2020.5.14国交委員会質疑 改正バリアフリー法に新たに追加された「心のバリアフリー」について

議事録

○木村英子君 れいわ新選組の木村英子です。会派を代表して質問いたします。
 本日は、心のバリアフリーについて質問いたします。
 二〇〇六年にバリアフリー法が施行され、建物や交通のバリアなどハードのバリアを中心とした合理的配慮が進む中で、差別や偏見、そして障害者に対する理解の遅れなど最も難しい心のバリアについて、今国会で改正されたバリアフリー法に心のバリアフリーとして設けられたことで、ハード、ソフト両面の解消に、取組が始まることにとても期待しています。
 しかし、障害者の現状においては合理的配慮が進んでおらず、交通機関を利用する際などに障害者への理解が得られず差別的取扱いをされるなど、社会生活を送る上で生きづらい思いをしている人がたくさんいます。差別や偏見は、障害者と健常者が分けられていくことで、お互いを知らないことが原因で生まれます。
 インクルーシブ教育が叫ばれている今日においても、現状は、普通学校に通いたくても、障害を理由に、また建物の設備や専門性を理由に断られることが多く、日頃、分けられていることで、近所の友達と遊ぶ機会がなかったり、障害者への理解が少なくていじめられるのではないかという不安を感じている家族も多く、養護学校や特別支援学校に通うことを選択している人が多いのも事実です。
 私自身も障害を持った幼いときから養護学校に通い、近所の普通学校に通ったことがなく、同い年の友達ができたのは、卒業後に施設に入ることを拒否して地域へ出てきた十九歳のときでした。十八年間一人で外に出たこともなく、社会のことを全く知らない私が社会常識や他者とのコミュニケーションなど地域で生きていくすべを身に付けていくことは容易ではなく、家を借りるとき、交通機関を使うとき、お店に入るときなど、断られることは日常のありとあらゆる場面であり、差別や偏見にさらされながら生きていくことに耐えられるようになるには長い年月が掛かりました。
 でも、そんな中でも、私の生活を支えてくれた多くの人たちは、初めてボランティアに入ってくれたときに、障害を持っている人を初めて知り、最初は戸惑っていましたが、食事やトイレ、入浴などの介護をしながら生活を共にして関係が深まっていく中で、障害者と健常者が分けられていることに疑問を持つようになり、体に障害があるだけで、友達になれば障害や健常は関係ないのに、なぜ私たちは分けられているのだろう、もっと早く会っていたらよかったのにと言ってくれる人たちがたくさんいました。今こうして私が生きていられるのは、支えてくれる人たちと一緒に過ごしてきた時間がつくってくれた心のバリアフリーの表れなのです。私の地域での生活を支えてくれた人たちの人数は数え切れませんが、その一人一人との出会いにとても感謝しています。
 でも、私と一緒に育った友達の多くはいまだに施設にいて、外へ出ることはままならないのです。それだけに、社会の中には障害者にとってたくさんのバリアが存在し、自分の望む生活を選択し実現するのは難しい環境なのです。心のバリアフリーを促進していくには、幼いときから障害者と健常者が分けられることなく、同じ社会の中で日常的なコミュニケーションが保障され、共に生きられる実践を積み重ねていくことが不可欠であって、それが共生社会への実現への近道だと実感しています。
 国交省では、バリアフリー法の成立以前から、車椅子体験や障害の疑似体験を行って障害者への理解を深めるバリアフリー教室を各地の学校などで実施しておりますが、障害者と健常者がお互いを理解し、心のバリアフリーを進めていくために、更に改善し、この取組をもっと広めていただきたいと思っています。
 そこでお尋ねしますが、今国会で改正されて取り入れられた心のバリアフリーの教育啓発特定事業を実施する際に、バリアフリー教室の企画から開催まで、障害当事者の参画を地方自治体に対して促してほしいと思いますが、いかがでしょうか。また、運輸局主催のバリアフリー教室は、現時点では障害当事者は加えられていないと聞いておりますが、今後は運営側にも、心のバリアフリーを図るために障害当事者を入れて実施することを国交省として検討していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。お願いします。
○政府参考人(蒲生篤実君) お答え申し上げます。
 移動等円滑化に関する心のバリアフリーを推進するためには、障害当事者の参画を得ながら進めていくことが非常に重要であると考えております。
 昨日成立いたしました改正バリアフリー法におきましては、移動等円滑化に関する心のバリアフリーを推進する観点から、市町村が作成する移動等円滑化基本構想の事業メニューに、学校と連携して実施する教育活動や住民等への啓発活動の実施に関する事業を教育啓発特定事業として新たな類型を追加しておるところでございますが、この教育啓発特定事業につきましても、当事者参画の下で実施されることが重要であると考えております。
 こうした観点を踏まえながら、今後、教育啓発特定事業の実施主体となる市町村等の多様な主体が自らバリアフリー教室を実施する場合に、当該教室の企画運営に役立つよう、そのようなマニュアルを作成することにつきまして検討してまいりたいと考えております。また、このマニュアルの作成に当たりましては、様々な障害当事者団体が参画する検討会におきまして内容等の検討を行うとともに、マニュアルにおきましては、当事者参画の重要性に触れた上で、市町村を始めとする関係者に周知することにつきましても検討したいと考えております。
 また、委員御指摘の国交省において実施しているバリアフリー教室でございますが、障害当事者の方が実際参画している形態のものもございます。そういった事例を更に増やしていくとともに、先ほど申し上げましたマニュアルの中に好事例として盛り込むことについても検討してまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○木村英子君 ありがとうございます。是非広く実施していただきたいと思っています。
 先ほども長々と申し上げたとおり、心のバリアフリーを実践するには障害児と健常児が日常的に交流を深めることが不可欠であって、幼い頃から障害児と健常児を分けない教育が最も重要だと思います。
 その上で、学習要領にも心のバリアの記載が加えられましたので、国交省で行っているバリアフリー教室を文科省でも学校の授業の中に取り入れて、障害児と健常児の交流を深めていただくことを考えていただけませんか。
○副大臣(亀岡偉民君) まさに木村委員から、体験に基づいたすばらしい質問をありがとうございました。
 障害者の権利に関する条約に基づくインクルーシブ教育システムの理念の実現に向けて取り組むことは最重要と我々も考えております。そのため、文部科学省としては、障害のある子供と障害のない子供が可能な限り共に教育を受けられるよう条件整備を行うとともに、障害のある子供の自立と社会参加を見据えて、一人一人の教育的ニーズに最も的確に応える指導を提供できるよう、通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校といった連続性のある多様な学びの場の整備を推進しております。
 文部科学省としては、今回のバリアフリー法改正に踏まえ、引き続きインクルーシブ教育システムの推進に努め、しっかりと健常者と障害者が共に学べる環境はつくっていきたいと思います。
○木村英子君 ありがとうございます。
 しかし、現状では年に数回の交流及び共同学習を学校で実施しているとお聞きしていますが、それではとても少な過ぎると思います。障害児と健常児が初めて会ったときに緊張してお客さんになってしまい、人間関係をつくることが難しいと思います。本来なら同じ学校で一緒に学び合えることが大切ですが、バリアフリー教室を利用してコミュニケーションを取る回数を増やしたり、疑似体験などを一緒にレクチャーすることで、お互いを理解していくきっかけがつくれると思っています。
 そういった意味でも、国交省で実践してきたバリアフリー教室がとても参考になると思いますし、効果的だと思いますので、是非、文科省でも取り入れてもらいたいということを、実践していただきたいです。
 次に、国交省としても、バリアフリー教室の実践を基に、子供の頃から分けないインクルーシブ教育を推進させるためにも、そしてまた、子供の頃からコミュニケーションを深め合い、次の世代が共生社会を構築していけるように文科省と連携して心のバリアフリーの促進に取り組んでいただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○副大臣(亀岡偉民君) 最初に御質問いただいた中で、バリアフリー実践のために学校においてもっといろいろ考えてほしいということでありました。
 さらに、障害のある子供と障害のない子供が共に学ぶ交流及び共同学習を推進することが非常に重要であると御提案いただきましたので、今もやっている文科省では、新たに学習指導要綱においては交流及び共同学習の機会を設けることを規定しております。また、有識者から成る心のバリアフリー学習推進会議の提言を踏まえた通知を必ず分かるように発出をしておりますし、授業等で活用できる心のバリアフリーノートの作成、周知、さらには交流及び共同学習の好事例を取りまとめた交流及び共同学習ガイドの改訂、周知などにしっかり取り組んでおります。
 交流及び共同学習の実施においては、障害当事者の協力や参画を得つつ、障害のある子供とない子供が共同しながら活動することが有意義であると考えており、御指摘の国土交通省のバリアフリー教室での学習や、バリアフリーマップなどの作成も含め、今後、学校の取組の参考となるよう、各種会議においてこうした事例をしっかりと周知徹底をしてまいりたいと考えております。
 今後とも、国土交通省とともにしっかりと連携をしつつ、心のバリアフリーの推進に努めてまいります。
○国務大臣(赤羽一嘉君) 私も、かねてより申し上げていると思いますが、共生社会というのはノーマライゼーションですから、障害者の方ということで特別視する、した時点でもう既に実は別の障害が始まってしまっているというふうに思っております。
 ですから、やっぱり小さい頃から慣れる環境、また、共同で一つのことを作業する場というのをより多く提供していくということが恐らく学校教育においても、また社会の在り方においても大切なのではないかと思いますので、国土交通省の施策の中で推進していくことはもちろんのことでありますが、文科省とも連携を取りながら、しっかりと本当のノーマライゼーションが実現できるような方向に進めていきたいと、こう思っております。
○木村英子君 ありがとうございます。
 文科省に対しては、やはりその共同学習というのが年に、この間レクでお伺いしたときに多いところで年に七回ぐらいと聞いております。やっぱり、日常的な子供たちの交流が差別をなくしていったり、助け合いということを学びますので、できればもう少し回数を増やしていただいたり、国交省で行っているバリアフリー教室の中でバリアチェックとかも一緒に行いながらできたらなというふうに希望しておりますので、お願いしたいところです。
 国交省の企画においても、是非障害者の参画を積極的に進めていただきますようお願いいたします。
 私の質問は以上です。

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