2024.5.30 参議院 国土交通委員会「交通バリアフリーを実現する 当事者の闘い」

○木村英子君
 れいわ新選組の木村英子です。
 本日は、地域交通のバリアに関して質問したいと思います。
 全国的な人手不足により、バスやタクシーなど交通インフラはドライバー不足が深刻化し、都心はもとより、さらに地方においてはバスの減便やタクシーの減少が進み、大きな社会問題となっています。しかし、障害者の場合、やはりこの厳しい現状の中で、交通のバリアが解消されないということだけではなく、バリアフリー化されなければ交通機関を使えない障害者の方たちはたくさんいます。
 その障害当事者たちがどんな思いで交通のバリアを解消するために闘ってきたか、少し歴史を振り返りながらバリアフリー化に向けての提起をさせていただきたいと思います。
 資料1をご覧ください。

資料1

1977年、脳性麻痺者による運動団体、青い芝の会が、当時、全国各地で相次いでいた車いす利用者へのバスの乗車拒否に対して、なぜ障害者は健常者と同じように自由にバスに乗れないのかと提起し、川崎駅前のターミナルで100人の当事者と支援者が一斉にバスに乗り込み、抗議運動をしました。10時間に及ぶ大混乱の中、警察も出動し、15万人の足に影響を与えたとされていますが、この障害者の命懸けの運動を皮切りにバスのバリアフリー化が進められたと言っても過言ではありません。
 資料2をご覧ください。

資料2

私の住んでいる多摩市でも度重なるバスの乗車拒否があり、1995年に市内の障害者団体が集まり、京王帝都に対し、リフトバスの導入を要望しました。しかし、リフト付きバスはコストが高いということで、京王帝都はスロープ付き低床バスを導入し、10年で全てのバスをスロープ付きバスにすることを公表しました。そして、その後、ほかの会社にも導入され、現在のノンステップバスとなって運行され、現在、資料3のとおり、普及率は68%となっています。しかし、まだまだ障害を理由としたバスの乗車拒否は後を絶ちません。

資料3


 資料4をご覧ください。2021年には、川崎市で車いすの方が路線バスに乗ろうとしたところ、運転手から、この後すいているバスが来るからと乗車拒否をされる事件が起こりました。

資料4

また、昨年の5月には、資料5のとおり、大阪の高槻市で、運転手が車内のスロープ板を見付けられず、車いすの利用者を乗車拒否し、懲戒処分されました。

資料5

 このような差別は、社会の中で障害者と健常者が分けられていることで、同じ地域で車いすの人を見かけなかったり、バスに乗り合わせることが少なかったりすることで生まれてくる差別でもあります。また、バスの乗務員がスロープの出し方や固定ベルトの付け方が分からなかったり、慣れていなくて戸惑い、時間が掛かってしまうなど、不適切な対応をされることもあります。また、ほかのお客さんから白い目で見られたり、早くしろと言われるなど、心のバリアを感じ、バスに乗ることをちゅうちょしてしまう方もいます。
 障害者の方がバスに乗るとき、乗務員さんの対応は周りのお客さんにも大きな影響を与えますし、ともすると、差別を助長してしまいます。
 障害者や高齢者の人が安心してバスを利用できるように、改めて国交省からバス事業者に対し、障害者への理解を進めるとともに、当事者を交えた研修を徹底していけるように働きかけをお願いしたいのですが、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(斉藤鉄夫君)
 この資料でお示しいただいたように、このような車いすを利用されている方が乗車拒否に遭うということはあってはいけないことだと、このように思いますし、大変遺憾に思います。
 車いすを利用されている方が乗り合いバスを利用される際には、バス運転手において、スロープの設置や乗降介助、既に乗車されている他の利用客に協力、配慮を求めるなど、様々な対応が必要になるものと承知しております。このため、乗り合いバスの運転手は、バリアフリー法に基づき、車いす利用者が円滑にバスを利用することができるよう、乗車装置の取扱いや接遇に関する教育訓練や研修を受けているところです。
 国土交通省におきましては、乗り合いバスが車いす利用者にとって利便性の高い公共交通機関となるよう、乗り合いバス事業者に対し、当事者を交えた研修の実施、これを、こういう研修をするようにということで必要な指導をしてまいりたいと思います。

○木村英子君
 大臣、速やかにお願いいたしたいと思います。
 次に、UDタクシーについてお聞きします。
 今年4月に民間事業者の合理的配慮の提供が義務化されましたが、資料6のように、いまだにUDタクシーにおいても拒否事例が多く、障害者団体の調査では2019年の調査と比べて乗車拒否の割合が高くなってきています。

資料6

 このような現状の中、私は、これまで何回かUDタクシーに関しての質問をさせてもらい、どんな車いすの方でも乗れるUDタクシーの車両の開発を国交省に求めてきました。現在普及しているジャパンタクシーは、大型の車いすでは車内で前向きに回転することができず、横向きでしか乗ることができない上、前向き用の固定ベルトを装着することができず、とても危険でした。
 そこで、2020年の質疑では、横のドアからの乗車ではなく、後ろのドアからのスロープを渡って真っすぐ乗車でき、大型の車いすの人でも安全確保ができる固定ベルトの設置、そして支援の必要な障害者には欠かせない介助者が真横に乗れる、座れる席の設置を提起してきました。
 そのような中で、国交省は今年の4月から認定レベル準1という新しい基準を作り、トヨタのノアやヴォクシーをUDタクシーとして認定しました。
 資料7をご覧ください。

資料7

これは、先日、実際に認定された準1の車両の視察に行った写真です。新しい車両は、後ろから乗れるため車内での回転は不要となり、固定ベルトもしっかり掛けることができ、安定感がありました。支援の必要な人にとって念願であった車いすスペースの横の介助者席も設置されており、障害者団体からの要望がくみ取られた車両となっていました。
 しかし、残念なことに様々な車いすの方が乗れるといった仕様にはなっていませんでした。特に私のような大型の車いすの方が乗る場合、資料8のように、左奥の空いている車いすスペースと介助者席との間が狭く、左側に段差があるため斜めに入っていくしかなく、真っすぐには乗れませんでした。また、車椅子の高さによっては頭がぶつかって入れない車椅子の方もいます。

資料8

 これまで国交省、事業者、当事者団体が話合いを重ね実現してきたUDタクシーであり、少しずつ改善はされてきたことはうれしいのですが、誰もが乗れるUDタクシーの実現を目指して、大型の車いすを使用している方なども利用できるように、再度、誰でも乗れるUDタクシーの開発をメーカーに促すとともに、国交省として早急に検討を進めていただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(斉藤鉄夫君)
 従来より、障害当事者団体などから、後ろから乗降可能な車両についてもUDタクシーとして普及を図ってほしいというご要望をいただいておりました。
 こうした要望に早急に対応し、バリアフリーの裾野を広げるため、本年4月にUDタクシー認定要領を改定いたしまして、より緩やかな基準である認定レベル準1を新たに創設しました。これにより、現在販売されている複数の車両においてもUDタクシーとしての認定が可能となったところでございます。シエンタとかノア、ヴォクシーです。他方、ご指摘のとおり、新たな基準であるレベル準1に認定された車両において、大型の車いすやストレッチャー型の車いす等に必ずしも対応できない場合があることについては我々も認識しているところでございます。
 国土交通省としましては、引き続き、障害当事者、自動車メーカー及びタクシー事業者など、関係者が参加する意見交換会を開催し、利用者のニーズを踏まえた車両の開発、普及を促進してまいりたいと思います。

○木村英子君
 ありがとうございます。どんな形の車いすに乗っていても安心して乗れるUDタクシーの実現をお願いいたしたいと思います。
 バリアフリーは、交通機関において、ほとんど全てのものにバリアフリーになっていないという現実がありますが、次に、資料9をご覧ください。

資料9

 今月、東京都で開催された第75回東京みなと祭の水上タクシー体験乗船会で、設備の面とスペースの都合で車いすの方の乗船をお断りしているという通知が出たという差別事例が起こりました。
 このような差別は後を絶たず、資料10のとおり、2019年には、福岡の市営の船に電動車いすの方が乗ろうとしたところ、乗降の際の段差や船内の安全確保に不安があるとの理由で利用を断られたということがありました。その後、電動車いすで乗船できるようスロープ設置などの船内のバリアフリー化をされたということですが、こういった事例が後を絶たないという不安がまだあります。
 今後、ハードの面でのバリアフリー化を進めるということはもちろんのことですけれども、バリアフリー化されていない船を利用するに当たっても合理的配慮を行い、乗船拒否をしないように国交省から旅客船事業者に対し働きかけを行っていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(海谷厚志君)
 お答え申し上げます。
 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律第8条におきまして、事業者は、その事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならないとされております。
 これを受けまして、国土交通省といたしましては、旅客船事業者が同条に規定する趣旨を踏まえ、適切な対応を取るために必要な対応指針を定めまして、昨年、令和6年、令和5年の11月には旅客船事業者に対して通知を発出しまして、周知を行ってきたところでございます。
 この対応指針では、お互いに相手の立場を尊重しながら相互理解を図ることなく、障害があることやそれに伴い車いすを利用する等の社会的障壁を解消するための手段の利用等を理由として、単独での乗船を拒否する、そういったことを不当な差別的取扱いと明示してございます。バリアフリー施設の有無にかかわらず、委員ご指摘の合理的な配慮というものを旅客船事業者に対して求めているところでございます。
 国土交通省といたしましては、ご指摘も踏まえまして、今後とも車いすをご利用される方々を始めとする障害者の皆様方が安心かつ安全に旅客船に乗船いただけるように、この対応指針の内容につきまして旅客船事業者に対しまして改めて事務連絡を発出、あるいは事業者団体との会議の場などにおける周知を進めていくと、こういったことを進めてまいりたいというふうに考えてございます。

○木村英子君
 ありがとうございます。
 バリアフリー化されていない船があります。そういう場合、その係員の人が断ってしまう事例は多いんですけれども、やはり拒否をしないと、乗船拒否をしないということはやっぱり国交省としても徹底して指導していただきたいなというふうに思っております。
 次に、交通機関にある相談窓口について質問したいと思います。
 障害者や高齢者などにとって、公共交通機関のバリアが解消されていないという中で、差別を受けて困った場合に相談する場所が分からなかったり、行政に相談してもたらい回しになってしまうことが多い現状にあります。
 国交省として、障害者が相談したいときにたらい回しにならないように、省内のワンストップ窓口を設置し、対応していただきたいというふうに思っていますが、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(斉藤鉄夫君)
 国土交通省では、平成28年4月から、障害者差別解消法に基づきまして、本省にありましては総合政策局バリアフリー政策課、それから地方運輸局にありましては交通政策部バリアフリー推進課などに障害を理由とする差別に関する相談窓口を設置しており、国土交通省や内閣府のホームページにおいてこの旨公表しております。
 相談窓口では、一括して相談を受け付けるワンストップ窓口としてご相談される方からお話をお伺いし、案件の内容に応じて関係部局や事業所等への情報提供や対応依頼を行っているところでございます。
 今後も、バリアフリー政策課などのワンストップ窓口を通じて障害のある方などからのご相談に的確に対応していくとともに、こうした窓口が利用しやすいものとなるよう、周知、改善に努めてまいりたいと思います。

○木村英子君
 国交省のワンストップ窓口がバリアフリー政策課に設けられているということですので、私も障害者の支援の方たちにお知らせしますが、国交省としても広報していただきたいというふうに思っておりますので。以上、質問を終わります。

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