2023.5.30 参議院 国土交通委員会 道路整備特措法等改正案質疑「困窮する現役世代の負担軽減を!」

【議事録】

○木村英子君
 れいわ新選組の木村英子です。
 本日は、道路整備特別措置法の改正案による高速道路の料金徴収期間の延長について質問いたします。
 今回の改正案は、高速道路の料金徴収期間を2115年まで延長しようとするものですが、92年後に債務を返済した後には無料になると言われています。なぜそこまで高速料金の徴収期間を延長しなければならないのか、その理由についてお答えください。

○政府参考人(丹羽克彦君)
 お答え申し上げます。
 高速道路については、我が国の経済活動や国民生活を支える重要なインフラでございまして、その機能を将来にわたって維持するとともに、社会的要請を踏まえて進化する必要がございます。平成26年の法改正で料金徴収期限を15年延長し、更新に着手しておりますが、平成26年7月から開始した法定点検により新たに更新が必要な箇所が相次いで判明しておりまして、この更新に必要な財源を確保することは喫緊の課題でございます。また、交通事故が集中する区間、さらに災害時の通行止めリスクの高い区間における4車線化など、社会的要請を踏まえた優先度の高い進化事業にも速やかに取り組む必要がございます。
 今般の改正法案につきましては、新たに更新が必要と判明した箇所に加えまして、今後更新が必要となる蓋然性の高い箇所を含めた財源を確保できるよう、料金の徴収期限を現行法の2065年から50年延長した2115年に設定したものでございまして、更新事業を優先しながら、進化事業も加えつつ、必要な事業を実施してまいります。

○木村英子君
 国交省は、2115年には債務を返済して返し終わり、無料化すると言っていますけれども、完済した後も維持管理費は当然掛かるわけですから、大体幾らぐらいになるという予想でしょうか。

○政府参考人(丹羽克彦君)
 お答え申し上げます。
 高速道路の維持管理や修繕は永続的に必要なものでありまして、将来の費用については、技術の進展などに伴って減少が期待される一方、構造物の損傷状況などによって変動するため正確に予測することは困難なものと認識しておりますが、毎年1兆円程度が必要と想定をしております。
 なお、維持管理や修繕は永続的に必要なため、負担の在り方を含めた将来の有料道路制度については、有識者などのご意見も丁寧にお伺いしつつ、道路交通を取り巻く環境の変化なども見据えながら、しっかり議論していきたいと思っております。

○木村英子君
 今、今後有識者を交えた議論をしていくとおっしゃっていましたけれども、完済後も必要経費というのは掛かるわけですが、無料にするという約束、これが守られるとは私としては到底思えません。
 日本の高速道路の債務は、当初は30年で返すと言っていました。その後、1992年に40年間、1999年には45年間に延長し、さらに2005年には、民営化された後、2050年まで返すと言っていました。2014年には15年間も延長されました。どんどんどんどん延ばされて、今回の改正案では50年延長され、92年後という想像し難い年月となっています。
 道路は、国民にとっての社会活動のために不可欠なインフラであり、租税などで整備を行い、誰でも無料で利用できるという無料公開の原則があります。高速道路などの有料道路はこの無料公開の特例と位置付けられていますが、国は何度も延長を繰り返している中で、本当に2115年には無料になるのでしょうか。

○政府参考人(丹羽克彦君)
 お答え申し上げます。
 平成26年の法改正において料金徴収期限を15年延長し、更新に着手いたしましたが、この附帯決議では永久有料にすべきというご意見と無料化すべきというご意見の両方がございました。
 今般の改正法案では、現行法を踏襲し、従来と同様に料金の徴収期限を設定したものでございまして、債務完済後には従来と同様に無料開放する仕組みとなっております。
 この料金徴収期限につきましては、今般の改正法案における制度の下、今後必要となる蓋然性の高い更新需要に対応するため、人口減少などに伴う交通量減少など、現時点における見通しも踏まえまして2115年とする必要があると考えております。
 国民の皆様に対しまして、今般の改正法案の目的、料金徴収期限を設定した理由などについて引き続き丁寧に説明し、ご理解がいただけるように取り組んでまいりたいというふうに考えております。
 なお、現時点において具体的に見通すことができないような革新的な技術開発など、道路交通を取り巻く環境に大きな変化が見込まれる場合には、高速道路における負担の在り方など、有料道路制度の見直しを行っていく必要があると認識をいたしております。

○木村英子君
 しかし、改正されるたびに、大規模な修繕計画を提示した上で、完済すると政府は言い続けています。
 92年後の社会情勢が今予想も付かない中で、現在自動車を使っている人にとっては無料化になった後の恩恵を受けることはありませんから、当然信用することはできません。現役世代の負担をこれ以上重くしないためにも、高速道路の料金については国費を使って無料にすべきだと考えますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(丹羽克彦君)
 お答え申し上げます。
 高速道路の負担の在り方については、例えば、平成26年の法改正で料金徴収期限を15年延長し、更新に着手した際の附帯決議で無料化すべきと永久有料にすべきと両方のご意見があったように、税負担と利用者負担の双方の意見があるものと認識をいたしております。
 今般の改正法案の検討に当たりましては、更新などに必要な財源の確保策について、国土幹線道路部会が令和3年8月にまとめた中間答申を踏まえ検討を進めてきたところでございます。
 この結果として、今般の改正法案におきましては、財政事情が厳しいことなどから現時点での税負担は困難であることに加え、高速道路は一般道路と比べ速達性などのサービス水準が高いことから、利用者負担により財源を確保することとしました。
 その上で、現下の社会情勢から、料金水準の引上げは直ちに利用者の理解を得ることは困難であることに加えまして、更新により耐用年数が延び、将来世代にも受益があることを踏まえ、料金の徴収期間を延長することにより、引き続き利用者負担をお願いするものでございます。
 高速道路を直ちに国費により無料化するためには、高速道路機構が現在保有する約26兆円の有利子債務と現在の償還計画に含まれる更新に必要な費用など、利用者負担ではなく税負担とする必要がございます。この約26兆円という多額の債務を直ちに税負担で返済することはなかなか難しいことに加えまして、更新は将来の世代にも受益がございまして、これら現役世代の税負担だけとすることは世代間の公平性の観点から課題があることなどから、直ちにこの高速道路を無料化することは困難であるというふうに認識をいたしております。
 なお、先ほどもお答えしたとおり、維持管理、修繕は永続的に必要なため、負担の在り方を含めた将来の有料道路制度については、有識者などの御意見も丁寧に伺いつつ、道路交通を取り巻く環境の変化なども見据えながら、しっかりと議論していきたいと考えております。

○木村英子君
 直ちに無料化することは困難というふうに今お答えされましたけれども、このまま無料化を先延ばしして料金の徴収期間を延長するということは、やはり国民の負担を考えると納得できませんけれども、なぜならば、日本の相対的貧困率は、2018年時点で15.7%あり、約2千万人と言われています。高速道路の料金については何度も延長を繰り返しており、料金を取るのが当たり前というふうになっていますが、このまま延長をした場合、現在生活に困っている人からすれば、旅行などに使う場合、有料の高速道路を使うよりも、生活費を考えて一般道を使わざるを得ない人も増えてくると思います。
 資料1をご覧ください。

少し前になりますが、2014年にJAFが行ったアンケート調査によると、自動車ユーザーの9割以上が高速料金を高いと感じています。
また、資料2では、ドライブ旅行の際に負担に思うものとして、1位が高速道路、有料通行通行料で76.2%、2位のガソリン代が69.5%となっています。


 JAFは、2014年に国交省の国土幹線道路部会においても、このアンケート結果を示した上で、高速道路の利用促進のため、料金割引等を、施策を図るべきと提言しています。
 特に、移動の確保が困難な障害者の場合、社会参加の保障やバリアフリーが整っていないことで鉄道やバスなどの交通機関も使いづらい状況にあります。そのため、車を使う人が多く、障害年金などで生活している人など、低所得の方などは高速料金が生活を逼迫してしまい、旅行などの外出を控えてしまう人もいます。
 さらに、それに追い打ちを掛けるように、コロナやウクライナ戦争による物価高の影響もあり、国民負担率が50%近くになって多くの人が困窮している中で、高速料金を延長することは国民の生活に影響を与え、余暇活動や旅行などを控えてしまう原因になります。これから更にガソリン代や電気代が上がると言われている中で、国民の生活への負担を更に増す結果になってしまうと思います。そんな中で延長しなければならないということなのでしょうか。
 無料化がすぐにはできないとしても、今車を利用している人は92年後は生きている人はいませんから、今現に困っている人を助けるためにも、無料化そして引下げ、割引、定額制など、現役世代の利用者の負担を少しでも軽減する方策を検討するべきだと思いますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(丹羽克彦君)
 お答え申し上げます。
 先ほどお答えさせていただいたとおり、今般の改正法案につきましては、更新などに必要な財源を確保するため、料金徴収期間を延長することにより、引き続き利用者負担をお願いするものでございます。
 近年の物価上昇傾向の中、これまでもコスト縮減、技術開発、会社の経営努力などの様々な取組を行っているところでございまして、引き続き利用者負担の軽減を図る取組を進めてまいりたいと考えております。

○木村英子君
 利用者負担の軽減を引き続き検討すると言われましたけれども、NEXCOなどの高速道路を管理する会社の企業努力に任せていくということは限界があると思います。
 今困窮している人たちが高速道路を利用しやすいようにするには、国費を投入して大幅な負担軽減をする必要があると考えます。
 例えば、割引制度については様々な自治体からも拡充の要望が出されており、資料3のとおり、令和2年7月に宮城県議会の議決した新型コロナウイルス感染症対策の充実・強化を求める意見書では、被災地への誘客や物流活動の促進を図るため、高速道路の大幅な割引制度を実施することという要望が出されています。

ほかにも、平成27年の関東地方自治体や令和4年の中国地方自治体からも同じ趣旨で高速道路の割引制度の拡充を求める要望書が出されており、負担軽減策の早急な検討が求められています。
 また、資料4をご覧ください。


 平成26年の道路整備特措法の改正の際には、参議院の附帯決議で、高速道路ネットワークは国民共通の社会資本であることから、その一層の有効活用を図るため、通行料金の引下げ、交通混雑を引き起こすことなく、かつ利用度が画期的に改善される路線等における早期の無料化など、利便性の向上を実現する方策について、技術、運用、資金、制度面等、多様な角度から引き続き検討することとされており、通行料金の引下げも検討すべきことが政府に求められています。このように、地方自治体だけではなく、国土交通委員会の中からも負担軽減策を求める提言が出されていたところです。
 実際に、平成21年度から平成25年までは割引料金を国費で賄う高速道路利便増進事業が実施され、休日割引や通勤割引などを行い、国民の負担を減らす試みがされていました。国費での割引をしていた高速道路利便増進事業を行っていた理由とその事業内容の詳細を分かりやすく教えてください。

○政府参考人(丹羽克彦君)
 お答え申し上げます。
 委員ご指摘の高速道路利便増進事業とは、高速道路利用者に対しまして、高速道路機構から国に債務を承継することにより、高速道路の料金引下げ措置、またスマートインターチェンジの整備などを実施するものでございます。
 料金割引につきましては、平成20年10月から、原油、食料価格などの急激な上昇の影響を受けている国民などの生活支援のための緊急方策の一つとして、安心実現のための緊急総合対策を踏まえまして、地域の活性化のため、地方部における休日昼間の時間帯を5割引きとする割引や、物流効率化のため、深夜割引を3割から5割に拡充し、夜間割引時間帯を22時から0時に拡大いたしました。
 加えまして、平成21年の3月から、少子高齢化が急速に進行する一方で、地方は疲弊し、都市部との格差が拡大する中、生活対策として、観光振興や地域の生活・経済支援のため、土日祝日の割引時間帯を全日に拡大し、上限を1000円とする割引や、物流効率化のため、地方部の平日昼間時間帯などを3割引きとする割引などが実施されたところでございます。
 これらの割引は、財源がなくなったことによりまして、平成25年度末に終了しているところでございます。

○木村英子君
 今答弁された中で、料金割引については平成20年から約5年間、原油、それから食料価格などの急激な上昇の影響を受けている国民などの生活支援のための緊急対策の一つとして行われたというふうに言われましたけれども、今まさにコロナや物価高の中で国民が困窮している状況ですから、国費を投入すべきだと私は思います。
 ですから、国費による割引制度を今後つくっていただきたいと思っておりますけれども、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(斉藤鉄夫君)
 現状におきましては、国民生活に大きな影響を及ぼすエネルギーや食品を中心に物価上昇が続いているところです。
 委員ご指摘の高速道路の料金割引の拡充については、物流コストの低減などの効果が期待されます。しかしながら、トラック運送事業の運送コストに占める道路使用料の割合は約4%とのデータがあること、またその対象は高速道路の利用者を中心に一部の方になることなどから、高速道路料金の割引の拡充の効果は限定的なものになると想定されます。
 引き続き、他の交通機関への影響や負担の公平性を考慮しつつ、高速道路の利用がより促進される料金となるよう努めてまいります。
 なお、物流事業者など高速道路を利用する機会の多い車の負担を軽減するため大口・多頻度割引を導入しており、補正予算も活用して最大割引率を40%から50%に引き上げているところでございます。
 このような形で、できるだけ経済の活性化に結び付くような高速道路料金体系、運賃割引制度、考えていきたいと思います。

○木村英子君 
 そうですか。
 でも、障害者の方は働くことができない方たちもいますので、やはりその高速料金とはいえど、やっぱりそこを使ってまで遠出の旅行をするときに負担があるという状況ではあります。
 ですから、私たち障害者、私も含めてですね、交通機関、特にその高速道路はかなり大切なインフラでもありますので考えていただきたいというふうに思いますし、また、5月23日の参考人質疑では、近藤参考人の娘さんが私と同じく電動車いすを利用されている方で、高速道路の方が疲れずに通行できるという利点もあったとおっしゃっていました。
 しかし、高速道路に限らず、先ほども言いましたけど、移動の確保が十分にできないその中で、高速道路の料金が2115年まで延長されると社会参加が妨げられる人も出てしまうということから、軽減措置を今後も考えていっていただきたいというふうに思います。
 今回の法改正については、やはりその92年後という想像も付かない時代までの料金期間の延長をするということで、現在その、先ほども言いましたが、コロナとかウクライナの影響による物価高という国難の中で、国民負担を考えると、この延長するということは今するべきではないというふうに私は考えています。
 また、その国民の格差が広がっている現状の社会状況において、更に高速道路を利用しづらい人たちが置き去りにされてしまう危険性を考えると、今回の改正案は反対です。私としては反対に投じたいと思います。
 以上、質問を終わります。

\シェアしてね!/