2023.4.6 参議院国土交通委員会 気象業務法及び水防法改正案質疑「災害時の情報保障について」

【議事録】

○木村英子君
 れいわ新選組の木村英子です。
 本日は、洪水などの気象情報に関する情報保障について、障害者の立場から質問いたします。
 現在、気象に関する情報発信が様々な形で提供されている中、民間事業者が利用者との契約によって気象予報サービスを行うことを促進することなどが今回の法案ですが、洪水などの災害時の情報発信において障害者の命を守るための情報保障や合理的配慮が十分ではなく、障害者が情報から取り残されている状況があります。
 例えば、障害者や高齢者など支援がなければ避難できない人にとっては、いざ災害が起こったときにどこに避難をしたらいいのか、どうすれば防災情報を得られるのか、災害がいつ起こるか分からない中でとても不安を抱えています。障害者や高齢者にとって、避難を一緒にしてくれる支援者はもちろんのこと、災害時に的確な情報を受け取れる環境が備えられているか否かが命を左右します。ですから、早期に避難をするための災害予報情報へのアクセスはとても重要です。
 しかし、実際には、災害予報などの情報を得ようとしても障害者や高齢者には情報アクセスのバリアが多く、予報や警報などの情報を得るための合理的配慮の整備が遅れていることで台風や洪水で逃げ遅れてしまい、たくさんの人たちが亡くなっています。そうした悲惨な現状を招かないためにも、日頃から災害時の情報保障の確保が重要であると考えます。
 資料1をご覧ください。


 国交省が設置していた令和元年台風第19号等による災害からの避難に関するワーキンググループの障害当事者団体向けアンケートによれば、聴覚障害者の場合、東日本大震災のときに、防災無線が聞こえず逃げ遅れた聾者や難聴者などが津波にのまれたと書かれており、聾者、難聴者、中途失聴者のための電話リレーサービスの実施についても、緊急時の対応を具体化するとともに、避難所等に資質を備えた手話言語通訳者を含む情報保障の体制を整備するべきであるとの意見があります。また、ラジオによる情報が視覚障害者に対しては有効なので、放送内容を充実させてほしいとの意見もありました。また、テレビのテロップで情報が流れても視覚障害や知的障害の方々には理解が難しい、避難行動要支援者がいる事業所には、行政の方が事業所に訪問するとか電話で連絡していくことができないのかという意見も出されるなど、様々な問題点や課題が指摘されています。
 資料2をご覧ください。


 昨年10月20日には、聴覚障害者の団体が気象庁に対し、きこえない・きこえにくい人への災害対応に関する施策要望という要望書を提出し、その中では、長官会見や防災解説ビデオなど、貴庁から発信される様々な防災情報にも手話通訳者等を付け、聞こえない人にも情報が届くようにしてくださいとの要望が出されています。
 このように障害者の人たちから災害時に備えての情報保障について要望が出されておりますが、2011年の東日本大震災では、資料3のとおり、

障害者の死亡率が健常者の2倍というデータもあり、災害が起こるたびに多くの障害者が犠牲になっています。
 そのような中で、東日本大震災の被災地である仙台で2015年に開かれた国連防災世界会議では、障害者と防災というテーマで国際的な防災指針である仙台防災枠組がつくられ、障害者、高齢者など、誰も取り残さないインクルーシブ防災という考え方が推奨されているところです。
 これまで国交省では、所管事業者に対して、障害者差別解消法に基づき、その障害に合わせた具体的な合理的配慮の提供に関する対応指針を示しています。例えば、資料4のように、

航空旅客ターミナル施設事業者に対して、聴覚障害のある利用者に対して搭乗に関する情報や緊急情報について音声情報とともに視覚的情報手段として手話や字幕等を提供すると示されており、緊急時も含めた具体的な合理的配慮の提供を求めています。このように、現在国交省で出されている対応指針は障害者への差別解消を促進するために法的に定められているものですが、気象庁においては気象予報事業者などの合理的配慮の具体例が明記されておりません。これでは、一たび洪水などの災害が起きたときに、災害情報を受け取れず、命の危険にさらされてしまう懸念があります。
 ですから、今回の法改正に当たっては、障害者の人が災害時に取り残されないように、気象予報事業者に対して対応指針を示していく必要があると考えます。障害者差別解消法に基づく合理的配慮の提供について、民間事業者に対しても令和6年4月1日から義務化されることになっておりますので、気象庁も民間の気象予報事業者に対して具体的な対応指針を定めるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(大林正典君)
 お答え申し上げます。
 避難に必要な防災気象情報については、障害の有無などにかかわらず全ての国民が適切にアクセスできることが重要であり、今回の法改正にかかわらず今後も国が責任を持って提供していく必要があります。
 現在、気象庁が発表する防災気象情報は多様な手段で国民に提供されておりますが、ホームページにおいて大雨による災害発生の危険度を地図上に表示するキキクルを色覚に配慮した色遣いにするなど、気象庁としてはこれまでも障害者団体や有識者からご意見をいただきながら可能な限り配慮してまいりました。
 一方で、委員ご指摘のとおり、民間の予報業務許可事業者が情報提供を行う際にも障害者等に対して配慮を行う必要があると認識しております。
 国土交通省では、障害者差別解消法に基づく対応指針を作成、策定しており、その基本的な考え方は予報業務許可事業者に対しても適用されるものです。その上で、気象情報の提供における具体的な対応例については、さきに紹介した気象庁による取組を参考としていただけるものと考えております。
 民間事業者においても、例えば、防災情報アプリで色覚に配慮した色遣いにしたり、緊急地震速報を音声だけでなくライトの点灯で伝えるなど、様々な取組が実施されていると承知しております。
 こうした取組がより一層広がるよう、気象庁が情報発信する際には率先して合理的配慮を提供するとともに、民間事業者に具体的な対応例を示すためのガイドラインの作成などについて検討してまいります。

○木村英子君
 今、具体的な対応例を示したガイドラインの作成を検討するというふうに言っていただきましたけれども、ガイドラインやその対応指針を作るに当たっては、障害当事者からの現状を聞き取るということがとても重要かと思います。そういう意味では、現状を把握するということも行っていただきたいというふうに思っています。
 資料5をご覧ください。


 気象庁が令和元年度に津波警報等の視覚による伝達のあり方検討会を開催していますが、聴覚障害者の当事者が委員として参加し、また筑波技術大学の当事者の学生さんからも意見を聴取し、津波フラッグというものが取り入れられました。
 このように、実際の災害時に必要な情報発信の方法が当事者参画によって実現され、聴覚障害者の人の情報発信について、ファクスや手話による電話リレーサービス、ランプや光で知らせるようなシステムなどが導入されているところです。
 しかし、まだまだ合理的配慮が十分には保障されていない現状ですので、それぞれの障害に合わせた支援を必要とする当事者の意見を聴取し、改善していく必要があると考えます。
 資料6のとおり、

先ほどご紹介した仙台防災枠組でも当事者の参画の重要性が指摘されています。災害時に支援の必要な障害者や高齢者が取り残されないように、それぞれの当事者に合わせた防災情報の提供方法や合理的配慮の在り方について、障害者、高齢者の当事者が参画した検討の場を早急につくっていただきたいと思っていますが、大臣のお考えをお聞かせください。


○国務大臣(斉藤鉄夫君)
 国民の命と暮らしを守る上で、障害の有無などにかかわらず、全ての国民が必要な防災気象情報を入手できることは極めて重要なことだと思います。
 先ほど気象庁長官から答弁したとおり、防災気象情報へのアクセスの確保については、障害者や高齢者に配慮しつつ、国が責任を持って対応していく必要があると認識しております。気象庁はこれまでも関係者のご意見を伺いながら取り組んできたところでございます。
 国土交通省としては、委員のご指摘を踏まえ、障害者や高齢者の皆様が情報にアクセスしやすい環境整備を行うことができるよう、障害者団体等の関係団体や有識者にご意見を伺う場を設けるなど、民間事業者も含めた気象サービス全体でしっかりと取り組んでまいりたいと思っております。

○木村英子君
 ありがとうございます。
 障害当事者の参画の話合いの場をつくっていただき、ガイドラインとか対応指針の作成について早急に進んでいきますように取り組んでいただきたいという願いを込めまして、質問を終わりたいと思います。
 以上です。

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