2022.11.8 参議院・国土交通委員会『駅で車いすの人が長時間待たされるのはなぜ?』

【議事録】

○木村英子君
 れいわ新選組の木村英子です。
 本日は、前回に引き続き、障害者が鉄道を利用する際のバリアについて質問いたします。
 鉄道は社会生活を送る上で誰にとっても重要なインフラですが、障害者はそれぞれ違う障害があるように、必要な配慮が違います。例えば、医療的行為が必要な障害者の方の場合、人工呼吸器の電源確保は生命を維持していくために欠かすことのできないインフラの一つです。
 現在、新幹線には電源が設置されていますが、それらはお客さんへのサービスとしてパソコンやスマホの充電に使えるようになっています。人工呼吸器を使用している障害者の方の場合、電源が切れることは人工呼吸器が止まるということであり、即命を失う危険性があります。そのために、外出する際には常に非常時のための予備バッテリーを持って出かけています。新幹線に乗ったときには既存のバッテリーが切れないように車内の電源を使わせてもらいますが、駅員から車内の電源を使うなら同意書を書かないと乗車させないなどと言われ、新幹線を利用できない状況がありました。


 その後、2009年に障害者団体が国交省に対して改善を求め、資料1のとおり、国交省がJRに誓約書等の提出は不要であるということを確認し、その旨を障害者団体に回答しました。しかし、その確認を交わした後もこのような対応は続き、2017年には、人工呼吸器を使用している障害者の方がJR西日本のお客様相談センターに新幹線の予約の電話をしたところ、電源を使うなら一切の責任を問わないことに同意いたしますという内容の同意書を書くようにと言われました。
 このような対応は駅員によって異なることから、人工呼吸器を使用している障害者は新幹線を利用するたびに不安を感じています。ですから、健常者のお客さんがスマホなどを利用するのと同じように、人工呼吸器の電源も当たり前に使えるようにしていただきたい、その上で、国交省が障害者団体に対して示した回答書を遵守し、人工呼吸器等を使用している障害者が安心して乗車できるようにJR各社に対して改めて周知徹底を図っていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(上原淳君)
 お答えいたします。
 JR各社に改めて確認をいたしましたところ、現在、電源を用いる人工呼吸器等を利用する方が新幹線を乗車する際に同意書、誓約書の提出は不要とのことでありました。
 JR各社には、その方針どおりに適切に対応するよう、改めて周知徹底してまいります。

○木村英子君
 余り時間をかけずに指導の徹底を今後もお願いしたいと思います。
 次に、障害者が鉄道を利用する際、改札からホームに行き、そこから電車に乗って降車駅までの間、いくつものバリアに遭遇します。特に、介助の必要な障害者にとっては、駅員などの人的支援がなければ乗車することはできません。
 私たち車いすユーザーが電車を利用するとき、必ずと言っていいほど遭遇する最大のバリアは、改札で駅員に介助をお願いしても10分以上は必ず待たされるということと、私鉄からJRの乗換えに至っては30分から1時間近く待たされるということが当たり前になっているということです。
 さらに、全国のJRでは、降車駅に連絡が付くまで車いすの人は電車に乗せないという原則になっていることで、車いすのお客さんを案内する際、駅員が降車駅への連絡が取れない限り、たとえ目の前に電車が止まっていても駅員は決まりを盾に乗せてはくれません。結局、そのせいで何本も電車を見送るしかなく、予定があっても目的地に1時間近く遅れるのは当たり前になっている現状です。これでは、車いすを使用する障害者は社会生活を円滑に送ることはできません。
 資料2をご覧ください。

 国交省は、平成30年3月に、「鉄道における車椅子利用環境改善に向けた調査」において、鉄道における障害者の困り事についての実態調査が実施されています。そこでは、8割の障害者の方が駅で乗車までの対応に時間がかかって困ったと回答しており、その半分以上の方が予定に変更やキャンセルが生じたと回答しています。
 また、資料3のとおり、この調査では当事者からの苦情が多数書かれています。

 さらに、資料4では、駅員から、人の手を借りないといけない人は外に出ないでほしいという差別的発言を受けた人もいます。

 私の経験ですが、人手が少ないので車いすから降りて階段をはっていってくださいと駅員から言われたり、降車駅で待っていた駅員から、夜は対応できる駅員が少ないんだから終電なんかに乗るなと言われたこともあります。
 このようなJRの対応は国鉄時代から全く変わっていません。すでに2018年には調査報告書が出され実態把握がされているはずですが、それから5年も近くたっているのに、報告書に書かれている課題はいつ解消されるのでしょうか。障害者差別解消法において合理的配慮の提供が義務化されようとしている中で、国交省として十分な指導を行っていないことの結果だと思います。
 2018年の調査を踏まえて今まで国交省が鉄道事業者に対してどのような指導を行ってきたのでしょうか。お答えください。

○政府参考人(上原淳君)
 お答えいたします。
 車いす利用者などが駅を利用する際、乗車駅と降車駅の両方におきまして介助を行う人員を確保するために時間を要し、乗車までお待たせしている事例が依然としてあることを改めて認識いたしました。
 ご指摘のとおり、平成30年3月に障害者団体、鉄道事業者等から成る会議体におきまして、車椅子利用環境の改善に向けた方向性を取りまとめたところでございます。乗車までに時間を要していることに対しましては、携帯端末へのアプリケーションの導入などによる情報共有体制の確立等を改善方策として示され、示しております。
 この取りまとめ以降、利用者の乗車位置等を降車駅にリアルタイムで共有する駅係員用のアプリあるいはトランシーバー、簡易無線等の導入が進んでおります。現在、大手民鉄等におきましては、こうしたリアルタイムで情報共有するシステムが活用されているところでございます。
 国土交通省としましても、乗車までの待ち時間の短縮に向けまして、各鉄道事業者において実施しているこうした好事例を共有することなどにより、鉄道事業者に対応を促してまいります。

○木村英子君
 この待たされる問題を解決するためには、アプリやトランシーバーなどのハードのバリアの改善だけではなく、駅員不足の解消が最も必要だと思っております。介助の必要な私たち障害者にとっては、人の支援があって初めて安心して駅を利用できるのです。
 日本は、2014年に国連の障害者権利条約に批准し、障害者差別解消法では合理的配慮の提供が義務化されるという時代を迎えながらも、何十年もいまだに障害者が安心して交通機関が使えない現状ですから、障害者の社会参加も進まないはずです。
 資料5をご覧ください。当事者がJRに対して改善を求めて4万2000人以上のネット署名が集まっています。

 斉藤大臣は、先月、このネット署名を当事者から直接受け取ったと聞いています。国交大臣として、障害者の社会参加を少しでも前進させるために、駅で待たされることなく電車に乗れるように早急に改善していただきたいと思っていますが、大臣のお考えをお聞かせください。

○国務大臣(斉藤鉄夫君)
 木村委員の資料5にございますこの署名簿、先日受け取りました。そのときにもこの資料5の写真が使われておりました。
 これは広島の私電の写真で、大変、いわゆる乗務員の方が本当に親切にいろいろな対応をしてくれたということで、この写真を使って、本当に待たずに乗れて、降りるときにもきちんとした対応があったということで、この写真を使ったというふうに私も聞いております。そのときに署名を受け取りました。
 車いす利用者の方が安心して電車に乗れ、かつ待ち時間もないという、そういう、そうするためには、利用の多い主要な駅では介助のための要員を配置すること、また、イベント等に伴い一時的に利用者の増加が見込まれる駅では対応者を増員することなどの対応が考えられます。
 国土交通省としては、各社の取組の共有や改善方法の具体化等を議論するため、年度内にも検討会を開催いたします。このことも含めましてしっかり対応を考えてまいりたいと思います。

○木村英子君
 今日も多くの障害者の人たちが電車を利用して待たされているという方がたくさんいらっしゃると思います。
 ですから、今年度中に必ず検討会を開いていただきたいと思います。よろしくお願いします。
 以上です。ありがとうございました。

\シェアしてね!/