2025.2.5 参議院 国民生活・経済及び地方に関する調査会 参考人質疑テーマ:希望が持てる雇用・労働環境の整備

○木村英子君
 れいわ新選組の木村英子です。
 本日は、参考人の先生方にお話を伺う機会をいただきまして、ありがとうございます。
 まず初めに、浅倉参考人にお尋ねします。
 今回のテーマは「希望が持てる雇用・労働環境の整備」ですが、障害者の置かれている現状は、労働以前に、社会で生活するための保障や環境が整備されておらず、生きづらさを余儀なくされています。介護が必要な障害者の就労についても、厚労省の告示523号によって重度訪問介護、行動援護、同行援護を利用する障害者に対して就労などの経済活動が法的に認められないことで、障害者の社会参加が阻まれている現状にあります。
 私自身、社会では生きていけないものとされ、施設しか生き場がない現実の中で、死ぬ覚悟で地域へ出てきましたが、重度障害者の私が生きていける保障はほとんどなく、障害を理由とした差別と同時に、女性として結婚、出産、育児を体験していく中で、複合的な差別も受けてきました。
 生産性が求められる社会において、障害者の人権はないがしろにされたままで、日々の生活で受けている差別との闘いは終わることがありません。このように障害を理由とする差別が解消されない現状において、2013年に障害者差別解消法が成立し、2014年に障害者権利条約に批准しました。しかし、国会と裁判所は、障害者差別解消法による合理的配慮の義務から除外されているため、障害者が差別を訴えても取り扱ってくれるところは少なく、泣き寝入りせざるを得ない障害者がたくさんいます。
 そんな中で、2022年には国連の障害者権利委員会の対日審査が行われ、総括所見が出されましたが、障害者の権利を保障するための施策が不十分であることとして多数の勧告を受けており、2028年までにその改善を求められています。
 浅倉参考人は、女性差別撤廃条約における選択議定書の批准を求める活動をされています。障害者への社会的弊害をなくしていくために、選択議定書に批准し、国連へ通報できる個人通報制度が障害者にも必要だと思いますが、どのような取組をしたらよいのか、お考えをお聞かせください。

○参考人(浅倉むつ子君)
 ありがとうございます。
 国連の人権委員会である障害者権利委員会が対日審査を行って、その結果出た勧告に従って日本政府が様々にやるべきことが、今、私たちに突き付けられていると思います。
 おっしゃいましたように、私は、女性差別撤廃条約の選択議定書を批准した方がよいという、そういう活動をしておりますけれども、当然、日本は8つある人権条約のうちの選択議定書一つも批准しておりません。当然、障害者権利条約も選択議定書を批准して個人通報ができるようになれば、恐らく日本の司法はもっともっと変わるであろうというふうに思っておりますので、全ての人権条約の選択議定書を日本政府は早めに、早く批准していただいて、そして、国内で解決できない様々な差別を国連の委員会に通報できるような仕組みを是非ともつくっていただきたいというふうに考えております。ありがとうございます。

○木村英子君
 ありがとうございます。
 次に、近藤参考人にお聞きします。
 近藤参考人のインタビュー記事を読ませていただいたところ、介護や育児が女性が働けない大きな理由になっていると。特に介護の方がより社会の理解が進みにくく、話題として避けて通られやすい風潮があると指摘されています。昔から障害者や高齢者の介護は家族の責任として負わされています。それが今、子供にまで及び、ヤングケアラーの問題は深刻な課題です。私自身も、家族が介護などで育て切れずに施設に預けられてきましたから、介護の担い手が家族だけでは限界があることを痛感しています。
 既存の社会保障の枠組みでは、支援が必要な障害者や高齢者が自立して社会参加していくには制度が整っていない現状です。家族に頼らない介護制度の在り方を考えなければ、誰もが安心して働ける環境はつくれないと思いますが、障害者や高齢者が、家族が安心して働ける環境を整えるために国がどのような施策を行うべきなのか、近藤参考人のお考えをお聞かせください。

○参考人(近藤絢子君)
 ありがとうございます。
 非常に単純な話になってしまって恐縮なんですけれども、やはり今ある介護保険、ありますよね、その体制自体がもう既にかなりうまく回っていない、2025年問題とか言われていますけれども、要するに介護労働者が確保できていないということで、そこの問題をまず解決してからじゃないと次のことが考えられる状態にないというのが現状だと思うんですね。
 やっぱり、介護労働の人手が足りないのは、根本的な問題としては介護産業が非常に低賃金産業にあるということで、そこをどうにかしなければいけない。ただ、やっぱり、そこをどうにかするためには、介護保険から拠出されている以上は財源の問題がどうしても出て回るということで、結局、再分配問題と同じで、財源が、どこに財源があるんだというところに帰着してしまうので、なかなか簡単に解決できる話ではないとは思うんですけれども。
 やはり、介護の場合は、新しい制度を工夫することも大事だと思うんですけれども、もう既存の制度自体が維持できなくなりつつあるというのが現実だと思いますので、そこをまず目の前の問題として解決していくというのが先決なのかなというふうに思っております。

○木村英子君
 ありがとうございます。
 最後に、高見参考人にお聞きします。
 今回のテーマでもある仕事と生活の両立についてですが、日本では長時間労働が前提とされているために、介護や育児で正規の職に就けない家族が多く、また、介護による離職率が高い中で十分な賃金を得る労働ができない人も多くいます。また、介護や育児に加え、過重労働により過労死を招きかねない状況にある人もいます。
 高見参考人のおっしゃる長時間労働の是正について、短時間しか働けない人が十分な賃金を得るためにはどのような方策が必要なのか、高見参考人のお考えをお聞かせください。

○参考人(高見具広君)
 重要な論点というふうに承知しております。
 今委員がご指摘のように、短時間しか働けないと、でも十分な処遇を得るというのはもちろん大事な論点で、今、私、今日のプレゼンテーションで働き方改革というのが求められる理由として、それは単なる残業削減ではなくて、それは多様な人材が活躍できる土台をつくるというのが働き方改革の目的だというふうに考えて申し上げたつもりでございます。
 というのは、現在の日本の雇用制度、まあ全部の企業がそうだというふうには申し上げるものではありませんが、特に日本的雇用システムと、製造業、大企業で見られたような日本的雇用であれば、本当にフルタイムで長時間働ける、いつでも残業できる、転勤もできると、そういうふうな言わば無限定の正社員のみしか活躍できないようなモデルというふうにされます。
 それは、今の多様性、多様な人材が活躍できるためには十分な仕組みではないと、全く問題だというふうに考えておりまして、そのためには今の働き方を変えなければいけないと。だから、今のモデルを前提に短時間でもというのではなくて、全体の働き方をやっぱり変えていくことが、やっぱり、何というか、時間はすぐ、少し掛かるところもあるかもしれませんが、日本社会にとって大事なことだというふうに考えるところでございます。
 ありがとうございます。

○木村英子君
 ありがとうございます。大変勉強になりました。
 私の質問は終わります。以上です。

\シェアしてね!/