2025.12.2 参議院 国土交通委員会「エレベーターの設置に向けて 学校のバリアフリー化を」

○木村英子君
 れいわ新選組の木村英子です。
 本日は、バリアフリー法における学校のバリアの解消について質問します。
 2020年にバリアフリー法が改正され、公立の小中学校のバリアフリー化も義務化されました。この改正を受けて文科省は、2025年までに、整備計画に従い、既存の学校も集中的に整備を進める目標値を設けています。しかし、資料1にあるとおり、

資料1:公立小中学校のバリアフリー化の状況(2024年9月1日時点)
出典:文部科学省「学校施設のバリアフリー化に関する実態調査 調査結果のポイント 調査時点:㋿6年9月1日時点」より木村英子事務所作成
資料1

2024年9月での実施率は目標に届かず、段差解消すら3分の2程度であり、整備計画自体、まだ3割の自治体しか作成されていません。このような状況において特に進んでいないのがエレベーターの設置であり、車いすを使用する子どもが普通学校に通うことができず、また体の不自由な教師や保護者などが学校に来られない設備となっています。
 資料2をご覧ください。

資料2:学校バリアフリー化における整備目標
出典:令和2年12月25日2文科施第347号 文部科学省大臣官房文教施設企画・防災部長「学校施設におけるバリアフリー化の一層の促進について(通知)別添資料1-1」より木村英子事務所作成
資料2

学校のバリアフリー化における整備目標においては、エレベーターを必要とする障害のある児童生徒が在籍する全ての学校にエレベーターを優先的に整備することが目標とされています。しかし、既存の学校においては、老朽化対策の大規模改修が優先される自治体が多く、卒業までエレベーターが設置されないことは珍しくはありません。そのような中で、公立中学校に通っている障害のある子どもが、中学に入学する前からエレベーターの設置を自治体と学校に要望しても設置がなかなか進まず困っているという相談を受けたことがあります。
 資料3をご覧ください。

資料3:キャタピラの階段昇降機で階段を上っている様子(写真)木村英子事務所撮影・作成
資料3

これは以前、私が実際にその学校を視察した際にキャタピラ式昇降機に試乗したときの写真ですが、この昇降機は階段の段差にキャタピラ部分をはめて動くため、もし外れた場合、車椅子に乗っている子どもと後ろで操作している職員が一緒に落下してしまうおそれがあり、とても危険です。実際に、学校ではありませんが、2009年から現在まで、4件の死亡事故を含む17件の事故が起きています。
 資料4をご覧ください。

資料4:国の目標におけるエレベーターの代替手段の範囲
出典:令和3年11月11日文部科学省大臣官房文教施設企画・防災施設企画課事務連絡「学校施設におけるバリアフリー化のための方策等について」より木村英子事務所作成
資料4

文科省は、学校施設におけるバリアフリー化のための方策等についての通知の別添資料で、エレベーターの代替手段として車椅子に乗ったままでは乗降できないその他の簡易的な昇降機等は含まないとして、キャタピラ式昇降機の例を付けて注意喚起しています。しかし、各自治体では、比較的安価で、ほかの学校にも使い回しができるとして、キャタピラ式昇降機を使い続けている学校があります。いまだにエレベーターの代替として不適切とされているキャタピラ式昇降機がずっと使われ続けていることは、障害のある子どもが安心して学ぶ権利の侵害であり、差別的取扱いに当たると考えます。
 既に文科省は先ほど示した学校施設におけるバリアフリー化のための方策等についての通知を2021年11月以来4回にわたって出しているのですから、国交省が推奨する昇降機に変えるように全国の学校設置者に助言するとともに、新しく購入しないように通知を出していただきたいと思いますが、文科省の見解を求めます。

○副大臣(中村裕之君)
 ご質問にお答え申し上げます。
 議員ご指摘のとおり、学校施設のバリアフリー化を推進することは文部科学省としても大変重要なことだというふうに認識をしています。
 文部科学省では、学校施設におけるバリアフリー化を進めていますけれども、令和2年度には公立小中学校等施設に関する整備目標も定め、今進めているところであります。この整備目標で設置を求めている昇降機の範囲には、ご指摘のように、キャタピラ式の簡易的な昇降機等は含まない扱いであること等についてこれまでも学校設置者に通知をしてきたところであります。あくまでも法令に基づいたエレベーター等を整備するように要請をしてきているところであります。
 また、本年、令和7年8月に発出した通知において、エレベーター設置について、その重要性を十分に設置者としても認識をして計画することを要請するとともに、早期にエレベーターの整備が行われない場合があっても、法令に適合した段差解消機等の活用も含めてしっかりと計画するように要請をしてきているところであります。
 今後とも、学校設置者における適切なバリアフリー化の取組が進められるよう、全国の学校設置者を対象とした講習会において、ご指摘のこの可搬型のキャタピラ式の昇降機の事故情報などの必要な情報提供も含め丁寧に説明を行うなど、改めてエレベーターや法令に適合した段差解消機を整備するように強く促してまいりたいと思います。

○木村英子君
 ありがとうございます。
 実際にキャタピラ式がどんなに怖いものかということを分かっていただくためにも、文科副大臣、そして金子大臣にもキャタピラ式に是非乗っていただけたらと思います。
 じゃ、次に、文科省は、学校施設におけるバリアフリー化の一層の推進についての通知で、障害のある児童生徒が支障なく安心して学校生活を送ることができるよう、既存施設を含めた学校施設のバリアフリー化を一層推進していくことが重要であるとしています。しかし、特別支援学校はほとんどバリアフリー化されている一方で、普通学校を希望する子どもの入学においてはエレベーターなどのバリアの解消が遅れています。
 一部の自治体では、2016年から始まった切れ目ない支援体制整備事業などを使って、障害のある子どもの情報を幼児健診、定期保育園、幼稚園、児童発達支援事業者等などから把握し、教育、福祉、医療、保健で情報共有を進めています。自治体は入学予定の障害児の情報を事前把握しているのですから、入学時までにエレベーター設置はできたはずです。しかし、何年も準備期間があるのにエレベーター設置が一向に進んでいないのは、これらの情報が十分に活用されていないことが原因だと思います。エレベーターの設置を進めるためには、入学までに間に合うように、入学予定の子どもの情報を事前把握と整備計画が重要だと考えます。
 子どもたちが障害のあるなしで分けられずに、地域の学校で共に学び、育つ教育の権利を保障するためには、今後、通知にあるように、自治体が把握している子どもの情報を活用し、入学するまでにエレベーターの設置などのバリアの解消を進めることを自治体に指導していただきたいと思いますが、文科省の見解をお願いいたします。

○副大臣(中村裕之君)
 お答え申し上げます。
 公立小中学校等施設のバリアフリー化に関する整備目標では、配慮の必要な児童生徒等が在籍する全ての学校にエレベーターを設置することを目標としているところであります。また、各教育委員会においては、関係部署と連携し、配慮の必要な児童生徒等の入学予定の情報を把握し、バリアフリーの整備を進めることについても要請をしてきたところであります。
 文部科学省としても、現状として、整備目標に対して進捗が十分でないと認識しておりまして、令和7年、本年8月に早期の整備目標の達成を改めて学校設置者に要請しているところです。また、配慮が必要な児童生徒の入学予定情報等を早期に収集し、バリアフリー化を行っている自治体の取組、例えば草津市ですとか豊田市ですとか、そうした事例も出てきており、有識者会議の取りまとめにそういった事例も盛り込んで積極的に周知をするなど、各自治体におけるバリアフリー化の取組を促進してまいります。
 文部科学省としては、学校施設のバリアフリー化が着実に進むよう、引き続き、今後も自治体における実践例を把握しながら、配慮が必要な児童生徒等の入学に合わせた計画的なエレベーターの設置等も含め、必要な要請や情報提供等を設置者の方に行ってまいりたいと思います。

○木村英子君
 ありがとうございます。
 子どもの成長というのは待ったなしですので、普通学校に通いたいという子どもがいましたら、入学するまでにエレベーターの設置ができるように早急に進めていただきたいと思います。
 次に、高校のバリアフリーの義務化について質問いたします。
 2020年のバリアフリー法改正でようやく公立小中学校のバリアフリー化が義務化されましたけれども、高校については努力義務のままとなっています。そのため、国の予算も付かず、エレベーターの設置がされていないことで、障害のある生徒が自由に受験校を選べない状況があります。
 資料5をご覧ください。

資料5:新聞記事 車いす利用者選べない「15の春」エレベーター無い志望校 拒む空気感じた
出典:2025年10月19日付朝日新聞より木村英子事務所作成
資料5


 この新聞記事では、岐阜県に住んでいた障害のある女性が中学生だった頃、高校受験のために希望する高校を5か所見学しましたが、どの高校にもエレベーターが設置されておらず、希望校の受験を諦めるしかなく、自宅から一時間掛かる高校に進学したそうです。
 現在、99%の子どもが高校に進学し、私立を含めほぼ無償で通っていますので、高校は実質的に義務教育化していると言えます。しかし、いまだにエレベーターなどのバリアの解消ができていないことで、高校に通えない障害のある生徒がいます。

資料6:エレベーター設置に関する留意事項
出典:令和7年8月22日 7文科施第413号 文部科学省大臣官房文教施設企画・防災部長蛯名喜之「学校施設におけるバリアフリー化の一層の推進について(通知)」より木村英子事務所作成
資料6


 資料6をご覧ください。
 文科省は、今年の8月22日に出した学校施設におけるバリアフリー化の一層の推進についての通知の中で、エレベーターについて、義務化されている公立小中学校以外の学校でもバリア解消の取組を進めていくよう、各自治体に要請しています。しかし、国が予算を付けず、財源の確保が難しい自治体任せでは、高校のバリアフリー化は一向に進みません。
 2022年5月24日の本委員会での質疑で、斉藤前国交大臣に対し、文科省とともに学校のエレベーター設置を早急に進めるよう要請しました。これに対して斉藤前大臣は、文科省とも連携しながら、学校の適切なバリアフリー化の促進に向けてスピード感を持って取り組んでまいりますと答弁されています。
 エレベーターが設置されていないことで障害のある子どもが希望の学校を選べないことは、障害を理由とする差別的取扱いに当たると考えます。誰もが希望の高校に通えるように、高校もバリアフリー化の義務化の対象となるよう早急に検討していただきたいと思いますが、金子大臣の見解を求めます。

○国務大臣(金子恭之君)
 高等学校を含む学校のバリアフリー化の促進は、障害を持つ児童や生徒の学習機会の確保という観点から重要であると認識をしております。
 委員ご指摘のように、2020年のバリアフリー法の改正によりまして、特別支援学級の設置が一般化されている公立の小中学校については、バリアフリー基準の義務付け対象に追加したところであります。また、ご指摘の高等学校など公立の小中学校以外の学校については、バリアフリー基準への適合は努力義務とし、その上で、地域の実情に応じて、地方公共団体の条例によりまして義務付け対象に追加することが可能となっております。現在、18の自治体が高等学校を含む公立の小中学校以外の学校についてもバリアフリー基準への適合を義務付けております。
 引き続き、教育行政を所管する文部科学省と連携をいたしまして、条例の制定の検討を行うことを地方公共団体に働きかけてまいります。
 一方、高等学校のバリアフリー化を全国一律に義務付けることについては、高等学校のバリアフリー化の実態について詳細に把握した上で検討する必要があります。バリアフリー法を所管する国土交通省としましては、児童や生徒の教育を所管している文部科学省と緊密に連携し、まずは速やかに実態把握に取り組んでいただいた上で、高等学校のバリアフリー化をどのように進めるべきか検討を行ってまいります。

○木村英子君
 ありがとうございます。
 障害のある子どもが安心して希望する高校に通えるように、エレベーターの設置を早急に進めていただけたらと思います。
 以上で終わります。

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