2024.2.14 参議院 国民生活・経済及び地方に関する調査会「子どもたちのために インクルーシブな社会への転換を!」

○木村英子君
 れいわ新選組の木村英子です。本日は、参考人の先生方のお話をお聞きする機会をいただきまして、ありがとうございます。
 まず、インクルーシブ教育について、小国参考人にお尋ねしたいと思います。
 私は、幼いときに施設に預けられて、小学校から高校まで障害児だけが集められた養護学校で学びました。施設や養護学校では医者や看護師、教師など、健常者の大人たちの中で育ち、健常者の友達ができたのは19歳で地域へ出てからでした。そして、初めて一人で地域へ出たときに、電車やバスの切符の買い方などが分からないどころか、社会のことを全く知らない自分に愕然としました。その上、地域へ出て何よりも私を苦しめたのは、駅の階段を上げてもらいたくても、トイレや食事の介護をお願いしたくても、親や職員以外の人とのコミュニケーションが取れていなかったということでした。
 分けられていたことが当たり前になってしまった習慣は、地域で生活していくときの大きな弊害になっています。失ってしまった子供時代をもう取り戻すことはできませんし、また、子供のときに子供同士の関係の中で培われる社会性とかコミュニケーション力というものが18年間すっぽり抜けているんです。今、自立生活を始めて40年たった今でも、その経験を取り戻すことは容易ではありません。
 私のようなこんな経験をこれから子供たちに社会に出たときにやっぱりしてほしくないという思いでインクルーシブ教育の実現に向けて取り組んでいるところですけれども、それでも、現在、やはり特別支援学校を希望する親御さんが増えています。やはり特別支援学校は、設備の面にしても、それから教員の専門性にしても安心ということで、実際に多くなっていると思いますけれども、やはり社会の中に障害者を受け入れる、あるいは家族を受け入れる受皿というもの、そして、学校の中にもやはり障害者を、障害児を受け入れる土台というのがつくれていないということが挙げられると思います。
 そういう中で、小国参考人が今までインクルーシブ教育に取り組んでこられた経験に基づいたその思いというか、そういうものをまずお聞かせしていただきたいということと、それからまた、新たに東大で、教育学研究科が自治体やそして当事者団体との協定を結ぶという取組をされていると聞いております。これがどのような形でそういう協定を結び付くということに至ったのか、また具体的な提案があれば、その思いをお聞かせください。お願いします。

○参考人(小国喜弘君)
 どうもありがとうございます。
 すごい本質的なご質問をいただいて、僕はなぜインクルーシブ教育が大事だと思っているのかということをまず一つは話せというふうにおっしゃっていただいたというふうに理解しました。
 私自身は、大阪の実は小学校に行ったときに、自分の価値観が全く変わる思いをいたしました。その学校は障害を個性とみなして、様々な子供が全ての時間を全ての子供が一緒に学ぶということを基本にした学校でした。
 そこに行くと、例えば朝ご飯食べさせてもらえていない子供がいて、なかなか朝起きられなくて、それを事務職員の人が迎えに行って、一緒になって手を引きながら、場合によっては地域のおじさんやおばさんが一緒に学校に連れてきてくれる。学校に来たら、やはりそういう子たちは、その子の場合は、すごく家でしんどい思いをしているので、やはり人を殴ってしまったりなんかする、攻撃性があるというふうに言われそうな子供なんですけれども、そういう子供たちの背景を、子供たちが丁寧に丁寧に、一緒になって、じゃ、この子がどうしたら安心するのかということをみんなで一緒に考えたり、この子は暴力を振るっているけど、本当は何を伝えたかったんだろうということを先生が一緒になって子供と考えたり、何かそんな空間でした。
 予防措置という意味では、おせっかいなおじさんやおばさんがいっぱい入っていまして、そのことが、やっぱり子供の小さな変化みたいなものに本当に早い段階で気付けるようなそういう関係を学校の中につくっていたりしました。そのことによって、そこは団地の地域でしたけれども、地域の関係ができるということにも気付きまして、やはり今、子供たちは、地域で大人と出会っても不審者かもしれないみたいな話になってしまって、なかなか安全に出会えなくなってしまっている難しい時代なんですが、学校の中で出会っていると、実は地域で出会っても、こんにちはとかいろんな関係がつくれるという。だから、学校の中をどうそういうおせっかいなおじさん、おばさんとの出会いにするかというのは、実はその子供のトータルなウエルビーイングにおいて大事なんだみたいなことも学びました。
 まさに、今日のこの会の趣旨に本当に何かばっちりする、そういう、その子供たちが本当に笑顔になって人間らしく育っていくということの意味をやっぱりもっと多くの学校で実現したいというのがこのインクルーシブ教育というものに懸ける思いということで、同時に、木村英子先生を始め、僕らまたオンラインの会なんかを始めとして、いろんなしんどい保護者の方、いろんな差別の体験、当事者の方のお声を聞いてきています。やっぱりそんなことを二度と体験しないで済むような、そんな社会をつくりたいという思いからこの活動を続けさせていただいております。
 その中でやっぱり気付きましたのは、それぞれが分断されていると、ニーズを持っている人たちが分断されているということと、それから知識がつながっていってないという問題です。
 その知識がつながっていってないということを二つ申し上げたいんですが、実は介護等体験という、これも是非お願いできたら有り難いんですけれども、つまり教師になるためには障害者の生活を知らなきゃいけないというので介護等体験というのが義務化されているんですね。ところが、これが施設見学しか法的には許されてない状況にございまして、つまり、本来インクルーシブ教育の教師を育てようと思ったら、地域で木村英子先生のように自立生活をしていらっしゃる、それから今日来てくださった三井絹子さん、国立市の三井絹子さんも来てくださっているようなんですが、そういう方のような生活をやっぱりもっと我々が知らないと、学校の中でこんな力が必要だという、こんな力のイメージが実は付かないところがございます。
 にもかかわらず、実は自立生活のところが介護等体験の対象に入らない、どう法律を解釈しても現状の法律では。これは、だけど、文科省の何か、告示か何か、通知か何かのようなので、比較的文科省がその気になってくださればすぐに変わる程度の話らしいんですが、ただ、私どもには非常にバリアがあるという状況がございます。
 そんな中で、やはり当事者団体が持っている知識とか当事者団体が持っている経験をもっと学校とつないでいかなきゃいけないという思いを持っています。それから、やはり我々が持っている知識なんかをもっと自治体と一緒に連携することで様々な実験ができたり、グッドプラクティスをつないでいったり、そんなことをしていきたいなと思っております。
 ですから、なるべく今後いろんな当事者団体とも提携をし、そしていろんな自治体とも提携をし、そして今インクルーシブ教育の研究者も協力研究員として集めているような状況があって、我々のセンターがそういう、この運動のハブになれるような、そんな取組ができたらなと思っているところです。以上です。

○木村英子君
 ありがとうございます。
 次に、三人の参考人の先生方に質問したいと思います。
 私は、幼少期の頃、親からですね、自分が死ぬときにはおまえを連れていかなければならないと言われて、とても怖い思いをした記憶があります。そして、親は重度障害者の私を育て切れずに施設に預けました。
 障害者だけではなく、様々な支援の必要な高齢者、子供たちに対して、行政は十分な制度の保障がされてないというふうに私は考えています。それで、家族だけに責任を負わせることで、社会から孤立させてしまって、ヤングケアラーの方や自殺、そして心中などが起こるような悲惨な現状を生み出していると思います。
 こうした背景には、やっぱり自助というものが強調される現状の中で、どうやったら家族だけに責任を負わすことなく生活をしていけるか、それにどういう取組が必要なのかについて参考人の方にお考えを聞きたいと思っております。田中参考人の方から是非お考えを教えてください。

○参考人(田中悠美子君)
 ご質問ありがとうございます。
 既存の制度では、特に介護保険制度で感じるのは、やはり家族のケアありきの制度設計が当初あり、今もなおそれが続いているなというふうに感じているので、今の既存の制度の中で、家族支援を位置付けていく認知症基本法ですとか、でき始めていますけれども、ケアラーを支えるための、それを軸としている法制化というのが必要だというふうに思っています。以上です。

○参考人(大空幸星君)
 ありがとうございます。
 非常に難しいご質問だなと思って聞いていたのは、家族関係が非常に良好であるがゆえに自ら命を絶つという子供たちが非常に多いという現状がある以上、やはりこの家族とどう捉えるかと。やっぱり家族が、家庭というのは安全な場所であるべきだし、ただ同時に、安全、安心な場所であるからこそ相談できない、心配掛けちゃいけない、迷惑を掛けちゃいけないというような発想が生まれてしまうという背景があるので、やっぱりこれは個別の事例に対処できるような制度を持っておかなきゃいけないんだとは思います。一方で、やっぱり家族にとらわれない、家族が安全ではない人たちが家族以外の場所に頼れるようなそうした仕組みというのが今十分かというと、間違いなくそれは不十分なんですね。
 ですから、そうした体制を、それはこども家庭センターもそうかもしれませんし、こういうチャット相談窓口もそうかもしれませんし、拡充をしていただくということに尽きるのかなというふうには思います。

○参考人(小国喜弘君)
 ありがとうございます。
 やはり学校としては、地域で自立生活を安心して送れるような体制とどうつながった学校教育を構想するのかということ自体が非常に重要なことだというふうに思います。
 そのためには、一つは、特別支援学校では提供されるけれども特別支援学級では提供されないとか、特別支援学級では提供されるけれども普通学級では提供されないみたいな、そういう話をなくした方がいい。この話はやはり国連の勧告の中にも既に出てきている話ですので、是非そういったものが充実していくといいなというふうに思います。
 それから、やはり今、学校教育自体の、これ不思議なんですけれども、障害者の自立概念というのは70年代か80年代ぐらいに転換したというふうに伺っておりまして、それまでは身辺的自立であるとか経済的自立というのが重要だったのが、人間というのはそもそも依存的な存在だから依存先を増やすということがむしろ自立なんだと。健常者というのは、健常者と言われる人は依存先が多い人で、依存先がある意味特定の資源に集中してしまう人が障害者と言われる人なんだ、だからこそ安心して頼れるような、そういう関係を育てていかなきゃいけないんだということが障害者運動では当たり前なんですが、不思議なことに、これ悪口ですけれども、特別支援教育の、特別支援教育では自立活動というのが中心概念なんですが、この中心概念である自立活動の理念はいまだに身辺的自立と職業的自立なんです。
 ですから、そういう意味で、こんな話はもうすぐにアップデートできるはずの、つまり知識のレベル、ベースの話ですので、そういったもの自体が実は特別支援教育においては何か旧態依然のままに、いつの時代なのというふうにその関係者に聞いてみたくなるようなことがずっと続いているという状況がございまして、何か関係者の方が聞いておられたらお叱りを受けるのかもしれないと何かびくびくしてきました。そういう状況でございますので、是非その辺りを変えていただくのもすごく大事なことかなというふうに思います。そのこと自体が非常にむしろ特別支援教育の今ネックになっているのではないかという気がします。
 結果的に見れば、特別支援教育が、それこそ木村先生おっしゃっているように、施設生活にしかつながっていないんではないかという疑義があるかと思いますが、そういう問題をやっぱり解消していくというためには、そういうカリキュラム自体もアップデートしていかなくてはいけないということかと思っております。以上です。

○木村英子君
 参考人の先生方、ありがとうございました。終わります。

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