる重要な問題ですから、今後は、このシステムの運用はもちろんのこと、被災者の人たちから丁寧に自治体が聞き取りを行って、被災地に十分なトイレの数を送っていただきたいと、バリアフリートイレが行き届くようにしていただきたいと思います。

 次に、消防庁は、2011年の東日本大震災を契機に、災害時に備えるための緊急防災・減災事業債や特別交付税措置の制度をつくり、避難所の生活環境改善のための仮設のバリアフリートイレを購入するに当たって7割が交付税措置されることとなっています。
 しかし、事業開始から10年もたっているにもかかわらず、支援の必要な人たちに欠かせない避難所のバリアフリートイレなどは十分な数が確保されておらず、せっかくの制度も十分に活用されていないと思います。また、避難所に指定されている小学校や中学校の体育館にバリアフリートイレが設置されている割合は4割と少なく、支援が必要な障害者や高齢者は福祉避難所に行くしかない状況です。しかし、この福祉避難所も、職員などの人手不足を受け入ることができず、またバリアフリー化されていない避難所も多いため、一般の避難所で生活することが困難で、危険を覚悟してでも自宅にとどまるしかない人も少なくありません。
 そんな中で、この事業債を使って移動型のトイレの導入を検討する自治体も増えてきて、震災においてトレーラートイレが注目されています。
 資料2と3をご覧ください。

資料2
資料3

 私は、昨年、有明で行われた福祉機器展で、バリアフリーのトレーラートイレに実際に試乗してみました。バリアフリー設計標準よりは少し狭く、トイレ内では車いすは回転はできませんでしたが、入口は広く、大型の車いすでも入ることができました。また、トイレの中で車いすのリクライニングを倒し寝ることができたので、介助者が介護できるスペースは確保されていて、安心して利用することができます。このときは一例しか体験していませんが、様々なタイプのトレーラー式のバリアフリートイレがあれば、障害者の方はもちろんのこと、体の不自由な高齢者の方や妊婦さんなど、誰もが安心して避難生活が送れると思います。現在は台数が少ないので、取り残される人が出ないように、今後、国は、トレーラー式のバリアフリートイレを増やしていくべきだと考えます。
 次に、資料4をご覧ください。

資料4


 一部の自治体では、民間と連携し、みんな元気になるトイレプロジェクトという事業を行っています。そのプロジェクトでは、1741の市町村が1台ずつトレーラートイレを常備し、被災地に全国から集結させることで災害時のトイレ不足問題を大きく解消することを目的として、自治体のトレーラートイレの整備を進めています。現在、災害時には、健常者の方の仮設トイレすら少ない中で、このような民間の取組が生まれてきました。
 資料5をご覧ください。

資料5

 最近では、バリアフリーの観点から、愛知県一宮市のように、バリアフリーのトレーラートイレを導入する自治体もあります。このような自治体が増えれば、障害者や高齢者など、支援が必要な人たちがトイレの心配をしないで避難所の生活が送れるようになると思います。
 ですから、十分な数のバリアフリートイレが確保されていない状況を一刻も改善するためにも、この緊急防災・減災事業債や特別交付税措置を利用してバリアフリーのトレーラートイレを購入できることを自治体に周知するとともに、導入を推進していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(小谷敦君)
 お答えいたします。
 災害時において、障害のある方などを含めた避難者の良好な生活環境を確保するために避難所の環境整備を進めることは、極めて重要であると認識しております。
 このため、委員ご指摘のとおり、指定避難所における移動型のバリアフリートイレを含むトイレの整備については、緊急防災・減災事業債や特別交付税措置の対象としております。また、自治体に対し、内閣府と連名で、緊急防災・減災事業債や特別交付税措置を含む関係省庁の財政支援措置を活用し、指定避難所の機能強化を推進すること、障害のある方など要配慮者が利用するトイレの確保などについて示した内閣府作成の避難所運営ガイドラインを活用し、避難所の良好な生活環境の確保や適切な運営を行うことなどを周知しております。
 消防庁としては、引き続き、関係省庁と連携し、移動型のバリアフリートイレの整備など、指定避難所における生活環境の改善が推進されるよう取り組んでまいります。

○木村英子君
 早急にバリアフリートイレの普及をお願いいたします。
 次は、コンテナトイレについてお聞きします。資料6をご覧ください。

資料6

 今回の能登半島地震で九州地方整備局で管理しているコンテナトイレが被災地で活用されたことをきっかけに、国交省は自治体に対し、道の駅にコンテナトイレなどを設置することを推進していくためのガイドラインを作る計画を立てています。
 しかし、これまで国や自治体が準備しているコンテナトイレは一般の方のトイレしかなく、今回の計画されているガイドラインにはバリアフリーのコンテナトイレは入っていないと聞いています。そもそも、国交省はバリアフリー法を作った所管ですから、今回のガイドラインを作る段階でバリアフリーを基準としたコンテナトイレを計画するべきだと思います。
 資料7や資料8のように、コンテナトイレにおいてもバリアフリーのものは開発されてきています。

資料7-1
資料7-2
資料8

自治体が保有しているバリアフリーのコンテナトイレがほとんどない現状を改善するためにも、今回の国交省のコンテナトイレなどのガイドラインを作る際には、障害者や高齢者などの支援が必要な人たちが避難所で不自由なく生活が送れるように、バリアフリーのコンテナトイレの事例を取り入れていただきたいと考えています。
 その上で、コンテナトイレを含め、ガイドライン全体もバリアフリーの観点を取り入れて作成していっていただきたいと思っておりますけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(丹羽克彦君)
 お答え申し上げます。
 今般の能登半島地震における被災地支援で、このトレーラー型のトイレを始め、可動式のコンテナが様々な用途で活用されていると承知をいたしております。
 国土交通省におきましては、先ほど委員ご指摘のように、福岡県のうきは市にあります道の駅うきはから石川県の穴水町の道の駅あなみずに防災用コンテナ型のトイレを運んだところでございます。
 このような活用事例を踏まえながら、道の駅において、平時の課題解決、また災害時の支援活動のためにコンテナを活用する場合に参考となる事例、また留意点をまとめたガイドラインを現在国土交通省において策定を進めているところでございます。策定に当たりましては、バリアフリーコンテナトイレを含めて、バリアフリーに配慮した事例の紹介、またバリアフリー対応時の留意点を含む内容となるように進めてまいりたいと考えております。

○木村英子君
 障害者にとっては、災害時だけではなく、平時のいろいろな建物についてもトイレがすごく少ない、それが使えない状況が続いておりますので、やっぱりコンテナトイレについても早急に進めていただきたいと思います。
 最後に、国交省では、バリアフリー法による心のバリアフリーが令和2年に取り入れられました。心のバリアフリーは誰もが取り残されない社会の実現のためにとても重要な課題です。
 災害時には、トイレなどのハードのバリアだけではなく、心のバリアフリーが支援の必要な障害者や高齢者の命を左右します。東日本大震災では障害者の死亡率は健常者の2倍であったと言われていますが、その原因の一つに、地域のコミュニティーの中で障害者の存在が知られていなかったり、分けられていることで関係性を築けなくて取り残されている現状があります。災害時にはそれが顕著に現れ、亡くなってしまった障害者の方も多くいます。お互いを知らないことが災害時に大きな弊害となり、支援がないと避難できない障害者や高齢者は取り残されてしまい、死を覚悟せざるを得ない現実を抱えています。例えば、2018年の西日本豪雨では、二人で暮らしていた知的障害者の親子が、どこに避難すればよいか分からず、自宅にいたまま亡くなられました。その方は近所の方との交流がなかったそうで、日頃から周りとの、周りの人との交流があれば、避難を呼びかけることができ、失われずに済んだ命であったと思います。
 そうした現状を変えるため、国連の世界防災会議で打ち出されたのがこのインクルーシブ防災です。誰一人取り残さないための防災であり、日本では別府市が先駆的な取組をしています。その中で最も重視されているのが、障害当事者が参加しての防災訓練、避難訓練です。別府では、訓練に参加した障害者は、その後の地域の集まりや行事に積極的に参加し、地域の人たちとの交流を深めています。障害者や高齢者が取り残される悲惨な状況を招かないためにも、防災訓練や避難訓練を地域の人たちと障害当事者たちが一緒に行うことが災害時に最も必要な関係性をつくれるきっかけになると思っています。
 資料9をご覧ください。

資料9

 国が定めたユニバーサルデザイン行動計画では、心のバリアフリーについて、①障害のある人への社会的障壁を取り除くのは社会の責務であるという障害の社会モデルを理解すること、②障害のある人やその家族への差別を行わないように徹底すること、③自分とは異なる条件を持つ多様な他者とのコミュニケーションを取る力を養い、全ての人が抱える困難や痛みを想像し共感する力を培うことがポイントであると示されています。
 この行動計画に伴い、国交省は、2020年からバリアフリー法に心のバリアフリーを掲げ、教育啓発特定事業を推進しています。今回の能登半島地震でも、盲導犬を連れた視覚障害者の方が避難所で拒否されたり、知的障害者の子供が大声を出して怒られ避難所にいづらくなるなど、災害時においても心のバリアが弊害となっています。災害という緊急時だからこそ、他者との助け合いが必要であり、インクルーシブ防災の考え方が重要になってきます。
 国交省の教育啓発特定事業には、心のバリアフリー、バリアを解消するために最も重要な懸け橋になるというふうな制度だと私は認識しています。ですから、国交省が推進している心のバリアフリーを各省庁や全国の自治体に広げていくことが、災害時の地域における誰一人取り残さないインクルーシブ防災を進める鍵となると思いますので、国交省が率先して、障害当事者が参加しての防災訓練や避難訓練など、災害時の心のバリアフリーの取組を広げていただきたいと考えていますが、国交大臣のお考えをお聞かせください。

○国務大臣(斉藤鉄夫君)
 国土交通省では、心のバリアフリーの推進のため、例えば全国各地でバリアフリー教室を開催し、車いす利用体験や視覚障害者疑似体験、障害者介助体験等を通じて高齢者、障害者等の特性やバリアフリーの必要性についての理解を深めるとともに、国民一人一人が自然に快くサポートする環境づくりに取り組んでおります。これらの取組は、高齢者、障害者等の公共交通機関による円滑な移動や施設の利用に資するとともに、地域住民との交流を通じて災害時における助け合いの促進にもつながり得るものと考えております。
 国土交通省としては、引き続き、バリアフリー教室の開催や市町村への教育啓発の実施の働きかけ等の取組を進めてまいります。
 その際、これらの取組が地域の実情や高齢者、障害者等の要望を踏まえつつ、平時からの地域における交流促進、助け合いの気持ちの醸成につながり、ひいては災害時においても誰一人取り残さないという助け合いの促進、インクルーシブ防災の促進にも資するよう、関係省庁と連携して取り組んでまいりたいと決意しております。

○木村英子君
 国交省のバリアフリーの取組が全国に広がっていき、そして災害時においても私たち支援の必要な障害者たちが、あるいは高齢者も含め、安心してそういう避難できたり避難所で生活できることを強く望みます。
 質問を終わります。

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