2023.6.1 参議院 国土交通委員会 「EV充電施設はバリアフリーなの?」

【議事録】

○木村英子君
 れいわ新選組の木村英子です。
 本日は、先月可決された道路整備特措法の改正でも推進されているEV充電施設における車いすの方のバリアについて、障害当事者の立場から質問いたします。
 現在、カーボンニュートラルに向けて、EV車やその充電設備の普及に向けた取組が進められていますが、EV充電施設がバリアフリー化されておらず、自動車を利用している車いすの方が利用しづらくて取り残されてしまっている現状があります。
 そこで質問いたします。
 現在、政府としては、EV充電施設をどのくらい設置する目標を立てているのでしょうか。

○政府参考人(藤本武士君)
 お答え申し上げます。
 電動化社会の実現に向けましては、電動車の普及とインフラとしての充電器の設置を車の両輪として進めていくことが重要だと考えております。
 政府としましては、2030年までに公共用の急速充電器3万基を含みます15万基の充電インフラを設置することを目標に掲げております。まずは、この目標について、2030年を待たず、できるだけ早期に実現したいと考えております。

○木村英子君
 しかし、今既に設置されているEV充電施設は、障害当事者から使いづらいと聞いております。
 そこで質問します。
 資料1をご覧ください。


 経済産業省では、EV充電施設を設置する際の補助金制度をつくっており、ユニバーサルデザインを考慮した設置に努めることを推奨しますと書かれています。しかし、国が補助金を出してこれから15万基の設置目標を立てている中で、推奨では障害者が利用できない充電施設が普及してしまう不安がありますので、ユニバーサルデザインを要件として定める必要があると考えます。
 経産省として、ユニバーサルデザインを補助金の要件として位置付けていただきたいと思っていますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(藤本武士君)
 お答え申し上げます。
 様々な利用者が安全で快適に電気自動車や充電インフラを使用できるようにするため、ユニバーサルデザイン化を進めていくことは重要だと考えております。一方で、駐車スペースなどの制約からユニバーサル対応が不可能なケースもあるため、個々の事情に応じた対応が必要であると考えております。そのため、充電インフラ補助事業では、ユニバーサルデザインを必須の要件とまではせず、推奨することとしております。実際に、昨年度の充電設備の補助金申請のうち約8割が衝突防止パイプの間隔を空けるなどの何らかのバリアフリー対応を行っております。
 このように、現在の推奨の枠組みでも、充電インフラの整備に当たって一定のバリアフリー対応を進めることができていると考えておりますが、引き続き、障害者差別解消法に基づく合理的配慮の提供の趣旨も踏まえまして、道路施設を所管する国土交通省とも協力をして、更なる浸透に向けた周知や働きかけを進めてまいりたいと考えております。

○木村英子君
 今、現在の推奨の枠組みでも約8割がバリアフリー対応できているとおっしゃっていましたけれども、残りの2割はどうなるのでしょうか。一か所でも障害者が使えないEV充電施設があること自体重く受け止めていただきたいと思います。
 しかも、その8割というのは、充電設備のみがユニバーサルデザインになっているにすぎません。
 資料2をご覧ください。


 これは、車いすユーザーの横沢参議院議員が岩手県のサービスエリアや道の駅に設置されているEV充電施設を視察に行かれたときの写真です。ご覧のように、充電施設と駐車スペースの間に車止めや段差があって、車いすの人は充電をすることができません。充電設備だけがユニバーサルデザインになっていても、周りの環境や駐車スペースがバリアフリーになっていなければ、その充電施設は使えません。さらに、駐車スペースが狭いために、隣に車が止まっていて、車いすの方が車から降りることもできないことが多く、充電設備までに行くこともできずに利用することすらできないことも多い状況です。
 このように、車いすを利用している人が充電施設を利用する場合には、ユニバーサルデザイン化された充電設備と車いす用の駐車スペースの両方がセットになっていなければバリアフリー化とは言えません。車の充電がなければ動くことができなくなりますから、車いす利用者の車が充電できる充電設備と駐車スペースを一体化として考えていないことは、車いすの人を排除しているかのように思います。こうしたことが起きてしまうのは、充電設備自体の所管は経産省で、駐車スペースは国交省となっているためであり、まさに縦割り行政の弊害ではないでしょうか。
 資料3をご覧ください。


 現在、EV充電施設のバリアフリー化については、経産省の所管の業界団体であるCHAdeMO協議会が手引を作成しています。その中では、衝突防止パイプの間隔、ボタンの高さ、操作位置までの段差のバリアフリー化について記載があります。しかし、駐車スペースについての記載がなかったり、まだまだ不十分なところがあります。
 充電設備だけがユニバーサルデザイン化されていても、駐車スペースがないと使えません。このままでは、EV車を利用している障害者の人が使えない施設が増えてしまいます。
 国交省は、CHAdeMO協議会の手引を作成する際に関わっていたのでしょうか。

○政府参考人(瓦林康人君)
 お答え申し上げます。
 電気自動車用急速充電器の設置・運用に関する手引書を策定しているCHAdeMO協議会でございますが、平成22年3月に急速充電器の充電方式や設置拡大を図ることを目的として設置されまして、現在、国内外の自動車メーカー、電力会社、充電機器メーカーなど約560の関係事業者、団体等が参画して運営されている協議会であると承知しております。
 そして、この協議会には、充電機器の普及促進の観点から経済産業省が、また次世代自動車の技術開発や普及拡大の観点から国土交通省がそれぞれ特別会員として参加しておりますが、委員ご指摘の充電機器に関する手引書の作成に際しては、国土交通省は参加や関与はしていなかったところでございます。

○木村英子君
 国交省はバリアフリー法を作っているにもかかわらず、このEV充電施設においては開発や普及拡大に関わっていないことは、国交省自体が障害者を取り残しているというふうに思わざるを得ません。なぜバリアフリー化が必要なEV充電施設の手引作成について国交省は関与していなかったのでしょうか。
 やっぱり、縦割り行政の中で常に取り残されてきたのが弱者です。EV自動車の普及の過程で誰一人取り残されないようにしていくためにも、国交省と経産省が連携して、障害者参画の下で早急にガイドラインを作るべきだと思います。
 まず、経済産業省副大臣と国交大臣のお二人にお聞きしたいと思います。
 まず、経産省の大臣、お答えください。

○副大臣(太田房江君)
 お答え申し上げます。
 自動車分野におけるGXを効果的に推進をしていくためには、様々な利用者が、おっしゃるように、安全で快適に電気自動車や充電インフラを使用できる環境を整えていくことが重要だと考えております。
 このために、充電インフラの補助事業につきましては、先ほど審議官の方からご説明を申し上げましたけれども、CHAdeMO協議会の手引書に基づいて、ユニバーサルデザインの採用を推奨しておりまして、必要な工事費などを支援しているほか、既に設置された充電器を更新する際にも、バリアフリー化に必要となる費用を補助対象としております。
 委員ご指摘のとおり、バリアフリー化に向けては、充電器のみならず、駐車スペースまで含めた一体的な取組が必要でありまして、CHAdeMOの手引書に基づく対応をより広く進めていくために、その施設管理者の協力、これが必要と考えておりまして、どのようにすればこの手引書に基づいて施設管理者の協力が得られるようになるのか、必要な対応について国土交通省ともよく相談をしていきたいと考えております。
 経産省としても、全ての方がご不便なく電動車を利用できるようにしっかりと取り組んでまいります。

○木村英子君
 次に、斉藤大臣、お願いいたします。

○国務大臣(斉藤鉄夫君)
 充電機器そのものだけでなく、その周辺もバリアフリーに、ユニバーサルデザインになっていなければ使えないというご指摘は、もうそのとおりだと思います。
 経済産業省と国交省で、この充電機器の普及についてはいろいろ共同してやってまいりましたが、この手引書のところでは国交省が関与していなかったことについては確かに不適切だったと、このように思います。
 このような考え方から、昨年、国土交通省では、経済産業省と合同で、サービスエリア、パーキングエリア及び道の駅に設置されている充電機器及びその周辺のバリアフリー化の状況を調査いたしました。その結果、車いす利用者の方々にとっては、段差や衝突防止パイプの間隔、委員ご指摘の駐車スペースの幅などの面で利用しづらいところがあるとの課題を我々としても確認したところでございます。
 ほかの場所に設置されている場合も含め、このような課題に対応していくため、国土交通省におきましては、充電機器及びその周辺のバリアフリー化を促進する観点から、障害当事者のご意見も丁寧に伺いながら、経済産業省との連携の下、CHAdeMO協議会と早急に協議してまいりたいと思っております。

○木村英子君
 CHAdeMO協議会にユニバーサルデザインを任せるということに当たっては、バリアフリー法を所管する国交省が関わらなければ、障害者の人たちが安心してEVの充電施設を使えることができないと思います。
 バリアフリー化をより一層進めていくためにも、EV充電施設から障害者の人たちが取り残されないように、当事者参画により協議を行い、手引の改訂やガイドラインの作成を早急に進めていただきたいと思います。
 以上で質問を終わります。

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