2023.6.15 参議院 内閣委員会 LGBT理解増進法案(議員立法)質疑・反対討論

【議事録】

○木村英子
 れいわ新選組の木村英子です。
 本日は、LGBT理解増進法案について、松岡参考人に、当事者の立場からの意見をお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。
 まず、資料1をご覧ください。


 これは、2015年にLGBT法連合がLGBT差別禁止法に対する考え方を発表したものです。このように当事者団体からも差別禁止法が求められていましたけれども、2021年に超党派で議論が重ねられ、性的指向及び性自認の多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案が作られ、その後も何度か見直しが重ねられてきました。しかし、本日、参議院で審議される法案は、与党と維新、国民民主が協議をして作られたものですが、当事者の方たちが求めていたものとは程遠いものとなっています。
 例えば、私事で恐縮ですけれども、障害者運動の歴史においては、昔は施設収容が当たり前でしたが、1970年代に施設を拒否して地域で生きるための運動が始まり、介護保障が少しずつ確立され、地域で自立生活を実現する障害者が増えていきました。そして、2014年に日本が国連の障害者権利条約を批准し、2016年には障害者差別解消法が施行されたことは、多くの障害者にとって命懸けで闘ってきた結晶でもあります。そして、現在、各自治体では、差別解消に向けての条例や宣言の制定など様々な取組がなされています。
 特に障害者差別解消法が作られてきた経過において重要視されてきたものは、国連の権利条約から引き継がれた、私たちのことを私たち抜きに決めないでというスローガンです。資料2の外務省の出しているパンフレットでも、条約を作る上で、当事者参画が重視されてきたことが明記されています。


 また、障害者と健常者が幼いときから分けられている現状においては、共に学び合うインクルーシブ教育や、誰一人排除されず共に生きられる社会であるソーシャルインクルージョンが叫ばれているところです。
 ですから、障害者差別解消法などを作るに当たり、当事者が協議会などに参画するのは当たり前となっていますが、LGBT理解増進法には当事者参画は明記されておらず、当事者主体の法案にはなっていません。
 通常、内閣が提出する法案では、協議会などを通じて多様な当事者の意見を丁寧にヒアリングされて法案が作られてきました。しかし、議員立法の場合、そうしたプロセスが公開されて法案が作成されるわけではないために、今回のLGBT理解増進法案には、当事者が参加されての丁寧な意見交換や多様な当事者の意見が反映されていないように感じます。
 その点、松岡参考人はどのように感じていられるのか、お答えください。

○参考人(松岡宗嗣君)
 お答えします。
 法案審議は、今まさに困難に直面している当事者の声を拾い上げず、そうした現実と真摯に向き合っているとは到底言えないものだったと認識をしています。
 先日の衆議院内閣委員会でも、ほとんどがトイレやお風呂などについての議論でした。もちろん、女性も性的マイノリティーも安心して過ごすことができる環境を整備することは必要不可欠ですが、今、性的マイノリティーがいじめやハラスメント、孤立、孤独や自死など苦しい状況に置かれていることに向き合い、困難を解消するつもりがあるのか、とても疑問に思う内容でした。
 当事者がどういった困難に直面しているのか、そのエビデンスやデータなどを基に議論がされなければなりませんし、その上で、個別具体的に当事者がどんな差別や偏見による被害を受けているか、一人一人の声に向き合う必要があるというふうに思います。しかし、この両方とも、法案をめぐる議論ではなされていないというふうに私は捉えています。

○木村英子君
 ありがとうございます。
 今お話を聞いても分かるとおり、まだまだLGBTの方の状況が知られていないということが差別を助長している原因だと感じました。特に、LGBTの方は子供の頃から他人と違うことでいじめられたり疎外されたりして、大人になってからも心や体の傷に苦しんでおられる方が多いと聞いています。そういう意味では、学校生活の体験がその後の人生に大きな影響を与えると思います。
 法案の中の学校での理解増進については、家庭及び地域住民その他の関係者の協力を得つつという文言が入りましたが、松岡参考人は、この文言が入ったことによって子供たちにどのような影響が及ぼすのか、お答えください。

○参考人(松岡宗嗣君)
 岡山大学の中塚幹也教授等の調査によると、性同一性障害と診断を受けている回答者のうち、自分の性別に違和感を覚え始めた時期は、中学校卒業までが90%、トランスジェンダー男性は小学校入学前が70%に達しています。このように、トランスジェンダーの多くが物心付く前から性別の違和感を自覚しています。
 また、大阪公立大学の康純准教授も、性的指向については思春期以降に多数派と異なることを自覚するケースが多く、トランスジェンダーの場合は幼くして違和感を持つことは決して珍しくありませんというふうに指摘をされています。
 宝塚大学看護学部の日高教授による調査では、10代の性的マイノリティーの約半数がいじめ被害を経験しており、NPO法人ReBitが性的マイノリティーの子供、若者、約2600名に行った調査によると、過去一年に自殺念慮を抱いた人は約半数、実際に自殺未遂を行った人は14%に上っています。例えば前述の調査に寄せられた声を見てみると、15歳の当事者の声です、自認する性で生きられないことが死にたくなるくらいつらいことだと分かってほしいという声があります。ほかにも、おかま、ホモなどの侮蔑的表現の言葉に自分が振り分けられる恐怖と日々闘い、疲弊して高校生の頃に精神疾患を発症し、高校を中退せざるを得なくなったという声もあります。さらに、性的マイノリティーの子供、若者の91.6%が保護者にセクシュアリティーに関して安心して話せないというふうに回答しています。
 このように、性的マイノリティーの子供の多くが小学校や中学校など幼い頃から自分の性の在り方に違和感や葛藤を持ち、学校でのいじめの被害又は自殺念慮も高く、親からも否定され、保護者にこそ相談できない、そうした現実があるのです。だからこそ、学校で理解を広げることが必要不可欠だというふうに思います。
 しかしながら、今回の法案では、この家庭や地域住民その他の関係者から反対されると、理解を広げる取組が抑制されてしまう可能性がある、こういった文言が追加されています。もちろん、家庭や地域住民のサポートがあることにこしたことはありません。しかし、わざわざ今回の修正で追記されるということは、学校での理解を抑制するための口実として使われる懸念があります。
 実際、ある与党議員のユーチューブ動画を見ましたが、国が指針を示すことで地方や民間団体が過激な方向に走らないよう歯止めを掛ける、そのための道具としてLGBT法案が必要といった発言をしています。その際、やり玉に上げている自治体の小学校5,6年生向けの冊子に書かれている内容は、男の子らしさ、女の子らしさを勝手に決め付けないとか、ピンクが女の子の色という決まりはありません、服装だって、好きな服、着たい服は人それぞれですと、そういった内容が書かれています。これに対して当該の議員は、小学校5年生には理解できず、混乱する、過激な団体が公的な場を使ってやっている、行き過ぎだ、初恋が始まる前にこうした教育を受ける必要はないというふうに言っています。明らかにこの法案が、必要な理解や啓発を阻害するために使えるものなのだというふうに明言しています。
 家庭や地域住民といった文言が追加された背景には、アメリカを念頭に、保護者と学校の対立や混乱が起きているということが挙げられているというふうに伺っています。例えば、毎日新聞が米国の教育界で保守系の草の根運動の象徴と言われているマムズ・フォー・リバティーについて報じていますが、組織の一部が過激化し、中には教育委員へ付きまとったり、自宅前で小児性愛者だと根拠のない中傷をしたり、コロナをうつしてやると目の前でせきをするなどして様々な地域で教育委員会や学校関係者への嫌がらせが相次いでいるとも報じられている点を確認しておきたいと思います。これは果たして政策を進めない理由となる混乱なのでしょうか。
 また、今回の法案では、努力義務ではありますが、学校で教育や啓発を行うことが求められています。さらに、基本理念には、性的指向やジェンダーアイデンティティを理由とする不当な差別はあってはならないと明記がされています。
 この点を前提にすると、万が一、家庭や地域住民その他の関係者から学校での理解増進に反対が起きた際、その反対の内容を厳密に検証せず、いたずらに学校での取組を萎縮させる口実になることは当然あり得ないということを確認しておきたいと思います。
 以上です。

○木村英子君
 ありがとうございます。
 子供の頃に受けた心の傷は、トラウマになったり、大人になって社会に出たときの大きな弊害になります。私も、幼いときに施設で受けた虐待はトラウマとなって今でも苦しめられています。ですから、私にとって、地域で生きていく上で障害者差別解消法は不可欠であり、大多数の健常者の人たちに障害者のことを理解してもらうためにも、合理的配慮の提供がなされないと差別の解消は進まないことを私自身実感しているところです。
 LGBT理解増進法案では合理的配慮の提供は明記されていませんが、LGBTの方たちにとってはどのような合理的配慮の提供が必要なのでしょうか。そしてまた、法案の中に合理的配慮について定める必要があると思われるか、松岡参考人のお考えをお聞かせください。

○参考人(松岡宗嗣君)
 現状の社会は、いわゆるシスジェンダーのヘテロセクシュアル、つまり性的多数派を前提につくられていて、性的マイノリティーにとって制度や慣行、観念など、様々な領域で社会的障壁が立ちはだかっています。
 例えば、不動産で同性カップルであることを理由に断られてしまったり、学校で同性愛がほかの人に感染すると言われて別室授業にされてしまったり、親からおかしい、病気だと言われてしまう、場合によっては家から追い出されてしまったという人もいます。トランスジェンダーの当事者が選挙の投票所に行った際、本人かどうかを疑われ、地域の人にトランスジェンダーだとばれてしまうような声で性別を確認され、つらくて投票に行けないという人もいます。学校の制服が苦しくて学校に行きたくない、死にたいと思うほどの人もいます。
 こうした困難への対応として、私はまず大前提として、やはり差別的取扱いの禁止が必要だと考えます。例えば、性的指向や性自認を理由とする解雇や左遷、サービス提供の拒否など、明らかに不合理な取扱いをしているものについては、明確に差別的取扱いだとして禁止しなければ当事者は被害から救済されません。
 しかし、その上で、合理的な区別というものは当然あり得ます。差別の定義が曖昧だとか、当事者が差別だと感じたなら何でも差別になるのかといった言説がありますが、そうではありません。
 合理的な理由のある区別は、差別には当たりません。例えば、男女別に分けられた施設のトランスジェンダーの利用に関しては、顔の見える特定の人が使うトイレなのか、それとも不特定多数が使うトイレなのか、それとも更衣室なのか、又は公衆浴場なのか、その施設の環境によっても基準は異なり、場合によっては本人が希望する施設を利用できないことも当然あり得ます。これはトランスジェンダーの当事者が一番よく分かっていて、むしろ当事者は、社会からの差別や偏見を恐れ、自分が周囲からどう見られているか、トラブルが起きないよう慎重に判断し、なかなか利用できずにいるという人がほとんどです。
 また、カリフォルニア大学ロサンゼルス校による大規模調査では、性自認による差別を禁止した地域と差別を禁止していない地域を比較し、トランスジェンダーとトイレ利用をめぐって性犯罪増加につながっていないことが指摘をされています。
 今回の法案でトランスジェンダーをめぐる臆測に基づいた排除言説が特に広げられてしまい、SNSだけでなく、例えばチラシが配られてしまったり、駅前でそうした言説が広げられてしまっています。当事者の中には、SNSでアカウントを消さざるを得ず、外出するのも怖くなってしまったという人もいます。
 社会的障壁をなくす上で、差別を禁止することと同時に、アプローチの一つとして合理的配慮という観点もとても重要だと考えます。希望する施設やサービスが利用できないときに、例えば時間をずらすといった個別対応をするなど、合理的な配慮、個別の環境調整を行うことは必要です。
 本来であれば、圧倒的少数である性的マイノリティーが、社会的障壁により様々な困難に直面している上で、しかし、男女別に分かれた施設などで必ずしも本人の希望やニーズに沿った利用ができない場合もある。そのとき、本人の状況だったり環境に応じて合理的配慮を提供する、こうした考えにのっとった施策が進められていくべきだと考えます。
 しかし、今回の法案の12条は、むしろ全く真逆の内容になってしまっています。つまり、何か性的マイノリティーは多数派を脅かすような存在という前提で、性的マイノリティーへの合理的配慮を提供するのではなく、実質的に、多数派の安心に留意してくださいと、さらに、そのための指針まで策定しようとしている点は本末転倒だと言わざるを得ないと考えています。

○木村英子君
 ありがとうございました。
 それぞれの当事者に合わせた合理的配慮があれば、地域や学校でも生きやすくなるというふうに思います。そうした意味でも、障害者差別解消法にある具体的な合理的配慮の提供がLGBTの法律を作る上でも最も重要であると認識いたしました。
 今回の法案で最も問題があると私が思われたのは、12条についてです。その点、内閣府、法務省、厚労省に質問したいと思います。
 先ほど松岡参考人の答弁であったように、今回のLGBT理解増進法の修正案では、措置の実施等に当たっての留意という条文が追加されています。これまでに、差別や偏見に苦しむ少数者への差別解消をも目指す法律の中で、このような多数者側への配慮を留意する旨の記載がある法令は存在しているのでしょうか。内閣府からお答えお願いします。

○政府参考人(原宏彰君)
 内閣府からお答えいたします。
 お尋ねのLGBT理解増進法案第12条は、性的指向又はジェンダーアイデンティティにかかわらず、全ての国民が安心して生活することができることとなるよう、留意するものとすると規定をしています。このため、同条には多数者側への配慮との文言はないものと承知をしています。
 その上で、内閣府が所管する御指摘の差別や偏見に苦しむ少数者への差別解消を目指す法律の中で、同様の記載がある法律はございません。
 なお、内閣府が所管する障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の第一条には、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的とするとの文言がございます。

○政府参考人(柴田紀子君)
 お答えいたします。
 ご指摘の法案第12条は、この法律に定める措置の実施等に当たっては、性的指向又はジェンダーアイデンティティにかかわらず、全ての国民が安心して生活することができることとなるよう、留意するものとすると規定されており、当該条文には多数者側への配慮との文言はないものと承知しております。
 その上で、法務省が所管する差別解消を目的とする法律として、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律及び部落差別の解消の推進に関する法律がございますが、いずれもご指摘の法案第12条と同様の規定は置かれておりません。

○政府参考人(間隆一郎君)
 お答えいたします。
 ご指摘のLGBT理解増進法案第12条には多数者側への配慮との文言はないものと承知しておりますが、その上で、厚労省、厚生労働省が所管する法律の中に、同条のように、全ての国民が安心して生活することができることとなるよう留意するとの規定を有する法律はございません。
 以上でございます。

○木村英子君
 今、内閣府などにお答えしていただきましたけれども、LGBT理解増進法案の12条のような、全ての国民が安心して生活することができるよう留意するという条文は、ほかの差別解消に関する法律にはないということ、それが明らかになりましたが、理解を増進し、少数者の生きづらさをなくしていこうという法案なのに、なぜ、多数者側への配慮を強調することはいかにも不適切であると考えます。
 松岡参考人は、省庁の方たちの今のお答えを聞いて、この法案の12条が今後LGBTの当事者の方たちにどのような影響を与えてしまうかをお答えいただきたいと思います。
 また、法案全体についての評価もお願いいたします。

○参考人(松岡宗嗣君)
 やはり、今回の法案は、理解を増進するための法律ではなく、理解を抑制、阻害するための法律になってしまったと言わざるを得ないと思っています。
 例えば、アメリカを中心に、黒人に対する暴力や人種差別に抗議するブラック・ライブス・マター、黒人の命も大切だという動きが起きた際、オール・ライブス・マター、全ての命も大切だという反対のスローガンが打ち出されました。特定のマイノリティーの命が脅かされ、差別や偏見による被害を受けていることに対して声が上がっているのに、それを全ての人というふうに表現することは、むしろ、差別の現状、その問題の所在を覆い隠し、課題を解決することができず、結果的に差別を温存することにつながってしまいます。今回の法案の12条というのは、まさにこれを如実に表してしまっていると考えています。
 障害者差別解消法には、多数派の安心に留意するといった趣旨の規定はもちろんありません。雇用における性別に基づく差別を禁止している男女雇用機会均等法でも同じです。例えば、男性が、女性が職場に入ってきたら安心できないからなどといって、多数派の安心に留意するとはならないはずです。性的マイノリティーについてはこのような規定が入ってしまうというのは、当事者が日々直面している深刻な差別の実態をまさに理解していない、他人事だと思い真剣に考えていないことの証左だというふうに思います。
 これまで性的指向や性自認に関する差別に対応する法律が何もない中で、自治体や企業、学校の現場の自助努力で様々な理解を促進する取組が進んできました。今回、多数派の安心に留意する、そのための指針まで作られるとなってしまうと、この法案に関する措置、つまり、自治体の条例、施策、例えば相談事業だったり居場所事業、啓発事業だったり、又は学校や企業で理解を広げる取組、その全てに対して、誰かが不安だとさえ言えば規制することができてしまう、そうした懸念があります。
 もちろん、全ての国民の安心の全てというのは、性的マイノリティーを含むことは大前提です。同時に、この法案は、基本理念で性的指向やジェンダーアイデンティティを理由とする不当な差別はあってはならないと明記しているとおり、この前提の下、理解増進の取組が行われていくことになります。多数派の誰かが不安だと言っても、それが不当な差別につながったり、不当な差別を温存するような施策は、この法律に基づくものとしては当然認められないでしょう。
 本来は差別的取扱いを禁止する法律というものが必要ですが、それでも何もないよりはあった方がいいのではないかと思い、この間の理解増進法をめぐる議論を私は見てきました。むしろ、最後の最後に、法案の趣旨とは真逆の、むしろ理解を制限、阻害するような法律が通ってしまいそうな現状に強い憤りを覚えています。
 私自身、ゲイの当事者として、この間、性的マイノリティーに関する情報発信をしてきました。実際、私も、友人を自死で亡くしている経験があります。この間のやっぱり法案の審議をめぐっては、やはり臆測だったり、デマに基づいた言説が広げられてしまって、本当に苦しい思いをしている当事者がたくさんいます。ただでさえ、いじめや差別、ハラスメントで苦しい思いをしているのに、さらにそれを追い打ちを掛けるような言説がこの政治の場から出てしまっていることに本当に憤りを覚えていますし、今まさに命が失われてしまう可能性があるということに本当に心から向き合ってほしいと、そのように思っています。この間、誰が性的マイノリティーの直面している困難に向き合っているのか、そうでないかというものが明らかになったというふうに私は言えるんじゃないかと考えています。
 理解を広げるための法律のはずが、多数派の安心や家庭、地域住民の協力といった点を口実に理解を広げることを阻止されてしまうということになると、やはり今後、性的マイノリティーの人々を苦しめ、追い詰め、命を見捨てていくことになる可能性があります。そうした判断を下そうとしているということを是非国会議員の皆様に分かっていただきたいというふうに思っています。
 以上です。

○木村英子君
 ありがとうございます。
 差別は、障害者に限らず、大多数を前提にした社会から排除されてしまう全ての人たちの共通の脅威です。
 今回の法案は、LGBTの方たちへの差別を認めたくないという意思さえ感じます。実際に差別を受けてきた障害当事者として怒りを禁じ得ません。この法案が通ってしまったら差別が助長されるおそれがあることは、松岡参考人のお話を聞いてからも明らかです。差別や偏見にさらされ、生きづらさに苦しんでいるLGBTの当事者の方たちが安心して生きられる社会を実現するために、障害者差別解消法と同じように、当事者主体で法律が作られなければならないと私は考えます。
 本法案は、私は、廃案とし、審議をやり直すことを求め、私の質疑を終わります。
 以上です。

【反対討論】

○木村英子君
 れいわ新選組の木村英子です。
 会派を代表して、LGBT理解増進法案に反対の立場から討論いたします。
 長年にわたり差別や偏見に苦しみ、生きづらい状況の中でLGBT当事者の皆さんが求めてきたものは、差別禁止する法律です。れいわ新選組は、障害者が共に生きられる社会の実現のために、差別解消に向けて取り組んできたことから、一貫してLGBT差別解消法の成立を訴えてきました。
 そうした立場から反対する理由は、第一に、6条の2項と10条の3項に、家庭及び地域住民その他の関係者の協力を得つつという文言が入れられたことです。
 親や地域に理解してもらえないことで苦しんでいるLGBT当事者である子供たちがたくさんいます。しかし、6条2項と10条3項では、家庭や地域住民など、周りの理解や協力が前提とされているような文言になっています。家族や地域住民など幅広い人の中には、まだまだ誤解をしたり、偏見を持っている人がいる状況において、そうした人たちの声によって学校での理解増進教育を抑制されてしまう懸念があります。
 第二の問題点は、12条に、全ての国民が安心して生活することができることとなるよう留意するという条文が入れられたことです。
 差別をされている当事者の権利を守るはずの法律が、性的マイノリティーは多数派を脅かすような存在という前提で、性的マイノリティーへの合理的配慮を提供するのではなく、実質的に多数派の安心に留意してくださいとなっており、本末転倒と言わざるを得ません。
 当事者からは、この法案に対して、理解増進ではなく、差別増進につながるとして、反対の声が上がっています。障害者の場合、私たちのことを私たち抜きに決めないでを合い言葉に、当事者参画の下で条約の批准や国内法の整備がされてきました。私は、この法案を廃案にし、LGBT当事者の方々が真に望んでいるLGBT差別解消法を成立させるべきだと考えます。
 以上の理由で、本法案に反対です。
 以上で討論を終わります。

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