2023.5.25 参議院 国土交通委員会 「障害があっても安心して船に乗りたい!」

【議事録】

○木村英子君
 れいわ新選組の木村英子です。
 先日改正された海上運送法について、障害者に対する船の緊急時の対応について質問いたします。
 障害者の社会参加の促進のために、国交省においては各交通機関のバリアフリー化が進められている中で、特に船のバリアの解消が遅れている状況です。そのため、障害者の人たちが健常者の人たちと同じように観光を楽しむために旅行に行きたくても船は利用しづらく、また事故や災害が起きたときの避難体制が整っていないことから、とても不安で、船の利用を諦めてしまう人が多くいます。
 そこで質問いたします。
 今回の海上運送法の改正では初任教育訓練の義務化が盛り込まれていますが、その中に緊急時対応が掲げられています。この初任教育訓練では、障害者や高齢者の緊急時の避難に対応できるマニュアルは考えていられるのでしょうか。お答えください。

○政府参考人(高橋一郎君)
 お答え申し上げます。
 木村委員ご指摘のとおり、今回の法改正により創設される初任教育訓練におきましては、初任の船長を始め乗組員に対して、海域の特性や緊急時対応についての教育、実船、実海での訓練を行う予定でございます。その際、中小の事業者であっても乗組員の資質向上にしっかりと取り組めるよう、初任教育訓練の具体的な実施方法や留意点、使用する教材の例などをまとめたガイドラインを今年度中に策定することを予定してございます。
 このガイドラインにおきましては、木村委員ご指摘のように、緊急時の旅客の避難誘導についても定めることを予定してございまして、緊急時における避難の際、障害者の方、高齢者の方、これらの方々に優先的に退船をしていただくこと、また、その旨のアナウンス等の手順、あるいはその個々の障害の対応に応じた留意点など、乗組員の教育訓練に反映すべきと考えられる事項についてしっかり盛り込んでまいりたいと思っております。

○木村英子君
 ただいまの、今年度中にガイドラインに盛り込むと言われましたけれども、これまでの船の避難についてどのように対応されてきたのかがちょっと疑問です。
 資料1をご覧ください。

国交省が行った旅客船を利用したユニバーサルツーリズム推進調査事業報告書では、障害当事者が船の現地視察を行ったところ、海難など、緊急時の避難方法が分からないという問題点が浮き彫りになっています。
また、資料1の2のとおり、障害当事者へのアンケートでも、旅客船を利用したことがない理由として、緊急時の避難が不安だからという声が41.7%もあがっています。


 今回の初任教育訓練のガイドラインの作成に当たっては、障害者や高齢者の対応を考えていくと答弁されていましたが、これまでの教育訓練や避難時の対応についてはどのように行ってきたのでしょうか。また、今使われているマニュアルはいつ作られ、障害当事者へのヒアリングはちゃんとされたのでしょうか、お答えください。

○政府参考人(高橋一郎君)
 お答えを申し上げます。
 委員ただいまのご下問は、先ほど私がお答え申し上げたのはこれからの初任教育訓練でございましたが、今まで定期訓練についてどうであったのかというご質問、頂戴しました。
 旅客の避難につきましては、船員法において、旅客船に乗り組ませる船長その他乗組員は、旅客の避難に関する教育訓練を修了した者でなければならない旨を事業者に義務付けてございます。
 これを受けまして、事業者において旅客の避難に関する教育訓練を乗組員に対して定期的に実施してございますが、その際には、障害者や高齢者の方々への対応も含めて、私ども国土交通省が監修をし日本旅客船協会において作成した当該教育訓練を実施するための教本などを活用して実施されているところでございます。
 先ほどの委員のご指摘でございます、いつ作ったのかということでございますが、この教本は平成9年に作成されました。身体障害者の方々や聴覚障害者の方々の避難対策について、作成時に身体障害者の関係団体などのご意見を伺って、船に乗る乗船時点での留意事項や避難時の船内移動の支援、手話による避難指示等を盛り込みますとともに、平成16年の改訂時には、バリアフリー法、高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律の制定に伴う見直しを行っております。
 ただ、先ほど委員ご指摘をいただいたように、現場でどこまでできているのかということについては、虚心坦懐に今ご指摘をお伺いしたところでございます。

○木村英子君
 しかし、今、教本の中には身体障害や聴覚障害者の人への配慮が書かれていると言っていましたけれども、視覚障害者や知的障害者のほかの障害の方たちへの配慮は書かれていませんでして、それぞれの障害に合わせた対応というのが記載されていません。
 また、この教本は、平成20年を最後にその後改訂されておりませんし、しかも、平成18年に成立したバリアフリー法の内容、その中に、改訂に何の反映もされていないんですね。つまり、平成20年から15年間も改訂されてこなかったということです。それではやっぱり船のバリアが解消が進まないというのは当然だと思うんですね。
 次に、資料2をご覧ください。


 避難時にお客さんを船から救命いかだに下ろす際に筒状のシューターを利用して避難することが教本の中に書かれています。障害によっては介助がいなくては一人でこのシューターを下りることができない人もいます。緊急時においては、まず全ての乗客の生命を守ることが最優先とされていますので、障害者が置き去りにされないようにその障害に応じた適切な対応が必要だとも考えます。ですから、教本を作るに当たっては、当事者の意見を最大限に取り入れていかなければ、障害者が船を安心して利用することということはできません。
 私たち障害者は、社会的バリアが多い日常の中で、旅行もスムーズにそして安心して楽しむ機会をつくることが日常的に困難な状況です。
 現在、業界団体が作っている教本は、国交省が監修しているのですから、バリアフリー法も踏まえた上で国交省が責任を持ってそれぞれの障害に合った避難マニュアルを作る必要があると考えます。したがって、来年4月の施行に向けた初任教育訓練のガイドラインを新しく作るのであれば、今までの教本や避難マニュアルについても見直すべきだと思いますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(高橋一郎君)
 お答えを申し上げます。
 先ほど委員ご指摘の身体障害者、あるいは聴覚障害者以外の障害当事者、様々なやはり障害の種類を抱えておられる方々がおられます。今の教本が十分であるとは考えてございません。様々な障害当事者の方々の態様に応じて、留意すべき事項について盛り込んでいくことができるよう検討してまいりたいと思います。
 また、先ほど委員ご指摘のシューターについても、現在、シューターによる降下を行う場合の対応として、補助器具類の取り外しの適否を確認するなど記述がございますが、これにつきましても、現場でどのようにすればより安全に避難をしていただけるかというようなことを総合的に考えてございます。
 委員ご指摘の教本につきましては、旅客の避難や航海の安全に係る教育訓練の教材として、ご指摘のように広く利用されておるところでございます。
 今後、初任教育訓練にしっかり取り組んでいただくためのガイドラインの策定を予定しておりますが、その作成状況も踏まえつつ、ご指摘の旅客の避難に関する教育訓練を実施するために活用される教本につきましても、業界団体の協力も得ながら、国土交通省として主体的に検討を行い、より実践的な内容へ見直しを行ってまいりたいと考えております。障害当事者の方々のお声を伺って、お困り事あるいはそのご不安なお気持ちなどを踏まえて、現場で実際にお役に立てるようなものにしていきたいと考えております。

○木村英子君
 早急に見直しの方、お願いいたします。
 次、資料3をご覧ください。


 国交省の近畿運輸局が主催し、2021年11月に障害当事者が実際に船のバリアフリーの状況を視察、点検する企画を行っていますけれども、この記事では、聴覚障害者の方が、個室の中にいると情報がほとんど、乗船前後も案内は音声頼りで、非常時を考えると安心して眠れないと訴えています。
 このように、障害者にとって気軽に船に乗れるような状況には今はなっていません。点検に同席した車いすユーザーの尾上さんという方は、乗船時間は長い、船旅を気兼ねなく楽しめる日が来るよう当事者目線での対応が進んでほしいと語っています。
 障害があっても健常者と同じように安心して旅ができるように、このような点検や視察の企画を定期的に行っていくことは大切ですし、当事者の意見を反映させることが重要だと考えます。
 来年4月に施行される初任教育訓練のガイドラインの作成に当たっては、現在の教本も見直しも含めて、それぞれの障害当事者が参画した検討の場を設けていただきたいと思っていますが、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(斉藤鉄夫君)
 木村委員に見せていただいたこの調査結果、障害者の方が旅客船を利用したことがない理由のトップに緊急時の避難が不安だからというのがございました。大変重く受け止めるべきだと、このように思っております。
 今後、国土交通省におきまして、初任教育訓練の具体的な実施方法などに関するガイドラインの策定、それから旅客の避難について定期的に実施する教育訓練向けの教本の見直しに取り組んでまいります。
 この取組の作成、新しいガイドラインの作成過程におきまして、障害者当事者、障害当事者が取り残されることがないよう、様々な障害の当事者の方々のご意見をきめ細かく伺い、適切に反映していくことが重要であると、改めて今日ご質問を受けて感じた次第でございます。
 このため、今後、ガイドラインの策定等を行う際には、様々な障害の当事者の方々のご意見をヒアリングなどにより詳細に伺う機会を設けるとともに、ご意見を踏まえて作成した原案に対しても再度ご意見を伺うと、そういうステップを踏みたいと思います。丁寧に進めてまいりたいと思っております。

○木村英子君
 そうですね。今大臣が言われたとおり、誰一人取り残さない社会の実現というのを国は掲げられていますから、船においても、安心して、そして楽しい船旅が実現できるように、障害者への配慮について早急に改善していただきたいと思います。
 以上です。終わります。

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