2024.6.13 参議院 国土交通委員会「公共交通機関の完全キャッシュレス化について」

○木村英子君
 れいわ新選組の木村英子です。
 本日は、公共交通機関における運賃のキャッシュレス化について質問します。
 昨今の交通機関はIT化が進み、乗車券などの購入が不要なPASMOやSuicaなどの交通系ICカードが普及して便利になってきています。しかし、IT化の促進に対して制度が追い付いておらず、キャッシュレス決済を利用しない人や利用したくてもできない人がいます。
 今年の春からJR東や西では、新幹線や特急列車の障害者割引の乗車券がウェブで購入できるようになり、駅の窓口まで行かなくても乗車券の購入ができる仕組みとなりました。しかし、ほとんどの鉄道事業者では、資料1のとおり、障害者の方が障害者割引の乗車券を購入する場合、従来どおりみどりの窓口などに行かなければ買えない仕組みであり、改善が進んでいません。

資料1

乗車券を買うために電車を乗り継いで駅の窓口まで行くことが困難な障害者の人が多い中で、全国的に購入する窓口が少なくなっている現状は、ますます鉄道を利用しにくくさせ、社会参加を妨げている原因となっています。
 そのような中で、国交省は、公共交通機関での完全キャッシュレス化を進めています。障害者の人たちにとってもIT化によってキャッシュレス化されることは利便性を高めることにもなりますが、従来と変わらない乗車券の購入方法では問題は改善されていきません。
 例えば、現状では、障害者の人が障害者用ICカードを購入するためには、みどりの窓口などに直接行って、障害者手帳を提示し、本人確認がなされないと購入できない仕組みとなっています。それに加えて、障害者用ICカードは、購入時だけではなく更新時にも障害者手帳を窓口で提示しなくてはならず、みどりの窓口などの購入場所が減ってきている中で、手続に行くだけでも困難で、外出をためらってしまう人も少なくありません。
 そのような中で、昨年、障害者用ICカードを導入したSuicaやPASMOでは毎年の更新手続が必要となっていますが、資料2のとおり、障害者用ICカードをいち早く導入したスルッとKANSAIの事例では、毎年の更新手続は必要なく、5年をめどに窓口で障害者手帳を見せれば更新ができる仕組みをつくっています。

資料2

 このような取組をしている事業者はまだ少ないですが、国交省は公共交通機関のバリアフリーの促進を図っているところですから、障害を理由として公共交通機関の利用が妨げられないように、障害者用ICカードの購入や更新手続の簡素化を図るべきだと思います。例えば、カードの更新手続を1年ごとではなくもっと長い期間に設定するなど、障害者の人が鉄道を利用するときの利便性について国交省と公共交通事業者との定期的な会議の場などでの働きかけを行っていただきたいと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(斉藤鉄夫君)
 障害をお持ちの方等の移動の利便性向上は非常に重要と国土交通省も考えておりまして、これまで公共交通機関の障害者割引手続における本人確認の負担軽減に努めてまいりました。
 かつては、本人確認のため、多くの事業者において身体障害者手帳等の提示を求めていましたが、手帳の提示を利用の都度求めることのないICカードなどによる本人確認の簡素化が促進されるよう、平成31年に関係する告示の見直しや先進的な事例の周知などを行い、その後も理解と協力を求めてきたところでございます。その結果、ICカードの活用などによる本人確認の簡素化は着実に進捗しているものと認識しております。
 委員お尋ねの障害者用ICカードの更新手続については、従来より各事業者の自主的な判断に基づき実施されているところでございますが、国土交通省としては、様々な会議の場なども活用しつつ、障害当事者の方々や関係事業者等のご意見をお伺いしながら、障害をお持ちの方の移動の利便性向上に向けて引き続き取り組んでまいりたいと思います。
 1年ができるだけ長くなるように、このようにいろいろな会議の場でも事業者に訴えていきたいと思います。

○木村英子君
 ありがとうございます。
 障害者用ICカードについては、更新時だけではなくて、単独乗車では使えないという事業者も多くあります。そういった意味で、また、その使える地域が限定されているという課題もありますので、是非改善の方をお願いいたしたいと思います。

 次に、先月28日に国交省の会見において、完全キャッシュレスバスを解禁する方針であると大臣が答えていましたけれども、今回、完全キャッシュレスバスの運行を決めた理由を教えてください。

○政府参考人(石原大君)
 お答えいたします。
 委員ご案内のとおり、今、非常にバスを取り巻く環境、運転者不足などによりまして、減便、路線廃止、全国で相次いでおります。大変厳しい経営環境にあるということでありまして、こういう厳しい経営状況にある中で、この現金の取扱いによる管理コスト、あるいは運転者の現金のやり取り、こうしたことに伴う負担の軽減、それから定時運行の確保、こういった利用者の利便性向上を図る観点、このような種々の理由から、この完全キャッシュレスバス運行について今導入を考えているということでございます。

○木村英子君
 その運転手の負担やコストの軽減を図ることは重要であるとは思いますけれども、まずはお客さんの利便性を優先した運行を考えていただきたいというふうに思っています。
 次に、資料3をご覧ください。

資料3

 国交省は、完全キャッシュレスバスについて、実証実験を行い、課題を検証すると言っていますけれども、災害が起きたとき、キャッシュレスの機械が壊れた場合など、どのような対応をされるのか、お答えください。

○政府参考人(石原大君)
 お答えいたします。
 本格的にこの完全キャッシュレスバスを運行するというような場合、委員ご指摘のとおり、災害ですとか通信障害などによりキャッシュレス決済端末が使用できない場合も出てくるものと考えられます。
 このような場合を想定して、まずはこの秋から、考えておりますけれども、この完全キャッシュレスバスの実証運行、この中でご指摘のような緊急時の対応についても考えていきたい、実証運行を行う場合には、あらかじめこの代替の運賃収受の手段、これをバス事業者の方には求めていきたいと、このように考えております。

○木村英子君
 そういう場合、その利用者が困らないように、災害時などの場合でも現金で支払えるような方法を検討していただきたいというふうに思います。

 次に、今回、完全キャッシュレス化することで、現金でしか利用できない人やキャッシュレス決済の利用が難しい人への対応についてお聞きします。
 資料4をご覧ください。

資料4

 熊本では、5つのバス会社や鉄道事業者がSuicaやPASMOなどの取扱いをやめ、クレジットカードなどに切り替えていくと発表し、市民からは困惑の声が上がっています。
 例えば、知的障害のある子どもを持ったお母さんからは、PASMOやSuicaが使えなくなり、クレジットカードだけになってしまうと、障害を持った子どもが公共交通機関を利用しづらくなるというようなご相談もありました。
 SuicaやPASMOなどのICカードは、チャージした分だけ使う方式であり、個人情報などは不要でカードが購入できる仕組みとなっています。しかし、クレジットカードでは、銀行口座とひも付けられていることで、紛失したり、盗難や個人情報の流出など、悪用されるというおそれがあります。
 資料5をご覧ください。

資料5


 民間のアンケート調査では、クレジットカードを持ちたくない人の半分近くが現金で管理したいと言っており、4割近くがセキュリティーが不安、盗難、紛失が心配と答えており、情報流出や盗難のリスクによってクレジットカードを持ちたくない人が一定数いることが分かります。
 また、資料6によると、アメリカでは、銀行口座やクレジットカードを持つことができない人への差別につながるということで、飲食店などの店舗で完全キャッシュレス化することを禁止する法律を作っている州も幾つかあります。

資料6

 日本では、完全キャッシュレス化してしまうことで、様々な理由で銀行口座やクレジットカードを作れない人が公共交通機関を利用できなくなってしまうのではないかという懸念を持っています。ですから、災害などの緊急時以外でも、カードを作れなかったり、現金しか持っていない人でも乗車できる仕組みが必要だと考えます。
 また、前回お話ししたように、障害者のバスの乗車を拒否する歴史がありましたけれども、現在少しずつ改善はしているところではあります。しかし、バスに乗車するときの対応では、時間が掛かるなどの理由で乗車拒否をされるなど、まだまだ障害者への理解が社会に広まっておらず、公共交通機関が安心して利用できる状況にはなっていません。
 現在の道路運送法では、交通機関において乗車拒否をしてはならないという規定になっていますが、キャッシュレス化されてしまうことで差別を助長してしまうのではないかと不安を感じています。
 今後、公共交通機関においてキャッシュレス化を進めるに当たっては、多様なニーズに対応できるようにするとともに、乗車拒否が絶対に今後も起こらないことを進めるための制度にしていただきたいと思いますけれども、大臣のお考えをお聞かせください。

○国務大臣(斉藤鉄夫君)
 今、木村委員、2点のおっしゃったと思います。1点目は、クレジットカード等使えない人たちへの対応と、それから後半は、障害者が乗車拒否が絶対起きない制度にしてほしいという2つのご質問があったかと思います。
 前半の質問につきましては、非常に重要な視点だと思いますので、我々もこれからこの完全キャッシュレスバスの運行を試行してまいりますけれども、その点も考えながらまず社会実験をしてみたいと思います。
 そして、後半の部分についてお答えをさせていただきます。
 まず、障害を理由とする不当な乗車拒否はあってはならないことである、あります。完全キャッシュレスバスにおいても、車いすを利用されている方の利用に当たっては、運転手において、スロープの設置や乗降介助、既に乗車されている他の利用客に協力、配慮を求めるなど、丁寧に対応していく必要があることに変わりはありません。
 完全キャッシュレスバスの導入は、厳しい経営環境にあるバス事業者の負担を軽減し、将来にわたって路線が維持していく観点などから意義があるものと考えておりますが、キャッシュレス決済手段を有していない旅客への対応など検討すべき課題もありますので、まずは幾つかの路線で実証運行を実施し、こうした課題への対応や効果などについて検証していこうと考えております。
 いずれにいたしましても、完全キャッシュレス化の推進に当たっては、障害をお持ちの方々の利便性が損なわれることのないよう、丁寧に制度設計を進めてまいります。

○木村英子君
 ありがとうございます。
 国交省として、様々な人たちが利用しやすい公共交通機関にしていただきたいと思います。
 以上で終わります。

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