2023.4.20 参議院 国土交通委員会 地域公共交通活性化再生法改正案質疑 「誰一人取り残さない公共交通を!」

【議事録】

○木村英子君
 れいわ新選組の木村英子です。
 地域公共交通活性化再生法について、障害者の視点から質問いたします。
 障害者や高齢者などの交通弱者にとって、交通機関を利用する際、交通のバリアがまだまだ解消されていない現状において、今回の法案は、鉄道の存続によって、生活する上で重要な移動の権利というものが損なわれる懸念があります。
 例えば、地方などの過疎化や人口減少によって鉄道会社が路線を維持できない場合に鉄道の存廃を決める再構築協議会を設けるということですが、協議の行方によってはそこに住んでいる住民の生活に重大な影響を及ぼしかねません。
 資料1をご覧ください。


 岡山県と広島県を走る芸備線を運営するJR西日本は沿線自治体に対し再編協議会への協議の要請をしていますが、沿線自治体はJRの提案に対して過疎化の加速につながりかねないなどと警戒し、存廃を含む議論は当面しない方針として再編協議入りを拒否しています。
 また、地元の住民からは、通学に使えなくなるから芸備線がなくなるのは困る、車がない人は列車で行った方がいいといった路線の存続を願う声が上がっています。
 また、資料2をご覧ください。


 先日、JR東日本が千葉県の久留里線廃線も含めた検討の場を沿線自治体に要請を行いました。そして、今後、バス路線などの代替交通への転換を協議が行われるとの報道もされています。それに対し地元住民は、3月26日、久留里線と地域を守る会の設立総会を開き、約80人が参加して、廃線に反対するため、JR東日本や国土交通省に対して存続を求めていくことが報道されています。
 このように、全国各地で廃止ありきの姿勢に疑問を持つ住民の反対の声が上がっています。
 既に鉄道が廃線になった地域では、障害者や高齢者などの交通弱者に対して廃線に向けた丁寧な説明や協議をした上で合意を取って廃線を決定したということなんでしょうか。答弁をお願いします。

○政府参考人(上原淳君)
 お答えいたします。
 国土交通省におきましては、鉄道事業者に対し、路線の廃止に当たって、沿線自治体と連携し、高齢者や障害者を含めた地域住民のニーズを把握しながら、地域にとって望ましい代替交通の実現に向けて丁寧に対応するよう指導してきてまいっております。
 例えば、JR北海道の日高線鵡川―様似間におきましては、沿線自治体が、地域住民への説明会などにより地域住民の声をお聞きし、JR北海道との間で日高地域広域公共交通確保対策協議会を12回開催いたしまして協議を重ねた結果、廃線及び代替交通の確保策に合意をいたしております。その結果、代替交通におきましては、バス路線の増便や病院、商業施設への立ち寄りを行ったほか、新たに特急バス用としてリフト、トイレ付きのバスを2台、路線バス用として低床型バスを9台導入するなど、実際に利用する地域住民の皆さんのニーズにきめ細かく対応しております。

○木村英子君
 今、協議会を開催して地域住民のニーズを聞いて丁寧に対応していますと言っていますけれども、資料3では協議会の名簿を示していますが、

この名簿には、地方自治体や鉄道事業者、バス事業者などの構成員などが書かれています。しかし、障害者や高齢者などの参加は記載されていないんですね。これでは鉄道を利用している地域住民の意見というものが反映されているというふうには思わないんです。特に障害者や高齢者の記載がないということは、考えられていないというふうに私は思います。
 また、先日、22日の衆議院国土交通委員会において、斉藤大臣は、これまで地域の合意なしに鉄道を廃止した路線はないという答弁をしています。
 資料4をご覧ください。


 北海道の日高線の沿線自治体や住民は、高波被害を受けた路線の全線復旧を求めていました。しかし、沿線自治体では、JR北海道から、復旧する条件として年間13億4千万円の地元負担を要求され、負担できない場合はバスへの転換を求められ、結局、沿線自治体は財政的な余裕はなく、日高線の一部について存続を断念したそうです。このように、小さな自治体には選択肢がなく、自治体や住民は廃線を選ばざるを得ない状況に追い込まれているという実態もあります。
 鉄道が廃線されたことによって障害者や高齢者などの人たちがどのような影響を受けているのか、国交省は実態把握をされているのでしょうか。

○政府参考人(上原淳君)
 お答えいたします。
 国土交通省におきましては、鉄道事業者やバス事業者に対し、鉄道からバスに転換した後も継続的に状況を把握し、必要があれば自治体と協力をして輸送サービスの改善に努めるよう指導してきております。
 先日の、先ほど申し上げましたJR北海道の日高線の例では、地域の協議会のアンケート結果を踏まえながら、転換後のダイヤ改正におきまして増便や運行経路の見直し等を実施しているところでございます。また、独立行政法人でございます鉄道・運輸機構と協力をいたしまして、改めて幅広い利用者を対象としたアンケートを行うなど、鉄道と比べてバスでどうなったか、また、今のバスがどういうサービスを求められるかということの把握に努めているところでございます。

○木村英子君
 今の答弁では、バスに転換し、地域でのアンケート調査、そういうものをしているという話でしたけれども、それでも、利用者の利便性が向上したと言っていましたけれども、資料5をご覧ください。

そもそもこのアンケート、先ほども示されていましたけれども、約50人しか回答がない。その上に、交通弱者である高齢者の意見は少なく、障害者の声に至っては全く示されていません。また、自由記述においては、休日も平日と同じように運行してほしい、バス転換後、土日の利用する時間の本数が少なくなったなどの苦情が多く、利便性が高まっているとは言えないと思います。
 そして、実際に廃線された日高沿線にお住まいの人たち、障害者の方に直接聞き取りをしたところ、鉄道が廃線になってバスに転換されましたが、前日に予約しないと利用できなかったり、バスの便数が減っていて病院へ往復するにも何時間も掛かったり、また、車いす対応のタクシーも減ってしまい、病院に行くときには介護保険タクシーを使うようになりました。しかし、介護保険タクシーでは買物などには使えないため、大変不便になったと言っています。また、鉄道が廃線になる前は夜遅くまで電車があったので自宅から札幌に一泊二日で仕事に行くことができたそうですが、バスは本数が少なく、夜遅くの便はないために、結局札幌に仕事に行くのを諦めてしまうような状況になったと言っていました。鉄道がなくなったことが直接の原因かは分かりませんけれども、障害者の仲間が何人も札幌や苫小牧に引っ越してしまったと言っていました。今後、バスもなくなってしまうのではないかととても不安を感じていると言っていました。
 このように、鉄道の再編によって困っている障害者がいるということを国交省は把握しているのでしょうか。
 そもそも、今回の法案の前に、こうした合理的配慮を必要とした障害者の人たちから意見を聞き取っていないことが問題だと思います。私が話を聞いたところ、やっぱり意見をちゃんと聞き取っていないんじゃないかなというふうに思いました。
 先ほどの障害者の方の意見は少数の意見かもしれませんけれども、廃線によって生活が困窮し、交通機関から取り残されている現状は、障害者や高齢者の社会参加というものを妨げてしまっていると思います。
 今回の改正案に基づく再構築協議会では、国と自治体と鉄道会社が構成員となることは決まっていますが、先ほどの例のように、鉄道を利用する障害者や高齢者など当事者の意見をきちんと反映することが必須だと思います。交通のバリアを抱えている障害者や高齢者が鉄道の利用から取り残されないように再構築協議会の構成員として必ず入れるように法律に明記することを含めて検討していただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(斉藤鉄夫君)
 再構築協議会におきましては、地域住民の代表である沿線自治体において様々な形で利用者の意見を聴取していただき、協議に臨んでいただくことを想定しております。加えて、利用者の代表を始め、国土交通大臣が必要と認める者について構成員として協議会への参加を求めることができることとしております。さらに、必要に応じて住民説明会やヒアリング等を実施し、生の声を聞いてまいります。
 協議会における協議に当たっては、障害者や高齢者等を含めた様々な利用者の意見を反映させていくことは重要であると考えておりまして、構成員の選定等については、自治体や鉄道事業者の意見も聞きつつ、実情に応じて適切に行ってまいりたいと思っております。

○木村英子君
 今大臣が必要と認める者について構成員として協議会への参加を求めることができるということですけれども、国が主導するなら、なおさら協議会に障害者や住民の意見を取り入れる仕組みをつくっていただかないと、障害者の社会参加が妨げられていくということになってしまいます。
 先ほどの北海道の障害当事者の方は、日高線が廃線になる前につくられたJR日高線を守る会という団体に参加しておりまして、廃止反対の運動をされてきました。しかし、JR北海道から地元自治体の負担を要求され、それが壁になってなかなか住民としては声が上げづらくなり、最終的には諦めてしまったと言っていました。廃線が決定した後、この守る会では声明が出され、その声明の中では、協議体の中に利用者である高齢者や障害者の団体や社会福祉協議会、自治会などの住民を参加させ、住民の声を、専門家の検証を意思決定に反映することが必要だと言っています。
 北海道の日高市の障害者の方のように取り残されてしまう人が出ないように当事者参画を認めること、そしてそれを法律に明記していくことを改めて強く求めていきたいと思います。
 先日、参考人質疑でも森参考人がおっしゃっていましたけれども、鉄道は公共財と言われていますから、交通弱者の移動の権利の保障についてやはり国が保障していかないと、交通のバリアを抱えている人たちの社会参加が保障されないと思います。少数であっても、障害者の、また高齢者の移動の確保や権利を保障していくための法律として、国土交通省がバリアフリー法を作ったのですから、その理念に沿って鉄道を守っていくことが責務だと考えます。
 公共交通機関の要である鉄道について国が責任を持って維持していただきたいと思っていますけれども、大臣のお考えをお聞かせください。

○国務大臣(斉藤鉄夫君)
 地域公共交通を議論する上で、このバリアフリー法の精神にのっとり、障害者や高齢者を始めいわゆる交通弱者の方々の声にも丁寧に耳を傾けていくことは、これは当然でございます。
 地域の協議の結果、鉄道の高度化による維持又はバスなどへの転換のいずれの結論に至った場合にも、障害者や高齢者を含む利用者のニーズを踏まえ、バリアフリーの観点からも適切な改善策が講じられるよう、今回の新たな支援の枠組みも活用しながら、関係自治体及び事業者と連携しながら取り組んでまいりたいと思います。

○木村英子君
 国交省は廃線ありきではないと言っていますけれども、公共交通機関は誰にとっても必要なインフラであり、特に合理的配慮とかが必要な障害者の方、高齢者の人たちの意見が反映されていないという今の現状を思うと、今回の法案は、赤字路線を廃線にし、重要な足である交通機関を奪い、また障害者や高齢者の移動の権利を脅かしているというふうに感じます。
 障害者や高齢者にとって、電車、バス、タクシーなどの公共交通機関が十分には使いづらい状況の中、そして一つでも欠けてしまうと、私たちの、高齢者や障害者の死活問題です。障害者や高齢者を含め誰もが鉄道の利用から取り残されないように国が責任を持って鉄道の維持に努めなければならないと思いますので、鉄道を廃止する流れを加速してしまうような今回の法案に対しては、れいわ新選組としては反対をします。
 以上で質問を終わります。

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