2020.7.30国土交通委員会質疑『マンホールトイレを避難所トイレの改善策に!』

配付資料

議事録

○木村英子君 れいわ新選組の木村英子です。
 質疑に入る前に、令和二年七月豪雨で亡くなられた方々及びその御家族の方々に心よりお悔やみを申し上げるとともに、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。
 新型コロナウイルスがまだ収束していない上に、今月の豪雨によって各地でたくさんの方が被災しており、複合災害が問題となっている現状ですので、本日は支援が必要な障がい者と高齢者の防災のバリアについて質問したいと思います。

 ひとたび災害が起こりますと、一人では避難することができない障がい者や高齢者にとって、避難所に行くことすら難しく、また、避難所に行ったとしても、スロープや車いす用トイレが整備されていないことで、いくつもの避難所を転々とたらい回しされる現状が多く起こっています。そうした現状では、災害で命を落とす危険も多く、また、避難所にたどり着いても、そこでの生活に困難をきたすことで災害関連死を引き起こす危険性が高いのです。
 2011年に起きた東日本大震災の災害関連死は3739人に及んでおり、そのうちの3139人、つまり9割に近い人が66歳以上の高齢者です。
 資料1をご覧ください。
 共同通信の調べによると、東日本大震災の災害関連死の24.6%、つまり4人に1人が障がい者であって、健常者の死亡率に比べると格段に高い数値です。
 このような災害の現状において、2015年3月、仙台市で開催された国連防災世界会議では、「誰も排除されない」「誰も排除しない」「誰も排除させない」インクルーシブ防災という考え方が提唱されました。しかし、このインクルーシブ防災の考え方は、日本ではまだまだ浸透していません。その理由は、防災訓練や防災計画の策定などに支援の必要な当事者が参画できるような合理的配慮がなされていないことで、結果的に排除されてしまっているからだと思われます。
 すでに国には、防災基本計画というものがありますが、この防災基本計画を作成するときに、障害当事者の意見を聞き取ったり、参画させたりしているのでしょうか。お聞かせください。

○政府参考人(小平卓君) お答えいたします。
 防災基本計画につきましては、災害対策基本法第34条により、中央防災会議が作成及び修正することとされております。
 この中央防災会議におきましては、議員御指摘の障害当事者の方は構成員とはなっていないものの、内閣総理大臣を会長として、防災担当大臣を始めとする国務大臣、指定公共機関の代表者、学識経験者といった幅広い見地から御意見をいただける方々で構成されているところでございます。

○木村英子君 そもそも、計画の段階で要配慮者である当事者に意見を聞かなければ、本当に災害が起きたときに当事者にとって必要な避難所のバリアや設備などの合理的配慮が施されずに、災害による死者や災害関連死を防ぐことはできません。
 避難訓練や避難計画に当事者が参画している自治体は少ないですが、国立市や多摩市など、いくつかの自治体では障がい者や高齢者が実際に避難訓練に参加して、避難所において必要な設備や問題点を事前に検証し、災害に備える取組をしているところがあります。このような災害時に備えた避難訓練や防災計画に配慮を必要とする人たちが参画することによって、本当に災害が起きたときに災害弱者の命を救うことができると思います。今、この国は災害が絶えない中で、一人でも多くの命を守るための防災計画が早急に取り組むべき課題だと思われます。
 資料2をご覧ください。
 国の防災基本計画に、「地方防災会議の委員への任命などについて、女性や高齢者、障害者などの参画を拡大し、多様な視点を取り入れた防災体制を確立する必要がある」と書かれています。支援を必要とする障がい者や高齢者が災害で一人でも取り残されないように、そして災害による被害者を生まないためにも、誰も排除されない、誰も排除させない、誰も排除しない、インクルーシブ防災を実現するために、防災訓練や防災計画などへの当事者参画を積極的に進めていただきたく、方策を検討していただけないでしょうか。いかがでしょうか。

○大臣政務官(今井絵理子君) 地域における多様な視点を反映した防災対策を実施し、防災力向上を図るためには、議員御指摘のとおり、地域における防災計画の策定や、また避難訓練の実施において障害のある方や高齢者等の参画を進めることはとても重要だと思います。
 そのため、防災基本計画では、これらの要配慮者への施策の必要性を明記するとともに、地方防災会議への委員の任命などにおいて障害者等の参画を促してきたところです。また、総合防災訓練大綱においても、これら要配慮者本人や要配慮者利用施設の管理者等の訓練への参画も促してきたところです。高齢者や障害のある方など配慮を必要とされている方が犠牲になるケースは絶えず、私自身もとても胸を痛めております。
 早期の対策を講じるためにも、令和元年台風十九号等を踏まえた高齢者等の避難に関するサブワーキンググループでは、障害者団体の代表の方にも委員として参画いただいております。ナッシング・アバウト・アス・ウイズアウト・アス、私たちのことは私たち抜きで決めないで、これは、障害者権利条約を策定する際に当事者たちはこれを合い言葉にして参画されました。当事者参画を大切にしながらその当事者参画の大切さをしっかりと理解し、本日の委員の御指摘も踏まえて更に前進できるような方策を検討してまいりたいと思います。

○木村英子君 ありがとうございます。災害は急にやってきますので、できれば早急に検討をお願いしたいと思います。
 次に、災害関連死の大きな要因の一つに避難所のトイレの問題があります。
 食料と同じようにトイレは命を左右するほどの重要な問題です。実際には、避難所のトイレが汚かったり使いづらいことも多く、トイレの使用頻度を減らすために水分を控えてしまったり、それによって体調を崩したり、そして、エコノミー症候群や熱中症になり、最悪の場合死にもつながってしまいます。
 資料3のアンケートにもあるとおり、特に障がい者や高齢者は避難所に行っても、多目的トイレがなかったり仮設トイレは段差や広さの問題で使えなかったりすることが多いのです。また、トイレまでの距離が遠く、いつも混雑して並んでいることで、ほかの避難者に迷惑をかけてしまうのではないかという思いから、トイレに行くことをちゅうちょしてしまい、障がい者や高齢者が、そういう方がたくさんいます。
 災害時にはトイレは深刻な問題ですので、その問題を解決する選択肢の一つとして、阪神・淡路大震災以降に国交省が災害用のトイレとして整備を進めているマンホールトイレについて質問したいと思います。
 そこで、資料4をご覧ください。
 国交省が平成29年1月に出しているマンホールトイレのリーフレットですが、ここではマンホールトイレの特徴として、すぐに使える、段差がない、洋式トイレである、くみ取りが不要ということが書かれており、また、障がい者や高齢者に合った広いスペースの確保もでき、障がい者や高齢者にも使いやすいトイレであることが示されています。
 また、国交省が平成28年に発行した「マンホールトイレ整備・運用のためのガイドライン」では、避難所のマンホールトイレ整備にあたって、「車いす用の広いトイレは、避難所に近い場所に必ず一つは設置する」「トイレまでのアクセスに障害がないように配慮する」といったことが明記されています。
 そこで、お伺いいたします。令和二年七月豪雨では、マンホールトイレはどれくらい利用されているのでしょうか。また、そのうち車いす用のマンホールトイレはいくつあったのでしょうか。お聞かせください。

○政府参考人(五道仁実君) お答え申し上げます。
 令和二年七月豪雨においては、一部の下水道施設が被災しましたが、直ちに仮設ポンプなどにより代替機能を確保しているところでございます。このような状況もございまして、熊本県人吉市の避難所を除き、マンホールトイレの設置の報告は受けていないところでございます。人吉市の避難所の一つである人吉スポーツパレス、市の体育施設でございますけれども、その施設には元々施設内に車椅子用二基を含む70基のトイレが使用できる状態の中におきまして、車椅子用ではないマンホールトイレ2基を設置したという報告を市から受けているところでございます。

○木村英子君 しかし、今回の豪雨においては、2基のマンホールトイレを設置されていたということですけれども、車いす用マンホールトイレについては設置されていなかったということですので、これでは障がい者や高齢者が安心して避難するということは難しいと思います。多様な要配慮者に対応できるマンホールトイレを一刻も早く整備していただきたいと思っています。
 資料5をご覧ください。
 この写真は、国立市の避難訓練において、障害を持った当事者が実際に車いす用のマンホールトイレを利用して検証している写真です。このときの避難訓練に参加した当事者の意見では、個別の障害に対応するには便座や手すりの形状や設置場所などについて改善する必要があるということでした。今後、当事者の意見を聞いてマンホールトイレをより使いやすく改善していただき、またマンホールトイレを活用していくことが、災害関連死を防ぐ方策の一つだと思いますので、迅速にマンホールトイレの普及をしていただきたいと思っております。
 そこで、赤羽大臣にお伺いいたします。
 障がい者や高齢者などの要配慮者が、災害時に安心して利用できる避難所のトイレの選択肢の一つとして、マンホールトイレを推進していただきたいと思っておりますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(赤羽一嘉君) 今御質問の中にも言及をしていただきましたが、阪神・淡路大震災のときの避難所の一番の問題がやっぱりトイレの問題でありました。神戸市のちょうど水道局のフロアが潰れたために市内の上下水道の地図が全くなくなってしまったということで、上下水道の復旧、大変時間が掛かったわけでして、水が流せないので、全くこれ障害者の方にかかわらず、健常者の全ての被災者にとってトイレの問題というのは本当大きな問題でありました。ですから、そのことをきっかけに、マンホールで、まあこんな立派なトイレじゃなかったんですけど、マンホールでトイレの役目を果たすということで急場をしのいだというのが阪神・淡路大震災のときの光景だったというふうに今でも記憶をしております。
 ですから、この財政的な支援は国交省の防災・安全交付金からやらせていただいているスキームはあるんですけれども、恐らく避難所にこうしたことを完備を進めるという意味では、国交省だけで財源を用意してもなかなか前に進まないんではないかと。恐らく内閣府防災が組織していると、ちょっと私、正確じゃないんですけど、地方防災会議というものの中でこうした避難所の在り方というのは、今、コロナウイルス感染症のことで今様々な、問われておりますので、感染症の下での避難所の在り方の中に、障害者の皆様が困らないようなこうしたマンホールトイレの設置ということもアイテムに入れていくことで恐らく設置が加速化されるんではないかと思いますので、武田担当大臣ともちょっと少し検討させていただきたいと、こう思っております。

○木村英子君 ありがとうございます。では、検討をお願いしたいと思います。
 以上で質問を終わります。

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