常時介護を必要とする私が参議院選挙に当選し、登院するにあたり、それまで利用してきた重度訪問介護サービスが使えないという問題で、国会での活動ができるように当選直後より訴えてきました。
私が求めてきたことは、厚生労働省の告示523号に記載された外出の介護についての制限の撤廃です。この告示では、仕事などの経済活動に関わる外出や、通学などの通年かつ長期の外出、また社会通念上適当でない外出を除くと記載されています。
このため、私や舩後議員は、国会活動中の重度訪問介護が使えなくなり、登院できない事態となったのです。
私たち重度障害者は、食事、トイレ、着替え、入浴、移動、すべてに介助が必要です。介助者がいなければ、水一杯飲むことも、外にでることもできず、社会参加どころか生きていくことすらできません。
ですから、重度訪問介護は私たちの命を支える重要な命綱であり、命を保つための日常生活と労働を分けて考えられるものではありません。今回の決定が障害者の命と権利を阻害する危険をはらんでいます。
また、全国の障害者が通勤、通学、通所のための介護が利用できない事態が続いており、自治体によっては、この告示に基づき、介護のサービス利用の手引きやガイドラインなどを作成し、恣意的に社会参加を制限することも行われています。
例えば、「社会通念上適当でない外出」として、居酒屋に行く等の飲酒を伴う外出や、政治活動、募金活動や宗教活動などを認めず、また、「通年かつ長期にわたる外出」として、通園や通学、学童保育への送迎、週2回以上の稽古事などは支援の対象としないと記載している自治体があります。
このように、この告示の記載は、日本国憲法が保障する人権、障害者権利条約に反するばかりでなく、障害者基本法や障害者総合支援法の規定にも反しています。
介護の必要な障害者の基本的人権を侵害するこの告示記載の撤廃こそ私たちが求めてきたことなのです。
16日に厚労省の労働政策審議会や20日の閣議決定で明らかとなった障害者の通勤や職場等における支援の検討は、上述の告示記載の撤廃をそもそも検討しておらず、私としては強く失望しております。
職場に通勤する障害者については、雇用納付金の財源を介助のための費用に充てるとしています。この納付金は、障害者の雇用率未達成の企業から徴収しているものであり、雇用率の達成が進めば、この財源は減っていくものです。
また、在宅での就労を行う者については、地域生活支援事業で支援するとしています。地域生活支援事業は、国と都道府県の包括補助金で市区町村が運営するものであり、どの項目にいくら充てるかについては、自治体間に大きな差があります。
したがって、政府内で検討されている制度は、きわめて不安定なものであることは明らかです。また、就労にのみ特化して検討する姿勢については、就労できない障害者の人権についてはおろそかにするものであるとの懸念を抱きます。
私は、8月5日に質問主意書を提出し、上述の告示記載の見直しを求めました。また、10月10日には、多くの障害者団体の皆さんにお集まりいただき、介助をつけての社会参加を求める院内集会を行いました。その場では、各地から、介助が保障されないために生活が逼迫しているという実情が多く報告されました。
こうした全国の仲間の思いを受けて、私は、告示記載の撤廃を求めて活動して行きます。 これから、私たちは、障害者の人権が保障されている社会を目指し、障害者の社会参加を実現するための命綱である重度訪問介護をはじめとするすべての介助制度の改善を強く求めていきます。