2025.12.4 参議院 国土交通委員会「しょうがいしゃにとって 災害時にわかりやすい情報を」気象業務法及び水防法改正案質疑

○木村英子君
 れいわ新選組の木村英子です。
 本日は、気象業務法と水防法の改正案に関し、障害者への情報保障について質問します。
 今回の法案では、洪水による重大な災害が起こるおそれが著しく大きい場合に、洪水特別警報を新たに実施することが盛り込まれています。
 大雨による洪水が発生する可能性がある地域において、住民が安全に避難を円滑に進めるためには、避難指示による警報が住民により早く、分かりやすく伝えられることが重要です。しかし、災害時に避難することが困難な障害者や高齢者などの要配慮者には洪水などの警報の情報が届かない場合が多い状況にあります。
 例えば、資料1をご覧ください。

資料1
出典:「平成30年7月豪雨(西日本豪雨)における障害のある方々の困りごと調査を実施しました」より木村英子事務所加工・作成
資料1


 平成30年に発生した西日本豪雨の後に障害者に困り事を尋ねたインターネットアンケートでは、避難指示・勧告の情報について、17%がすぐに入手できなかったと回答。リアルタイムで情報を入手する方法が分からなかった、防災スピーカーは近所にあるが、雨の音でかき消されたなど、必要な情報が届いていない状況が分かります。
 また、資料2をご覧ください。

資料2:新聞記事抜粋
出典:2025年8月8日毎日新聞宮城県版より木村英子事務所加工・作成
資料2

 今年7月30日、カムチャツカ半島付近で地震が発生し、宮城県塩竈市に津波が押し寄せ、津波警報が発表された際に、事前に作成されていた要支援者の避難の計画どおりに避難ができた人はゼロだったということです。実際に、車椅子を使う高齢男性は、事前に予定していた支援者が自宅に来なくて、避難を諦めざるを得ませんでした。
 このように、大雨や洪水が起きたときに自分で避難することが難しい障害者や高齢者は、取り残されて災害の犠牲になることが多いのが現状です。
 2021年には、災害対策基本法の改正で、要支援者の個別避難計画の作成が努力義務化されました。これを受けて、気象庁は、2022年以降、要配慮者担当の係長職員を置くようにし、気象庁及び47地方気象台に48人の職員を配置しています。
 障害者差別解消法第5条では、行政機関等は関係職員に対する研修に努めなければならないとされています。地域によっては障害者への理解が遅れているところもありますから、気象庁として、当事者参画による避難訓練や研修の必要性を各自治体に周知していくことが重要と考えます。
 国交省は、所管の教育機関である気象大学校においても当事者を交えた研修を行うとともに、さらに、各地方気象台でも当事者参画が研修を行えるよう促していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(金子恭之君)
 本当に命に関わる貴重なご指摘をいただきました。
 国民の命と安全、安心を守るためには、防災気象情報が国民に確実に伝わることが重要ですが、障害者の方々への伝達については、東日本大震災等を振り返ると、健常者と比べて情報が届きにくい事例も見られました。
 このような背景から、気象庁では障害者の方々への情報伝達の改善に向けた取組を行っております。例えば、令和2年には、聴覚障害者の方々を含め、津波警報等を視覚的に伝える津波フラッグを導入いたしました。また、同じく令和2年から、気象庁が行う緊急記者会見の際に手話通訳者を配置してきたところでございます。これらに加え、更に対策を進めるために、委員ご指摘のとおり、全国の気象台に要配慮者対応を担う職員を配置し、障害者団体等と防災気象情報に関する意見交換を実施しながら各種の取組を進めているところでございます。
 気象台職員の要配慮者の方々への理解度向上は重要な課題であり、これまでも研修を行ってきたところでございますが、ご指摘の当事者参画の研修も重要であると考えており、今後、障害者団体等の関係団体とも連携をしながら取り組んでまいります。

○木村英子君
 ありがとうございます。当事者との研修を引き続き実施していただきたいと思います。
 次に、資料3をご覧ください。

資料3
出典:気象庁HP掲載のリーフレットより木村英子事務所加工・作成
資料3


 このリーフレットは差別解消法の施行前に作られたものですが、様々な障害者への合理的配慮がなされていないため分かりにくく、災害時の情報を得ることができない人もいます。今回の法改正では、洪水特別警報をつくるなど内容に大きな変更点がありますから、こうした資料を作成する際には障害に合わせた合理的配慮を提供していただきたいと思います。また、分かりやすい日本語版を作ることも外国籍の市民にとっても重要かと思います。
 災害が起きた際に誰一人の命も取り残さないためにも、障害者や高齢者、外国籍の方など、様々な配慮が必要な方への情報提供の方法を備えることは必須と考えます。具体的には、聴覚障害者には手話通訳や字幕が、視覚障害者には点字や音声読み上げができるテキストデータを提供する必要があります。また、知的障害者の方の場合には、文字の表示を大きくしたり、ルビを振るなどといった配慮が必要です。
 ですから、今後、国交省が発出する防災気象情報の資料などについては当事者参画の下で作成していただきたいというふうに思いますけれども、国交省の見解をお願いします。

○政府参考人(野村竜一君)
 お答えいたします。
 今回の法改正を踏まえた新たな防災気象情報を理解し、防災対応に適切に活用いただくためには、国民に対して広く周知啓発していくことが重要であり、障害者の方々、外国籍の方々にも内容を理解していただけるような広報資料を作成する必要があると認識しております。
 気象庁では、これまで一部の広報資料において、ルビを振る、文字を大きくする、音声読み上げのための音声コードを付与するといった対応をしてまいりましたが、今回の新たな防災気象情報の周知啓発に当たり、今後より分かりやすい資料を作るよう一層取り組んでまいる所存でございます。
 加えて、委員ご指摘の当事者参画に関しまして、広報資料の作成に当たり障害者等の方々からお話を伺う機会を設けることはより理解しやすい資料とするために大変有効と考えておりますので、障害者団体等の関係団体とも連携しながら取り組んでまいりたいと思います。

○木村英子君
 ありがとうございます。分かりやすいリーフレットの作成など、当事者を交えて作っていただきたいと思います。
 次に、そうしたリーフレットなど作成がされても、自治体を通じて当事者に徹底した周知というものがされなければ、災害に備えることはできません。各地方気象台が広報活動を行う際には、地元自治体の障害福祉部局とも連携し、障害者への合理的配慮がなされた活動が徹底されるように気象庁から各地方気象台に連絡をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(野村竜一君)
 お答えいたします。
 今回の法改正を踏まえた新たな防災気象情報に関しまして、障害者の方々への周知啓発を行うに当たっては、気象台が単独で取り組むのではなく、委員ご指摘のとおり、自治体の障害福祉部局との連携が重要と考えております。これまで、各地の気象台において、市町村の障害福祉部局と連携し、要配慮者利用施設の管理者を対象とした防災気象情報の利活用等に関する講習などの取組を始めているところですが、このような連携した取組を一層推進する必要があると認識しております。
 気象庁が令和7年6月から開催している地域における気象防災業務に関する検討会におきましても、障害者へ周知啓発を行う際の自治体の障害福祉部局との連携の重要性が指摘されておりまして、厚生労働省とも連携しつつ、そのような方向で各地の気象台においてしっかりと取組を進めてまいります。

○木村英子君
 ありがとうございます。
 まだまだ、地域においても、やっぱり近隣など、障害者への理解というものが進まなくて、災害時に本当に取り残される状況がありますので、各部署の連携を今後も徹底していただきたいと思います。
 次に、厚労省に質問したいと思います。
 大雨による洪水や地震など、災害弱者が警報などの情報を得られずに逃げ遅れてしまう原因は、災害に備えた避難計画などが十分に整っておらず、また差別解消法による合理的配慮の提供や障害理解が自治体の中で周知がされていないことにあります。
 差別解消法に基づく公的機関の対応要領においては、障害を理由とする差別の解消の推進を図るため、職員に対し、法や基本方針等の周知や、障害者から話を聞く機会を設けるなど必要な研修、啓発を行うものとするとあります。しかし、自治体の障害福祉部局が各部署との連携をしないために、要配慮者である障害者や高齢者の防災に関する取組が遅れています。
 そのような連携不足によって、実際に2011年の東日本大震災が起こったときには、障害者の死亡率が健常者の2倍となっています。防災について情報保障も合理的配慮も十分に整えておらず、このような状況では障害者や高齢者などの災害弱者は災害時には助からないことを覚悟しなければなりません。
 災害時に支援が必要な障害者の情報は、自治体の障害福祉部局が把握しています。このため、支援が必要な障害者への情報提供や警報の在り方などを、各自治体の防災部局や各部局などとも連携し、地域で暮らす要配慮者に届くよう、国交省からも、間違いました、厚労省からも各自治体に周知していただきたいと思いますが、厚労省の見解を求めます。

○副大臣(長坂康正君)
 お答え申し上げます。
 大雨などの災害発生時におきまして、自ら避難することが困難な状況にある障害者に配慮した支援策を講じることは重要であります。
 災害時の避難所における情報保障につきましては、これまでも、全国会議等を通じまして、災害関係部局、福祉関係部局や障害関係団体との連携強化を図り、障害特性や地域特性に応じた具体的な対応策を講じるよう、自治体に対し周知を図っているところでございます。
 ご指摘の災害発生時の避難等に関する迅速な情報発信につきましては、支援を必要とする障害者にとって大変重要であり、障害者に係る情報を保有する福祉部局と災害情報を集約する防災部局との緊密な連携が必須と考えております。
 厚生労働省といたしましては、御指摘の災害時の避難を始めとする情報が速やかに当事者の方々に行き渡るように、各自治体において福祉部局と防災部局の緊密な連携により取り組むよう、全国会議等の様々な場面を通じて周知をしてまいりたいと考えております。

○木村英子君
 ありがとうございます。
 障害者に関する情報とかは特に厚労省が把握しているところもありますから、各部署へ、あるいは自治体へ、周知の方を徹底していただきたいと思います。
 以上で終わります。

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