2022.6.2 国土交通委員会質疑『家庭で使われた油を再利用して、飛行機は飛ばせるのか?』

【配布資料】

【議事録】

○木村英子君
れいわ新選組の木村英子です。
本日は、航空法改正案における航空業界の脱炭素化に向けて、持続可能な航空燃料のSAFの導入、普及を促進するために、国内における廃食用油のリサイクルについて質問いたします。

まず、資料1をご覧ください。
現在、温暖化の影響で、気温の上昇に加え、海面水位の上昇、大雨や台風などの気候変動、農作物の不作など、私たちの生活や命に影響を及ぼしており、資料2が示すとおり、熱中症で亡くなられた方は、90年代は年間200人程度だったのに対し、2010年代には平均1000人にも達しています。
このような状況を受けて、世界的には、温室効果ガスを出さないために様々な取組がなされているところです。日本においては、脱炭素社会の実現に向けて、政府が2050年までにカーボンニュートラルを目指すと宣言していますが、日本はエネルギー発電の約8割を化石燃料に頼っており、CO2の排出量は世界で5番目に多く、欧州などと比べて脱炭素化が遅れています。
資料3をご覧ください。
このような現状において、環境省は、持続可能な社会づくりを目指して、2018年に第四次循環型社会形成推進基本計画を策定し、脱炭素化の 取組の一つとして、回収された廃食用油等のバイオディーゼル燃料の生産を推進することを目標に掲げています。バイオ燃料の生産を進めることでCO2の排出量を削減することが期待されていますが、そのためには、今後、原料の一つである廃食用油を回収し、リサイクルできる仕組みづくりが最も重要だと考えます。
資料4をご覧ください。
令和3年度版の廃食用油のリサイクルの流れ図によると、飲食店などの事業用の廃食用油は年間40万トンとなっていますが、そのうちの90%以上が回収されて、家畜の飼料や石けんなどにリサイクルされています。一方で、家庭内から出される廃食用油は年間10万トンとなっており、そのうちの約10%程度しか回収されておらず、残りの90%は、凝固剤で固めて可燃ごみとして出されるか、下水道に生活排水として流されてしまっています。
下水道に流された廃油は、資料5のように固まって、下水管の詰まりや悪臭の原因になっています。
また、環境省によると、東京都内で河川や海に流される汚濁の70%以上が生活排水に起因していると言われており、特に下水に流された廃食用油は最も深刻な水質汚染を引き起こすとも言われております。ですから、家庭内の廃食用油の回収、再利用は、環境保全のためにも早急に取り組まなければならない課題だと考えます。
このような家庭内の廃食用油を再利用するための回収がどのように行われているのか調べてみたところ、民間事業者などでは、独自に廃食用油を回収したり、又は行政から委託されて回収からバイオディーゼル燃料の精製までを行っているというところがありました。また、障害者の就労支援施設などでは、廃食用油の回収から燃料の精製までを行っているところもあります。
各市区町村においては廃食用油のリサイクルについて様々な試みがされていますが、特に京都市では、地域のボランティアの人たちが回収した廃食用油を市の燃料化施設で一日5000リットルのバイオディーゼル燃料を精製しており、市バスなどの燃料として活用するなど、先駆的な取組がなされているところです。
このように、民間事業所や地域のボランティアの人たちが様々な方法で廃食用油のリサイクルに貢献されています。その一方で、自治体がほかの資源ごみと一緒に廃食用油を定期的に回収する取組を行っているところもあります。
例えば、廃食用油の回収率が8割を超える神奈川県の藤沢市では、一般廃棄物処理基本計画において資源品目の中に廃食用油を明記しており、資料6のように、瓶、缶、ペットボトルなどと同様に、週一回ごみ集積所に廃食用油を出してもらって回収されています。
廃食用油の回収率を上げるためには、民間事業所や地域のボランティアの取組だけに任せるのではなく、各市区町村が定める一般廃棄物処理基本計画の中で廃食用油の分別を位置付けるなど、行政が率先して取り組む必要があると考えます。しかし、廃食用油を回収している自治体は全自治体の約3分の1しかなく、これでは廃油由来のバイオ燃料の生産は進みませんし、脱炭素化社会に近づくことは難しいと考えます。
ですから、環境省は、脱炭素化社会に向けて、各市区町村における廃食用油の回収から燃料の精製までのプロセスを早急に構築するために、各自治体の取組を調査し、民間事業者や障害福祉団体、有識者を含めた検討会を立ち上げ、ガイドラインを作成していただきたいと思っていますが、環境省のお考えをお聞かせください。

○大臣政務官(穂坂泰君)
ご質問ありがとうございます。
いただいたご質問のとおり、廃食用油を含め、生ごみなどの廃棄物系バイオマスの利活用を推進することは、気候変動対策に資することから、重要な取組だと考えております。
一般廃棄物の廃食用油について分別回収している自治体数は、ご指摘のとおり、令和2年度の実績で549団体、全体の約3割となっています。回収された廃食用油からバイオディーゼル燃料化された量は、令和2年度で、実績で4380トンとなっております。
今後、廃食用油や地域の廃棄物系バイオマスについて、それらの利活用に関する市町村等の取組や課題を今年度早急に調査して、関係者との意見交換や持続可能な航空燃料の導入促進に向けた官民協議会での議論を踏まえ、横展開できる優良事例等を基にしてガイドラインとして取りまとめるなど、それらの利活用方策について検討していきたいと考えております。

○木村英子君
ありがとうございます。
早急にガイドラインを作っていただくように、お願いいたします。
次に、今回の航空法の改正案では、航空業界の脱炭素化に向けて、CO2の排出量を大幅に削減できる持続可能な航空燃料、SAFの導入促進が盛り込まれています。特に、廃食用油を再利用して作るSAFは最も実用化が期待されている航空燃料の一つです。
資料7をご覧ください。日本では、全日空がフィンランドのネステ社から廃油由来のSAFを輸入して定期便を運航しており、おととしは5500トンの供給を受けています。
また、資料8をご覧ください。伊藤忠商事も、今年ネステ社と独占販売契約を結び、今年春から国内外の航空会社に供給を始め、最大1万トン規模のSAFを輸入し商用展開すると発表しています。
しかし、日本では、先ほどもお話ししたとおり、回収されていない家庭内の廃食用油が年間9万トンもあります、失礼しました。ですから、SAFの輸入だけに頼らずに、国内の廃食用油を回収して有効活用することが急務だと思います。
そこで質問いたしますが、国交省が中心になって行っている持続可能な航空燃料の導入促進に向けた官民協議会において、家庭内の廃食用油もSAFの重要な燃料の一つとして取り入れることを協議していただき、今後、国交省として、航空業界のSAFの導入、普及の促進に向けて、環境省を始め、各関係省庁と連携しながら廃食由来のSAFの活用を促進していただきたいと思っておりますが、国交省のお考えをお聞かせください。

○国務大臣(斉藤鉄夫君)
4月にお話がございましたように、SAFの導入の加速化を図るため官民協議会を立ち上げたところでございます、供給側、需要側及び政府一体の枠組みとして。そして、この協議会には、原料確保の重要性を踏まえて農林水産省や環境省も参加していただいております。
このSAFの原料には様々なものがありますが、廃食油由来のSAFの開発、製造が先行している現状もあり、今後の量産化に向けては、家庭から排出されるものの回収を含め、廃食油の確保は非常に重要な課題と認識しております。
家庭で使った、フライを揚げた後の油や天ぷらを揚げた後の廃食油が飛行機の燃料になるというのは、子供から見ても大変夢のある話だと思います。そういう意味では、国民運動として、そういう料理を作った後、廃食油は飛行機燃料にしようというような国民運動、こういう国民運動にしていくのは環境省さん大変得意なところがありますので、そういう環境省ともよく連携を取りながら、この官民協議会の場において廃食油を含むSAFの原料確保についてしっかりと議論を進め、関係 省庁とともに取り組み、前進をさせてまいりたいと考えております。

○木村英子君
ありがとうございます。
廃食用油をごみにしないで利活用し、脱炭素化を進めるためにも早急に取り組んでいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
ありがとうございました。

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