2022.4.19 国土交通委員会質疑『交通事故で障害を負った場合、どんな支援が受けられるの?』

【配付資料】

【議事録】

○木村英子君 
 れいわ新選組の木村英子です。
 本日は、自賠法の被害者支援事業について、障害当事者の視点から質問させていただきます。
 交通事故で障害を負った場合、その後の人生は一変してしまいます。障害を持って生きていく上で医療や介護の保障はとても重要な命綱となります。ですから、今回の自賠法における被害者支援事業の充実は早急な課題だと考えます。
 しかし、本来であれば、自賠責の特別会計から国の一般会計に繰り入れられたままの6000億円を早急に返還してもらった上で被害者支援の充実を図るべきだと考えますが、今後、その6000億円の返還については、国交省としてどのようにお考えでしょうか。
 また、このコロナ禍で国民が困窮している現状にもかかわらず、賦課金を自動車ユーザーに強いることについて、国交省としてどのように考えているのか、お答えください。

○政府参考人(秡川直也君) 
 繰戻しの関係ですけれども、昨年の12月に財務大臣と国交大臣で新しい合意を結びました。財務省に対して国交省としては、被害者支援に係る事業が安定的、継続に実施されるように引き続き繰戻しをしっかり求めていきたいというふうに考えております。
 賦課金につきましては、現在国交省で開催しております今後の自動車事故対策勘定のあり方に関する検討会という検討会の中で中間とりまとめが1月になされまして、150円を超えない、できる限りユーザー負担の抑制を考慮した水準にしようという提言をいただいております。
 この検討会は、構成員として、被害者や遺族団体、自動車ユーザー団体、あと学識経験者から成っていますけれども、この場において、委員のご意見を丁寧に伺いながら、被害者支援の安定的、継続的な実施に配慮しつつ、自動車ユーザーの負担軽減を図る観点も考慮して、具体的な賦課金の水準というのを検討していきたいというふうに考えております。

○木村英子君 
 分かりました。自動車ユーザーの皆さんに対しても負担を掛けないように進めていただきたいと思っております。
 次に、自賠責の被害者支援事業の内容についてお尋ねします。
 資料1をごらんください。
 ここでは、新たに加えられる予定の6つの支援内容が書かれています。例えば、脊髄損傷者向け療護施設の新設や拡充、介護者なき後の支援の充実についてはグループホーム等の新設、増設や介護職員の確保に係る支援の充実などが計画されています。
 事故で障害を負った後の被害者支援の保障としては、グループホームや施設の拡充が中心となっています。しかし、交通事故に遭われた後遺障害者の方の中には、施設やグループホームに入る人だけではなく、地域の介護事業所からヘルパーなどを入れて住み慣れた町で独り暮らしをしたり、在宅で自分の望む生活をしたいという人もいます。
 実際に私の友人は、交通事故で重度の障害者になり、家族だけでは介護ができなくて、やむを得ず施設で10年間生活をしていました。しかし、施設での生活には耐えられず、障害者団体の協力を得て施設から飛び出し、ヘルパーを入れながら地域での自立生活を実現しています。
 こうして地域で生活している障害者は何人もいますが、この自賠責の被害者支援事業では、在宅での生活を望んでいる人がいても選択できる支援メニューが少ないという問題があります。特に、グループホームや施設では人手不足が深刻な問題となっていますが、地域の介護事業所においても、このコロナ禍でヘルパー不足に拍車が掛かり、在宅で生活している障害者の人たちがとても厳しい現状に置かれています。
 こうした現状を受けて、資料2をごらんのとおり、介護職員等緊急確保事業が実施されています。この事業は、介護者の求人募集に係る経費や介護者を雇用する際の人件費などが居宅介護や重度訪問介護の事業所に対して補助される制度となっています。
 しかし、この事業は、コロナ禍においての一時的な制度として導入されており、コロナが収束すればなくなってしまう制度となっています。介護者がいなければ生きていけない障害者にとって、この制度がなくなってしまったら、介護事業所の人手不足はますます深刻になり、在宅での生活を維持していくことはできなくなってしまいます。
 この深刻な人手不足を根本的に解決するには、コロナ禍の一時的な支援措置だけでは解決できません。ですから、現在施行されている介護職員等緊急確保事業を継続していただくか、又は在宅介護の人手不足を解消するに当たって新たな被害者支援のメニューをつくることを早急に検討していただきたいと思いますが、国交省のお考えをお聞かせください。

○政府参考人(秡川直也君) 
 高齢の親が交通事故被害者である子供を介護できなくなるという介護者なき後の対策につきましては、障害の態様に応じて求められる支援も異なっておりますので、引き続き住み慣れた地域での生活を継続したいというニーズがあること等を承知しています。
 このため、今ご指摘をいただきましたが、令和3年度の補正予算におきまして、新型コロナウイルスの拡大に伴い介護職員の確保はより困難となる状況を踏まえた対策として、自動車事故被害者に対してサービスを提供している在宅介護や重度訪問介護を行う事業者などを対象に介護職員の確保に資する支援を講じてまいりました。
 今般の制度改正によって安定的な財源を確保できた暁には、新型コロナウイルス感染症の状況にかかわらず、これらの事業者を対象に介護職員等の確保に資する支援を講じることができないか、今後検討していきたいというふうに考えております。

○木村英子君 
 ありがとうございます。
 介護者不足の問題の大変さは私自身も十分に体験しておりますので、早急に改善していただきたいと思っております。
 次に、今回拡充予定の被害者支援では、新たに脊髄損傷者や高次脳機能障害者への支援などが設けられています。対象となる障害者を拡大することはとても大切ですが、やはりどんなに重い障害があっても多様な生き方を選択できるために本人の選択権の保障が最も重要だと思います。しかし、人手不足の問題を含めて、在宅を望む後遺障害者への支援が少ない現状ですので、施設やグループホームだけではなく、住み慣れた地域でヘルパーを入れての在宅生活が実現されるように在宅支援の拡充が必要だと考えます。
 ですから、今後進められる自動車事故対策勘定のあり方に関する検討会において、在宅で介護事業所を使って生活する後遺障害者の支援策を議題に上げていただき、十分な議論を重ねた上で、自賠責における被害者支援の更なる充実を図っていただきたいと思いますが、大臣のお考えをお聞かせください。

○国務大臣(斉藤鉄夫君) 
 木村委員よりご提案を今いただきました、在宅でヘルパーの派遣を受けて療養生活を送られている後遺障害者の方々への支援の充実につきまして、今後の自動車事故対策勘定のあり方に関する検討会、この検討会において、関係者の皆様のご意見を丁寧に伺いながら検討をさせていただきたいと思います。
 私自身も、昨年11月に、在宅で療養生活を送られている重度後遺障害者のご家族の方々から直接お話を伺い、大変なご苦労をされている現状について改めて認識をいたしました。被害者の皆様が自分の生き方を自由に選択でき、安心して生活できる社会を早期に実現するための方策について考えていきたいと思っております。

○木村英子君 
 ありがとうございます。
 私としては、6000億円を返還してもらって被害者支援をするべきであり、賦課金を負わせることについてはちょっと納得し切れないというところはありますが、参考人の方々のご意見を伺った上で、事故に遭われた方のための被害者支援の充実を優先したいと思っていましたので、今回の自賠法改正に賛成の立場を取らせていただきました。
 先ほど大臣からも地域での在宅生活を望む後遺障害者の方への支援の充実を進めていただけるというお言葉もいただきましたので、今後とも被害者の方が安心して生活できる社会の実現に向けて取り組んでいただけたらと思っております。
 以上です。ありがとうございました。

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