2025.5.29 参議院 国土交通委員会【航空法改正案質疑】

○木村英子君
 れいわ新選組の木村英子です。
 本日の航空法等の改正案の質問に入る前に、昨年4月18日の国交委員会で質疑した内容について確認したいと思います。
 昨年1月2日の羽田での航空機事故でのJAL機に車いすの方が二人乗っていたことを受けて、障害を持った方などの緊急時の避難対応について当事者から不安の声が上がっていました。このような状況を受けて、昨年4月の国土交通委員会では、障害者の方の飛行機事故などの緊急時の脱出に関し、当事者との意見交換会を開催することを提言させていただきました。
 そして、昨年10月には第1回の意見交換会が実施されたと聞いています。その意見交換会の中では、当事者の方から意見交換会の継続実施や緊急時の脱出についての体験会をしてほしいとの要望があったと聞いていますが、今後、当事者を交えた緊急時の避難訓練や体験会を実施する予定があるのかを教えていただきたいと思います。

○政府参考人(平岡成哲君)
 お答えをいただきます。
 先ほど先生からご紹介ありましたとおり、国土交通省としては、障害者等の航空機非常脱出に関する意見交換会を設置し、昨年10月に第1回意見交換会を開催したところです。
 当該意見交換会においてご参加された障害者団体の方からは、意見交換会を継続的に実施してほしいというご要望とともに、障害者向けの体験会を開催してほしい、視覚障害者は音声で説明されても分からないため救命胴衣などを実際に触らせてほしいといった要望が多く寄せられたところでございます。
 こうしたご要望を踏まえまして、国土交通省としては、本年中に国土交通省、障害者団体及び航空会社が参画する航空機非常脱出に係る施設等について見学会形式での意見交換を行う準備を進めており、その実施に向けて、現在、航空会社と調整を進めているところです。
 今後とも、こうした意見交換の機会などを通じて当事者の方々の生の声をしっかりとお伺いし、必要な改善を図ってまいりたいと考えております。

○木村英子君 進めていただきまして、ありがとうございます。
 次に、空港における滑走路の安全対策の強化を目的として、今回の改正では滑走路安全チームの設置が義務化されることが盛り込まれています。
 この滑走路安全チームは、滑走路の誤進入を防ぐため、空港運営者、航空会社、管制官等が参加する協議体で構成され、羽田空港、成田空港、大阪国際空港、那覇空港などでは数か月に一度会議体が開かれています。
 しかし、昨年の羽田空港の事故が発生した当時は、滑走路安全チームに海上保安庁は参加していませんでした。事故後の調査では、管制官から出されたナンバーワンという指示を海保機の機長らが取り違えて滑走路に進入してしまい、その上、誤進入を知らせる警告表示を管制官が1分以上見落としていたことなど、幾つものミスが重なったことが原因ではないかと言われています。
 羽田の事故の詳しい原因はまだ調査中とされていますが、事故の原因として海保機の機長と管制官とのコミュニケーション不足があったのではないかと言われています。飛行機を操縦する機長は大勢のお客様の命を預かっていますから、安全対策を強化することは必須の課題です。航空機による空の安全を守るためにも、それぞれの役割を持った方たちがコミュニケーションを密に取り、安全対策を協議していくことが重要であると考えます。
 ですから、今回法定化する滑走路安全チームに、海上保安庁を始めとして空港の安全に関係する団体の参加を推進すべきだと思いますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(平岡成哲君)
 お答えをいたします。
 滑走路の安全に関する取組は、各主体が単独で行うのではなく、現場における関係者が情報や認識を共有した上で改善方策を議論しながら取り組まれることが重要だというふうに考えております。
 このため、空港管理者、管制機関、航空事業者、グランドハンドリング事業者等、滑走路の運用や管理に関わる関係者が一体となって連携しながら、より効果的に安全対策を講じていくための枠組みとして、まずは主要8空港において滑走路安全チームの設置を義務付けることとしております。滑走路安全チームへは、可能な限り幅広い関係者に参加をしていただくことは有意義なことであるというふうに考えております。
 現在、海上保安庁においては、航空機の基地を有する新千歳空港、羽田空港、中部空港、関西空港、那覇空港において任意で設置されている滑走路安全チームに参画しているところですが、今後義務化された滑走路安全チームに引き続き参加を求めてまいりたいというふうに考えております。

○木村英子君
 是非進めていただきたいと思います。
 また、今回の改正案では、8つの主要空港に滑走路安全チームの義務付けが検討されていますが、日本においては97の空港があります。安全対策を強化するのであれば、今回義務付ける8つの空港に限らず、全国の空港に滑走路安全チームを設置することを推進していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(平岡成哲君)
 お答えをいたします。
 滑走路安全チームは、各空港の現場において滑走路の安全確保に関わる業務を行う者が、日々の業務で得られる知見や情報を基に、それぞれの空港特性を踏まえた安全確保に向け活動を行うものです。
 国土交通省としては、各空港の規模や利用状況等を踏まえ、羽田空港航空機衝突事故対策検討委員会の中間取りまとめで提言されているとおり、まずは特に必要性が高いと思われる主要8空港において滑走路安全チームの設置を義務付けることとしております。
 また、主要8空港以外においても、滑走路の安全確保に当たり関係者が連携しつつ取り組んでいくことは重要であり、国土交通省としても、他の空港においても滑走路安全チームの設置を推奨し、現場の関係者間において空港における安全性の向上に向けて必要な連携が図られるように取り組んでまいりたいと考えております。

○木村英子君
 是非、8空港以外も推進していただきたいと思います。
 航空機の安全対策に欠かせないのは、関係者同士のコミュニケーションがありますけれども、このコミュニケーションが不足している現状において、基本的な問題として人手不足ということが深刻化していると思います。
 資料1では、生活に欠かせないインフラの整備を行っている国土交通省が人材難に直面しており、特に30代と40代の職員について、政府の方針により2011年度から国家公務員の新規採用者数を6割程度に抑制してきたことで職員不足が深刻となっていることが分かります。

資料1

 国交省は、航空管制官については近年定員を増やしていると言っていますが、資料2のとおり、国土交通労働組合は、昨年2月に出した声明の中で、2014年の国家公務員の総人件費に関する基本方針などにより、航空管制の現場では管制取扱機数が急増する一方で、航空管制官の人数は2000人前後から増加しておらず、その結果、一人当たりの業務負担が著しく増加しています。

資料2

2018年度からごく一部で新規定員が認められたものの、真の安全を構築するには全く足りていませんと言っており、大幅な増員を求めています。
 実際に労働者の方々にヒアリングをしたところ、管制業務に関わる人が減っている上、離発着件数も増えている中で、今の業務に携わっている人たちの業務量が増え、休憩も満足に取れない状況であり、トイレや水分補給が適切な休憩を取れたこととされて、上局へ報告されないケースが日常的になっているところもあると聞いています。
 こういった状況の中で、航空行政に関わる方の労働環境の悪化がヒューマンエラーを起こす原因となっており、今後も航空機事故が起きてしまうのではないかと危惧されています。その上、親の介護での離職率も高く、地元へ異動を要望しても人手不足によって希望どおりにはいかず、結局、退職するしかない状況の方も少なくありません。
 空港における安全を守っていくためには、管制業務に関わる方の労働環境を整備することが急務と考えます。働く方の現状に合わせた労働環境を整えていくためにも、勤務時間や休憩など、それに見合った給与も検討していく必要があると考えますので、空港で働く方たちの待遇や職場環境の改善を図っていただきたいと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(中野洋昌君)
 木村委員にお答えを申し上げます。
 管制官は空の安全確保に非常に重要な役割を担っており、これまでも一人当たりの業務負荷が課題とならないよう適正な体制を確保するとともに、疲労管理を導入するなど適切な勤務管理体制の構築に向けて取り組んできたところであります。
 待遇面につきましては、俸給に所要の調整額の加算を行うとともに、職務の複雑性や困難性に応じた航空管制手当なども業務実績に応じて支給をしてきておりまして、必要に応じて、その見直しもこれまでも行ってきているところでございます。加えて、近年、職場環境の改善として、これは現場の要望も踏まえまして、休憩スペースの改修なども実施をしてきたところであります。
 また、対策検討委員会の中間取りまとめを踏まえまして、人的体制の拡充を図るとともに、今後はより精緻な疲労管理を行うため疲労管理システムのプログラムの改修を行うなど、管制官の疲労管理の高度化を行う予定であります。
 国土交通省としては、今後とも管制官の業務実態に照らした処遇の改善や現場職員の声を踏まえた就業環境の改善を進め、航空の安全、安心の確保に取り組んでまいりたいと考えております。

○木村英子君
 ただ、しかし、国土交通労働組合に聞いたところ、人事院規則で定められている手当に大きな格差があり、機長が支給される航空手当、1時間当たり数千円から最大5000円程度であると聞いていますけれども、管制官などに支給される航空管制手当は1日1000円程度しか支給されず、これでは余りにも格差が多過ぎると思います。
 航空機の安全を確保するためには管制官の待遇改善や人員の確保が基本だと思いますので、この待遇改善という重要な課題が考えられていないというような今回の改正案には反対したいと思います。
 以上で終わります。

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