【議事録】
○木村英子君
れいわ新選組の木村英子です。
大臣におたずねいたします。
今回、障害者関連の複数の法案を束ねてしまっていますが、それぞれの障害者の苦しい現状が今以上に改善していただけるということをお約束できないでしょうか、お答えください。
○国務大臣(加藤勝信君)
それぞれの審議会において関係者の皆さんの声を聞きながら中身をいろいろ議論していただき、また、その個々の審議会において他の法案との連携性の必要性も指摘をされ、そうしたことも踏まえて、今回、一体的な見直しを行わせていただいたわけでございますので、今回のこうした見直しも含めて、このそれぞれの施策、目的に立った、それぞれの法律の目的あるいは今回の改正案の趣旨に沿ってしっかりと対策を進めていきたい、そうした中で障害のある方々が、医療面において、福祉面において、あるいはまた雇用面において、それぞれが必要なサービスが提供され、あるいはそうした機会が受けれるように努力をしていきたいというふうに思っています。
○木村英子君
私たち障害者が健常者の人たちと同じように社会で生きたくても、障害者への理解が進まないことでの差別、そして法律や制度の不備によって生きにくい現状です。それぞれの障害者の制度がまだまだ整っていない中で、一方的に法案を束ね、審議を尽くさないまま進めてしまうことは、障害者の人権や命の保障を左右することであり、決して許されることではなく、私は障害当事者として憤りを感じています。
一つ一つの制度に多くの課題がありますが、特に今回の改正案で危機を感じたのは、資料1に示されているとおり、障害福祉データベースに関する規定の整備です。今回の改正によって、全国の障害者一人一人の区分認定や支給量などの個人情報をデータベース化し、国や自治体、民間の研究者等がその情報を利用できるようになり、障害者のプライバシーや人権が守られている、守られるのか懸念がされます。
障害福祉データベースをつくる際に利用される側のプライバシーの保護などについて厚労省のお考えをお聞かせください。
○政府参考人(辺見聡君)
今回の法改正に基づきまして障害福祉データベースに収載されるデータにつきましては、障害者本人が特定できないように匿名化処理を行い、氏名、生年月日などの個人情報を識別できないように加工した上でデータベースに収載することとしております。
なお、今回の改正におきまして、情報流出や個人の特定の防止を図るために、データ提供を受けた者に対する特定、個人の特定を目的とする照合の禁止ですとか、漏えい防止等の安全管理義務等に関する法の規定を整備することとしているものでございます。
個人情報の観点から、障害データベースの適切な運用に努めてまいります。
○木村英子君
全国の障害者の個人情報が集まるわけですので、くれぐれも漏えいなどが起こらないように慎重に取り組んでいただきたいと思います。
次に、資料2をご覧ください。
今回の法改正に当たって参考とされた平成30年度の「障害福祉関係データベースの構築に向けた調査研究報告書」には、障害福祉関係データベースと介護データベースを連結することで、高齢障害者が介護保険サービスに切り替わることによる提供量の変化、抑制度合いの分析が可能という記載があり、抑制度合いを示す図表があります。そのため、今回つくられるデータベースが障害福祉サービスの抑制に使われ、障害者の生活が脅かされるのではないかと危惧しています。
実際に、既にデータベース化されている介護保険においては、自立支援、重度化防止という目的で、国がデータに基づいた生活援助の時間数の基準を定めており、その基準を超える時間数を利用する場合はケアプランの届出が義務化されています。資料3をご覧のとおり、この義務化によって基準を超える生活援助の時間数が事実上抑制されている現状がうかがわれます。
障害福祉サービスにおいても、データベースの活用がサービス利用時間数の削減につながっているのではないかという懸念がありますので、今回つくられた障害福祉関係データベースを障害福祉サービスの抑制には使わないことを約束していただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(加藤勝信君)
個々の障害者の方の支給決定においては、障害支援区分や介護を行う者の状況などの個別の事情を勘案した上でこれ市町村が行うこととされております。こうした支給決定における勘案要素について、データ導入後、これは何ら変わるものではございません。
また、データベースを活用した地域分析によって、障害者の心身の状態と障害福祉サービス等の利用状況をひも付けて分析し、これを地域間で比較することができるようになります。こうしたことによって、例えば他の自治体の取組を参考にし障害福祉計画を作成するなど、それぞれの地域の課題を踏まえた地域づくりがより推進されるものと考えているところであります。
データベースは、まさにそうした地域に合った体制づくり等に活用いただくためのものであり、冒頭申し上げたように、個々の障害のある方の給付の抑制のために使うことを考えているものでは全くございません。
○木村英子君
制度をつくる側は、行政はいつも適切な支援のためだとか言われますが、自治体や事業所では誤った運用をされて、障害者の生活において実際にプライバシーの侵害やサービスの抑制を受けているケースがあります。私もその一人ですが、今度作られるデータベースの運用については、そうした誤った運用がされないようにしっかりと私どもは注視していきたいと思っています。
次に、平成30年度と令和元年度の障害福祉関係データベースに関する調査研究は、厚生労働省の事業として国の予算が使われています。研究の実施に当たっては、障害福祉政策や障害福祉サービス等の状況、介護分野等の公的データベース事業に詳しい有識者等を集め、検討会を設置しただけで、障害当事者の参画ではなく、障害者団体からのヒアリングも行われていません。
障害者施策を推進していくためには関係する情報の収集は大変重要だと思いますが、障害者権利条約にもあるように、障害者施策に当事者が参画することは最も重要なことですので、全国の障害者一人一人の極めて個人的な情報を収集して利用するデータベースの構築や運用が、障害当事者の知らないところで進められ、障害当事者の意見が全く反映されていないというようなことはあってはならないと思います。
今からでも、このデータベースの構築や運用において障害当事者の意見がきちんと反映されるような仕組みを整えることが不可欠だと思います。また、その仕組みを検討する場に必ず障害当事者を参画させていただきたいと思いますが、大臣、お答えください。
○国務大臣(加藤勝信君)
ご指摘の平成30年度及び令和元年度に行われた調査研究では、データベースを活用することになる自治体の職員、また研究者の参画の下で検討が行われたところであります。その後、具体的な制度化に当たっては、令和3年より障害当事者も参加する社会保障審議会障害者部会において、当事者団体からのヒアリングも行いながら、データベースについても検討いただき、その報告書を踏まえ、今般改正案を提出させていただいたところであります。
今後、データベースの運用を検討していくに当たっては、今委員からもお話がありましたように、障害当事者の方にも参加する審議会においてご議論をいただくことを考えておりますし、さらに、政省令の検討に当たってはパブリックコメントを実施するなど、障害当事者の皆さんの声が反映されるよう引き続き対応していきたいと考えております。
○木村英子君
私が言いたいのは、データベースの構築、運用について障害当事者の意見が反映される仕組みを整えること、その仕組みを検討するに当たって障害当事者が直接参画できるようにしていただきたいと思っていますので、引き続きご検討をお願いしたいと思います。
次に、厚労省は、今まで障害者団体に対して、現時点においては障害福祉を介護保険と統合しないと今まで言ってきました。これについては、資料4のとおり、国と当事者の間で合意がなされています。
今回の法改正で、障害者関係のデータベースをつくることについては、介護保険にあるデータベースを基にしているような内容となっています。また、高齢者と障害者の自立支援についての考え方が違うにもかかわらず、介護保険のデータベースと障害福祉のデータベースを連結することになっており、障害福祉の制度を介護保険に近づけていく意図も見え隠れしているように思われます。
現在の公費による障害福祉制度の枠組みは今後もきちんと維持していくということを改めて大臣からお答えいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(加藤勝信君)
障害福祉データベースと他のデータベースとの連結解析については、障害福祉サービスの質の向上に向けた取組の推進を図るために行われるものであります。介護保険などの他の制度との統合を行うことを意図しているものではありません。
また、障害福祉制度については、介護保険制度とは法の目的や趣旨が異なること、介護保険の被保険者、受給者の範囲の見直しについて国民的な合意形成が必要であることなどを踏まえると、現行の枠組みの中で対応していくべきものと考えております。
○木村英子君
私たち障害者にとって介護の保障は、命に直結する、なくてはならない重要な制度ですので、現在の公費による障害福祉制度の枠組みは今後もきちんと維持していただきたいと再度申し上げ、質疑を終わりたいと思います。
ありがとうございました。
【反対討論】
○木村英子君
れいわ新選組の木村英子です。
れいわ新選組を代表して、政府の法案に反対いたします。
この日本社会において障害のある女性の生きにくさを身をもって生きてきた私を始め、ALS患者の舩後議員、重度障害を持つ天畠議員、そして多くの当事者と本法案を熟考し、国会で議論してきましたが、賛成には至りませんでした。
本法案では、まず、精神障害者の強制入院がより拡大、強化されようとしています。
また、障害者の区分認定や支給量などの個人情報を蓄積する障害福祉データベースですが、データを集められる側の障害者自身が制度構築の議論からはじき出され、行く行くはサービス抑制につながる懸念も拭い去れません。
また、グループホームからの自立支援は必要でありますが、障害者が地域で暮らす基盤が圧倒的に弱い現状は解決されてはいません。短時間で働く障害者の雇用機会を広げようとする一方で、障害者が法定雇用率の表面的な達成のために利用されている問題を置き去りにしています。
さらに、制度の谷間にいる難病患者への救済を始め、根本的な問題解決がなされてない法案となっています。
最も容認できないのは、精神保健福祉法改正案第1条に発生の予防という文言が残っていることです。
障害者権利条約第17条には、障害者は、その心身がそのままの状態で尊重される権利を有すると宣言されています。
先日の大臣答弁では、当事者を含めた関係審議会において要望がなかったとして、当事者に責任を押し付けました。
これまで障害者が、発生予防という優生思想の下で、身体の自由を奪われ、性ある存在であることを否定され、強制不妊手術等の被害にどれだけさらされてきたことか、政府は真摯に受け止めるべきです。
私は、国連障害者権利条約の批准に基づく障害者差別解消法を立法府こそ遵守するべきと申し上げ、反対討論を終わります。
以上です。