○木村英子君
れいわ新選組の木村英子です。
今回は、障害を持っている人たちにとっての飛行機の現状についてお話しします。
現在、車椅子を利用する障害者が公共交通機関を使うとき、電車やバス、タクシーなどは自分の車椅子のまま乗れるように合理的配慮が少しずつ進んでいます。しかし、飛行機は自分の車椅子から降りなければ利用することができません。
資料1-1をご覧ください。これは舩後靖彦議員が実際に飛行機に乗っている様子です。
現在、航空会社によっては、座位が保てず、座席に座れないお客様に対して機内にストレッチャーが用意されます。ストレッチャーの設置には6席から9席が使われますが、舩後議員の場合は、資料1-2のように、6席分の上にストレッチャーを設置し、手前の通路側に3席の座席があります。
また、資料1-3のとおり、舩後議員をストレッチャーに乗せるまでの移乗においては、介助者と乗務員数人で抱え、機内の狭い通路を横向きで移動しなければなりません。ふだん介護に慣れている人でも、初めて接する乗務員と息を合わせて移動するのはとても難しく、神経を使います。また、ストレッチャーの上まで持ち上げて移乗させるには、通路側の3席が足場を邪魔しているため、細心の注意を払わないと転倒の危険が生じるおそれがあります。また、車椅子に乗ることで体の安定を維持している障害者にとっては、自分の体に合わないストレッチャーに乗ってフライトすることは、身体的にも精神的にもかなりの苦痛を伴います。車椅子は生活する上で欠かすことのできない体の一部ですから、車椅子から離されることは、命の危険を感じるほど怖いことなのです。
また、このような負担に加え、ストレッチャーを利用する場合は、通常の座席料金とは別にストレッチャー料金も追加されるため、経済的な負担もあります。舩後議員が昨年の2月に東京から沖縄に行った際も、通常料金だと片道3万8110円のところ、ストレッチャー料金6万7100円が追加され、片道10万5210円が掛かり、さらに、介助者3人分の座席料金も含めると、合計で片道約22万円も掛かったそうです。また、人工呼吸器を使用している障害者の人がストレッチャーを使わない場合においても、呼吸器などの医療機器を置くために隣の座席料金を追加で求められることもあります。
これは一例にすぎませんが、障害者の人が飛行機に乗る場合、身体的、精神的、経済的な負担がいつものしかかります。ですから、ストレッチャーや医療機器を置く座席の料金設定を見直すように、合理的配慮の観点から国交省として航空会社に助言指導をしていただきたいのですが、どのようにお考えでしょうか。
○政府参考人(和田浩一君)
お答え申し上げます。
ご指摘の医療機器やストレッチャーを設置するために必要となる座席についても、通常の座席運賃よりも安価に別途料金が設定をされております。この料金は航空会社において様々な考慮を行った上で設定しているものと承知しておりますけれども、障害を持たれる方に精神的、肉体的なご負担になっているというご指摘も踏まえまして、更にどのような対応が可能であるか、航空会社とともに検討してまいりたいと考えております。
○木村英子君
ご検討をお願いいたします。
次に、障害者が社会参加するには、あらゆる交通アクセスに合理的配慮が必要です。
日本では合理的配慮という言葉がまだまだ社会に浸透しておらず、障害者への特別な配慮と認識されていますが、合理的配慮が進んでいるアメリカの状況や考え方は日本とは大分違います。
資料2をご覧ください。聴覚障害を持った弁護士である田門浩さんが、アメリカでの合理的配慮に対する考え方をまとめた文章です。例えば、工場の入口に上り階段が取り付けられている場合、その階段は働いている社員が工場に入れるようにするための合理的配慮です。ですから、健常者のために階段があることが当たり前の合理的配慮であるように、障害者にとってスロープがあることも当たり前の合理的配慮ということになります。
この工場の階段の例のように、人はあらゆる場面においてほとんど無意識のうちに何らかの形で合理的配慮を受けています。アメリカでは、そのような合理的配慮を障害者にだけ提供しないのは明らかに差別であると認識されています。しかし、日本では、スロープを取り付けることを特別な配慮と捉える風潮があり、合理的配慮への考え方が進んでいないことを表しています。
飛行機においても、機内の設備は健常者が快適に乗れるように合理的配慮がされていますが、障害者が快適に乗れるようになるには健常者への合理的配慮よりも工夫をしなければならないため、健常者と平等の配慮が受けられない現状にあります。車椅子を利用する人は、健常者と同じように安心して飛行機に乗るために、自分の車椅子で飛行機に乗ってフライトすることを望んでいる人が多くいます。
アメリカでは、十年前から車椅子のまま乗れる航空機の研究が行われており、ここ数年で開発が進んでいる状況です。重度障害者の息子を持つアメリカのミシェル・アーウィンさんは、車椅子で飛行機を利用する際の様々な困難に直面したことをきっかけに、自分の車椅子のまま乗れる飛行機を実現するため、2011年の、オール・ウィールズ・アップという団体を立ち上げました。
資料3をご覧ください。彼女は、飛行機の座席を取り外し空いたスペースに車椅子を固定するシステムを提案し、国や航空機メーカー、航空会社などに働きかけをしてきました。こうした活動が実を結び、航空機の座席メーカーであるモロン・レイブ・シーティングは、車椅子のまま乗れる座席のシステムを試作しました。
資料4をご覧ください。この会社では、サイドスリップシートという座席を開発し、通路側の席を隣の席にスライドできるようにしました。この座席を応用して、資料5のように、通路側の席を窓側の席にスライドして収納し、空いたスペースに車椅子を固定できるようにしました。座席をスライドさせることによって、一般の人と車椅子を利用する人の両方に対応できるため、航空会社が導入しやすくなっています。この試作品については、資料6のとおり、今年の夏にボーイングが用意するテスト環境で安全性などの試験を行うとの内容が報じられています。
実際にモロン社に問い合わせたところ、今後も国やボーイングから必要な支援を受けられれば、1年半以内に実用化できると言っていました。一般的に、この座席を航空機メーカーが採用するかは航空会社の要望次第となります。
資料7をご覧ください。アメリカの航空アクセス法では、航空機を利用する障害者への差別を禁止していますが、現在、この法律の改正案がアメリカの上院で検討されています。改正案には、障害者のニーズに合わせた新しい飛行機の実現を保証することが盛り込まれており、車椅子のまま乗れる飛行機の導入が法的にルール化されれば、こうした航空機の開発、実用化がより早く進むと考えられます。
車椅子を利用する障害者は、一刻も早く健常者と同じように安心して快適に乗れる飛行機を待ち望んでいます。既にアメリカでは開発が進んでいますので、日本においても自分の車椅子のまま乗ることのできる航空機の開発から導入までが早く進むよう、国が積極的に取り組んでいただきたいと思いますが、赤羽大臣のお考えをお聞かせください。
○国務大臣(赤羽一嘉君)
まず、先ほど触れられました合理的配慮ということについて一言申し上げたいと思いますが、私、バリアフリー法を20年来取り組んでくる中で、よく発言をしておりますが、福祉政策としてではなく、当たり前の公共政策として取り組むべきだというふうによく発言してまいりました。それは、まさに今言われた合理的配慮、当然なすべき配慮だというふうな思いで取り組んできたと。そうした中で、新幹線のフリースペースの問題ですとか、駅でのエレベーター、エスカレーター、またホームドアの設置等々をやってきたということ、それは私の思いでもございます。
加えて、その中で、飛行機の今ご指摘のこの問題というのは、やはりバリアフリー政策の中でもなかなかやっぱり技術的にクリアするという意味では一番難度の高いアイテムの一つではないかというふうに思っております。アメリカ自体も、今お話がありましたように、航空機産業の最先端がアメリカでありますが、そこでもまだ開発中であって実用化されていないというふうに承知をしておりますので、これしっかり、今日お話もいただきましたので、国土交通省としても、当該座席のモロン社とボーイングの開発状況をしっかり注視しながら、こうした障害を持たれている方も利用しやすい航空機が我が国にも早く、早期に普及できるように、その開発や導入が促進されるような環境整備につきまして、米国などの海外の航空当局を始め関係省庁、メーカーや航空会社等とも連携をして、対応をしっかり検討してまいりたいと、こう考えています。
○木村英子君
ぜひ、開発の方、よろしくお願いいたします。では、終わります。