2023.3.27 参議院 予算委員会集中審議「障害のある子もない子も ともに学ぶためには?」

○木村英子君
 れいわ新選組の木村英子です。
 本日は、日本のインクルーシブ教育の問題点について質問いたします。
 1979年に養護学校が義務化されましたが、私も健常児とは分けられ、障害児だけが集められた環境で教育を受けてきました。
 私は、養護学校高等部を卒業するまで一人で外に出たことがなく、地域に出るまで健常者の友達はいませんでした。そうした幼いときから健常者と分けられてきた経験は、地域で生きていくときのとても大きな弊害となっています。例えば、一人で養護学校の外に出たことのない私は、車道と歩道の区別も分からず、電車の切符の買い方も知りませんでした。また、一人で買物をしたことがなかったので、店員さんに品物を取ってもらったり、お金を払うのを手伝ってもらうとき、怖くてなかなか声を掛けられませんでした。
 なぜなら、施設や養護学校は、食事やトイレなど介護の時間が決められており、自分の意思は認められない環境だったからです。周りの大人たちからは「障害があって何もできないのだから、人に迷惑を掛けず、嫌われない子になりなさい」と小さいときから教えられてきました。そのような環境の中で、自分の意思を伝えることが自然とできなくなり、いつの間にか、相手の顔色を見れば何でも我慢する子になっていました。
 外の世界を全く知らない私が施設を拒否し、社会へ出た理由は、死ぬまで施設にいるのは耐えられなかったからです。そして、私はどうしても健常者の人たちと同じように地域で当たり前に生きていきたかった。それが私の夢でした。
 しかし、社会で生きるためのノウハウを教わってこなかった私が外へ出たとき、電車など乗車拒否やお店などの入店拒否など、社会の合理的配慮が整っていない中で、障害者に対する偏見や差別に翻弄されながら社会に慣れていくのに、38年もたちましたが、いまだに分けられてきたことの弊害に苦しめられています。
 子供の頃から障害がある子とない子が分けられていることによってコミュニケーションが取れなかった時間を取り戻すことは容易ではありません。これからの子供たちに私と同じような思いをもうさせたくはありません。
 そして、今、私のところには、普通学校、普通学級に行きたくても、学校や教育委員会が障害があることで就学を認めてくれなくて困っているという相談がたくさん来ています。
 例えば、ある自治体では、小学校に上がる際の就学先決定において、本人や保護者が普通学校や普通学級に通うことを強く要望しても、教育委員会からはうちの自治体では障害がある子は普通学級には入れられないと言われ、親御さんは度重なる話合いに疲弊し、普通学校に行くことを断念してしまいました。
 このように子供たちを分けてしまうことは、政府が掲げている誰一人として取り残されない社会から逆行していると思います。日本が真のインクルーシブ教育を目指すのであれば、障害児と健常児を分けることなく、自分の望む学校に行けることを保障していくべきだと考えます。
 そして、昨年9月に障害者権利委員会から日本に対する総括所見が出され、(資料提示)資料1のとおり、全ての障害のある児童に対して通常の学校を利用する機会を確保するとあります。また、障害のあるお子さんの普通学校への就学を拒否してはいけないという非拒否条項を策定することが勧告されているところです。


 教育委員会が総合的判断で障害児の意思を無視して就学先を決定するのは、明らかに分離教育を進めているとしか言えません。障害者権利委員会への2028年の報告に向けて、障害児やその保護者が希望する学校に入学できるように法令や制度の見直しをしていただきたいと思っていますが、総理のお考えをお聞かせください。

○内閣総理大臣(岸田文雄君)
 まず、障害のある子供と障害のない子供が可能な限り共に過ごすため、学校の運営や環境の整備、これは重要であると考えます。
 所管する文部科学省において、令和3年6月に、障害のある子供の就学先決定に関する手引、これを改訂し、本人及び保護者の意向を最大限尊重すべきことや本人及び保護者等との合意形成の重要性について教育委員会への周知徹底、これを図っているものと承知しておりますが、今委員の方からのご指摘、話を聞かせていただきながら、政府としては、こうした現行の枠組みの中でこの本人や保護者の意向が尊重され、子供が学校に通えるよう、学校を設置し、運営する権限と責任を有する教育委員会に適切な対応をより促していかなければならない、こうしたことを感じました。
 また、障害者権利委員会の勧告についてご指摘がありましたが、これは法的拘束力があるものではありませんし、各国ごとに様々な制度があるとは承知しておりますが、ご指摘の勧告の障害のある子供を包容する教育を推進すべきという趣旨については、これは十分受け止め、インクルーシブ教育システムの推進に向けた取組、これは進めていかなければならないと思います。そのための環境整備、この特別支援学校等に在籍する子供が増加する中で、本人及び保護者の意向を踏まえつつ、特別支援学校、特別支援学級、通常の学級、いずれにおいても障害のある子供と障害のない子供が可能な限り共に学べるような環境整備、これを進めてまいりたいと考えます。

○木村英子君
 総理からは、保護者の意向を尊重することとか本人の意向を聞くということを言っていましたけれども、実際には、本人の意見や親の意思というのが無視されていく状況が多々あります。本人たちが望む学校の法整備をこれからも検討していただきたいというふうに思っております。
 次に、2021年に医療的ケア児法が施行され、医療的ケア児に対して学校の設置者が看護師の配置などの支援策を行うことが責務になりました。また、特別支援教育支援員に関しては、2007年に支援員に対する財政措置が開始され、学校生活において障害児への支援員の配置がされています。来年度は支援員2200人分の財政措置を上乗せすると言っていましたけれども、財政措置の使い道が限定されていない中で、自治体によっては支援員や看護師を付けてもらえず、普通学校、普通学級に通えない障害児がいます。
 資料2をご覧ください。


 静岡の事例では、親御さんが友達と一緒に学ばせたいという思いで普通学校、普通学級への就学を希望しましたが、しかし、学校側が体制が整っていないという理由で就学を拒否され、特別支援学校に通うことになりました。その後、親の付添いを条件に入学を認められ、今年の1月にその子が亡くなるまで親が付き添って普通学校に通っていたそうです。この親御さんは、子育てと通学の毎日でまともに睡眠が取れない生活の中、丸一日学校に付き添い、ケアや介助を続け、体の限界が心の限界にもつながり、学校へ行けなくなった時期がありましたと言っています。
 看護師の配置がなされていれば、親御さんは安心して子供を学校に通わせていたと思います。障害児が学校に通うには、看護師や支援員の配置は不可欠です。地域の普通学校、普通学級で当たり前に学べる環境を整備するためにも、学校が十分な人的配置をできるよう、市町村に対する財政支援を拡大していただきたい。また、財政措置が支援員の配置につながるよう自治体に促していただきたいと思いますが、総理の考えをお聞かせください。

○内閣総理大臣(岸田文雄君)
 学校における障害のある児童生徒への支援体制を十分に整備していくことは重要であると認識しております。そのため、学校で医療的ケアを行う看護師や、障害のある児童生徒の学校生活上の介助や学習活動上のサポートを行う特別支援教育支援員について、毎年度配置状況を把握し、財政的支援を年々拡充してきております。
 さらに、文部科学省では、令和3年、所管の法令に医療的ケア看護職員と特別支援教育支援員を位置付け、教育委員会に対してその重要性を周知してきていると承知しておりますが、政府としては、今後とも、子供たちが誰一人として取り残されることなく必要な支援を受けられるよう、きめ細かく、まず実態把握行いながら、自治体の教育委員会に対して適切な対応を促してまいりたいと考えます。

○木村英子君
 総理に対して改めて分け隔てることのない教育への支援を強く要望して、質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。

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