【議事録】
○木村英子君
れいわ新選組の木村英子です。
本日は、国土交通省の研修機関である国土交通大学校で行われている「行政スキル研修」において使われていた資料について質問いたします。
資料1をご覧ください。
これは、実際に国交省の職員研修で使われていた研修資料の抜粋です。窓口対応で困難と思われるクレーマーのタイプの見極め方の例として、軽度の人格障がい(不安神経症、パラノイア)、発達障害(アスペルガー)や、暴走老人、目が劣化、歯がないなどといった記載があり、こんな差別的な資料で国交省の職員研修が行われていたことに愕然としました。また、この研修は2011年から行われ、1000人近くの職員が受講されていたようですが、この資料を見ると、クレーマーとされる対象は高齢者や障害のある人という偏見を感じ、私は障害当事者としては不安と憤りを感じています。
先日、大臣は所信演説で、「障害を理由とする差別の解消に向けた国土交通分野における取組を推進する」とおっしゃっていましたが、このような研修を放置しては、国交省のバリアフリー法や心のバリアフリーの理念から逆行し、国交省自体で差別を助長してしまいます。
今回の国土交通大学校の職員研修については国交大臣として監督責任が問われると思いますが、大臣はどのようにお考えでしょうか。
○国務大臣(斉藤鉄夫君)
国土交通省では、全ての国民が障害や疾患の有無にかかわらず、互いに尊重し、理解し合える共生社会の実現に向け、差別やバリア解消のための様々な取組を全力で進めてきているところでございます。
そうした中で、国土交通大学校で実施した研修において、民間の講師によって作成された資料とはいえ、特定の障害、疾患がある方に対する差別を助長しかねない内容があったことは大変遺憾です。
そのため、直ちに当該研修の抜本的な見直しを行うとともに、今後実施される研修においてこうしたことを防ぐべく、しっかりと再発防止策を講じるよう指示をいたしました。また、研修以外の業務一般についても、障害や疾患がある方への差別的な表現や対応を行っていないか改めて点検し、仮にそうした実態が認められた場合には直ちに改善措置を講じること、障害者差別解消法に基づく合理的配慮の必要性について職員の認識を深めるとともにその実行を徹底することを周知徹底するよう指示したところでございます。
今回のようなことが再び起きることがないよう、国土交通行政全般についてしっかりと対応してまいります。
○木村英子君
早急に、大臣、改善を求めます。
現在、各自治体では、障害者差別解消法の対応要領を基に職員研修が行われています。しかし、行政の窓口によっては、知的障害者や言語障害のある障害者に対して無視をしたり対応を拒んだりする自治体もあり、まだまだ不適切な対応が続いており、窓口対応の改善が遅れています。その一方で、障害者参画を重要と考え、対応要領を障害者当事者と一緒に作り、職員研修に障害者の方を講師として招き、研修を行っている自治体もあります。このように自治体の窓口対応に格差がある中で、国の職員研修の在り方は自治体にとっても大きな影響を及ぼすと考えます。
ですから、国交省として、今後の研修を見直すに当たっては、内閣府の相談対応ケーススタディー集や国交省の対応要領を踏まえた研修内容にするために、障害当事者が研修の資料作りに参画することを委託先を選ぶ際の条件として徹底していただきたいと思っています。
その上で、国土交通大学校の研修には、障害者権利条約や差別解消法の理念に基づき、障害当事者が講師となって参画する研修を早急につくり、実施していただきたいと考えていますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(寺田吉道君)
先ほどの大臣の答弁にもございましたが、大臣の指示を受けて、本件の研修の見直しを行うとともに、ほかの研修も含めて今後の再発防止策など検討してまいりたいというふうに考えております。
委員ご指摘のいくつかの文書等ございましたけれども、そのうちの対応要領、国土交通省の場合は、国土交通省における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領というものを策定してございます。この国土交通省の対応要領におきましても、障害を理由とする差別の解消の推進を図るため、障害者から話を聞く機会を設けるなど必要な研修、啓発を行うということなどが示されております。そうした点も踏まえまして、今後の研修の内容や教材について検討してまいりたいと考えてございます。
○木村英子君
差別解消が進むように、早急に当事者参画を重視した上での研修を作っていただきたいと思っています。
次に、来年に予定されている建築物のバリアフリー基準の改正についてですが、質問します。
劇場や映画館は誰もが楽しめるというところですけれども、障害者にとっては構造上のバリアがあって健常者と同じように楽しめないという場合があります。令和4年3月のバリアフリー法施行規則の改正により劇場等の娯楽施設の客席についてのバリアフリー化が義務となりましたが、多様な障害者に対応した客席などの設備はまだまだ不十分であり、バリアフリーが進んでいないという現状です。
資料2をご覧ください。
例えば、建物の構造上の問題で出入口が前の方にしかない映画館の場合、車いす席も必然的にスクリーンの目の前にしか設置されていないところが多く、脳性麻痺者などの場合には、スクリーンやスピーカーが近過ぎて首や体が痛くなったり、音が大き過ぎて観劇できないという方もいらっしゃいます。そのような状況で、車いす利用者は限られた席にしか座れないことで映画館に行くことを諦めてしまうという人もいます。
車いすの方も気軽に映画を楽しめるように、最前列だけではなくて真ん中や後ろなどの、健常者のお客さんと同じように席を選べるような基準を作っていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(石坂聡君)
お答えいたします。
車いすを使用されている方が映画館において健常者と同様にスクリーンの見やすい客席を選択できるようにするということは、重要な課題と認識しています。
現行のバリアフリー基準においては、誘導基準として、劇場、映画館の客席数に応じて一定の割合以上の車いす使用者の客席を設けることとしています。その配置については、バリアフリー設計のためのガイドラインである建築設計標準において、車いす使用者用客席、観客席は、車いす使用者が選択できるよう分散して設けることが望ましいとしているところでございます。
現在、国交省におきましては、学識経験者、障害者団体、事業者団体などから成る検討ワーキンググループを設置し、バリアフリー基準や今申し上げた建築設計標準の見直しについて検討を行っているところでございます。劇場や映画館の客席の在り方についても検討してまいりたいと考えてございます。
○木村英子君
ガイドラインだけではなくてバリアフリー基準に盛り込むということも今後検討していっていただきたいと思っております。
次に、私もよく演劇を見に行くのですけれども、大型の車いすのために、劇場によっては車いす席がなかったり、あるいはスペースが狭くて車いすが設置できないという場合があります。そんなときは、劇場の座席を取り外してもらうなどの配慮をしてもらったりしています。
資料3をご覧ください。
このように席を外してもらったり可動式の席が設けられれば、健常者のお客様と同じように観劇を楽しむことができます。来年のバリアフリー基準の改正では、新築や増改築の劇場や映画館などについては新たな基準に沿ってバリアフリー化をすることが義務になります。
しかし、既存の映画館や劇場でも障害者の人が利用できるように何らかの対応をしていただけるように、国交省としてガイドラインの改正や周知をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(石坂聡君)
既存の建築物につきましては、既にある構造を前提とする必要があったり、あるいは利用しながら工事をするという場合がございますので新築にはない課題があるのは事実ではございますが、改修等により可能な限り新築と同様のバリアフリーを達成することが望ましいと認識しています。
バリアフリー法におきましては、既存の映画館や劇場などについて、バリアフリー基準適合の努力義務を課しているところです。
また、バリアフリー設計のためのガイドラインである建築設計標準では、既存建築物を改修する際の目標設定、事業計画策定、設計、工事に関する留意事項を定めているところでございます。
こうしたバリアフリー基準や建築設計標準の周知徹底、これはしっかり取り組みたいと思ってございますので、今後とも、関係者のご意見を踏まえながら、対応をしっかり進めてまいりたいと考えてございます。
○木村英子君
基準の見直しの際だけではなくて、既存の建物にもバリアフリー化が進むように積極的に働きかけをお願いしたいと思います。
次に、車いす用客席の広さについてですが、現在の国交省が定めている劇場等の車いす用客席のスペースの誘導基準では、横幅90センチ、奥行き120センチとなっています。しかし、奥行き120センチでは、大型の車いすの場合、車いす用客席に収まらなかったり、車輪が段差から落ちてしまうことがあり、斜めにしか設置できないという場合があります。
資料4をご覧ください。
オリンピック・パラリンピックの基準では、車いす用客席の奥行きは130センチ以上となっています。また、自治体によってはより大型の車いすにも対応できるような基準も定めているところであり、資料5をご覧のとおり、兵庫県の条例では奥行き140センチ以上とされていますし、資料6の横浜市の整備マニュアルでは奥行き150センチ以上とされています。国の基準が自治体の基準を下回ってしまいますと、余計にバリアの解消が遅れてしまいます。
ですから、今回のバリアフリー基準の改正で、車いす用客席の席数を増やすだけではなくて、大型の車いすにも対応できるスペースや通路の基準についても設けていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(石坂聡君)
車いす使用者の客席スペースにつきましては、今ご指摘のように、誘導基準では120センチとしているところでございます。また、建築設計標準におきましては、大きなリクライニング式の車いす等の使用者にも対応するため、奥行き140センチメートルというふうにしているところでございます。
確かに、ご指摘のとおりごもっともでございますので、現在、先ほど申し上げました検討ワーキンググループにおきまして、バリアフリー基準や建築設計標準の見直しについた検討を行っているところでございまして、客席の在り方についても、先生からご指摘のあったとおり、オリパラのガイドラインなども参考に検討を進めてまいりたいと考えてございます。
○木村英子君
今後、映画館や劇場等のバリアの解消について、障害があっても健常者と同じように観劇できるような基準や法令をその状況に合わせて一刻も早く変えていただきたいと思います。
次に、介護の必要な車いすユーザーにとっては、劇場などで観劇するとき、介護者席が前方や後方にしかないところが多く、介護を受けるために介護者を呼びたくても、大きな声を出さなければならず、周りのお客さんに迷惑を掛けるのではないかと思い、観劇を楽しめなかったり、劇場や映画館に行くことを諦めてしまうという人もいます。
また、言語障害のある方や、介護者が両側にいて首や体を押さえないと観劇できない障害者の方もいます。その際には、劇場に頼んで車いすの隣にパイプいすを置いてもらうことがあります。ですが、通路にはみ出すという理由で入場を断られるということもあります。
資料7をご覧ください。
オリンピック・パラリンピックの基準では、車いす用客席の隣に介護者席を設置することが定められています。このように、介護が必要な障害者の方が安心して観劇できるように、車いす用客席の隣に介護者席を設置する基準を設けていただきたい。さらに、両側に介護者が必要な方の場合も、基準も考えていただきたいと思っています。
また、障害者や支援者、舞台関係者の方たちが帝国劇場の建て替えに際して、劇場を障害の有無にかかわらず誰もが行きやすく楽しめる場所にという思いを込めて署名活動が行われていると聞いております。このように、障害者の人が健常者と同じように気軽に劇場や映画を楽しみたいと思っている人はたくさんいます。
どんな障害があっても利用しやすい劇場や映画館のバリアフリー化を早急に進めていただきたいと思っていますけれども、大臣のお考えをお聞かせください。
○国務大臣(斉藤鉄夫君)
障害の有無にかかわらず、誰でも演奏や演劇、映画を安心して楽しむことができるよう、劇場や映画館のバリアフリー化を進めることは、共生社会の実現の観点から重要な課題であると認識しております。
介助が必要な車いす使用者向けの客席については、より高いバリアフリー水準を定めた誘導水準や設計のガイドラインである建築設計標準におきまして同伴者用の客席を隣接して設けることを定めておりますが、両側からの介助が必要な場合の対応については明確となっておりません。
先ほど局長から答弁のあったとおり、現在、検討ワーキンググループにおいてバリアフリー基準や建築設計標準の見直しを検討しているところでございまして、ご指摘の点に関しても、障害当事者や施設を運営する事業者の方々からの意見を丁寧にお聞きしながら対応してまいりたいと、このように思います。
○木村英子君
大臣、是非、劇場や映画館のバリアフリー化を早急に進めていただきたいと思います。お願いします。
以上です。