○木村英子君
れいわ新選組の木村英子です。
本日は、住宅セーフティーネット法の居住サポート住宅について質問いたします。
2017年に改正された住宅セーフティーネット法では、障害者や高齢者など、住宅確保に困難を抱える方たちの入居を拒否しないセーフティーネット登録住宅制度がつくられました。しかし、登録が進まず、住宅の確保が機能しない状況が続いています。
資料1をご覧ください。
視覚障害者の方が盲導犬を怖がる方がいると言われ入居を断られたり、マンションで盲導犬との同居が認められず引っ越しを余儀なくされるなど、補助犬の使用者の6割が入居拒否を経験していると言われています。
この記事のように、補助犬がペット扱いされ、賃貸住宅に入居できず、約250の物件に当たって、ようやく盲導犬オーケーのマンションが見付かったという事例は後を絶ちません。
私の場合も、地域に出てきたばかりの頃、何十件も不動産屋を回りましたが、車いすは家を傷つけたり火事を起こす可能性があるので貸さないと断られ、私の友人の障害者も家が見付かるまで何か月も掛かってしまう方がほとんどです。そして、今でも住宅の確保の困難な状況は変わっていないのが現状です。
このような現状の中で、今回改正された住宅セーフティーネット法では、住宅施策と福祉施策が連携した地域の居住支援体制の強化や、居住支援法人等が要配慮者のニーズに応じて、安否確認、見守り、適切な福祉サービスへのつなぎを行う居住サポート住宅が加わりました。しかし、この居住サポート住宅を利用する要配慮者は、見守りの支援が必須となっていることで要配慮者個人の生活上のプライバシーが侵害されるおそれがあります。
また、生活困窮者支援に尽力してきた地方自治体議員の経験談では、生活保護利用者はなかなか家を、部屋を貸してもらえず、居住支援法人を通じて自ら望んでいるわけでもない見守り付きの物件を借りるしかない状況があります。
また、ある物件では、管理人が雇われて住み込んでおり、出かける時間、帰宅時間、共用の洗濯機の使い方から洗濯物の干し方まで、見守りという名の下で見張られていたそうです。また、私の団体が借りていた住宅でも、大家さんが合い鍵で無断で部屋に入り、部屋を物色されて、部屋が汚い、片付けなさいと言われたことがあり、何回かそんなようなことが続いたために怖くなって引っ越しをした経験があります。
このように、障害者や高齢者などの住宅確保に困難を抱える方たちの弱みに付け込んでくる大家さんもいるので、要配慮者のプライバシーの侵害を助長しないためにも、見守りの支援については、家を貸す側の制度を整えるだけではなく、要配慮者のプライバシーを守る仕組みを整えてからでなければ要配慮者の人権をおろそかにしかねません。
居住サポート住宅では、居住支援法人や大家さんによる見守りなどのサポートが必須とされています。自治体の認定というお墨付きは、ともするとサービスではなく、家を借りる方への管理強化にもつながりかねません。要配慮者のプライバシーを守るための対策が具体的にあるのかどうかについてお答えください。
○政府参考人(石坂聡君)
居住サポート住宅は、高齢者、低額所得者、障害者など、様々な方々が入居することを想定しており、そこで提供されるサポートは、ICTを活用した安否確認や訪問による緩やかな見守り、福祉サービスのつなぎを想定しています。
ICTを活用した安否確認につきましては、大家さんの孤独死や事故物件になることへの不安に対処するものでございます。居住サポート住宅におきましても、入居者のプライバシーの保護は当然配慮されるべき基本的かつ重要なことであると考えております。この住宅で行われる見守りにつきましては、頻度や方法など、様々な形態が考えられますけれども、入居者のご意向やプライバシーに十分配慮した方法となるよう、実施に当たってのマニュアル整備も検討し、情報提供、周知をしっかり図っていきたいと考えております。
○木村英子君
プライバシーについては、様々トラブルが多い中で、このプライバシーの保護については、そもそも制度をつくる中で検討すべきはずだったと思わざるを得ません。住宅確保が困難な方のプライバシーや人権が侵害されない居住サポート住宅の仕組みが整わないまま制度の施行はあり得ません。
また、居住サポート住宅を利用するに当たって安否確認や見守りなどのサポートを受ける費用を入居者が負担することが想定されていますが、要配慮者が実際に負担する費用はどのくらいになるのか、教えてください。
○政府参考人(石坂聡君)
まず、安否確認のためのICT設備でございますけれども、入居者の負担軽減にもつながる措置として、令和6年度予算において設置の改修工事について補助の対象としたところであります。
また、サポート費用につきましては基本的には入居者の方に負担いただくことを想定しておりますけれども、サポート費用の対価は、現在取り組まれている類似の事例を参考として、例えば簡易な見守りの場合であれば比較的所得の低い方でも負担できる程度として、月額二、三千円程度に想定される、設定されることを想定しております。
なお、訪問等の見守りを行う地域の法人が、生活困窮者や高齢者などを対象とする公的な福祉サービスの一部として居住支援法人を、居住支援を行っている場合もございます。入居者の生活や心身の状況が不安定になったときには、こうした福祉側の事業、こういったことも利用することも有効であり、この点につきまして厚生労働省とも連携して運用してまいりたいと考えているところでございます。
○木村英子君
居住サポート住宅を借りる場合、月額2000円から3000円の自己負担が想定されると言っていますけれども、この金額はあくまでも国交省の想定であって、既に見守り制度を導入している居住支援法人等や大家さんによっては登録費用が必要であったり月額費用がもっと高い場合もあります。見守り以外でも、緊急連絡先登録費用や相談料、人件費など負担額が大きくなれば、この物価高の中で生活困窮者が居住サポート住宅を借りること自体厳しいと思います。
特に生活保護の方は、最低限の保護費しかもらっていませんから数千円でも厳しく、公的な補助なしに居住サポート住宅を借りることはできないと考えます。しかも、生活保護の方は家賃低廉化の補助の対象外となっています。生活保護は生活困窮者にとって最後のとりでです。
家を確保することが困難な方のためのセーフティーネット法に基づく制度なのですから、生活保護を受給している方がこの居住サポート住宅を借りる場合の見守り等の費用については当然扶助を出すことを考えていると思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(斎須朋之君)
お答え申し上げます。
生活保護制度におきましては、衣食等の一般生活費に充てるため生活扶助費が支給されております。また、住宅扶助費につきましては、家賃等の住宅費に使途が特定されているところでございます。ご指摘の見守りの費用につきましても、これは生活費といたしまして生活扶助費の中から賄っていただくことになると考えております。
居住サポート住宅の仕組みにおきまして、このサポート費用については所得の低い方でも負担できる程度とすることが想定されているというふうに承知しておりまして、国交省とも連携して制度が適切に運用されるよう努めてまいりたいと考えております。
○木村英子君
生活保護者にとっては、二、三千円というのは、元々最低限の生活費しかもらっていませんからとても厳しいんですよ。ですから、今回の法案は福祉との連携をうたっているのですから、生活困窮者などに対して見守りの自己負担を課すのは国の制度としては矛盾していると思います。
本法案は、居住施策と住宅施策と福祉施策の連携が取れていない未完成な制度であると言わざるを得ません。このまま制度が施行されてしまうと、先ほど指摘させていただいたように、住宅を借りることに困難を抱える障害者や高齢者などの生活を守るどころか、むしろプライバシーを侵害するおそれがあります。
ですから、障害者はもちろんのこと、高齢者の方や生活保護を受けている方、生活に困難を抱えている方などの要配慮者への住まいの権利を守るため、見守り等の費用を公的な負担とし、プライバシーの侵害などがあった場合の相談窓口を設置するなど、安心して利用できる仕組みが整うよう居住サポート住宅の制度を再検討していただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(斉藤鉄夫君)
居住サポート住宅においても、入居者のプライバシーの保護は当然配慮されるべき基本的かつ重要なことであると考えております。
この住宅で行われる見守りには頻度や方法など様々な形態が考えられますが、入居者のご意向やプライバシーに十分配慮した方法となるよう、実施に当たってのマニュアルの整備も検討し、必要な情報提供、周知を行ってまいりたいと思います。
また、居住サポート住宅のサポート費用につきましては、法令に定める基準に従い適正に定められる必要がありますが、厚生労働省や地方公共団体とも連携して、所得の低い方も含め、住宅確保要配慮者が利用しやすいものとなるよう取り組んでまいります。
さらに、プライバシーの保護も含め、居住サポート住宅におけるサポートの内容や費用などについて入居者から相談があった場合には、認定事務を担う地方公共団体などにおいて適切に対応されるようにしてまいります。
今般の制度創設に当たっては、福祉施策との連携が大変重要であり、地方公共団体による居住支援協議会の設置促進やその充実などにより、住宅、福祉で相互にノウハウを共有し、そのまた現場の声にもしっかりと耳を傾けながら運用してまいりたいと決意しております。
○木村英子君
本改正案は大家の不安を解消することに重きが置かれており、住宅セーフティーネット法の役割を果たしていない建て付けとなっていると考えます。
住まいは権利ですから、見守りは公的な負担で行うべきですし、本来は公営住宅などを増やしていくべきだと考えます。プライバシーの侵害の懸念があり、生活保護などの困窮者の住宅確保の困難な状況に追い打ちを掛けてしまう本改正案には賛成できません。
以上、質問を終わります。
【反対討論】
○木村英子君
れいわ新選組の木村英子です。
会派を代表して、住宅セーフティーネット法の一部改正案に反対の立場から討論いたします。
住まいは国民の基本的な権利であり、公営住宅などを国や自治体が整備していく責任があります。
住宅セーフティーネット法は、住宅の確保に困難を抱える方たちが入居しやすい賃貸住宅の供給を促進するために作られましたが、法律が成立してから15年以上がたっても、いまだに障害者や高齢者、年金暮らしの方や生活保護の方が住宅を借りづらい状況は変わっていません。例えば、車いすの方は家を傷つけるとか、知的障害者は火事を起こすおそれがあるとか、大声を出して周りに迷惑を掛けるなどという理由で、貸してくれる不動産屋は、大家さんも見付からず、家が見付かるまでに半年や1年は掛かることは少なくありません。
このような状況の中で、今回の改正案では、住宅施策と福祉施策が連携した地域の居住支援体制の強化により、要配慮者に対して居住支援法人などが見守りを行う居住サポート住宅などが加わりました。
しかし、国交省は、孤立死、孤独死対策や残置物の処理など、物件を貸す側の不安を解消することを重視する施策が優先され、要配慮者が利用している福祉制度が十分に考慮されていないため、福祉施策との連携とは言えない法案となっています。
そして、この居住サポート住宅を利用する場合、見守りの支援は必須とされ、ともすると、障害者や高齢者、生活保護や年金で生活している方のプライバシーが侵害される懸念があります。
また、住宅の確保に困難を抱える方たちが、居住サポート住宅を借りる場合の見守りに係る経費の負担を強いられてしまうこの法案では、生活に困窮している上に、更に追い打ちを掛けることになってしまいます。
本来、国は、国民に安価で快適に暮らせる住まいを提供する義務があると思います。その役割を放棄し、住宅の確保に困っている国民にプライバシー侵害の懸念を与え、金銭的な負担を負わせるということになるこの法案には絶対に反対です。
以上、反対討論を終わります。