○木村英子君
れいわ新選組の木村英子です。
本日は、誰もが社会生活に欠かすことのできない公共交通機関の中でも、特にバスのバリアについて質問したいと思います。
障害者のバスの利用については、障害を理由とした乗車拒否の歴史があります。
資料1のように、1977年の障害者のバス闘争を皮切りに、障害者の人たちが乗車拒否の差別と闘いながらバスを利用し続け、社会参加を果たしてきました。そして、2006年にはバリアフリー法が施行され、2014年に障害者権利条約の批准、2016年には障害者差別解消法などの法整備が進み、公共交通機関のバリアフリー化が進んできています。
しかし、近年では、深刻な運転手不足により、人々の足であるバスなどの運行が減らされたり、バス事業者の撤退も相次ぎ、国民の社会生活に甚大な影響を及ぼしています。特に配慮の必要な障害者の方の場合においても、昨今の状況はますますバスを利用しづらくなっており、社会生活が脅かされている現状があります。
そこで、中野大臣にお尋ねいたします。
私は、今まで、障害者が安心してバスを利用できるために質疑で問題提起をしてきました。今年5月30日の国土交通委員会においては、前任の斉藤大臣に、車いすの方がバスを利用する際の乗務員による不適切な対応について改善を求める質疑を行い、斉藤大臣からは、車いすを利用されている方が乗車拒否に遭うことはあってはいけないことだと答弁をいただきました。
先日の所信において、中野大臣は、公共交通機関、建築物などのバリアフリー化や心のバリアフリーなどのハード、ソフトの両面からの着実な取組や、障害を理由とする差別の解消に向けた国土交通分野における取組を推進するとおっしゃっていました。
改めてお尋ねしますけれども、中野大臣は、障害者が交通機関を利用する際、乗車拒否はあってはならないという認識でよろしいでしょうか。
○国務大臣(中野洋昌君)
木村委員にお答えを申し上げます。
私も、障害を理由とする不当な乗車拒否というのはあってはならないことであるというふうに考えております。
車いすを利用されている方の乗車に当たりましては、運転者において、スロープの設置であるとか、乗降介助、既に乗車されているほかの利用客の方に協力や配慮を求めるなど、様々な対応が必要になるものと承知をしています。まさに車いすを利用されている方が気持ちよくバスを利用できるような、そういう環境づくりを行うことが重要であるというふうに考えております。
○木村英子君
ありがとうございます。
しかし、昨今、車いすの方のバス利用に際して、乗車拒否をする事業者が増えております。
あるバス事業者のホームページでは、
資料2のとおり、「車両にお客様の安全を確保できる装備がないため、チルト型、ストレッチャー型、リクライニング型の車いすはご乗車をお断りしております」といった記載がなされています。
また、資料3では、ストレッチャー型の車いすについて乗車拒否をしている事業所もあります。
実際に、このような文章がバス事業者から出されたことによって乗車拒否で困っている方からの相談が来ています。その相談者の方は、リクライニング型の手動車いすを利用しており、3年ほど通院のため定期的にバスを利用していました。乗車時には、体位を保つために、チルトとリクライニングを全部倒した状態で、二人の介護者が車いすを動かないように押さえる方法でバスに乗っていたそうです。しかし、今年の9月にいつものようにバスの乗車を運転手さんに伝えたところ、この車いすはストレッチャーだから会社の決まりで乗せられないことになっていると言われました。その方はストレッチャー型の車いすではないと伝えましたが、運転手さんからは3席空けないといけないから駄目なのでと言われて、結局そのバスには乗ることができず、次のバスには乗ることがやっとできて家路に就いたそうです。しかし、その後も何度もバスの乗車を断られ、病院からリフトカーを手配しなければ帰ることができない日もあったそうです。
このように、チルト型、リクライニング型、ストレッチャー型、ハンドル型、フックがなくベルトで固定できない車いすなど、一律に乗車拒否の対象としてしまうと、多くの形状の車いすが乗れないことになってしまいます。車いすの種類や形状によって安全性とは関係なく一律に車いすの方の乗車を拒否することは、国交省が出しているバリアフリー法や障害者差別解消法の趣旨に反して差別的取扱いに当たると思います。
どんな車いすに乗っていても安心してバスが利用できるように、バス事業者から出されている文書を撤回することを国交省から指導していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(池光崇君)
お答えいたします。
国土交通省では、車いす利用者の皆様の安全を確保するため、指導監督マニュアル、こちらで、車いすを利用されている方にご乗車いただく場合には、車いすを車内に固定されるようバス事業者に求めてきております。
ご指摘のバス事業者のホームページ、こちらの記載の趣旨を確認をいたしました。この内容につきましては、マニュアルに沿いまして車いすの利用者の安全を第一に考慮した結果、車内で固定ができないなどの車いすを利用されている方の乗車はご遠慮申し上げているということでございました。
これらの記載につきましては、マニュアルを勘案した内容になっているものと認識をしておりますけれども、国土交通省としては、車いす利用者の方にとって納得のいく分かりやすい説明がなされているかという点が大事だと思っております。
そして、こういう観点で、ホームページの記載も含めまして丁寧な説明がなされるよう、バス事業者に対して必要な指導を行ってまいりたいというふうに考えております。
○木村英子君
ありがとうございます。
なるべく早く、車いすの方が乗車拒否されずに安心してバスに乗れるように対策を進めていただきたいと思っております。
次に、資料4をご覧ください。
平成29年3月に国交省がまとめたハンドル型電動車椅子の公共交通利用に関する調査検討報告書において、「今後、ハンドル型電動車椅子のバス利用については、現状を丁寧に把握した上で、利用のあり方や固定装置等の設備について、検討していくことが求められる。」と出されているにもかかわらず、多様な車いすに対応した固定装置について7年もの間検討されず棚上げにされてきたことが昨今の乗車拒否を助長している原因であると考えられます。車いすの方がバスに乗車する際には、どんな車いすでもバスに安全に乗れる固定装置が求められています。
資料5をご覧ください。
国際基準を定めているISO規格では、自動車に車いすの人が乗る場合、4点式ストラップタイプの固定具を使用して固定できるように設計されていることが必要であると提起されています。
しかし、日本においては、バリアフリー法によりバスには車いすの固定装置を付けることが義務化されていますけれども、車いすの方には固定フックなどについてJIS規格に定められておらず、固定できない車いすもあります。
そのため、乗車拒否を受けることもある現状を踏まえ、道路運送法13条の運送引受義務を遵守するためにも、どんな形状の車いすに乗っていても乗車拒否されずに安心してバスが利用できるように、国交省が経済産業省など各省庁と連携して障害当事者、バス事業者、車いすメーカーなどが集まっての協議会をつくり、車いすの固定フックのJIS規格化も含めて具体的な改善策について早急に進めていただきたいと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(中野洋昌君)
委員ご指摘のとおり、このベルトを用いて車いすをバスに固定をするためには車いす側の方に固定フック等が必要であり、これが固定できない、こういう車いすについて安全性の観点から乗車をお断りする場合がある、こういう事例があるというのはまさに委員ご指摘のとおりで、我々も承知をしております。
国土交通省としましては、やはりバスに乗車される方の車いすに固定フック等を必ず装着していただけるように、車いすメーカー、これを所管するのは経済産業省でありますので、経済産業省と連携をし、また当事者団体を含む関係団体の皆様を集めた意見交換の場、これをこの春に設けるため、準備のためのヒアリングを開始をいたします。
引き続き、車いすを利用されている方が気持ちよくバスを利用できるような環境づくりに取り組んでまいります。
○木村英子君
大臣、ありがとうございます。是非進めていただきたいと思います。
次に、心のバリアフリーについてお尋ねします。
さきに述べたように、国交省のバリアフリー法の成立によって障害者の方がバスや電車などの交通機関を利用する際の取組が進み、ハード面のバリアが少しずつ解消されているところです。しかし、まだまだ十分に障害者の方が交通機関を利用して自由に街なかに出られるといった状況ではないこともあり、社会参加がしづらく、障害者への理解、つまり心のバリアフリーが進まない現状にあります。ハード、ソフト両面のバリアが解消されていくことによって共に生きられる社会が実現していくのではないかと思います。そのためにも、国交省が主導となって心のバリアフリーの取組を進めていかなくてはならないと考えます。
国交省は、平成30年度に交通事業者に向けた接遇研修モデルプログラムを作成しています。そのプログラムでは、当事者参画の下、心のバリアフリーや介助技術の実習を行うことが推奨されています。
しかし、障害者の方への理解が足りないために、乗車の際に、運転手やほかのお客さんから嫌な顔をされたり差別的な言動をされることもあり、障害者の方が心を痛め、他者へ迷惑を掛けたくないという思いになってしまってますます外へ出られなくなってしまう、そんな心のバリアがまだまだ解消されていません。
ですから、国交省からバス事業者に対し、スロープの出し方や固定方法など技術的な研修をするとともに、心のバリアをなくすための研修として、国交省で作成した接遇研修モデルプログラムをバス事業者に対して徹底するよう指導していただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(池光崇君)
お答えいたします。
バス事業者は、バリアフリー法におきまして、その職員に対し、移動等円滑化を図るために必要な教育訓練を行うよう努めなければならないというふうにされております。
このため、国土交通省におきましては、こうした教育訓練に当たって参考にすべきものということで、交通事業者向け接遇研修モデルプログラム、これを平成31年3月に作成、公表をしているところであります。このプログラムにおきましては、乗車案内時の対応や接遇方法、心のバリア解消に向け、障害者や高齢者などを含む多様な利用者の立場を理解し、円滑なコミュニケーションを図ることの重要性などを教育訓練の内容として盛り込むよう求めております。
国土交通省として、改めてバス事業者においてこのプログラムを活用して教育訓練を行うことを促すとともに、バスが運行される現場において、車いす利用者の方々を含む全ての利用客の皆さんにとって実際に安全で快適な移動が図られるよう、取り組んでまいります。
○木村英子君
ありがとうございます。
これからも、乗車拒否を受けずに、差別されることなく、安心してバスに乗車できるように国交省で取り組んでいただきたいというふうに思っております。
以上で質問を終わります。