2022.12.6 参議院 内閣委員会 『障害者差別解消法について質問します』

【議事録】

○木村英子君
 れいわ新選組の木村英子です。
 障害者差別解消法について質問いたします。
 全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、障害を理由とする差別の解消を推進することを目的として、障害者差別解消法が2016年に施行されました。
 そして、今年、国連による障害者権利条約の対日審査が行われ、9月には日本に対して厳しい勧告が出されました。これにより、障害者の強制入院によって自由を奪うことを認める全ての法的規定を廃止することが勧告されましたが、日本政府は、今国会で提出した精神保健福祉法改正案では、本人の同意なしに入院させることができる範囲を広げようとしています。また、日本の分離された特別支援教育を廃止することも勧告されていますが、文部科学大臣は、特別支援教育の中止はしないと明言しており、勧告を無視して分離教育を推し進めようとしています。
 この日本政府に対しての総括所見では、2028年までに改善の義務と報告が課されています。障害者差別解消法は障害者権利条約に批准するための国内法として整備されたものであり、今回出された勧告は障害者差別解消法を所管する内閣府としての責任と義務が課せられていると思います。
 大臣は、日本国内の差別解消に向けてこの勧告に従って改善していくことができるでしょうか、お答えください。

○国務大臣(小倉將信君)
 木村委員、言及していただいた対日審査の総括所見におきましては、情報アクセシビリティー、差別解消、バリアフリー、雇用促進並びに文化芸術活動などの障害者の権利を促進をする法律やガイドラインなどの幅広い施策の取組が肯定的な側面として挙げられました。
 他方で、委員ご指摘のように、意思決定、地域社会での自立した生活、インクルーシブ教育、精神障害者の入院などに関する事項に関し、障害者権利委員会としての見解及び勧告が示されたものと承知をいたしております。
 そういった中で、委員もご案内かもしれませんが、先般公表されたこの総括所見は法的拘束力を有するものではありませんが、今般示された障害者権利委員会の勧告などについては関係府省庁において内容を十分に検討していくものと考えております。
 そこで、私ども内閣府といたしましても、次期障害者基本計画の策定に向けて、障害者政策委員会において総括所見の内容も踏まえつつ幅広く議論を積み重ねていただいておりますところでありまして、引き続き、次期障害者基本計画の策定に向けて必要な対応を行ってまいりたいと思っております。

○木村英子君
 しかし、この権利条約に基づいて作られた差別解消法が施行されて今6年がたっています。しかし、いまだに段差やエレベーターなど、ハードのバリアは十分には解消されていません。
 また、資料1から3のとおり、交通機関の乗車拒否や障害を理由としたスポーツジムや公衆浴場への入店拒否など、障害者への理解や合理的配慮が進んでいないことで、私たち障害者の現状は、バリアを感じずに安心して暮らせるほどの差別解消にはまだまだ至っておりません。

 そして、何よりも改善を妨げている要因は、日常生活の中でいわれなき差別をされたときに相談できるところがほとんどないという現実です。相談窓口を周知されていないどころか、たとえ窓口が見付かってそこで差別を訴えても、それは内閣府に言ってくれとか国に言ってくれとか、入店拒否については民事だから関われないと言われ、自治体からは受け付けてもらえず、たらい回しにされることが多く、結局泣き寝入りしている障害者がたくさんいる現状です。
 このように、多くの障害、差別事例が放置されている現状を内閣府は把握しているのでしょうか。そして、内閣府の責任として、差別解消に向けた相談体制の構築はどのようになっているのかを、内閣府に設置されている障害者政策委員会での検討の内容も含めて、済みませんが、もう一度、大臣、お答えください。

○国務大臣(小倉將信君)
 今年も12月の3日から9日まで障害者週間を実施をしております。今日もその週間のうちでありますが、私もそれに合わせて東京駅の構内で行われておりましたワークショップに参加をしてまいりました。視覚障害者の疑似体験あるいは手話の教室、さらには盲導犬を使っていらっしゃる方との対話、こういったものに参加をしておりました。やはり、盲導犬を使っていらっしゃる方から話を聞いても、なかなかまだまだ入れる場所が少ない、入れない場所の方が多いというような、そういったご意見も伺ったところであります。
 そういった意味では、私ども内閣府としては、しっかり個々の障害のある方の事情を丁寧にお伺いしたいと思いますと同時に、障害者政策委員会におきましては、昨年6月に公布された改正障害者差別解消法の施行に向けて、政府全体の方針となる基本方針の改定に係る議論をこれまで行ってきたところであり、先般、その議論が取りまとめられたものと承知をしております。
 委員ご指摘の相談窓口に関してでありますが、この委員会におきましても、相談等の体制整備に関する事項として、相談対応等においては、市区町村、都道府県、国が役割分担、連携協力をし、一体となって適切な対応を図ることができるような取組を内閣府が中心となって各府省庁や地方公共団体などと連携して推進することが重要であること、そして内閣府においては、各省庁に対する事業分野ごとの相談窓口の明確化の働きかけや適切な相談窓口につなぐ役割を担う国の相談窓口の検討を進めるほか、相談対応を行う人材の専門性向上などの取組を進めることなどが指摘されたものと承知しております。
 こういった指摘を受けまして、内閣府においては、各省庁や地方公共団体などと連携をしつつ、相談が適切に受け止められるような仕組みの整備に向けた取組を引き続き進めてまいりたいというふうに考えております。

○木村英子君
 まだ、相談体制についてなんですが、各市町村でも差別解消協議会というものが立っているところと立っていないところがあります。そういう意味では、まだまだ相談を受け付ける市区町村というのはそんな全国的に広がっているわけではありませんので、今後もその相談窓口についての整備を周知徹底していただきたいというふうに思っております。
 次に、障害者差別解消法に基づく基本方針には、主務大臣が事業所に対して行った助言、指導及び勧告については、取りまとめて毎年国会に報告するものとすると記載されていますが、差別事例が後を絶たない現状にもかかわらず、差別解消法が施行されてから一件も国会で報告されたことがありません。
 内閣府のQ&Aには、主務大臣が特に必要があると認めるときは、報告の徴収、助言、指導、勧告といった措置を講ずることができることとしていますが、国会まで差別されている現状が届かず、何の手だてもない中で差別を放置されている現状は、主務大臣の権限が適切に執行されている、行使されているとは思えません。
 これ以上差別を助長しないためにも、障害者が差別されたときにその声が大臣や国会にまで届く仕組みを早急につくっていただきたいと思っておりますが、大臣のお考えをお願いいたします。

○国務大臣(小倉將信君)
 お答えをいたします。
 木村委員ご紹介いただいたとおりでございまして、障害者差別解消法では、事業者における障害者差別解消に向けた取組は、主務大臣の定める対応方針を参考にして、各事業者により自主的に取組が行われることが期待をされております。しかしながら、事業者による自主的な取組のみによっては、その適切な履行が確保されず、例えば、事業者が法に反した取扱いを繰り返し、自主的な改善を期待することが困難である場合など、主務大臣は、特に必要があると認められるときには、事業者に対して報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができることとされております。
 そしてまた、障害者差別解消法の附帯決議におきまして、主務大臣が事業者に対して行った助言、指導及び勧告については、取りまとめて毎年度国会に報告するものとされております。しかしながら、これも木村委員ご指摘のとおり、現時点でこの助言、指導及び勧告といった行政措置が講じられた実績はございません。
 そういった中で、内閣府において、主務大臣による行政措置に至らない事例であっても、従前より事例の収集に努めてきたところでありまして、今般、参考となる事案の概要などを分かりやすく整理をしてデータベース化をし、そしてホームページ等で公表、提供するための取組の準備を行っているところであります。
 障害の有無によって分け隔てられることのない共生社会の実現のためには、障害を理由とする差別の解消が重要だと認識しております。内閣府におきましても、今後、各省庁や地方公共団体と連携協力をして、障害を理由とする差別の解消に向けて何ができるか、そのような取組をしっかりと進めてまいりたいと思っております。

○木村英子君
 ありがとうございます。
 データベースを収集したりとか、あるいは事例の収集ということだけではなかなか進まないという現状があります。そういった意味でも、幅広く、あるいは日本中にこの障害者の差別がまだまだあるんだということを、やはり国会で報告できるような仕組みを皆さんでつくっていただけると、もっと差別解消に拍車が掛かって、私たちも生きやすくなりますので、今後ともその仕組みについて検討していただけたらと思います。
 次に、障害者差別解消法では、第3条で、「国及び地方公共団体は、この法律の趣旨にのっとり、障害を理由とする差別の解消の推進に関して必要な施策を策定し、及びこれを実施しなければならない。」として、国の責務が定められています。具体的な差別の禁止や合理的配慮の提供を義務付けている第7条の規定については、立法府と司法府が対象とされておらず、努力義務すら課されていません。
 先ほども言いましたが、障害者差別解消法が施行されてから6年がたっていても差別の解消に至っていないのは、国会や司法において合理的配慮の義務が課されておらず、十分な合理的配慮の提供がなされていないということが大きな原因だと思っています。多くの障害者が、障害者団体や日本弁護士連合会からも、立法府や司法府も差別の禁止や合理的配慮の提供の義務を課すべきではないかという要望が出されているところです。
 行政府以外が検討されていない理由というのは何なのか、教えていただけますか。

○国務大臣(小倉將信君)
 お答えをいたします。
 障害者差別解消法第3条におきましては、国及び地方公共団体の責務として、法の趣旨にのっとり、障害を理由とする差別の解消の推進に関して必要な施策を策定し、これを実施しなければならないこととされておりまして、国会及び裁判所もこの責務を負っているものと考えております。
 他方、障害者差別解消法においては、不当な差別的取扱いの禁止や合理的配慮の提供といった具体的な措置については国会及び裁判所は対象外とされております。その趣旨といたしまして、三権分立の観点から国会及び裁判所は対象とされていないものと承知をいたしております。
 したがいまして、国会及び裁判所については、政府としてはその具体的な在り方について申し上げる立場にはございませんが、障害者差別解消法の趣旨を踏まえつつ、まずは実態に即したそれぞれの自主的な取組を行うことが期待をされているというふうに考えております。

○木村英子君
 しかし、行政府だけがその差別の取扱いの合理的配慮の提供が義務付けられている一方で、司法と立法が主体的な取組というだけではやっぱり差別というのは解消がされていかないというふうに思います。
 例えば、資料4のとおり、裁判員裁判で裁判員に選任する手続において、聴覚障害者の方が事前に手話通訳を求めたにもかかわらず、手話通訳は準備しておらず、司法への参加が妨げられてしまったという事例があります。

 この問題は、合理的配慮の提供が義務付けられていないことが問題であると当時から指摘されていましたが、現在に至っても裁判所の裁量に任されてしまっている状況は変わりありません。
 資料5をご覧いただくと分かるように、視覚障害を持つ当事者の弁護士から裁判員制度に対し、適切な配慮がなされず、障害者が制度から取り残されていないかという、懸念するという声も上がっているところです。

 市民の司法参加が現在進められている中ではありますが、障害者が合理的配慮を受けられるように、司法の場でも義務化するべきだと考えます。
 そして、立法府においては、今年の7月に当選した天畠議員は言語障害があり、「あ、か、さ、た、な話法」という独自の話法を用いるため、発言をするためには健常者議員の何倍もの時間が掛かります。そのため、国会の質疑において、合理的配慮の提供として質疑時間の延長を求めているのにもかかわらず、まだまだ認められていません。また、本会議場では、ハードのバリアは整備されておりますが、議席については、車いすを利用している議員は健常者議員と離されていて、同じ会派の議員とコミュニケーションが取れない状況にあるため、近くの議席に割当てを求めております。
 障害者は、その障害によって独自のコミュニケーション方法があり、自分の障害から編み出した伝達方法でなければ他者とのコミュニケーションを取ることができません。ですから、障害者議員の言語障害や障害の特性に対する合理的配慮を認めていただけないことは、コミュニケーションや言葉を奪うことになり、国会があからさまに差別的取扱いを行っていることとなります。
 このように、国民の負託を受けて国会に来た障害者議員が合理的配慮を受けられないことは、国会活動の妨げになり、差別的取扱いに当たると言わざるを得ません。どんな障害があっても、国民から選ばれた議員が国家や国民のために議員活動が行えるように、立法府においても合理的配慮の義務が課せられるべきだと考えております。
 国連の対日審査の総括所見では、日本には条約の実施状況を監視するための仕組みが行政にはあるものの、範囲が限定的で立法や司法にその監視が及ばないことが指摘されております。そのため、人権の保護に関する幅広い任務と十分な人的、技術的及び財政的資源を備えた国内人権機関を設立するように勧告しています。
 ですから、国会や裁判所が自主的な取組を行うべきとの答弁がありましたけれども、行政だけではなく障害者の、行政だけでは障害者の差別はなくなりませんし、司法と立法に対しても合理的配慮の提供の義務が課せられることによって、日本における障害者の差別解消が実現されていくと思います。
 私たち障害者は、常に差別にさらされています。一日も早く、差別されず、安心して生きていける社会を実現していくためにも、障害者差別解消法を作ってきた内閣府がリーダーシップを取って、司法府や立法府と話し合い、そして法改正も含む差別解消に向けた取組を進めていくための検討を、検討の場をつくっていただけたらと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

○委員長(古賀友一郎君)
 時間が来ておりますので、簡潔にご答弁願います。

○国務大臣(小倉將信君)
 ありがとうございます。
 繰り返しになって恐縮ですが、国会及び裁判所においては、障害者差別解消法の趣旨を踏まえつつ、まずは実態に即した自主的な取組を行うことが期待をされていると考えます。
 ただ、立法府に関しましては、私も国会議員の一人であります。総理も同趣旨の答弁をしたかと思いますけれども、国会議員の一人として、同僚の皆様とご指摘等を踏まえて何ができるか、しっかりと考えてまいりたいというふうに思います。

○委員長(古賀友一郎君) 
 時間が来ておりますので、まとめてください。

○木村英子君
 はい。
 改めまして、司法、立法、そして行政、この三つの機関がきちんと差別解消に向けて動きますように、内閣府がリードして進めていただきたいと思います。
 以上です。ありがとうございました。

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