○木村英子君
れいわ新選組の木村英子です。
本日は、給特法改正案で新設される主務教諭についてお尋ねします。
今回の改正、法改正においては、新設される主務教諭に、児童等の教育をつかさどるとともに、学校の教育活動に関し教職員間の総合的調整を行うとありますが、この主務教諭の創設によって、限られた教員に業務を課せられることで負担が増加し、児童生徒の学校生活に悪影響を及ぼすおそれがあります。
例えば、現在の教員の残業時間は、小学校で84時間40分、中学校では107時間10分ですが、過労死ラインの80時間を上回っています。
資料1をご覧ください。

2023年度の教員の精神疾患による病気休職者は7119人で過去最高になるなど、長時間労働が蔓延する現状において学校のブラック職場のイメージが定着し、教員志望者は減少しています。そして、教員の過酷な労働環境の影響は子どもたちにしわ寄せが行き、教員と同じような弊害が起きています。
資料2をご覧ください。

小中学生の不登校は増え続け、令和5年度には34万人余りに上り、11年連続で増加しており、過去最多となっています。
また、資料3では、いじめの件数が令和5年度は小中高合わせて73万2568件で、令和4年度よりも5万件余り増えており、過去最多となっています。

資料3
さらに、資料4では、令和6年の自殺者数は2万268人と過去最少の水準となった一方で、児童生徒の自殺者数は527人に上り、これまで最も多くなっています。

こうした状況の背景には、教員の過重労働により、生徒とゆっくりコミュニケーションを取る時間を確保できないことなどが自殺やいじめを引き起こす原因の、大きな原因となっていると思います。そうした状況の中で苦しんでいる現場の職員の方の声を紹介したいと思います。
資料5をご覧ください。
私たちは、子どもたちのための仕事がしたいと思っていますが、次の日の授業の準備も十分にできず子どもたちの前に立つことも多く、また、子どもたちの話もゆっくり聞けません。それは、一日の担当授業時数が多過ぎて、そもそも勤務時間中には授業の振り返り、準備、子どもたちと向き合う時間が確保できないからです。さらに、目の前の子どもから出発する教育にとっては、不要不急の業務が多過ぎて、長時間勤務で過密な勤務となり、やりがいと健康を奪われています。
このように教育現場で追い詰められた教員の方の悲鳴は氷山の一角であり、その被害は子どもたちにも及びます。学校生活で受けた傷は子どもたちの基礎となり、大人になったときに、社会へ出て、病となって、また次の世代に引き継がれ、取り返しの付かない状況になってしまいます。
今回新設される主務教諭の創設によって深刻な教員不足を解決しないまま業務だけを増やすことは、負の連鎖を引き起こすことになってしまいます。今優先しなくてはならないのは、教員の人手不足を解消することであり、教員が本来の業務である子どもたちとコミュニケーションを深める時間を確保することではないでしょうか。主務教諭を新設しても、こうした状況を放置したままでは解決には至らないと思います。
ですから、主務教諭を新たに創設する前に、まずは教員の増員を、増やすべきだと思いますが、大臣はいかがでしょうか。
○国務大臣(あべ俊子君)
木村委員にお答えさせていただきます。
まさに私ども、本当に教師を取り巻く環境の整備はしっかりとしていかなければいけないというふうに思っております。
そうした中で、主務教諭でございますが、担当します教育活動が組織的に行われていくように、教職間の核となって総合的に調整する役割を担うものでございまして、新たに学校が担う校務が追加されるわけではないため、追加的な定数改善を行うことは現在は想定していないところでございます。また、主務教諭の配置によりまして、これまでも学校が直面していました課題の対応をより組織的、効果的に進めることが期待されるところでございます。
一方で、教職員定数の改善はまさに重要だと私どもも考えておりまして、令和7年度予算におきましては、過去20年で最大となります5827人の定数改善を計上していることに加えまして、令和8年度から財源確保と併せました形でこの中学校35人学級のための定数改善を行うこととしておりまして、引き続き教師を取り巻く環境整備に向けましてしっかり取り組んでまいります。
○木村英子君
今大臣がお答えになったその教職員を増やすというにしても、全国には3万校ほどの小中学校があるわけですが、5827人の増員ではとても足りないと思います。
主務教諭の新設については、現場の職員からの反対の声が寄せられていますので、少し紹介します。
香川県の教員の方からは、学校現場は圧倒的に人が足りず、最低限の教育すらままならない状態です。そんな中で子どもたちのために力を合わせて協力しながら働いている教育現場に、主務教諭は、指揮命令系統を持ち込み、現場の協働、協力関係を破壊します。また、学級担任手当の支給や、主務教諭の給与に差を付けることで、今まで様々な業務をシェアしてきた協力体制を破壊します。百害あって一利なしですという声が上がっています。
また、愛媛県の教員の方から、既に給料表に格差を付け、副校長、主幹教諭、指導教諭が設けられていますけれども、その実態は、業務改善につながらず、かえって学校運営を複雑にし、教諭の本来の教育活動を妨げ、業務量を増やし、長時間労働をつくり出しています。学校の中に複雑な階層構造は必要ありません。トップダウンの仕組みは子どもの権利条約が求める学校にふさわしくありませんなどの声が寄せられています。
また、障害者の立場から言わせてもらえれば、このような教員不足を放置したまま業務を増やしてしまう体制は、障害児と健常児が共に学ぶインクルーシブ教育の妨げにもなると考えます。障害児や親が普通学校に通うことを希望しても入学を拒否されることが多いこの日本において、ますます普通学校や学級から障害児が排除されてしまう状況を文科省自体が生み出してしまうことに私は怒りを感じます。
そして、日本のこうした状況に対し、インクルーシブ教育先進国であるカナダのバンクーバーでは、障害児童の受入れを拒むことは法律で禁じられており、障害がある子どももない子も同じ教室で共に学べる環境が整っています。教師の待遇は日本よりも格段に恵まれており、ブリティッシュコロンビア州では、公立学校の教師は年収最低でも600万円であり、手厚い年金制度が用意され、仕事は8時から4時までで、基本的には残業はなく、教える、成績を付ける、それ以外の業務はほぼありません。障害児の状況に合わせて教員も含めた人員配置がなされており、一つのクラスに3、4人の人員が配置され、チームで子どもたちを手厚く支える体制が取られています。
日本の教育現場は教師も生徒も疲弊している現状ですから、山積している問題の解決に向けて、教員を増員し、生徒とのコミュニケーションを取れる環境を整えるためにも、主務教諭の新設は見直すべきだと思いますが、大臣のお考えをお答えください。
○国務大臣(あべ俊子君)
委員にお答えします。
本当に、子どもたちにしっかりと対応していくために、私どもは本当に、主務教諭が、教員同士が連携して対応すべき案件が多様化、複雑化している、増加している中で、こうした学校現場の案件に一層組織的に対応できる体制を構築するために設けるものでございます。
主務教諭の配置によりまして、学校全体の業務をより効率的に行うことが可能となるとともに、教職員間の連携、協働に進むことにもつながるというふうに私ども考えているところでございます。また、これによりまして、子どもたちへのこの教育活動の充実にもつながるというふうに考えているところでございます。
文科省としては、こうした主務教諭の創設の趣旨につきましてしっかりと周知徹底をしてまいりたいというふうに思っております。
○木村英子君
子どもたちの教育課程の効率化というようなことも今言われましたけれども、まずは現場の職員、まあ教員のですね、声を聞くということが大事かと思います。
資料6をご覧ください。

先月23日に現場の教員など有志の人たちが集まって行われた給特法改正案に反対する院内集会では、教員である夫を過労死で亡くした方が、法案に盛り込まれている主務教諭の導入について、地域との連携や若手教員の指導など、主務教諭に求められている業務内容は、生徒指導専任として多くの仕事を抱えていた夫が過労死した当時の状況と酷似していると指摘しています。
教育現場において、様々な課題への対応で現場が疲弊し、今回の改正案にも反対する声が多い中で、この法案を強硬に通そうとしていることに懸念を持っています。主務教諭への業務の集中や労働時間の増加など、施行後の影響については、現場の声を拾い上げる会議体や検証の仕組みなどは当然用意すべきだと思います。
次に、教員の残業についてお聞きします。
給特法では、教員の業務は全てが自発的な業務とされているため、どれだけ時間外労働をしても残業代が出ない仕組みとなっており、定額働かせ放題と言われています。
教員の勤務実態は、授業準備、学習指導、成績処理など授業関連と、生徒指導、部活動などの児童生徒の指導で所定労働時間の7時間45分は埋まってしまいます。それ以外の、朝の業務、職員会議、学校行事や学年運営、研修などの事務は、業務命令があろうとなかろうと、所定時間をオーバーしても処理しなければなりません。さらに、道徳の教科化、外国語の導入など、学ぶ科目と内容が増やされ、子どもたちの多様化に伴い、教員が業務時間内に到底処理することのできない業務量が常態化し、教員の時間外労働が大きく肥大化しています。
また、精神疾患による病気休職者が過去最高となるなど、教員の長時間労働が蔓延する現状において、今、教員の働き方改革を、待遇改善を進めなければ、教員不足によって、済みません、ちょっと休憩お願いします。
○委員長(堂故茂君) 速記を止めてください。
〔速記中止〕
○委員長(堂故茂君) 速記を起こしてください。
○木村英子君
失礼しました。
今、教員の働き方改革と待遇改善を進めなければ、教員不足によって学教教育が崩壊しかねないという危機的状況にあります。
そもそも労働者は労働基準法によって残業代が支払われるのが原則であり、ほかの多くの公務員や、同じく教員として働く私立学校や国立学校の教員については残業代が支払われている状況にもかかわらず、公立学校の教員だけでは給与法に、給特法によって残業代が支払われていない状況では、金銭的にも精神的にも限界に達してしまい、人としての最低限の健康や人権が守られません。
今や、教員の勤務体制、実態は過労死ラインの80時間を超える残業時間であり、自発的な名の下で長時間労働の肥大化に歯止めが掛からなくなっています。早急に教員の長時間労働を解消し、定額働かせ放題を改め、労基法に基づいて残業代を支給する仕組みに改めることが必要だと思いますが、大臣、お答えください。
○国務大臣(あべ俊子君)
木村委員にお答えいたします。
教師の働き方改革をしなければいけないという思いは私ども一緒でございます。そうした中で、給特法でございますが、公立学校の教師につきまして、給与その他の勤務条件につきまして、労働基準法及び地方公務員法の特例を定めたものでございます。教師の業務につきましては、教師の自主的で自立的な判断に基づく業務、また校長等の管理職の指揮命令に基づく業務とが日常的に混然一体となって行われているというこの教師の職務等の特殊性から、時間外勤務手当ではなくて、この勤務時間の内外を包括的に評価するものといたしましての教職調整額を支給することとしております。
中央教育審議会におきまして給特法等の法制的な枠組みを含めまして総合的な議論が行われました結果、教師の裁量性を尊重する給特法を維持することといたしまして、その上で、高度専門職としての教師の職務の重要性にふさわしい処遇を実現するために教職調整額を10%に引き上げることにしたわけでございます。
今回の法案におきましては、教師の時間外在校等時間を縮減するために、教育委員会に対しまして、業務量の管理、健康確保措置実施計画の策定及び実施状況の公表等の義務付けを盛り込みまして、全ての教育委員会におきまして働き方改革を加速していく仕組みを構築していくと同時に、教職員定数の改善などの学校の指導、運営体制の充実もしっかり努めてまいりたいというふうに思います。
○木村英子君
給特法も大事かもしれませんけど、けれども、まず大事なのは、やっぱり子どもたちが今安心して学校で生活できるということだと思うんですよね。その子どもたちを支えているのは教員ですから、教員の待遇改善をしっかりとしなければ、本当に子どもたちが大人になったときに社会がどうなってしまうか分からない状態ですので、そこをしっかりと考えていただきたいと思いますし、今課題が山積していることを解決できないような状況である、それを解決できない本法案に賛成しかねるなというふうに思います。 以上で終わります。
【内閣総理大臣に対する質疑】
○木村英子君
れいわ新選組の木村英子です。
総理にお伺いしたいと思いますが、今の教育現場の危機的状況というのはご存じでしょうか。やはり、障害を持っている人にとっても、障害児が普通学級に行くということがとてもままならない中で、やはりこの原因は、人手不足、教員不足にあると思います。
まず、教員の残業時間、これは過労死ラインの80時間を超えているということは言うまでもありませんけれども、それによって教員の精神疾患による休職者数、過去最高となっているということで、その教員たちの疲弊はやっぱり高まっています。また、このような過重労働によるしわ寄せは児童生徒にも及びます。
資料2から4のとおり、学校の不登校者数やいじめの件数は増え続けている上、令和6年の児童生徒の自殺者数は過去最多の527人に上るなど、子どもを取り巻く環境は悪化の一途をたどっています。こうした背景には、過重労働により教師に余裕がなく、子どもたちとのコミュニケーションを取る十分な時間を確保できないことがあり、そのことで自殺やいじめを引き起こす大きな原因になっていると思います。
今回の修正改正案では、残業時間の削減や公立中学校での35人学級の実現も創設されているところですが、現場の教員からは多くの反対の声が上がっています。
資料6では、先月23日に開かれた反対集会でも、主務教諭などについて、今回の法案で果たして教職員の命と健康は守られるのだろうかという悲痛な声が上がっています。学校現場で日々子どもたちを育んでいる教員たちの声を聞き、過重労働を促進してしまうような主務教諭の撤回など、本法案の見直しをしていただきたいと思いますが、総理、いかがでしょうか。
○内閣総理大臣(石破茂君)
現場の実態をよく把握をし、いろいろな現場のご意見を聞いて、政府としてこの法案を提出をしているものでございます。
今起こっていることは、先生のなり手がいなくって、そうであるがゆえに過剰労働が起こって人が減り、それがますます現場の負担になっているという、一種の負のスパイラルみたいなことが現場に起こりつつあるのではないだろうかと。それをいかにして解消していくかということで、答弁でずっと申し上げてきたのかと思いますが、いろんな、先生方でなくても担える仕事というものをそういうふうにしていかねばならないということ、先生方が子どもたちに向き合える、その能力と意欲を最大限に生かせる、それは、過労死とかそういうことが絶対にあってはならないという現状認識に基づいて今回の法案の提案をさせていただいているものと、そういう認識の下にいろんなご議論がなされているものと承知をいたしております。
○木村英子君
障害者としての立場からいえば、やはり、私たちのことを私たち抜きに決めないでというスローガンがあります。やはり、現場の教員の人たちのご苦労とか現状をしっかり聞いていくということが政府としてはやらなきゃいけないことだと思っています。
この給特法では、教員の業務は自発的な業務とされているため、時間外労働に対して残業代が出ない仕組みとなっていますが、これが定額働かせ放題とも言われています。
教員の基礎定数は1993年から30年以上変わらず、教員が増えないという中で教える教科や内容は増え続けて教員の負担が増加している、総理が言われたとおりですけれども、これに財務省が予算を出し渋るということで教員の人手不足は解消がされないんじゃないかというふうに私は思っています。
公立学校の教員だけでは、給特法によって残業代が支払われない状況では金銭的にも精神的にも限界に達してしまい、人としての最低限の健康や人権が守られませんし、今回の法改正では学校現場の長時間労働の改善には全く届かないんじゃないかというふうに思います。基礎定数を引き上げて教員不足を解消し、また給特法を抜本的に見直すことで、労基法に基づき残業代を支払う仕組みにすべきだと考えます。
教員のなり手がいない、休職や離職が増える、人手不足で業務が集中する、残業が増えるという負の連鎖を解消するために予算を飛躍的に増やしていただきたいというふうに思いますが、総理のお答えをお願いします。
○内閣総理大臣(石破茂君)
委員のご懸念が現実のものとなりませんように、私ども政府としてよく心掛けてまいりたいと思っております。
法案をお認めいただければそれでいいというものではございませんので、実際にこの法案の趣旨というものが現場に生かされるように、委員のお言葉を借りれば、負の連鎖が起こらない、今回負の連鎖を止める、そういう意識でやってまいりたいと存じます。よろしくお願い申し上げます。
○木村英子君
現在、給特法の内容で、やはりその現場の今の現状を十分に反映されていないという本法案には、私としては納得いくところはありません。 以上で終わります。