2020.5.12バリアフリー法の一部改正案質疑 『駅の無人化と人員削減が引き起こす障がい者に対するバリアについて』

配布資料

議事録

○木村英子君 れいわ新選組の木村英子です。会派を代表して質問いたします。
 本日は、前回に引き続き、障害者の駅の利用に際してのバリアについて質問いたします。
 障害者にとって、駅のバリアを解消するには、駅の設備などのハードのバリアと、見守りや声掛け、介助などのソフトのバリアの解消、この両方がなくては健常者と同じように安心して電車に乗ることはできません。
 資料一を御覧ください。二〇一八年にはバリアフリー法が改正され、その中に九条の二が入り、大臣が交通事業者等の判断基準を定めることになりました。そして、今国会で改正されるバリアフリー法には心のバリアフリーが加わり、障害者の社会参加に欠かすことのできない公共交通機関への合理的配慮が促進されることは共生社会への一歩になると思います。
 しかし、昨今の急速に進む駅の無人化によって、介助の必要な障害者が今まで利用してきた駅の電車に乗れなくなったり、好きな時間に駅を利用したくても人手不足で駅員に待たされることが多く、障害者の日常生活や社会参加に支障を来し、困っている障害者の相談が後を絶ちません。
 そこでお尋ねしたいのですが、バリアフリー法九条の二に基づく平成三十一年国土交通省告示三百十七号の二には、移動円滑化のために公共交通事業者等が講ずべき措置とあります。その2のロに、無人又は小規模の旅客施設においても、近隣の主要な旅客施設から人員を派遣するなど、旅客支援を可能な限り行うことという規定が設けられています。この規定は、急速に進む駅の無人化によって人手不足が加速している現状に対応するために定められたように読み取れますが、どのような意図で作成されたのでしょうか、お聞かせください。
○政府参考人(蒲生篤実君) お答え申し上げます。
 御指摘の告示は、平成三十年の法改正により一定規模以上の公共交通事業者等に作成を義務付けることとしたハード・ソフト取組計画を作成する際の指針として定めたものでございます。
 この告示におきましては、移動等円滑化のために公共交通事業者等が講ずべき措置のうち、乗降介助等の旅客支援に関し努めるべき事項として、まず、旅客施設、営業所又は案内所において、段差昇降の支援、声掛け、誘導案内等を実施すること、さらに、無人、今委員の御指摘あった部分でございます、さらに、無人又は小規模の旅客施設においても、近隣の主要な旅客施設から人員を派遣するなど、旅客支援を可能な限り行うことなどを定めているところでございます。
 これは、有人駅等の旅客施設のみならず、現に存在する無人駅等においても適切に高齢者、障害者等に対する旅客支援が行われることが重要であるとの考え方に基づきまして定めているものでございまして、無人駅化を推進することを意図するものではございません。
 なお、公共交通事業者向けに国が作成しているハード・ソフト取組計画策定のマニュアルにおきましても無人駅における旅客支援の対応事例を掲載しておりますが、同マニュアルにおいても無人駅化を推奨するものではない旨を念のため明記し、事業者に周知しているところでございます。
 以上でございます。
○木村英子君 マニュアルの中で無人駅を推進するものではないということをお聞きしたので、それは少しは安心しましたが、しかし、人手不足が深刻化し、人員削減や予算削減により駅の無人化が急速に進んでいるというのが現状です。
 告示によって、無人化してしまう駅が、その告示によってですね、増えているように思います。なぜかというと、やはり人手不足ですから、告示があるということに頼ってしまう駅の駅員さんたちというのは現在いるんではないかというふうに思います。
 介助の必要な障害者の人たちが電車に乗れなくなってしまうという相談というのは幾つか来ておりまして、紹介しますと、筋ジストロフィーの車椅子の方が昨年、東京のJR池袋駅から埼玉の南与野駅まで電車に乗ろうとして駅員にスロープを出してほしいと介助をお願いしたところ、駅員がいないので降車時にスロープが出せない、駅員が戻ってくるまで一時間待ってくれと言われたそうです。その方は、電車に乗りたい駅に乗せてほしいという普通の望みさえもかなわず、鉄道を使うときはいつも不便を感じながら日常生活を送っています。
 また、同じく埼玉の事例ですが、福祉作業所に通う車椅子の方が、日常的に利用している土呂駅で今年の二月に時間帯を書いた紙を渡され、この時間帯は絶対に来ないでくださいと言われたそうです。電車に乗れる時間を制限されたということです。その紙で指示された時間帯というのは、駅員が不在で障害者にすぐには対応できない時間帯で、しかも一日の半分の時間しか利用することができないことになっていました。この方は福祉作業所の作業が終わる十五時頃に駅を利用したいのですが、その時間帯は駅員が不在で対応できない時間になっており、渡された紙に従えばその方は通勤することができなくなるということです。
 これはおかしいと思いませんか。インターホンが設置されていても駅員の都合を押し付けられたら、合理的配慮どころか、福祉作業所に通っている障害者の方の社会参加を妨げることになり、結果的に差別を助長してしまうことになります。介助の必要な障害者にとっては、無人化が進むことは、障害を理由に健常者には付さない条件を公共交通機関を利用するたびに付けられ、結局、このことが障害者の社会参加の障壁となっていると私は感じています。
 これらの状況を踏まえて、埼玉ではさいたま市を含む五つの自治体がJR東日本に対して係員の再配置などを要望したところですが、いまだに解決には至っていないです。
 また、無人駅ではインターホンで対応するという駅がほとんどですが、視覚障害を持った方の場合、インターホンの設置されている場所がそもそも見えないので分かりにくく、仮にたどり着いたとしても、インターホンで呼んでもすぐには来てもらえないことが多く、常にホームからの転落が怖くて安心して駅を利用できないという実態があります。
 次に、聴覚障害者の場合、インターホンの音声の声が聞こえなくて利用ができませんし、モニターが設置されているところも少ないため、困ったことが起きても駅員を呼ぶことすらできません。無人駅では駅員がいないため、事故や災害などで電車が止まってしまったり遅延した際に何が起こっているのか理解できず、不安を抱えたまま駅や電車を利用するしかない状況です。
 資料二を御覧ください。
 大分県でも、二〇一七年八月にJR九州が特急が止まる駅を含む八駅の無人化を進めるという方針を出し、現時点で三駅が無人化してしまいました。これに対し、障害者団体が抗議の声を上げて、七万人を超える無人化反対の署名がJR九州に提出されました。しかし、JR九州は、スマートサポートステーション、SSSという遠隔操作で乗車を見守るシステムを導入したらしいですが、このまま無人化が進み八駅全てが無人化されてしまうと確実に障害者が自由に駅を利用することができなくなってしまうので、大分県の障害者団体がJR九州に対し訴訟提起を検討しているという段階です。
 このように、駅の無人化が進むことで様々な障害者の人たちが駅を利用することができず、バリアが増え続けています。国が率先して障害者の人権や合理的配慮を公共交通事業者に対して指導していただきたいのですが、国交省はこういった相談に対してどのように対応しているのでしょうか、お聞かせください。
○政府参考人(水嶋智君) お答えを申し上げます。
 委員から様々な御指摘を頂戴いたしました。私どもも、無人駅であっても、障害者の方が利用される駅については、障害者の方に可能な限り御不便なく鉄道を御利用いただくということが重要であるというふうに考えております。
 障害者の方が鉄道を御利用される際に鉄道事業者の介助要員の手配のために駅で待たされたといったような具体的な事例について、実は私どもの国土交通省の方に直接御意見を頂戴することも多々ございますし、あるいは私どもの出先の地方運輸局に対してそういった御意見を頂戴することも多々ございます。また、報道を通じてそういった情報に接することもございます。そのような場合、私どもといたしましては、可能な限りそれぞれの個別の事案について鉄道事業者に対して事実関係を確認するとともに、鉄道事業者の対応に不備があると思われる場合には改善するように指導をしてきたところでございます。
 先ほど具体的な事例で、筋ジストロフィーの方が南与野駅に行こうとされたときの事例の御指摘をいただきました。この事例につきましては、三月十八日のこちらの国土交通委員会で委員から資料配付されました新聞記事に掲載されておりましたので、この事例につきましても、私ども、JR東日本の方に事実関係を確認をさせていただきました。
 そうしますと、御指摘の内容と思われる事象があったことは事実でございまして、これは少し細かい話になるんですが、対応を池袋駅でされた駅員さんの思い違いで不適切な情報をその利用者の方に提供してしまったということでございます。さらに、具体的には、その降車駅の窓口休止時間であっても連絡をしていただいてその介助要員の手配をしていただければよかったんですが、駅員さんが思い違いをされて、窓口の休止時間を待たないと降車駅に連絡ができないというふうに思い違いをされて不適切な情報提供をされていたということでございましたので、そのような事実関係を踏まえてJR東日本に対して私どもの方からは注意喚起をしたところでございます。
 本日も、先ほど戸田駅のお話でございますとか、具体的な御事例を教えていただきました。国土交通省といたしましては、引き続き、こういった具体的な事例の話もよく聞きながら、必要な対策について鉄道事業者との間で議論をちゃんといたしまして、鉄道における利用者の皆さんの安全や利便性の確保が図られるようにしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
○木村英子君 ありがとうございます。
 ですが、無人化が進むごとにこういう駅を利用できないという事例は増えているのでやっぱり今後もっと検討してもらいたいと思いますが、大臣にお聞きしたいのですけれども、今お話ししたように、駅の無人化によって障害者の現状は後退していくばかりなんです。鉄道においての合理的配慮が遅れている中、交通省は個別に対応していると今お聞きしたところですけれども、無人化が進みこのまま見守りや介助をしてくれる駅員が減ってしまっていたら、電車に乗ることができない障害者の人たちが増えていき、社会参加することができなくなってしまいます。
 障害者差別解消法が施行され、合理的配慮が義務付けられていますが、現状においては、健常者には付さない条件を障害者に付けることが多く、駅を利用する際に差別的取扱いを受けてしまうため、いつも不安を抱えながら駅を利用するしかない状況を抱えている人ばかりです。介助の必要な障害者が安心して駅を利用できる方法を早急につくってもらいたいと思うのですが、今後更に障害者は電車に乗れなくなってしまう状況を考えると、その方法を早く改善していただきたいと思います。
 改善方法というのは様々あると思いますけれども、どんな障害を持っていても駅を安心して利用できるように、例えば、退職した職員の方やシルバー人材センターなどを活用しての人材を介助要員として配置したり、介助の必要な方に対する心のバリアフリーを実施するための補助金の創設など、駅のハード、ソフト両面のバリアフリーを実現するために、国交省、鉄道事業者、障害当事者を含めた三者の話合いの場を設置することを検討していただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
○国務大臣(赤羽一嘉君) まず、鉄道の駅が無人化をするときに安易にそれを認めているわけではなくて、先ほどから局長からも答弁させていただいておりますが、障害者の皆さんの利用実態を踏まえた上で、しっかりとそこをサポートするようにという指導を行ってきたところでございます。現実にそういう指導が行き届かない事案があった場合には、しっかり個別で対応していくというのが水嶋局長からの答弁でございます。それが一つです。
 その中で、今、最後、御提案いただきました国土交通省と鉄道事業者、障害当事者を合わせた三者の話合いの場の設置ということにつきましては、これ、先ほど午前中のやり取り、新国立競技場がユニバーサルデザインでしっかりできたという御評価も、浜口委員からだったと思いますけど、いただいたのも、これは、設計の段階から障害者の皆さん、高齢者の皆さんの意見を取り入れる、そういう仕組みでやったということが大きな要因だったというふうに思っておりますし、複数の方からも御指摘いただいた小規模店舗のバリアフリー化につきましても、この一月から、障害者の皆さんと、あと事業者の皆さんと、また設計関係の皆さん、そういう三者が初めて顔を合わせて意見の交換をしながらという場もつくらせていただいたところでございます。
 まだまだ鉄道関係につきまして様々な御指摘をいただく中で、鉄道事業者が障害者の皆様の立場に立って、特に障害特性、様々あることについて、やっぱり一方的な思い込みの部分も随分あるかと思いますので、こうしたことは、せっかくの御提案でありますので、国土交通省と鉄道事業者、また障害当事者の三者の話合いの場を設置する方向で検討していきたいと、こう考えております。
 いずれにしても、障害を持たれている方も積極的に社会参加ができるようなことを目指すのがユニバーサルデザインの共生社会だと思っておりますので、しっかりこれからも取り組んでいきたいと思いますので、御指導をよろしくお願いしたいと思います。
○木村英子君 ありがとうございます。話合いの場を設置していただけるということで、本当にうれしく思っています。
 障害者の現状を踏まえて、今回提出された附帯決議案の中にも無人駅に関する条項を提案させていただきました。
 今後とも、障害者の人が安心して駅を利用できますように改善のほどをよろしくお願いいたします。
 以上です。

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