2022.5.24 国土交通委員会質疑『学校のバリアフリー なぜエレベーターがつかないの?』

【配布資料】

【議事録】

○木村英子君 
 れいわ新選組の木村英子です。
 本日は、学校のバリアフリーについて質問いたします。
 文科省は、障害の有無にかかわらず、誰もが同じ学校で共に学ぶことのできるインクルーシブ教育を推進しています。また、国交省では、バリアフリー法に基づき、令和3年に公立小中学校もバリアフリー化が義務付けられました。しかし、車いす用トイレが設置されているのは全校のうち65.2%に対し、エレベーターが設置されているのは27.1%と少なく、障害のある児童生徒にとって、バリアを感じずにほかの生徒と同じように安心して学ぶ学校生活を送れる状況には至っていません。
 教育は、障害の有無にかかわらず子供たちにとって大切な権利ですが、学齢期の子供同士のコミュニケーションは最も重要であり、共に学べる環境の保障は、大人になって社会に出たときに障害者と健常者が一緒に生きていくための礎となります。ですから、学校生活において障害児と健常児が一緒に行動できるように、学校のバリアフリーを整え、共に学べる環境をつくることは急務だと考えます。
 先日、私のところに、普通学校に通う脳性麻痺の中学生と保護者の方から、長年学校に要望しても一向にエレベーターを付けてもらえず困っているという相談がありました。その方は学校内の移動においてキャタピラ式の階段昇降機を利用しており、保護者はいつ事故が起こるかと常に不安を抱きながら学校に送り出しているそうです。そこで、私は、実際にその学校を視察し、キャタピラ式の階段昇降機を試乗してきました。
 資料1をご覧ください。
 私の利用している大型の電動車いすでは、前輪が昇降機の警告ラインからはみ出してしまい、きちんと乗ることができませんでした。また、電動車いすの重量は200キロ以上あり、昇降機の重量と合わせると300キロ以上になり、これでは規定の重量をオーバーするため危険と判断し、あらかじめ用意していた手動の車いすに乗って試乗しました。
 次に、資料2をご覧ください。
 この昇降機は階段を一段ずつ上がるたびに衝撃があり、段差が10段あれば10回の衝撃が首や背中に走り、私の体にはとても負担が掛かりました。毎日乗るとしたら、むち打ちになったり障害が重くなってしまいます。かなり傾斜もあったので、落ちてしまわないかと不安でした。
 特に不安だったのは、昇降機と車いすを合わせて200キロ以上の車体をたった一人で後ろから操縦しているので、もしキャタピラが階段の段差を踏み外した場合、操縦者は昇降機ごと一緒に落ちていくか自分を守るために手を離してしまうしかなく、大きな事故になりかねないという危険を感じました。また、資料3をご覧のとおり、介護者が体を支えないと昇降機に乗れない障害者の場合、事故が起きたときに介護者も巻き込まれてしまう可能性があります。
 このように、今回試乗したキャタピラ式の昇降機は、様々な障害や多様な車いすの形状に対応しておらず、バリアフリーになっているとは言えません。
 エレベーターや車いす用の設置型階段昇降機については、国民の生命、健康の保護を目的とする建築基準法の定めた基準を満たさない限り設置することはできないのに対し、キャタピラ式の昇降機など可搬型階段昇降機についてはそのような国の定めた基準がなく、安全性が保証されているとは言えません。
 資料4の消費者庁の資料によると、可搬型階段昇降機の事故は、学校現場ではありませんが、2009年以降に15件あり、そのうちの4件が死亡事故でした。
 また、資料5をご覧ください。可搬型階段昇降機はバリアフリー法施行令が定める基準を満たさないとされており、バリアフリーとは認められていません。
 文科省としては、資料6のとおり、令和7年度までに要配慮児童生徒等が在籍する全ての学校にエレベーターを付けることを目標としているはずです。しかし、今回視察した学校では、実際に障害を持つ生徒が通っているにもかかわらず、エレベーターを設置してもらえず、バリアフリーではない可搬型階段昇降機が長年にわたり使用されている現状です。
 安全を最優先しなければならない学校において継続的に使われている可搬型階段昇降機の利用実態について、文科省は早急に調査していただきたいと思っております。また、昇降機を操縦する人と乗っている障害者の人が認識する危険性の違いを知ってもらうために、文科省の方には、現場を視察し、実際に可搬型階段昇降機を試乗していただきたいと思いますが、文科副大臣のお考えをお聞かせください。

○副大臣(池田佳隆君)
 木村委員にお答えをさせていただきたいと思います。
 学校における教育活動が安全な環境において実施されるためには、学校の安全対策は極めて重要なことと考えております。
 文部科学省では、学校施設におけるバリアフリー化の状況調査を実施しているところでありまして、今年度実施予定の次回調査の際には、エレベーター未設置の場合の対応事例として、階段昇降車等の使用も含めて状況を把握することを検討してまいりたいと考えております。また、階段昇降車等の視察、そして試乗につきましても検討してまいりたいと考えております。
 以上です。

○木村英子君
 ありがとうございます。是非、昇降機を試乗していただいて、体感した上で改善に向けて取り組んでいただきたいと思っております。
 文科省がインクルーシブ教育を推進していく上で、障害児と健常児が交流する機会を保障することが最も重要だと考えられます。しかし、今回視察した学校のように、キャタピラ式の昇降機を利用する場合は、ほかの生徒と一緒に移動する機会が限られるため、普通学級においても学校生活の中で障害児は健常児と分けられることを余儀なくされてしまいます。これでは、自分とは違う他者とのコミュニケーションの機会が奪われてしまい、障害者と健常者が共に生きていく力を育むことはできません。
 子供のときから障害児と健常児が一緒に学び、多様性を認め合える関係づくりは社会に出たときに共に生きるための大きな助けになります。ですから、障害児にとって、学校生活の様々な場面で健常児と一緒に学び、遊び、支え合う関係を妨げないためにも、エレベーターの設置は早急に進めなければならない重要な課題であると考えます。
 文科省として、バリアフリーに該当しない昇降機の利用を続けている学校に対し、早急にエレベーターを設置するように指導と助言をしていただきたいと思っております。今後、インクルーシブ教育をより一層推進していくためにも、学校のバリアフリーに向けて、文科副大臣のお考えをお聞かせください。

○副大臣(池田佳隆君)
 木村委員にお答えをさせていただきたいと思います。
 学校施設は、障害のある児童生徒等が支障なく安心して学校生活を送ることができるようにするとともに、災害時には避難所としての役割も果たすことから、バリアフリー化を進めることは大変重要なことであると考えているところでございます。
 そのため、文部科学省といたしましては、国のバリアフリー化の整備目標として、今年度中に、学校設置者に対し、要配慮児童生徒等が在籍する学校にエレベーター整備を求めていること、そして、これには階段昇降車等の使用は含まれないことを改めて周知するとともに、エレベーターの設置など学校施設のバリアフリー化の積極的な取組を重ねて要請して、学校設置者をきめ細かく支援してまいりたいと考えているところでございます。
 以上でございます。

○木村英子君
 ありがとうございます。学校設置者へのヒアリングや学校の視察など、積極的に取り組んでいただきたいと思います。
 そして、学校のバリアフリー化に向けては文科省が管轄ではありますが、バリアフリー法を所管する国交省においても、交通や建物、学校、避難所などのバリアフリー化を進め、誰もが生きやすい共生社会を実現する責任があると考えます。
 可搬型階段昇降機は建築物に附属したものではないということでバリアフリー法や建築基準法の対象になっていないため、これまで制度の谷間に落ちて、国交省からも文科省からも問題が見過ごされています。これでは責任の所在が不明なまま対応が遅れてしまい、事故を防ぐことはできません。学校に通う子供の安全と命を最優先に考えるのであれば、国交省もこの問題に目を向けて、文科省とともに学校のエレベーターの設置を早急に進め、障害児も健常児も安心して学べる環境を実現していただきたいと思っていますが、国交大臣のお考えをお聞かせください。

○国務大臣(斉藤鉄夫君)
 現場を視察してのご質問に対して、心から敬意を表します。
 障害者を含む全ての方が利用しやすい環境を整備する観点から、バリアフリー法では一定規模以上の建築物を建築する際にはバリアフリー基準への適合を義務付けており、特に上下階をまたぐ移動が必要な場合には基準を満たすエレベーター等の設置を求めています。
 このうち、学校のバリアフリー化については、児童生徒が子供のときからバリアフリーとは何かを学ぶことにより、バリアフリーが当たり前であると思える環境を構築する観点から大変重要な課題です。
 また、災害時の高齢者、障害者等の方々の円滑な利用の確保等も図る必要があることから、2020年のバリアフリー法改正では義務付け対象用途に公立の小中学校を追加したところでございます。さらに、2021年には、文部科学省にも参画いただき、学校のバリアフリー化の参考として活用できる建築設計標準、ガイドラインの改定を行い、設計者への周知を通じて既存建築物等のバリアフリー化の促進を図っております。
 今後とも、建築設計標準の普及と併せて、エレベーター等の設置を求める基準の考え方の周知に努めるとともに、文部科学省とも連携しながら、学校の適切なバリアフリー化の促進に向けてスピード感を持って取り組んでまいります。

○木村英子君
 エレベーターの設置など、学校のバリアフリー化については今後も注視していきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 ありがとうございました。

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