2025.3.24 参議院 厚生労働委員会「障害者の地域生活の窮状を問う!」

○木村英子君
 れいわ新選組の木村英子です。
 本日は重度訪問介護について質問します。
 私は現在、重度訪問介護制度を利用し、1日24時間の介護を受けながら地域での生活をしています。しかし、私のような生活の全てにおいて介護が必要な重度障害者は、介護者がいない場合、施設しか行き場はなく、地域で暮らすことは実現不可能であり、このような現状は私に限らず多くの障害者が直面している現実です。事実、幼い頃から一緒に育った仲間の多くは今も施設にいます。
 私は、死ぬまで施設にいるのが耐えられなくて19歳のときに施設を飛び出し、障害者団体に助けられて地域での生活を始めました。当時は、施設中心の国の政策が当たり前の社会の中で、重度障害者の私が地域で生きるための介護制度はほとんどなく、毎日毎日、食事やトイレの介護をしてくれるボランティア探しをするしか生きるすべはありませんでした。
 そして、障害者団体の運動によって、1974年に東京都の単独事業として重度脳性麻痺者介護人派遣事業が施行されました。この制度は、障害者自身が探してきた介護者を自治体に登録して利用できる制度として誕生し、障害者の地域生活の礎となり、多くの障害者が地域での生活を実現していきました。そして、この制度は、変遷を繰り返しながら現在の重度訪問介護となっています。地域で生きる障害者の命や生活を支えている要の制度でもあります。この制度が生まれなかったら地域で生活することはできませんし、今のように障害者の自立と社会参加が実現されてきたと言っても過言ではありません。
 しかし、2003年に支援費制度に変わり、国の介護の派遣が民間事業所に移行され、資格取得が厳格化されているうちに、介護者を募集しても集まらず、今や制度があっても人手不足は解消されず、むしろ介護に携わってくれる人の数は減り続けています。介護者不足が解消されない中で、重度障害者は生活ができなくなり、地域で生活することを諦めて施設へ行かざるを得ない状況を招いています。私の今の現状も地域へ出てきた40年前とは変わらず、街頭や大学などでビラをまき、自分で介護してくれる人を探し続けなければ生活ができない状態です。
 そして、その窮状を私が住んでいる多摩市に訴え、

資料1

資料1のとおり、2012年5月から、自分で探してきた介護者を自治体に登録して利用できる多摩市障がい者自立生活サポーター支援制度が施行されました。介護者不足の中で、地域の人や大学生など資格がない人たちに介護をしてもらいながら、何とか今の生活を維持しています。
 しかし、コロナ禍での離職も重なり、人手不足はますます深刻化しています。現在の資格重視の制度だけでは、私たち介護の必要な障害者の生活は壊されていくばかりです。私は施設に戻されたくはありません。これから地域で生き続けるためにも、先ほど紹介した自治体の取り組んでいる制度のように、資格がなくても介護に携われる制度をつくっていただきたいと思いますが、厚労省の見解を求めます。

○政府参考人(野村知司君)
 お答えを申し上げます。
 市町村におきましては、総合支援法に基づく障害福祉サービスのほかにも、地域生活支援事業であったりとか、あるいは先ほどご紹介あったような単独事業、独自の取組ということも組み合わせながら、地域の特性であるとかあるいは利用者の方々の状況、そういったものなどに応じて柔軟な取組をいろいろ展開をしていただいているところと承知をしております。
 ご指摘の人材確保といいましょうか、人材不足の状況でございますけれども、厚生労働省といたしましても、この障害福祉分野での人手不足、こういった厳しい状況に対応するために、報酬改定でありますとか先般の補正予算の中で従事者の方々への処遇改善、賃上げといったものを実施していくほかに、この障害福祉の仕事の魅力発信とか、あるいは職場体験、さらに職員の資質向上とか職場環境改善、こういったものを組み合わせながら取組を進めているところでございます。
 一方で、重度訪問介護でございますけれども、やはりこれはサービス、この公的な福祉サービスの一定の質の確保が必要という観点からすれば、やはり従事する方々には、職業認定でございますとか、介護技法などに関する重度訪問介護従事者の養成研修などを受講をしていたことを求めているところでございます。
 引き続き、こういった人材確保の観点、各種施策進めているところではございますけれども、自治体の方で独自に取り組んでおられる事柄、こういった取組なども参考にしながら、障害福祉分野での人材をしっかり確保できるように努めてまいりたいと考えております。

○木村英子君
 今政府参考人が言ったことには納得できないですね。なぜなら、自治体は、重度障害者が介護者がいなければ生きられないという実態に対して、新たな独自の制度を立ててまで命を守ろうとしているわけです。国がそれに何も講じないということは、新たな人材を確保することができないじゃないですか。この問題は私たち障害者にとっての死活問題なんですよ。
 ですから、大臣、お伺いします。
 実際に、私の今の生活は、重度訪問介護だけでは介護者が見付からなくて、この先ほど言った多摩市のサポーター制度を利用して介護者に来てもらって、やっと生活を送らせています。この制度がなくなれば、地域での生活は私はできなくなり、施設に行くのはもう待ったなしです。
 コロナ禍では、拡大する感染を恐れて障害者の介護派遣を打ち切る事業所が増え、ヘルパーや介護者が誰もいない日々の中で、私たち障害者は、食事も取れず、トイレすらもできず、体調や障害が重くなり、コロナにかかって、介護してくれる人がいなくて、病気が悪化して、入院する人や亡くなってしまった友人もいます。平時においても介護者不足ですけれど、コロナ禍では命がなくなることを覚悟しなければいけない状態でした。そんな厳しい状態の中で助けてくれたのは、時折来てくれるボランティアの存在でした。いつ収束するか分からないコロナ禍において、障害者の中には介護者がたった一人で何週間も介護を続けざるを得ない状況の人もいて、限られた人だけでは介護を続けることは限界がありました。
 そんな状況の中で、私は厚労省に対して、コロナ禍の緊急事態に対応するために資格がなくても重度訪問介護の制度を使えるようにしてほしいと要望しました。
 資料2をご覧ください。

資料2

 厚労省は、令和2年4月28日付けで、新型コロナウイルス感染症に係る障害福祉サービス等事業所の人員基準等の臨時的な取扱いについてという事務連絡を発出しています。重度訪問介護などの訪問系サービスに関して、資格のない者であっても市町村が認める者であれば支援に従事することとして差し支えないということを自治体に周知しています。この通知によって介護に入ってくれる人が見付かって、命を保つことができ、助かった人たちがたくさんいます。
 しかし、コロナ禍が終わっても介護者不足は深刻な状況はいまだに変わりません。このままでは国会に通うどころか、私は施設に入るしかない状況になってしまいます。多くの障害者の地域での生活も壊されてしまうんです。私は、議員である前に障害当事者なんです。障害者としての現実から逃げることはできません。障害者権利条約の中でも、私たち抜きに私たちのことを決めないでというスローガンがあります。私は、その当事者の声を国会に届けるためにここにいます。
 厚労省は、コロナ禍では資格がない人でも介護に携わることを運用することを行ってくれていましたから、この深刻な人手不足を解消するために、障害者の地域での生活を守るためにも、住み慣れた町の住民の方や学生さんなど、地域のコミュニティーを生かした多様な人材を確保するための新たな制度が必要だと考えます。
 無資格の人でも介護に携われる介護制度を早急につくっていただきたい。

○国務大臣(福岡資麿君)
 まず、ご指摘の措置につきましては、コロナ禍の際の臨時的な措置といたしまして、新型コロナウイルス感染症の影響により一時的に人員基準上の必要な資格を持った人員が確保できない場合に、当該資格のない方であっても、他の事業所等で障害者等へのサービス提供に従事したことがある方についてサービス提供に支障がないと市町村が認める方であれば当該支援に従事可能としたものでございます。これは臨時的な措置といたしまして、新型コロナウイルス感染症が通常の医療提供体制へ移行されたことを受けて既に終了しているというのはご指摘のとおりでございます。
 委員ご指摘がありましたように、障害を持った方々が地域の中で生活していただくこと、それを支援していくということは大変重要な観点であるというふうに考えておりまして、その際には、今おっしゃいましたように、その処遇改善とかも含めて、そこで従事していただく方、それを確保していくということ、と併せて、先ほど部長も申し上げましたように、やはりその質の確保というものも大変重要であるというふうに考えておりまして、そこをどうやって両立することができるのかといった観点から更に検討を深めてまいりたいと思います。

○木村英子君
 まあ大臣には新たな人材確保の在り方を今後も考えていただきたいと思いますし、この問題についてはこれからも追及していきたいと思います。
 次に、重度訪問介護と介護保険サービスの介護内容の違いについて質問します。
 現在、65歳になると、重度訪問介護を利用している障害者は、自治体から介護保険を強く勧められます。しかし、重度訪問介護の介護の内容と高齢者が利用する介護保険サービスの内容は全く違います。現在の介護福祉士や初任者研修は高齢者の介護をマニュアルとしていますが、重度訪問介護を利用している障害者の介護は、一人一人の介護方法が違うため、ヘルパーがコミュニケーションが取れなかったり、誤った対応で骨折などの事故が起こった事例があります。
 そうした状況を受け、資料3のとおり、

資料3

厚労省は、主管課長会議資料において、重度訪問介護の運用について、介護保険の老振76号は重度訪問介護には適用又は準用されないという通知を各自治体に周知しています。しかし、この主管課長会議資料の内容を自治体が介護事業所に対して説明や周知を徹底しておらず、障害者の依頼を受け入れなかったり派遣を打ち切る事業所が増えています。
 介護保険の通知である老振76号は重度訪問介護には適用又は準用されないという通知を改めてその自治体や事業所への周知をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(野村知司君)
 お答えを申し上げます。
 老振第76号でございますけれども、これはもうご指摘のように、介護保険の指定訪問介護の事業運営の取扱いに関しての通知でございます。そして、この通知というのはあくまで介護保険の指定訪問介護の通知でございますので、障害福祉サービスの方の居宅介護であるとか重度訪問介護、こういったものに適用ないしは準用というものがないということについては、この通知に加えまして関係課長会議の場などでもお示しをしてきているところでございます。
 あと、重度訪問介護につきましては、この支給決定に際してお一人お一人の事情を踏まえて適切に行うべき旨、さらに、この重度訪問介護というものは、介護保険の訪問介護とは異なり、見守りなどを含め比較的長時間にわたる支援を想定しているものであって、お一人お一人の障害の状態、その他の心身の状況、利用意向などを踏まえて適切な運用、支給量の設定を行うべき旨などを関係通知などで各自治体に対しお示しをしてきたところでございます。
 こうした点につきましては、先般の3月14日に開催をした関係課長会議の場でも改めて周知をさせていただいたところでございます。
 引き続き、各自治体に対して周知徹底を図りますとともに、事業者に対しても重度訪問介護利用者の障害の状況などを踏まえた支援が行われるように、自治体などを通じて支援を進めてまいりたいと考えております。

○木村英子君
 改めて、周知の方、よろしくお願いいたします。
 次に、通告した質問3をちょっと飛ばさせていただきまして、入院時の介護者の派遣についてお聞きします。
 これまで、重度訪問介護を利用する方の入院時の介護派遣については、慣れている介護者でなければ固有の障害に対応できないことから、厚労省から各自治体や医療関係団体に対し通知を出してもらっています。そしてまた、主管課長会議資料においても周知していただいているところです。
 しかし、この通知を知らず、取り扱ってくれない自治体や病院があり、実際に、入院する際に厚労省から出された通知を見せてまでお願いしても、介護者を伴う入院を断ることが多い現状にあります。そのため、介護者を付けられないことで入院自体を諦めたり、そのことで病気が悪化し、亡くなってしまった障害者の方もいます。
 今後、このようなことが起こらないように、改めて、厚労省から各自治体に対して、障害者の方が入院する際に責任を持って病院と連携し、対策するように指導していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(野村知司君)
 お答え申し上げます。
 重度訪問介護を利用しておられる障害者の方々で特別なコミュニケーションの支援が必要な方々、こういった方々が入院中に本人の状態を熟知した重度訪問介護の従業者の方が付き添ってそのコミュニケーション支援などを受けられることというのは、これ非常に入院をされる際の安心、あるいは適切な医療の提供という意味でも重要なポイントかと考えております。
 そのため、事務連絡でございますとか関係課長会議、これは先般の3月14日の課長会議も含めてでありますけれども、そういった場におきまして、特別なコミュニケーション支援が必要な障害のある方々の入院時における支援者の付添いの受入れについて、自治体であるとか医療機関などに重ねて周知を行うといった点と、それと、自治体に対しては、必要に応じて入院中の重度訪問介護の利用ができるように、病院などとの調整に協力をいただくように依頼をさせていただいているところでございます。
 さらに、令和6年度の障害福祉サービス報酬改定におきまして、重度訪問介護の利用者の方がこの重度訪問介護従事者の方々の付添いによって入院する際に、入院前に重度訪問介護事業所と医療機関とで事前の調整を行った場合に、この連携支援を評価をする加算を設けたところでございます。
 こうした仕組みの立て付けでございますとか、あるいはそういった、こういった支援の必要性、こういったものなどについて、自治体、医療機関への周知を行うとともに、今ご紹介申し上げた報酬改定、こういった活用なども促進をしながら、入院中の重度訪問介護従事者の付添い、こういったものの受入れが進むように努めてまいりたいと考えております。

○木村英子君
 ありがとうございます。入院時に断られないように、周知の方、お願いいたします。
 次に、障害者の方の投票について質問します。
 現在、重度訪問介護、行動援護、同行援護などの介護制度は、告示523号に従って各自治体が決定する権限を持っています。そのため、各事業所は告示を基に派遣を行っていますが、告示にある社会通念上適当でない外出を除くという曖昧な文言に対する解釈が対応する事業所によって異なり、障害者の方が選挙の投票に行く際にガイドヘルパーを頼んでも、政治活動に当たるとして派遣を断られるという事例があります。資料4のとおり、

資料4

当事者団体であるNPO法人日本障害者協議会からも要請書が出されていますが、これは憲法で規定された参政権に反することになると思います。
 障害があっても政治活動や投票の権利が保障されるように、告示523号の社会通念上適当でない外出を除くという文言を削除していただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(福岡資麿君)
 これまでもこの国会のご議論におきまして、選挙運動であったり立候補予定者の政治活動のための外出であることのみをもって一律に社会通念上の適当でない外出に当たるものではないということについて、3月14日の関係課長会議の場において周知をさせていただいたところでございます。
 この重度訪問介護の利用につきましては、各市町村において支給の要否が決定されるものでありますが、今ご指摘ありましたように、その投票所へ投票に行くことにつきましても、社会通念上適当でない外出に当たるものではないというふうに考えております。
 ご指摘の告示の規定につきましては、重度訪問介護の外出時の利用範囲を定めているものでございまして、これ自体を廃止することは考えておりませんが、当事者の方々の御要望であったり自治体の考え方を伺いながら、必要に応じて、今おっしゃいましたように、解釈の明確化などの対応をしてまいりたいと思います。

○木村英子君
 投票所に投票に行くことは……

○委員長(柘植芳文君)
 時間が参りましたので、おまとめください。

○木村英子君
 分かりました。済みません、はい。
 政治参加もその社会通念上適当でない外出に当たらないと私は思うので、この件についてもまた追及させていただきます。
 以上で終わります。

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