2025.3.28 参議院 予算委員会 【集中審議】

○木村英子君
 れいわ新選組の木村英子です。
 今月7日に引き続き、重度訪問介護の告示について質問いたします。
 私は現在、重度訪問介護を利用して地域で生活をしています。食事やトイレなど、生活の全てに介護が必要な重度障害者の私が施設から飛び出し、地域で生きていくには1日24時間の介護が必要ですが、地域での41年間の生活を支えてくれたのは地域の人たち、そして学生さんたちでした。そして、1974年に障害者運動によってつくられた東京都単独事業である重度脳性麻痺者介護人派遣事業が現在の重度訪問介護制度となっています。
 現在のこの制度を利用して地域での生活を実現している障害者は1万2千人以上いますが、制度が施行されてから約半世紀もたっているのにいまだに家の中の介護が中心であり、外出については、資料1のとおり、

資料1:厚生労働省告示第523号

厚労省告示523号の「通勤、営業活動等の経済活動に係る外出、通年かつ長期にわたる外出及び社会通念上適当でない外出を除く。」によって制限されています。(資料提示)
 そして、この制度の利用に当たっては、家の中での食事やトイレ、入浴などの介護内容や外出先など、支給される利用時間数が自治体によって厳しく決められ、十分な介護が受けられない障害者も少なくありません。その上、重度訪問介護は介護保険の介護の単価に比べて低く、取り扱ってくれない事業所も多く、自治体によってはこの制度を導入しないところもあります。

資料2:障害者総合支援法の目的

資料2の障害者総合支援法の目的にもあるように、障害者の地域での生活を支えるはずの重度訪問介護ですが、実際には制度が整っていないことで、介護の必要な障害者が地域で生きることができない状況にあります。
 そんな中で、障害者の方が苦しい現状に寄り添い、一緒に闘っている方で、旧優生保護法の被害者訴訟の大分弁護団団長である徳田弁護士を本日参考人としてお招きする予定でしたが、調整が付かなかったため、ご意見を事前にいただいておりますので、ご紹介します。
「私の友人である脳性麻痺による重度障害者は、私が居酒屋に誘って飲食した際に、このような経験は生まれて初めてだと語ってくれました。障害のない人だったら、プールで遊んだり居酒屋でくつろいだりすることは当たり前に享受する自由です。どうして障害の、どうして重度の障害の場合にだけこのような行為が社会通念上不適当な行為とされるのでしょうか。障害のない人が当たり前に享受しているこのような行為を禁止するという考え方は、障害者差別解消法に違反する重度障害者に対する差別であり、人間の命の価値を選別する優生思想の表れだというべきです。政府は、昨年12月に行動計画を閣議決定し、障害のある人の社会参加を阻む障壁の除去に取り組むことを明らかにしていますが、この行動計画に示された政府としての行動指針にも真っ向から反するものです。私はこうした制限の根拠になっている告示は直ちに廃止するべきだと思います」とおっしゃっています。
 徳田先生がおっしゃっているように、昨年の12月27日に政府が策定した行動計画にこの告示は反していると思いますけれども、総理はいかがでしょうか。

○政府参考人(野村知司君)
 お答え申し上げます。
 ご指摘の告示523号でございますけれども、これは重度訪問介護の給付の対象となる範囲を定めているものでございます。
 この重度訪問介護では、地域での日常生活の中で外出されるの介助を対象にしているところではございます。
 その一方で、公費、税財源による福祉サービスでもございますので、外出ではあったとしても合理的配慮など福祉サービス以外の面での対応が求められるもの、あるいは公費によって介助することが広く社会、納税者に理解が得られるかどうかについて疑問なしとしないものなどについては対象外としているところでございます。
 このように、告示523号というのは重度訪問介護の給付の対象の範囲を定めるものでございまして、そうしたご指摘のような趣旨を持ったものではないものと考えております。

○木村英子君
 私は総理にお聞きしたかったんですけれども、これは違反していることなのでしょうか。総理、どう思われます。

○内閣総理大臣(石破茂君)
 今、政府参考人からお答え申し上げましたが、ご指摘の告示の規定、これは事業主、教育機関などの役割として、障害お持ちの方々に対します合理的配慮の提供を法令上求める中で、重度訪問介護における外出されるときの利用範囲を定めているものでございます。
 したがいまして、この規定を見直すということは難しいと思っておりますが、自治体への補助事業などによって、雇用、教育、福祉が連携しながら、通勤通学など重度障害の方の外出支援を実施をいたしております。
 今後は、今後もといいますか、当事者の方から重度障害者の方が必要としている支援、これを承りながら、引き続いて障害者の方が希望される地域生活の実現というものに向けて取り組んでまいりたいと思っております。
 可能な支援というものをいたすべく努力をいたしておるところでございますが、引き続き、ご要望を丁寧に、真摯に承ってまいります。

○木村英子君
 分かりました。ちょっと納得できませんけれども。
 次に、参政権についてお伺いします。
 私は、2019年の参議院選挙に特定枠を利用して選挙に立候補し、国会議員になりました。しかし、重度障害者の私には厚労省の告示によって政治活動や選挙活動をしてはいけない規制があり、選挙に出られる可能性はほとんどありませんでした。
 そのような中で、政党内で優先的に当選させたい比例候補を指定できる特定枠を利用して立候補しました。この特定枠は、個人のポスターや演説などの選挙運動ができない規定となっています。ですから、私は告示で制限されている政治活動や選挙活動をしなくても当選することができたんです。しかし、当選した後、告示で就労が認められないため、議員活動中は重度訪問介護を使ってはならず、現在まで参議院が暫定的に介護費用を負担しています。
 なぜ障害があるだけで、社会で生きるときにこんなにも権利を制限されなければならないのでしょうか。障害者の現状は、介護報酬が切り下げられ、人手不足で事業所から介護派遣を打ち切られ、自治体からは介護の支給時間を減らされて、施設に行かざるを得ない障害者や亡くなっていく友人を見送るたびに、次は自分の番だという危機感の中で、私は議員になることを決めたんです。
 障害者の厳しい現状を国会に伝えるために私は今ここにいます。
 先ほど徳田弁護士から参政権についてのご意見もあらかじめいただいていましたので、ご紹介します。
「参政権は、憲法によって全ての日本国民に保障されている最も重要な権利です。参政権の中でも、単に選挙に参加するというだけでなく、自らの要求を実現するために政治活動を行う権利は、主権者としての民主主義の根幹を成す基本的な権利であり、障害者にとっては社会参加の象徴という権利です。
 しかしながら、我が国においては、重度障害者の参政権の行使は長い年月認められないまま経過してきました。在宅投票が認められるのに至ったのはごく最近のことであり、今なお多くの自治体が告示523号を根拠として、重度障害者が政治活動を行うことを社会通念上不適当な外出に当たるとして、重度訪問介護の対象から除外しています。
 政治活動を行うことを不適当な外出であるということ、このような対応は、そもそも重度障害者には政治活動に参加する資格はないという烙印を押すのに等しい行為であり、重度障害を恩恵的な施策を享受する立場に閉じ込めるものであって、憲法14条に違反し、障害者差別解消法にも違反する著しい差別と言えます。
 告示がこのような運用をされていることを知りながらこれを放置するのは、政府が昨年12月27日に策定した行動計画が絵に描いた餅にすぎないことを示すことにほかなりません。告示523号を直ちに廃止すべきだと思います」とおっしゃっています。
 そこで、総理に再度質問します。
 私たち介護の必要な障害者が地域で当たり前に生活するには、この重度訪問介護の制度は不可欠です。前回、総理は、この告示の廃止は考えていないが、解釈について自治体に周知すると言っていました。しかし、通知などでは法的拘束力はありませんから、自治体が恣意的に運用しているこの告示の中の社会通念上適当でない外出という文言だけでもせめて見直していただきたいと思うんですが、総理の答弁を求めます。

○内閣総理大臣(石破茂君)
 障害をお持ちの方々の政治参加を進めるということは重要な問題であると認識をいたしております。
 重度訪問介護の利用につきましては、障害者総合支援法上、各市町村において支給の要否が決定されるというものでございますが、選挙運動、立候補予定者の政治活動のための外出であることのみをもって一律に社会通念上適当ではない外出に当たるものではないと、このように考えておりまして、厚生労働省におきまして、自治体に対し、3月14日の関係課長会議の場において広く周知をいたしたところでございます。
 投票所に投票に行かれること、重度訪問介護の、投票所に行くことは重度訪問介護の利用が認められると、このように考えておりますが、政治参加につきましては選挙以外にも様々な活動がございます。参政権というのは、おっしゃいますとおり、投票する権利であり議員になる権利であり、選挙権と被選挙権が参政権の中身でございます。
 当事者の方々のご要望、自治体の考え方、そういうものを承りながら、解釈の明確化というのを図っていかねばならないと思っております。
 木村英子委員が議員として全国民の代表者としてこの場におられるわけでございますから、そのいろんなご意見が、いろんな障害に関わりなく、きちんとこの国会の場において開陳されるということ、それに対して我々が誠実にお答えするということ、それは憲法の要請であるというふうによく理解をいたしておるところでございます。
 よろしくお願いを申し上げます。

○木村英子君
 今総理がお答えになったことは、選挙に出る障害者の場合の権利であって、この政治活動そのものを障害者の方がやっていいかどうかということについてはまだ許可は得られていませんので、その件についても今後追及していきたいと思います。
 以上で終わります。

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