2022.11.17 参議院 厚生労働委員会 感染症法等改正案質疑『感染症法は人権を守れるか?』

【議事録】

○木村英子君 
 れいわ新選組の木村英子です。
 感染症法等の改正案について質問いたします。
 資料1をご覧ください。

 2007年の感染症法改正時の前文には、我が国においては、過去にハンセン病、後天性免疫不全症候群等の感染症の患者等に対するいわれない差別や偏見が存在していたという事実を重く受け止め、これを教訓として、感染症の患者等の人権を尊重しつつ、これらの者に対する良質かつ適切な医療の提供を確保し、感染症に迅速かつ適確に対応することが求められていると人権について記されていますが、新型コロナが世界的に猛威を振るう中で、日本においても感染爆発により医療が逼迫し、多くの人たちが適切な医療を受けられずに亡くなっています。
 先日の予算委員会でも質問させていただきましたが、特に日常的に介護者の支援が必要な障害者は、コロナの非常時には入院時の付添いを拒否されるなど、人権を尊重した対応がなされていない現状があります。介護者の付添いがなければ入院ができない障害者の人権について、大臣はどのようにお考えでしょうか。お答えください。

○国務大臣(加藤勝信君) 
 感染症法においては、過去の感染症患者等に対するいわれのない差別や偏見が存在した事実を重く受け止め、教訓として今後に生かすことを前文に掲げた上で、国及び地方公共団体や国の責務として感染症の患者等に対する人権の尊重を規定をしているところであります。
 新型コロナにおいても、こうした感染症法の基本的な考え方を踏まえて、新型コロナの患者等の人権に配慮しながら対応を行ってきたところでありますし、引き続き、障害特性に応じた対応を行うとともに、合理的な配慮がなされるよう取り組んでいきたいと考えております。
 また、感染症対策のみならず政策全般にわたって、障害のある方あるいは様々な事情を抱えている方々の事情を踏まえながら、それぞれの政策を適切に、またそうした立場の方々にしっかりと寄り添う形で政策を推進させていただきたいというふうに考えております。

○木村英子君
 しかしながら、東京都では、既に感染者が昨日の時点で1万人を超えています。第8波が始まっていると言われていますが、日本で感染が広まり始めてから3年近くが経過しているのに、国の施策が後手後手に回り、医療の逼迫の状況は余り変わっておらず、障害者や高齢者、子供のような配慮の必要な人たちは医療の手がますます届かない現状が続いています。私の周りでも、障害者と介護をしている家族全員がコロナにかかり、事業所のヘルパーも打ち切られ、入院も断られ、病人同士で介護をするしかなく、過労で倒れてしまうほど悲惨な状況の人たちが何人もいます。
 また、私たち障害者がコロナにかかった場合は、一人一人障害が違い、介護の仕方も異なるため、入院中の治療や入院生活を安全に行うことは、日頃から慣れている介護者の付添いがなければ生活ができません。また、そのため、入院するときに介護者の付添いをお願いしても、感染拡大を恐れて拒否される状況です。入院時に介護者の付添いがなければ、病気を治すどころか命の危険にもさらされてしまいます。
 私たち障害者のコロナ禍の厳しい現状については何度も質疑をさせて訴えさせていただきましたが、個々の障害を熟知した介護者の付添いが入院時に医療機関から拒否されないように、今回の法改正ではどのように改善していただけますか。お答えください。

○政府参考人(佐原康之君)
 お答えいたします。
 医療機関における対応につきまして、今回の改正では、予防計画に沿って都道府県と各医療機関との間で協定を結ぶこととしておりますが、その際には、都道府県や管内の保健所設置市、医療関係者等が参画する連携協議会におきまして、保健医療体制の確保策について平時から議論、協議することとしております。
 ご指摘の重度障害者などの方々の支援者の付添いを始めとする障害者の方への必要な配慮につきましても、こうした医療機関との協定や連携協議会における議論の中で、院内感染対策に配慮しつつではありますけれども、可能な限りの支援者の付添いの受入れなど必要な配慮が進むよう、厚生労働省として促していきたいと考えております。

○木村英子君
 しかしながら、そのコロナの対策については自治体によってそれぞれ対応が違います。障害者のことは後回しになっているというところもほとんどあります。コロナにかかっても、付添いが必要な障害者は入院できない現実っていうのが目の前にあります。自治体だけに任せるのではなく、障害者が付添いを付けて安心して入院できる体制を国が責任を持ってつくっていただきたいと思います。
 今回の改正法で位置付けられている自治体と医療機関で結ばれる協定の中に、重度訪問介護を利用するなどして平時から支援している介護者が付き添って入院できる体制の整備についても国として盛り込むように検討していただきたいと思っていますが、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(加藤勝信君)
 コロナ禍における障害児者に係る医療提供体制の整備については、これまでも、障害児者それぞれの障害特性と必要な配慮を踏まえながら、あらかじめ受入れ医療機関の検討を行うよう都道府県等には依頼をしてきたところであります。
 今般の改正案においては、都道府県知事が平時に各医療機関と協議を行い、これまでの新型コロナウイルスへの対応も踏まえながら、地域における各医療機関の機能や役割に応じて協定を締結していただくこととなります。今ご指摘のありました重度訪問介護の介護者等の支援者の付添いが必要な障害児者についても、地域における各医療機関の役割分担の中で必要な受入れ体制を確保いただくことが重要と考えております。
 国としても、これまでのコロナ対応での経験を踏まえ、こうした考え方について都道府県や医療機関等に対してお示しをすることによって、各地域での議論や協定の締結が円滑に進むよう対応していきたいと考えております。

○木村英子君 
 今の答弁では、自治体と医療機関の間で結ばれる協定に入れるというところまでは明言していただけませんでしたが、国が丁寧に都道府県や医療機関等に対して説明をすると言っていただきましたので、施行に向けて、協定の中にその重度訪問介護等を利用している、利用した付添いについてもう一度盛り込まれるように進めていただきたいと思っています。
 ただ、この感染症法の施行が1年半後となっていると聞いていますが、既にもう第8波が来ているこの感染拡大になっていますので、その周り、私の周りでも障害者の人が次々にコロナにかかっていて、実際に入院が断られるという状況が出てきております。
 このような逼迫した状況を食い止めていただくためにも、現在のコロナの対応の中でつくられている保健・医療提供体制確保計画の中に平時から支援している介護者の付添いについて盛り込まれるよう、次回出す事務連絡に加えていただきたいと思っていますが、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(加藤勝信君)
 先ほど申し上げましたけれども、障害児者一人一人の障害特性と必要な配慮を踏まえながら、あらかじめ受入れ医療機関との検討を行うよう、都道府県にも依頼をしてきたところであります。引き続き、障害のある方も含め、必要な方が必要な医療を受けられるよう、機会を捉えて周知を図るなど、保健医療体制の整備に万全を尽くしていきたいと考えております。
 また、コロナ禍においても重度訪問介護を利用している障害者の方が入院中も支援者の付添いによるコミュニケーション支援を受けられるよう、先週11月9日に制度の内容や医療機関における対応例を示した事務連絡を発出したところであります。あわせて、より一層の周知を図るために、医療機関や医療従事者向けに新たなチラシも作成をさせていただきました。
 これらを活用しながら、関係者が連携して円滑に支援ができるよう、医療関係や障害福祉サービス事業者に対して様々な機会を通じてしっかりと周知を図っていきたいと考えております。

○木村英子君 
 今大臣から通知の話をしていただきましたけれども、これは厚労省が平成28年から入院時の介護の付添いを通知によって認めてきたという経過もありますが、さらに、このコロナ禍においては厚労省から令和3年1月27日と9月1日に事務連絡を出していますね。
 これ、何度も出されているんですけれども、そして先月の予算委員会でも総理にも質問させていただきましたが、やはり今月9日にも厚労省から出された連絡も、何度もしていただいていますけれども、実際には入院できる体制に障害者の現状が至っていないという現実があります。ですから、感染症法の協定や、今ある保健・医療提供体制確保計画に盛り込んでほしいと改めて要望したいところですけれども、検討すらしていただけないというようなご発言のように受け取りましたので、やはりこれ以上障害者の方の命の犠牲を出していただきたくないというふうに思います。
 私たち障害者のことをやっぱり見捨てられたら困りますので、今後もこの現在ある保健・医療提供体制確保計画の中に盛り込むように再度お願いしたいと思いますが、事務連絡を出していただきたいです。
 大臣、もう一度お考えをお願いいたします。お聞かせください。

○国務大臣(加藤勝信君) 
 まず、先ほど、この法律に基づいて、失礼、地域におけるこの各医療機関の役割分担の中で必要な受入れ体制を確保していただくことが重要と考えておるということを申し上げ、国としても、これまでのコロナ対応の経験を踏まえて、こうした考え方について都道府県や医療機関等に対して具体的な通知のような形で各地域での議論、協定の締結、これが円滑に進むよう対応していきたいということは申し上げたところでございます。
 そして、現状においては、まずはこれまでと、何度か出させていただいているわけでありますけれども、なかなか改善が進んでいないという今のご指摘もありましたので、今回のまず事務連絡を発出してその周知を図り、一層その徹底を図らせていただきたいというふうに思っております。

○木村英子君 
 引き続き協定への盛り込みの方もお願いいたします。
 次に、冒頭に大臣から人権の尊重について答弁をいただきました。同じ政府の一員として、要職に就いている杉田政務官の人権意識についてお聞きしたいと思います。
 先日、9日の政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会で、天畠議員が杉田政務官に対して、LGBTの人は子供をつくらないから生産性がないと書いた論文に対し、撤回と謝罪を求めた質疑を行いました。舩後議員も昨日、同委員会で同じ趣旨の質疑を行っています。それに対して杉田政務官は、一切障害者を差別するような言及はしていない、考えも持っていないと答弁されました。
 私は、その発言を聞いてとても愕然としました。先日の答弁では、障害を持つ方の福祉のために議員になる前からずっと頑張ってきておりましたと発言していましたが、障害者のことを理解している人がこのような生産性がないという発言をするでしょうか。杉田政務官の発言は、LGBTの人に対してだけではなく、障害者の人たちの抱える厳しい現状や苦しみを何も理解していなかったことに私は憤りを感じました。
 資料2をご覧ください。

 旧優生保護法下で強制不妊手術を受けた方の記事をご紹介します。西さんという方です。西さんは、9歳で障害児施設に入り、14歳で初潮を迎えると、女性看護師から、自分の生理を処理するのも嫌なのにあなたの面倒まで見たくない、そんなもの取ってしまえと言葉を投げかけました。そして、2か月後、彼女は子宮を摘出する手術を受けさせられました。西さんは、子宮がどんなに大切なものか全然知らなかったにもかかわらず、子供を産むという選択肢を奪われたのです。
 このようなひどい差別を受けている女性は西さんだけではありません。私の場合、施設や養護学校にいた18歳まで、女性に生まれてよかったと思ったことはありませんでした。それは、私がいた施設では、生理のたびに怒られ、女性として扱われなかったからです。また、地域へ出て結婚し、子供が生まれたとき、当時のヘルパーからは、あなたのような障害者から生まれた子供はまともには育たない、障害があるのだから結婚できるだけでも有り難いと思いなさいと言われ、周りから差別を受けてきました。そして、私と同じ施設で育った障害者の女性のほとんどが同じような差別を受けています。
 政務官は、個人ではなく政府の要職に就く方です。その方が自分の発言によって多くの差別に苦しんでいる人たちを傷つけている自覚はありますか。お答えください。

○大臣政務官(杉田水脈君) 
 私の発言につきましては、当時から多様性を尊重することは当然だと認識しているということ、当事者の方々の人権を否定するつもりも偏見を持って差別する意図もないこと、障害者や高齢者、難病の方、子供を持っておられない方々を差別するような言及は全くしておらず、また、自分自身、今まで考えたこともなかったこと、LGBTの方々への理解増進はもとより、差別やいじめのない社会の実現に向けて努力してまいることなどの見解を既に表明しているところでありまして、現在においても今申し上げたとおりの認識でございます。

○木村英子君 
 LGBTの方も障害者も、生産性がないといって差別されているのは事実なんですよ。障害者団体からも抗議の文書が出ていたはずです。この間、天畠議員が示してくれたと思いますが、それを見てもやっぱり差別を認めない、あるいは差別しているのを容認しているとしか思えません。そのことに私はとても怖さを感じます。
 私たち障害者は、生産性がないものとされ、本人の意思を無視して不妊手術をされたり、子供を産めなくされている人がたくさんいます。その悲しみと無念を、政務官、あなたは知っていますか。日本は障害者権利条約に批准し、差別解消法が施行されていますが、杉田政務官の言っていることは紛れもない差別であり、そのような方が要職に就かれているということは心や体に痛みを抱えている人たちにとっては脅威なんです。政府の要職にあり、国民を守る立場なのに、国民を傷つけてしまっています。認識していないのでは済まされません。
 杉田政務官の言った生産性がないという言葉を今すぐ撤回し、政務官の言葉で傷つけた人たちに対して謝罪してください。お答えください。

○大臣政務官(杉田水脈君)
 そういった配慮を欠いた表現をしたことを反省し、理解を深め、差別のない社会、働きやすい社会の実現のためにこれまでも努力してきたところでございます。今後ともそういう努力をもってお応えしていきたいと思います。
 以上です。

○木村英子君 
 少なくとも、傷つけた人たちには謝った方がいいと思いますよ、自分の発言から始まった問題ですから。それは今後も考えていってください。そして、これからも杉田政務官の発言に私は注視していきますので。
 これで終わります。以上です。

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