【議事録】
○木村英子君
れいわ新選組の木村英子です。
本日は、駅の無人化について、障害者の立場から質問したいと思います。
この駅の無人化で困っている人たちの現状については以前にも質問させていただきましたが、無人駅が増えていく中で駅を利用しにくくなっているという相談が増えています。
資料1をご覧ください。
現在、国交省によれば、令和2年3月時点で、全国9465駅のうち無人駅は4564駅あり、全国のほぼ半数の駅が無人化となっています。2001年からは2019年まで、約20年間の間に400以上もの駅が新たに無人化されています。
無人化された駅の時間帯は、終日無人駅だったり、混雑していない早朝や夜間が無人であったりと駅によって違いますが、駅員のいない無人駅はどんどん増えていき、見守りや介助の必要な障害者や高齢者にとって電車を利用しづらい現状となっています。
各鉄道事業者では、車いすを使用している方や高齢者など支援が必要な方には、無人駅でも拠点駅から介助員を派遣するということとなっています。無人駅になる前から駅員は元々少なかったのですが、乗車するまでに待たされてしまうということが多く、駅員がいなくなったことで更に拠点駅から駅員を呼ぶことになり、以前よりも長時間待たされることが多くなりました。
駅の利用で困っている相談の中には、インターホンで駅員を呼んでも30分以上待たされることが多く、長い時間では1時間近く待たされ、待ち合わせの時間に遅れてしまったという人もいます。また、駅員から予約を取ってくれと言われて、待たされることが不安に思い、予約しないと電車を利用できなくなってしまった人もいます。ほかにも、インターホンの位置が高過ぎて車いすの人が使えなかったり、視覚障害者の人の場合はインターホンまでの点字ブロックがなかったり、音声案内しかない場所では聴覚障害者の方にはインターホンが利用できないなど、そもそも呼び出すことが困難な状況に置かれています。
無人駅になってから、改札に駅員がいなくて、切符が買えなくてホームまでも行けない人など、駅を利用しづらくなっている人が増えてきています。また、最近では、みどりの窓口も減ってきて、障害者割引の切符を買うことや、困ったときに案内をお願いするなど、人の支援を求める場所が少なくなってきて、ますます駅が利用しにくくなっています。
私が施設から地域へ出てきた38年前は、車いすの人の乗車拒否は当たり前で、電車に乗るたびに駅員から文句を言われました。その頃は、駅にエレベーターがあるところは少なく、隣の駅から駅員の対応を呼んでホームまで上げてもらったり、駅員が一人しかいないところでは、階段を使うのが無理な場合、電車が通過する時間を確認しながら駅員が車いすを押して線路を渡り、向かい側のホームまで連れていってくれたということがありました。その頃、駅員さんがそうやって介助をしてくれたことを、私はとても助かったという思いを、思い出にあります。
昔は、バリアが多い中でも、その都度工夫しながら対応してくれました。しかし、多くの障害者の人たちは、毎回電車に乗るたびに乗車拒否に遭ったり文句を言われたりする中で電車を利用し続け、そして障害者団体がエレベーターなどの要望を国や自治体、そして会社にも要望を出しながら運動してきました。
1981年の国際障害者年や2016年の差別解消法、バリアフリー法の施行と、時代が移り変わるごとに駅が利用しやすくなってきています。しかし、エレベーターやホーム、ホームドアなどハード面のバリアフリーが進んできていても、見守りや介助などの支援が必要な人たちにとって無人駅は利用しやすくない状況であり、駅側の都合が優先され、駅を利用する側の障害者や高齢者が自由に電車に乗ることができなくなってきています。
無人化になって特に困っているのは、支援を必要な障害者や高齢者が駅を利用する際、行きたいときに行きたい場所へ自由に電車に乗ることが無人化によってできなくなってきているという現実です。電車に乗るまでに様々なバリアや制限が掛けられ、電車に乗ること自体を諦めてしまう人も出てきています。
そもそも、本来、電車やバスなど公共交通機関は、利用者の利便性を図り、社会生活を円滑にするための移動の権利を保障するもののはずです。鉄道は生活を送る上で欠かすことのできない移動手段の一つですから、障害を理由に制限されるものではありません。差別解消法などができて、障害者の移動の権利や社会参加が叫ばれているにもかかわらず、無人化は進み続けており、昔よりも介助の必要な障害者の人たちが駅利用から排除されてきている実態があり、むしろ逆行している状況でもあります。
国交省が作成している差別解消の推進に関する対応指針にも、障害があることのみをもって乗車できる場所や時間帯を制限し、又は障害者でない者に対して付さない条件を付けることが差別的取扱いに当たると明記されており、事前の予約や連絡をしないと駅を利用できない現状は、まさに健常者には付さない条件を付すことであり、差別解消法にも反していると思います。
このように、無人化によって、主要な駅から駅員が来るまでに30分以上待たされたり、予約をしないと駅を利用しづらい人たちが出ている実態に対して、国交省としては鉄道事業者に対しどのような指導を行っているのか、お答えください。
○政府参考人(上原淳君)
お答えいたします。
近年、鉄道事業者の厳しい経営状況を受けまして、地方部を中心に駅の無人化の動きが出てきておりますが、無人化に際しましては、障害者の方を含む駅利用者に対し極力ご不便をお掛けすることのないように、サービス水準を可能な限り維持する必要があると考えております。
支援を必要とする障害者の方への乗降の介助につきまして、事前予約を行う場合の利便性を高める観点からは、電話に加え、ウェブでの申込みを可能とする取組が行われているところでございます。また、事前予約がない場合におきましては、乗務員による携帯スロープを用いた乗降介助を行うことにより、無人駅においても乗降が可能となる取組が行われているところでございます。
障害者の方が安全、円滑に無人駅を利用できる環境整備ができるように、こうした取組が他の鉄道事業者においても広がるように、引き続き働きかけを行ってまいりたいと考えております。
○木村英子君
無人化によって、使いづらい、あるいは困っている障害者の方も増えておりますので、引き続き指導の方をお願いいたします。
次に、駅のホームでの危険性について質問します。
駅で待たされる問題にとどまらず、事故や緊急の災害など、駅の安全性の確保や防犯には人的支援が不可欠だと思います。
資料3をご覧ください。こうした中、2022年12月には、大分県の津久見駅で、駅員不在の時間帯に視覚障害者の方がホームから転落し、特急電車にはねられて亡くなりました。
大分県ではずっと前から当事者団体の反対があり、資料4のとおり訴訟にもなっていますが、今回、無人駅でこのような痛ましい事故が起こってしまっています。
資料5をご覧ください。
国交省の調査によると、視覚障害者のホームからの転落について、平成22年度から令和元年度までの10年間の平均発生件数は74.7件であり、このうち列車と接触した事故件数は年間平均2.1件となっています。
資料6をご覧ください。
国交省が視覚障害者の方に向けての行ったアンケート結果では、回答者303人のうちホームから転落したことがある人は109人で、その109人のうち約半数の方は複数回の転落経験があったと言っています。転落だけではなくヒヤリ・ハットまで含めると、視覚障害者の方の約6~7割が経験をしているということになります。無人駅が進めば進むほど、こういう事故はなくなりません。
例えば、これはいい事例ではありますけれども、東京メトロの護国寺駅では、以前から、視覚障害者の特別支援学校があり、視覚障害者の利用者も多いことから、当事者の要望を踏まえて点字ブロックを設置したりホームドアの設置を行っていますが、ハードの整備はもちろんのこと、常に駅員が配置されていることにより、見守りや急な事故にも対応できるような体制が整っています。そのため、視覚障害を持った利用者の人たちも安心して駅を利用できています。このように、人的配置による見守りや介助が整っていれば、悲惨な事故を防ぐことができると思います。
一方、各鉄道事業者では、無人駅にする代わりに監視カメラや問合せに対応するインターホンなどの遠隔システムを導入し、遠隔から見守ることで利用者の安全管理を進めようとしています。しかし、カメラが設置されていても、視覚障害者の方が転落した場合、カメラの死角に入ってしまって見えませんし、転落に気付いても、遠い駅から来るのに時間が掛かってしまい、安全性には疑問が残ります。
最近では、鉄道事業者は、車いすの人などの障害者や高齢者に対して、電車に乗るときは事前に連絡をしてくださいということを事実上強いています。事故が起こるのは一瞬なので、監視カメラの遠隔システムではとっさの事故は防げないと思います。ですから、駅で待たされるという利便性の問題だけではなく、事故を防ぐための安全性を確保するためにも人的支援は不可欠だと考えます。
駅の無人化が進む中、国交省は、利用者の安全性の確保や、転落事故が起こる現状に対しての危険性や、駅員などの支援がなければ駅を利用できない利用者の方の実態把握をどこまで行っているのでしょうか、お答えください。
○政府参考人(上原淳君)
お答えいたします。
障害者の方が無人駅を安全、円滑に利用することができるように、鉄道事業者に求められる具体的取組について検討するため、車いす利用者、視覚障害者、聴覚障害者の方々等の各障害者の団体、鉄道事業者等から成る意見交換会を設置いたしまして、令和4年7月にガイドラインを作成したところでございます。
ガイドライン作成に当たりましては、各障害者団体からの無人駅利用に係るお困り事や要望等をお聞きした上で、無人駅の利用しやすい環境づくりに配慮すべきこと等について7回にわたり議論を行いました。
また、現在、当該ガイドラインの周知も兼ねまして、地域の各障害者の団体の方々からそれぞれの地域の無人駅に関するお困り事等を把握するため、昨年秋から地方運輸局ごとに意見交換会を開始して実態の把握に努めているところでございます。
○木村英子君
ありがとうございます。
このガイドラインの設置によって当事者の意見が反映されていくということはとてもいいことだとは思いますけれども、ただ、やっぱり、日々の鉄道の状況の中で実態把握というのがなかなかやっぱりされていないから事故が起こっているのではないかというふうに思います。今後もやっぱり、しっかりと検証して実態把握をしないとまた同じような意見、事故が起こってしまうと思いますので、引き続きお願いいたしたいと思います。
今まで駅員の支援によって駅を利用してきた障害者の人たちは無人駅が増えたことで前よりも駅が利用しづらくなるということを先ほどから申し上げていますが、それは社会参加が阻まれているということにもつながってきます。無人化によって増え続けている人的支援を必要とする人たちの駅利用に関する問題を解決していくということが急務だと考えます。
このような人的支援を必要とする人たちの駅利用に関する実態調査を直ちに行っていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(上原淳君)
障害者の方における駅利用に関する実態やニーズにつきましては、これまで、先ほど申し上げました意見交換会等を通じて、障害特性に応じた必要な支援、お困り事等につきまして丁寧な把握に努めてまいっております。
見守りや介助等で人的支援が必要な利用者がいることは、いらっしゃることは私どもとしても認識をしておりまして、今後は人的支援を必要とする障害者の方における実態やニーズについて、特に丁寧な把握に努めてまいりたいと考えております。
○木村英子君
ありがとうございます。
やっぱり私のように重度の障害になるとどうしても人の手の支援がなければ電車に乗ることはできませんから、やはりその悲惨な事故を防ぐためにも、そしてその人的支援を必要な方のためにも是非検討の方をお願いしたい、あるいは調査を把握していただきたいというふうに思います。
また、障害者や高齢者が無人駅を利用するに当たっては、無人駅利用に係るガイドラインを、先ほどからも言われていますが、作成されたというところではありますが、どうしてもハードの面の改善だけが重要視されているように思います。
そういう意味では、人的な支援を必要とする障害者や高齢者がやっぱりそこから置き去りにされているような現状もありますので、大臣の所信では、「誰もが安心して参加し、活躍することができる共生社会の実現に向け、公共交通機関、建築物等のバリアフリー化や心のバリアフリーなど、ハード、ソフトの両面からの取組を着実に推進していきます」と述べられていました。
一人も取り残さないという公共交通の在り方を実現していくために、駅員の支援がなければ駅を利用できない人たちにとっての対策として、人員配置などソフトの面も含めた改善策を早急に考えていただきたいと思っていますが、大臣のお考えをお聞かせください。
○国務大臣(斉藤鉄夫君)
障害者や高齢者が安心して無人駅を利用するに当たっては、ハード面の改善に加え、ソフト面の対策も重要であると考えております。
先ほど局長が答弁しましたように、昨年、駅の無人化に伴う安全、円滑な駅利用の観点から策定したガイドラインにおきまして、ハード面の取組だけでなく、ソフト面の取組として、他駅からの駅係員等による巡回、見守りの実施等や駅運営に係る地域との連携なども重要である旨を記載しております。
また、障害者の声を聞く場として、車いす利用者などの障害者の利用環境改善に向けた様々な課題を議論するため、障害者団体と鉄道事業者による意見交換会を今年2月に設置いたしました。さらに、昨年秋より、地方運輸局ごとに障害者団体との意見交換を実施しております。
国土交通省としましては、来年度もこれらの場を活用して、人的支援を必要とする方も含めた障害者のニーズを把握し所要の対応策を検討するとともに、鉄道事業者がソフト面も含め的確に対応するよう指導してまいりたいと、このように思っております。
誰もが移動の自由を持っている、その一人も取り残さないという公共交通の在り方を国として検討し、模索し、より理想に一歩ずつ近づけていきたいと、このように思っております。
○木村英子君
ありがとうございます。
様々なハード、ソフト両面の配慮をしていただいているところではありますけれども、やはりその遠隔からの支援というか、そこから駅員さんが来てという形だけではなかなか重度の障害者の方とか高齢者の方は難しいという現状がありますので、やはりその辺も駅に常駐する駅員さんが配置できるような方策も今後考えていただけたらというふうに思っておりますので、その辺もよろしくお願いいたします。
質問を終わります。ありがとうございました。