2025.2.19 参議院 国民生活・経済及び地方に関する調査会 参考人質疑 テーマ:誰も取り残さないための支援(貧困家庭、若者の孤独・孤立、障がい者)

○木村英子君
 れいわ新選組の木村英子です。
 参考人の先生方、今日はありがとうございます。
 初めに、藤井参考人に二つ質問いたします。
 先ほどの資料の中で、2023年障害のある人の地域生活実態調査では、半数以上の障害者の人が親や兄弟と同居しており、家族に依存しているという実態が示されています。
 私自身も幼い頃から、家族だけでは育てられずに、施設へ預けられてきました。親亡き後は施設、それは今も変わらない重度障害者の現実です。地域移行がうたわれている現在においてもなお、障害者が社会で生活するための保障は進んでいませんし、家族に依存せざるを得ない状況は変わらず、むしろ施設の待機待ちは増えています。
 そうした現状において、2022年、国連は、障害のある児童を含む障害者の施設入所を終わらせるために迅速な措置をとることと日本に勧告しています。そして、2016年には障害者差別解消法が施行され、昨年4月には行政と民間事業者の合理的配慮の提供が義務化されましたが、罰則規定もなく、障害者の差別解消が進まない現状にあります。
 差別解消が進まない原因の中に、やっぱり福祉施策を決める場に障害当事者の参画が極めて少ないという現状があります。例えば、制度が障害者の現状に合っていない、あるいは使い勝手が悪いという制度が多々あります。そうした中で、私は質疑などで、やはり協議会や検討会の場に当事者の参画をするようにということを提起させていただいています。そういった中で、今後、障害者の人権が守られ、安心して生きられる社会にしていくためには、国に対してどのような福祉施策を求めていけばいいのかということをお聞きしたいということ。
 そしてもう一つは、こうした障害者を取り巻く差別が解消されない大きな原因の一つはやはり優生思想にあると、私は自分の状況を踏まえ、実感しています。昨年7月3日に旧優生保護法は最高裁で違憲と判決が下されて、藤井参考人は優生保護法問題の全面解決をめざす全国連絡会のメンバーとして、障害者のための新たな補償法の作成にも関わっておられました。この補償法の作成にも私も参加させていただきましたが、いまだになくならない優生思想の根絶に向けて、今後どのような取組が国は果たしたらいいのか、75年にもわたる当事者の苦しみ、それを国が誤った制度で続けてしまった責任を今後どう取ったらいいのかというこの二点について、藤井参考人のお考えをお聞かせください。

○参考人(藤井克徳君) 
 かなり根本的な問題で、十分にはお答えできないかも分かりませんが、私は、ちょっと今の質問から外れますけれども、自分が全盲になった頃からですかね、自分の心、心というか気持ちの中に、障害分野を見る物差しができ上がってきたんですね。もう権利条約ができるはるか前です。
 一つ、一般市民の暮らしとの比べっこ、二つ、日本と同じような経済力を持った国の障害者政策との比べっこ、三つ、過去との比べっこ、一体変わったのか変わっていないのか、変わったとしたらその速度は妥当なのか、四つ、障害を持った人のニーズに照らしてどうなのか。この最後の四つ目が一番私は大事なような気がしています。
 そうすると、幾つかいろんなものが見えてきます。一つは、やはり今は、前段おっしゃったこの家族依存という問題ですね。私自身は、これからどこまで生きられるか分かりませんけれども、やっぱり民法に着手していきたいという思いでいるわけなんです。
 オランダ、調べてきました。21歳になると家族扶養から社会扶養、もちろん同居は自由、血縁はちゃんと保たれている、これは当たり前ですよね。その上で、何かあったら社会が。正確に言うと、大学院生は27歳までは家族扶養だけれども、そこからは社会扶養に切り替わっていくという。そういうことを、北欧もそういう国が多いですよね、やっぱりこの国会としても是非調査をするということなんかもあってもいいんじゃないかな。
 それから、全体にこの国の制度というのはやはり、本当は障害者のために、高齢者のためにつくったはずなんだけれども、段々制度に人を合わせていくとなってしまって、私は、その結果、非常に複雑化している。制度はシンプルに、政策はシンプルですね、運用は柔軟に。これがなければ、本当の人権の政策というのは私はうまくいかないと思うんです。余りにも個別化、細目化しちゃって、非常にそれが、そういう中で、その結果としていろんな問題が起こってきている。
 優生思想のこともお尋ねがありました。
 これ、先ほど、繰り返しになりますけれども、私は、やはり障害者が置かれている環境、これによって社会は目覚めたり気持ちを変えたりということ。そうすると、この優生保護法の問題の関係でいうならば、その検証主体は国会に置かれました。この検証ですね、これが非常に、今を生きる国会議員を含めて、我々の民間も含めて、政府も含めてです、この検証がとっても大事になるということで、私はこの検証に非常に力を入れるべきだし、期待もするし、この参議院の本調査会もそこはしっかりと見てほしいなと、こんなことを思っております。
 全部の回答できませんでしたけれども、時間もありますので、以上です。

○木村英子君
 ありがとうございます。
 次に、奥田参考人に質問いたします。
 先ほどのお話の中で、単身で暮らす方は別居する家族に頼ることが多く、近所の人に頼ることは少ないとおっしゃっていました。
 奥田参考人のインタビュー記事を読ませていただいたんですが、自立とは一人で何でもできるようになることではない、相互性のある依存、つまりお互いさまの関係をたくさん結んでいくこと、それが自立につながっていくとおっしゃっていました。
 障害者の生活は、親や家族だけに責任が負わされる中で、家族以外の人との相互性のある依存に結び付けることが困難な社会状況にあります。私が親から離れて地域での自立を果たせたのも、ボランティアやヘルパーさんなどの他者への依存先を移すことができたからだと実感しています。
 これまで奥田参考人が取り組んでこられたお互いさまのコミュニティーの支援を実践していく中で、難しいところとかあるいは改善策などありましたらお聞かせください。

○参考人(奥田知志君)
 私も実は学生時代から、九州に行ってからも、当時、自立障害者というような言い方で、地域で施設から出てきて一人暮らしされている方の寝かせの介護とかをしばらく何年か、10年ぐらいですかね、やっていた時期がありまして、本当にそのときまだ制度が整っていなかったので、もう自力で皆さんボランティアを募るという、それももう介護に行く方も自費で通うというところで、本当に大変なときをずっと横で見ていました。やっぱり自分らしく生きるということは、自分で決めて自分でやるということでは済まない、まさにいろんな人がそこに関わらないと成立しないということが本当身をもって、一緒にさせていただきました。
 そんな中で、この相互性のある、依存先を増やすという言い方もよくされるんですけれども、私は当然、依存先を増やすんだけど、それは相互的に増やさないといけないというふうに思っております。その中でやっぱり大事だったポイントは、私たちどうしてもその等価価値交換の中で暮らしをしているんですね。例えばコーヒー1杯300円ですと言われたら300円出さないとコーヒーもらえないという、同じ価値で交換するという。ただ、この助けての相互作用というのは、依存の相互性というのは必ずしもそういう数量的等価価値では成り立たないわけですよね。例えば、単純に言ったら、五つ助けてもらったから今度は五つ、あっ、助けたから今度は五つ助けてもらうみたいな単純な構造では測れないというところですね。
 だから、その辺りを本当に柔軟に参加していけるような、やっぱりそこをコーディネートしていくような、すぐにあの人助けてもらってばっかりみたいな意識が社会の中には非常に先行していまして、ずるいという言い方です。これは社会保障全般にもそういう目線が投げかけられているので、結局、社会保障の枠にいる人たちと納税している人たちが対立構造になって、あいつらずるいと、もらってばっかりだみたいな話になるんですが、この辺りのやはり意識とか社会の全体の、何ですかね、モラルも含めた意識、特に私がやっぱり注意せないかぬなと思ったのは、そういう非常に等価価値交換の数量化されたような相互依存性みたいな話でいうと、権利みたいになっちゃうんですね。いい意味での権利は別ですよ、権利というか何か取引ですね、ごめんなさい、権利というか取引になっちゃう。最近ディールという言葉が世界中ではやっていますけれども、このディールじゃないんだ、共に生きるというのはまさに権利の問題だし、生存そのものの問題なんだというところで、その相互的な依存を数量的に余り考えないという、そこのところはやっぱり相当大事な観点だというふうに考えてきました。
 以上です。

○木村英子君
 ありがとうございます。
 それでは、谷口参考人にお聞きします。
 谷口参考人の資料によりますと、不登校や引きこもりなど学校復帰が困難な子供たちの支援のために佐賀県全ての公立学校の学校訪問を行って、子供たちの学校復帰の支援を学校や教育委員会と連携して取り組んでいると書かれていました。学校は子供たちにとって社会へ出るための大切な準備期間ですから、他者とのコミュニケーションや社会性を身に付けるためにも欠かすことのできない学びの場だと思います。
 しかし、障害者は分離教育を余儀なくされている子供たちが多くて、健常児や他者とのコミュニケーションのつくり方、また社会性を身に付ける機会が少なくあります。障害の有無にかかわらず、子供たちが安心して学校に通えるにはどのような取組が学校や教員に必要なのか、また、子供たちの学校復帰を進めていく中で難しい点や改善策がありましたら、谷口参考人のお考えをお聞かせください。

○参考人(谷口仁史君)
 重要なご指摘、ありがとうございます。
 我々、実は、価値観のチャンネル合わせというところは、先ほどご指摘いただいたような外国人の子供たちもそうですが、実は様々な多様な、また多文化共生の考え方なんですね。やはり、今、時代的にはいい時代が来たのかもしれないというのが、ピンチはチャンスだという意味でいくと、これだけ不登校の子供たちが来て、学校も変わらざるを得なくなってきた、この状況にあるというふうに思います。
 そういう意味でいくと、一人の孤立する子供たちが自立するまでのプロセスを再度見直していく、制度として学校教育の在り方というところを見直していくことによって、みんなが暮らしやすい、参加しやすい、そういった場ができるんではないか。フリースクールも始め、様々な民間の取組も始まっておりますし、それと学校が融合していくような、そういったフェーズに移っていくんではないかというふうに思っています。
 以上です。

○木村英子君
 ありがとうございました。 以上で終わります。

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