2024.6.6 参議院 内閣委員会 銃刀法改正案質疑「街なかに熊が出たときの対策は?」


○木村英子君
 れいわ新選組の木村英子です。
 本日は、銃刀法改正案について質問いたします。
 今回の改正案は、元総理への銃撃事件や長野における猟銃による殺人事件を受けて銃に関する罰則や規制を強化するものですけれども、熊などから人を守るために使われるハーフライフル銃の規制について伺いたいと思います。
 ハーフライフル銃は、北海道ではエゾシカやヒグマの対策に使われており、現在は、狩猟免許の取得後すぐにハーフライフル銃を取得することができることになっています。今回の改正案では、10年以上銃を持っている実績のある人しかハーフライフル銃を所持することが許可されない制度となっています。
 資料1をご覧ください。

資料1

 若手ハンターのほとんどがハーフライフル銃を使用しているため、北海道猟友会などの団体から、ハーフライフル銃の規制が厳しくなると将来的に若手ハンターの育成に重大な支障が出てしまうという懸念から、この改正案に反対の声明が出されています。
 このようなハンターの方の懸念事項は払拭されているのでしょうか。また、法改正をすることによって鳥獣被害が拡大することはないのでしょうか。お答えください。

○国務大臣(松村祥史君)
 今回の改正でハーフライフル銃につきましてもライフル銃としての厳格な許可基準を適用することとしておりますが、その許可基準では、事業に対する被害を防止するため獣類の捕獲をしようとする者は1年目から所持許可を受けることができることとされております。
 様々に寄せられたご意見をこれは踏まえまして、ハーフライフル銃についてはこの要件を広く運用することとしております。
 この新たな運用の取りまとめに当たりましては、警察庁の担当者を北海道に派遣をいたしまして、先ほど異例の対応だということで委員からご指摘がございましたが、異例の対応を取りまして、関係機関、団体の方々と直接意見交換を行うとともに、新たな運用の内容について詳しく説明し、ハンターの方々のご懸念の払拭に努めてきたところでございます。
 委員ご指摘のように、鳥獣被害対策に支障を及ぼすことがあってはなりませんし、そのようなことがないように、改正案を成立させていただいた後も、引き続き、関係する方々のご意見をしっかりと丁寧に伺いながら、適切に運用がなされるよう警察を指導してまいりたいと考えております。

○木村英子君
 ありがとうございます。
 今回の法制案で、人の命を守るための銃刀法というのが改正する、規制を強化するということ、とても必要だとは思いますけれども、昨年から熊による人的被害が200名を超え、過去最多となっている中で、熊などからの人の被害を守るために対策が急がれているという状況です。
 そのためにハンターの育成や資格取得者を増やす必要があると思いますけれども、資料2によれば、全国のハンターの数は、昭和50年から減少し続けており、微増ではあるものの、少子高齢化の影響もあり、若手ハンターの確保が喫緊の課題となっております。

資料2

 例えば群馬県では、若手ハンターを増やすために、狩猟の役割や意義を知ってもらう取組として、高校で特別授業を行ったり、動画投稿サイトを活用したり、免許の試験に掛かる費用を18歳と19歳の場合は免除をされています。こうした取組により、群馬県の狩猟免許を持つ人の数は少しずつ回復していると報道されています。こういった自治体の取組を支援できるように早急に支援策を考えていただきたいと思いますが、お聞きしたいことがあります。
 国は、ハンターの人材確保や育成に向けてどのような対策を考えているのか、教えてください。

○政府参考人(堀上勝君)
 お答えいたします。
 狩猟免許所持者の総数は、委員ご指摘のとおり、平成24年度に18万千人となって以降、増加に転じておりまして、令和元年度は21万5千人となっております。また、免許所持者の約6割を60歳以上が占めておりますが、40代以下の若い免許所持者が増加傾向にあるところでございます。
 このような状況で、環境省では、捕獲の担い手の育成確保の対策として、現役のハンターによる狩猟の魅力を伝えるトークイベントや狩猟免許を新規に取得する者のための相談会などを行う狩猟フォーラムを開催しております。また、捕獲事業者や狩猟者の育成等の取組への交付金による支援、そして有害鳥獣捕獲等に係る狩猟者の狩猟税の減免措置などを実施してまいりました。
 引き続き、捕獲技術者の育成確保等の支援に取り組んでまいります。

○木村英子君
 熊が住宅街に、住宅地に現れた場合は、人命に懸かっていますから、若手ハンターの育成について国として強化をお願いしたいと思います。
 次に、最近では、熊が市街地に出没し、人に危害を、けがをさせたりという報道が増えています。
 例えば、資料3をご覧ください。

資料3

5月31日に、群馬県安中市の住宅に熊が侵入し、二人の方が骨折などの重傷を負うという事故がありました。市は捕獲のためのおりを5か所に設置したり、警察官がパトロールするなどをして対応しているということですけれども、住民からは不安の声が上がっています。
 このような市街地や人が住んでいる地区への熊の出没が全国で相次いでいる中、先月28日には、広島県の廿日市市で、山だけではなく、海沿いの人口密集地でも熊が目撃されており、学校が休校になるなどの住民からの不安や恐怖の声が上がっています。さらに、先月29日に、山形県の米沢市では、米沢駅や市立病院などの近い市街地においても熊が目撃され、警察や市の職員がパトロールなどを行っているそうです。
 しかし、市街地で熊が出没したとき、現在の法律では、ハンターは銃を使ってはいけない規制になっています。突然市街地に熊が現れた場合、熊は時速40キロから60キロで走ると言われており、到底人間の走る速度では逃げられません。また、障害者や高齢者など体の不自由な人の場合には逃げることすら難しい方が多いですから、熊に遭遇してしまったら命を失うことを覚悟しなければならない状況にあります。
 市街地に熊が出没した場合の対策について、国はどのように考えているのか教えてください。

○政府参考人(堀上勝君)
 熊類が住居集合地域等に出没した際の銃猟に係る課題の整理あるいは対応方針の検討を進めるために、環境省では、本年5月に有識者による検討会を設置して検討を進めております。5月23日に開催した第2回検討会では、住居集合地域等における銃猟を特例的に実施可能とするため、鳥獣保護管理法を改正すると、改正を行うべきとの意見が示されました。
 現在、環境省において検討会の意見を踏まえた対応方針案のパブリックコメントを行っているところでありまして、今年の夏までの取りまとめを目指して引き続き検討会で議論を進めていくこととしております。

○木村英子君
 被害者を今後も出さないためにも、市街地における銃の規制について早急な検討をお願いしたいと思います。
 次に、実際に市街地などで熊が出没した場合に住民や自治体がどのように対応したらよいのか、国としてまとめられた防災マニュアルのようなものがありましたら教えてください。

○政府参考人(堀上勝君)
 市街地等への熊類の出没を抑制し被害を軽減するために、環境省では、令和3年3月にクマ類の出没対応マニュアルを改定いたしまして、都道府県等に周知をしております。
 このマニュアルでは、人と熊類のすみ分けを進めるための対策、それから鳥獣対策を専門とする人員配置の必要性や出没を想定した研修、それから地域住民を対象とした学習会の開催など、熊類が出没した際の対応の要点、あるいは各自治体の取組事例等の紹介をしております。また、住民向けに、熊と遭遇した際に取るべき行動についての注意事項もこの中で記載をしております。
 さらに、昨年の10月には、熊による深刻な被害状況を受けまして環境大臣から談話を発表し、その中で、熊の生息域へはむやみに入らない、熊と出会った際には落ち着いて距離を取る、熊を人里に引き付けないようにすると、この3つの注意点について国民の方々に呼びかけを行ったところでございます。

○木村英子君
 住民に呼びかけはすごく重要だと思いますけれども、熊が出没した際の市の職員や警察官のパトロールの強化や住民への注意喚起なども引き続き強化をお願いしたいと思います。
 次に、熊が人里に下りてこないための対策についてお聞きします。
 資料4をご覧ください。

資料4


 先ほどお話しした群馬県の安中市の事故の後、安中市長が群馬県知事に対し、電気柵や捕獲機材の整備についての支援などを要望しています。
 この要望書にあるように、熊などの野生鳥獣が人里に来て人を襲ったり農作物を荒らすということがないように、電気柵や確保の縄、わなを置くなど対策をすることが重要だと思いますけれども、熊などを市街地に寄せ付けないためにどのような対策が講じられているのか、また具体的に教えてください。

○政府参考人(堀上勝君)
 お答えいたします。
 人の生活圏への熊類の出没を抑制するためには、地域の実情に応じて様々な対策を講じることが必要だと考えております。
 具体的には、熊を誘引してしまう生ごみや果樹、廃棄農作物などの管理の徹底、それから熊の隠れ場所となるような農地や集落の周辺の山林にあるやぶなどの刈り払い、そして熊を撃退する電気柵の設置、そういった取組が都道府県あるいは市町村等によって実施されているものと承知をしております。

○木村英子君
 分かりました。
 現在行われている熊を市街地に寄せ付けない対策については、今ご説明されたとおりですけれども、熊などの被害が拡大しないように、鳥獣対策について自治体に対しては国としてどのような支援策を考えているのか、環境省と農水省、それぞれお答えをお願いいたします。

○政府参考人(堀上勝君)
 環境省におきましては、令和4年度から6年度までにかけまして、熊類の出没に対応する体制の構築や専門人材の育成、人の生活圏への出没防止対策等を支援するモデル事業を実施しております。
 また、令和5年度の補正予算としてクマ緊急出没対応事業を措置しておりまして、昨年秋の熊の大量出没を踏まえた緊急的な調査等を支援することとしております。
 さらに、熊類の指定管理鳥獣への指定を踏まえて、現在、指定管理鳥獣捕獲等事業交付金の事業内容について検討を行っているところでございます。
 引き続き、都道府県の状況に応じた効果的な対策に必要な支援の検討を進めてまいります。

○政府参考人(神田宜宏君)
 お答えいたします。
 農林水産省におきましては、農作物被害防止のため、鳥獣被害防止総合対策交付金により、市町村などが行う地域ぐるみの被害防止活動に対して総合的に支援をしております。具体的には、やぶの刈り払いなどの生息環境管理と侵入防止柵の整備等により、人と鳥獣のすみ分けを図りつつ、農作物被害を引き起こす鳥獣については捕獲を行うこととしております。
 熊による農作物被害への対応といたしましては、生息状況調査や餌となる柿やクリの実の除去、センサーカメラなどのICT機器の導入、電気柵の整備、農地周辺での捕獲、研修会の開催などの取組に対して支援をしております。
 今後とも、農作物の被害状況や各自治体の実施体制などを踏まえ、引き続き地域の実情に合った支援を実施してまいりたいと考えております。

○木村英子君
 ありがとうございます。環境省と農水省の連携がすごく大事だと思いますので、その辺をよろしくお願いしたいと思います。
 次に、環境省も取り組んでいると言われている熊との共存についてお聞きしたいと思います。
 気候変動によって熊などの食料となるドングリが減っていって熊が市街地に来てしまう理由の一つに、人間による環境破壊も一つあると思います。
 人の命を守るために鳥獣対策を強化し過ぎると、熊やエゾシカなどの生息圏を壊しかねません。動物と人間が共存できる環境をつくるということを重要視しながら、人の命と生活を守るための鳥獣対策を行っていただきたいと思っておりますけれども、いかがでしょうか。

○副大臣(八木哲也君)
 ありがとうございます。
 ご意見ごもっともだと私も思っておりまして、共存できる環境づくりは重要であるというふうに思います。
 そのため、熊類を始めとする鳥獣の保護や管理に関しまして、都道府県の対策の指針となるようガイドラインを作成しております。その中では、個体群の安定的な維持と被害の低減を図るため、鳥獣の生息状況や被害状況の現状を把握した上で、目標を定めて、個体群の管理、被害の防除、生息環境管理といった施策を一体的に進めていくことが重要であるということを考えております。
 また、熊類につきましては、昨年秋の深刻な被害状況を受けまして専門家による検討会を設置いたしまして、本年2月8日に被害防止に向けた総合的な対策の方針を取りまとめていただいたところでもあります。この方針の中では、ゾーニング管理、広域的な管理、順応的な管理、この3つの管理を推進しながら、熊類の地域個体群の維持を前提としつつ、人の生活圏への出没防止によって人と熊類の空間的なすみ分けを図ることとしております。
 環境省といたしましては、引き続き、鳥獣の全国的な分布状況の情報収集やガイドライン等による技術的助言を通じまして、計画的かつ科学的な鳥獣保護管理を推進していきたいと考えております。

○木村英子君
 熊やエゾシカなどの動物の保護というのは、自然保護にも全体的につながると思います。熊などの動物と人間が共存できるように、駆除だけに頼らない対策に取り組んでいただきたいと思います。
 以上で、私の質問は終わります。

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