2025.5.22 参議院 国土交通委員会【マンション関連法改正案質疑】

○木村英子君
 れいわ新選組の木村英子です。
 本日は、マンション関連法改正案について質問いたします。
 今回の法改正は、マンションが老朽化し、外壁が剥がれるなどの欠損などがあった場合に建て替えを進めるための法案となっています。
 しかし、現在、マンションを所有している人が、マンションの欠陥を見付け、修繕するために施工業者に損害賠償請求をしようとした場合、マンションの区分所有者で構成されている管理組合が元の所有者に通知しなければいけない制度となっています。しかし、元の所有者が損害賠償請求を拒否した場合、マンションに住んでいる人やその周辺の方々の安全が守られない危険性があるため、今のマンション所有者が自己負担での修繕を強いられる可能性があります。
 資料1をご覧ください。

資料1

 今の所有者が自己負担しなければならない状況では、欠陥住宅被害全国連絡協議会や全国マンション管理組合連合会は、今の内容では100%の補修ができなかったり、大きな混乱を招いたりするおそれがあると懸念を示しています。
 マンションの欠損箇所によっては早急に修繕しなければならない場合もある中で、元の所有者に通知しないと修繕できない状況は、住んでいる人にとってとても不安であり、不合理だと考えます。
 現在住んでいる所有者が安心して生活ができるように、元の所有者から現在の所有者に損害賠償請求権を移すことができるように法改正を修正すべきだと思いますけれども、お考えをお聞かせください。

○政府参考人(内野宗揮君)
 お答え申し上げます。
 お尋ねは、分譲事業者と買主であります区分所有者との間の売買契約の契約不適合責任に基づく損害賠償請求権を念頭に置かれているものと理解しております。
 この損害賠償請求権は、売主である分譲事業者と買主である区分所有者との間の契約関係により、買主が取得する損害賠償請求権でありまして、区分所有権や共有部分に係る持分権とは別個の債権であります。
 このような区分所有権等とは別個の財産権である損害賠償請求権について、区分所有権等の譲渡に伴い、区分所有者の意思にかかわらずに、その処分や移転を一律に強制する特別な規律を設けることは、財産権の保障等との観点から、その必要性、合理性について特に慎重な検討が必要であると考えております。また、仮にそのような規律を設けるといたしますと、例えば、共用部分に瑕疵があった場合、ひとまず管理組合において修繕を行うこともあると考えられますところ、修繕費用を負担した旧区分所有者から現区分所有者に当該損害賠償請求権が移転をしてしまい、修繕費用を負担した旧区分所有者が損害賠償金からの回収ができないという不合理な事態が生じかねないと考えられるところであります。
 そのため、本改正法案では、区分所有権の譲渡がされた場合に、その譲渡人が有していた共用部分に係る損害賠償請求権を譲受人に当然に移転させる規律を設けることとはしておりません。
 他方で、委員のご指摘は、現区分所有者におきまして建物の修繕費用をしっかりと確保しようと、こういう趣旨であるというふうに理解しております。
 そのような観点からは、あらかじめ規約や集会の決議において、共用部分について生じた損害賠償金について、個別的受領を制限し、共用部分の修繕に用いるとしてその使途を定めておくことで、旧区分所有者の損害賠償金を建物の修繕に充てることも可能であると考えております。
 法務省としては、各マンションの実情に応じて対応していただけるよう、国土交通省との緊密な連携を図りながら、標準管理規約について損害賠償金の使途の制限等の定めを含むものに速やかに改定をし、その周知徹底を図るなどしてまいりたいと考えているところでございます。

○木村英子君
 もうちょっと法律用語分かりやすく言ってほしいなと思いましたけれども。
 しかし、今のマンションの持ち主が損害賠償請求を旧区分所有者であった売主に求めたくても、住民票などをたどらないと探すことができなかったり、あるいは見付からなかったりという場合もあります。
 また、修繕が必要なマンションに車いすの居住者の方がいる場合、共用部分のエレベーターや廊下、エントランス、あとスロープなど、早急に修繕しなければ生活に支障を来してしまう場合があります。そのような不合理な状況では安心して住み続けるということはできませんので、再検討する必要があると考えます。
 次に、マンションの建て替えに反対している人たちの住まいの件についてお聞きします。
 現在マンションの建て替えには住民の80%の賛成が必要ですけれども、今回の改正では、耐震基準を満たしていないなどの場合には75%に引き下げられています。さらに、建て替え決議に必要な総数から、所在の不明な人がいる場合には、裁判所から認定されれば総数から除くことができ、今より賛成の人が少なくても建て替えができるようになります。
 しかし、要件を緩和すれば、反対をしている人たちは建て替えに必要な追加費用の支払を求められ、それが払えない場合には事実上出ていかなければならないということになってしまいます。
 例えば、資料2の記事によると、

資料2

国立市の富士見台団地では、2017年に建て替えの決議がされ、そこに住んでいた高齢の姉妹に建て替えの追加費用が1千万円近く掛かり、その上、マンションの建て替えまでの仮住まいの費用も約340万円掛かるため建て替えの決議に反対していましたが、結果として賛成多数で可決されてしまいました。しかし、このような高齢者の方々は、長年住んでいたマンションを追い出された場合、年金暮らしの人が多いため新たな物件の購入も困難であり、賃貸物件に移り住もうとしても、孤独死などの懸念から家を貸してくれる大家さんが見付からなかったりと、住まいの権利が保障されていない状況です。
 今回の改正案の検討会である法制審議会の部会においても、身寄りのない高齢者や障害者などの住宅弱者への配慮を求める意見が出されていましたが、このマンションの建て替えが進めば住宅の確保ができない人が増えてしまうおそれがあります。様々な事情を抱えた人がいますので、建て替えに反対した人が住まいの権利を保障するためにも、建て替えによって出ていかざるを得ない人たちが安心して住める公営住宅を増やしたり家賃補助を出すなど、国からの個別支援を考えるべきだと思いますが、国交省のお考えをお聞かせください。

○政府参考人(楠田幹人君)
 お答えいたします。
 マンションの建て替えを進めるに当たりましては、様々な事情で事業に反対し、転出をされる区分所有者などの方々に対しても丁寧な対応を行うことが極めて重要であるというふうに認識をいたしております。
 マンションは、区分所有形態という性格上、建て替えを円滑に進めるためには、管理組合内の合意形成が不可欠であります。仮に反対者等がいる場合にも、住民の安全や良好な居住環境を守るという公益性の観点から、区分所有法では、適切な補償額による金銭的補償を行うなどの財産権への必要な配慮を厳格な手続の下で規定をした上で、多数決で意思決定を行うことができるということといたしております。
 また、これに加えまして、転出される方々が住まいの確保に困ることのないよう丁寧に事業を進めていくことを求める規定として、マンション再生法におきまして、国土交通大臣が作成する基本方針に定めなければならない事項として、再生前マンションに居住していた区分所有者等の居住の安定確保に関する取組を位置付けますとともに、これらの取組について地方公共団体や事業の施工者などが努力義務を負うことを明記をすることといたしております。
 今後は、これらの規定の趣旨を踏まえまして、高齢者や障害者の方々など、特に配慮が必要な方々の居住の安定が確保されますよう、地方公共団体や関係団体と連携をして、公営住宅等の公的賃貸住宅や家賃低廉化の支援を行うセーフティーネット住宅等の活用の促進、家賃等の債務保証制度や居住支援法人による相談対応等の利用の促進、そして、住宅金融支援機構によるいわゆるリバースモーゲージ型の住宅ローンの提供などの取組をしっかり進めてまいります。

○木村英子君
 問題なのは、そのマンションを出ていかなければいけない人のその後の住まいというものをどう確保していくかということだと思います。
 次に、マンションを借りている方の住まいの権利の保障についてお聞きします。
 今回の改正案には、建て替えの場合の賃貸借終了請求制度が盛り込まれています。この制度は、マンションの建て替えが決まった場合に、区分所有者からマンションを借りて住んでいる人に対しマンションの返却を求めることができる制度となっています。そして、区分所有者が補償金さえ払えば、借主は6か月以内にマンションから出ていかなければなりません。たとえ本人が出ていくことを拒否して補償金を受け取ることを拒んだとしても、区分所有者が供託金を支払っていれば強制的に退去させることができる制度となっています。
 また、日本には、建物を借りている人の住まいの権利を守るために、借地借家法という法律があります。しかし、今回の改正で賃貸借終了請求制度が創設されると、建て替えの場合に正当な事由なくても契約を一方的に終了させることができるようになり、建物を借りている人の住まいの権利が守られなくなるおそれがあります。
 例えば、資料3では、

資料3

この制度について、住まいの権利の保護に取り組んできた弁護士団体である自由法曹団は、建て替え決議の名の下に、現にマンション等に居住する者の不安をいたずらにあおり、人間の生活の基礎を構成する住まいの権利や住まいの確保に関する安心感を大きく損なう危険のある制度であると指摘しています。
 この賃貸借終了請求制度によって、障害者や高齢者などが長年住んできた住まいから追い出され、次の住まいを見付けることが困難な場合には、その方々の住まいを確保する制度は考えられてはいるのでしょうか、お答えください。

○政府参考人(内野宗揮君) お答え申し……(発言する者あり)あっ、失礼しました。
○委員長(小西洋之君) じゃ、答弁簡潔に。

○政府参考人(内野宗揮君)
 承知しました。
 法務省としても、この建て替え決議に伴って退去せざるを得なくなるその賃借人への配慮も重要であると、まず認識しております。
 今、改めて委員から触れていただきましたように、本改正法案では、賃貸借終了請求がされた場合であっても6か月間の期間の経過を要求していること、また、その賃借人に対しては賃貸借の終了により通常生ずる損失の補償金が支払われることになること、そして、この受領を確保するために、この補償金の支払と専有部分の明渡しは同時履行として、補償金の支払を受けるまでは専有部分の明渡しを拒むことができるものとしております。
 このような賃借人の保護の措置に加えまして、本改正法案による改正後のマンション再生法では、基本方針において、賃借人等の居住の安定確保に関する取組を位置付けるとともに、当該取組について地方公共団体や事業の施行者などが努力義務を負うことを明記することとしております。
 その上で、高齢者や障害者の方など特に配慮が必要な方々に対しては、国土交通省におかれまして、地方公共団体や関係団体と連携して公共住宅等の公的賃貸住宅やセーフティーネット住宅等の活用促進などに取り組むものと承知しております。
 法務省といたしましては、今回の法制度の中身とこういった取組、併せて適切に周知、広報して、御理解を広めていこうというふうに考えております。

○木村英子君
 補償金については支払われたとしても、障害者の方や高齢者の方は次の住まいを探すことは困難ですから、その後の生活の保障がないと立ち退きはできませんよね。そういう法律は不条理だと思います。
 セーフティーネット住宅は数がとても少なくて、しかも家賃は高くて、実際には住宅確保に困難を抱える人が家を借りることがとても難しい状況にあります。年金暮らしの人や生活保護受給者は家賃が高いと住めませんから、幾らセーフティーネット住宅といっても入居できない人が多くいます。
 昨年の4月1日から障害者差別解消法が改正され、民間事業者が合理的配慮をすることが義務になりましたが、不動産会社についても、理由なく配慮を拒否されるなど差別的な取扱いが行われるケースが後を絶ちません。
 私は長年、施設や親元から地域で自立したいという障害者の方の自立支援を行ってきましたが、重度障害者が家を借りる場合、不動産屋に行っても、大型車いすは家を傷つけるとか、また、一人でガスが使えないので火事を起こすのではないかなどといった理由で貸してくれるところがなかなか見付かりませんでした。障害があることや収入のこと、車いすに乗っていること、しゃべれないこと、歩けないことなどを伝えると全て断られ、内見すらさせてもらえないところがほとんどです。たとえ借りる場所が見付かったとしても、家を傷つけるという理由もあってマンションが多くて、家賃が高く、年金や生活保護を受けている人は借りることは到底できません。現在も地域で自立生活を目指している方はいますけれども、重度障害者は介護者を必要としていますから、複数の介護者の出入りがある場合、防犯上の理由で入居を拒む不動産屋や家主が多くて借りることができない状況にあります。
 また、知的障害者の場合、家探しをしても半年も掛かってしまったり、また、家を壊してしまうのではないか、奇声を上げて周りに迷惑を掛けるのではないかというような差別的なことを言われて貸してくれない現状があります。
 また、独り暮らしの高齢者の方の場合も賃貸住宅への入居も困難が多くて、資料4のとおり、

資料4

東京都内の分譲マンションに賃貸で住んでいた自営業の74歳の男性は、部屋の所有者から、売却すると立ち退きを求められ、男性は不動産会社で部屋を探しましたけれども、希望した3つの物件はいずれも断られ、この方は都営住宅も検討しましたが、条件に合う物件は空き家がなく、諦めてしまったそうです。
 このように、障害者や高齢者など住宅確保要配慮者は、生活するために重要な家の確保が難しいという状況です。先ほどの答弁では、住宅確保が困難な方には、セーフティーネット住宅を活用した居住の確保について話されていました。
 資料5によると、

資料5

5月21日時点で、東京都のセーフティーネット住宅の空き家は327棟1598戸の登録がありますけれども、5万円以下の物件は59棟215戸しかなく、精神障害者を拒否しないと言っているのは23棟56戸しかありません。
 また、セーフティーネット住宅は、住宅の確保に困難を抱える人を拒否しないために創設された制度のはずですが、実際には、住宅確保要配慮者の中で高齢者は拒否しないけれども障害者は拒否する、また障害者の中でも知的障害者を拒否するなど、セーフティーネット住宅に登録している家主が居住者を選ぶ選択権があり、結果的に差別化してしまい、住宅確保が困難な障害者や高齢者が住まいの権利から排除されています。
 ですから、賃貸借終了請求制度では、そういった人たちを強制的に立ち退かせるだけで、セーフティーネット住宅は救済にはなり得ませんし、そもそも受皿としてのセーフティーネットにはなっていないと思います。また、公営住宅にしても、数が少なく、その上、障害者や高齢者が住むには1階の部屋が必要であったりバリアフリー化の設備も必要なことから、なかなか見付かりません。
 ですから、セーフティーネット住宅というのであれば、入居者を選別するような規定を変えるように検討していただきたい。また、公営住宅のあっせんなどを自治体が支援するなど、マンションを追い出された人たちの住まいの権利を保障する具体的な施策を考えてください。
 お答えいただきたいと思います。

○政府参考人(楠田幹人君)
 お答えいたします。
 セーフティーネット住宅は、様々な事情を持つ住宅確保要配慮者の幅広い受皿として一定の役割を果たしておりますけれども、住戸の条件などから、あらゆる住宅確保要配慮者の方に適した住まいを確保することは難しい場合があるというふうに考えております。
 特に、障害を持つ方々などに対しましては、住戸そのものを用意すれば足りるというだけではなくて、福祉サービスや居住支援のためのサポートを行うということも大変重要な場合があると思います。
 このようなハード、ソフト両面からの支援体制を整え、家主の受入れの幅を広げて、住まいのセーフティーネットの裾野の拡大につなげていくということが大変重要であるというふうに考えております。
 昨年の通常国会では住宅セーフティーネット法を改正をし、居住支援法人等と連携して入居者の見守りや福祉サービスへのつなぎなどを行う居住サポート住宅の制度を創設したところであります。本年10月に施行を予定をいたしております。今後は、障害を持つ方々も含めまして誰もが安心して暮らせる住環境、整備されますように、この居住サポート住宅も含めまして、民間賃貸住宅を活用した住まいのセーフティーネットの充実に力を入れてまいりたいというふうに思います。
 また、建て替えの関係で様々な事情があって転出される方々につきましては先ほど申し上げたとおりでございます。本改正法案で改正をいたしますマンション再生法の規定の趣旨を踏まえまして、地方公共団体、関係団体と連携をし、公営住宅等の公的賃貸住宅や、今申し上げたセーフティーネット住宅の活用を促進するなどによりまして、高齢者や障害者など特に配慮が必要な方々の居住の安定確保に引き続き努めてまいります。

○木村英子君
 居住サポート住宅については、昨年質疑で取り上げさせていただきましたけれども、居住者の方のプライバシーの侵害する、そういった懸念もあることから、住宅確保については今後抜本的な見直しが必要ではないかというふうに考えます。
 例えば、家を借りる場合に、地方自治体では独自の取組として、マンションの建て替えなどによって退去を余儀なくされた人に対する家賃補助などをつくっているところもあります。
 資料6をご覧ください。

資料6

東京都千代田区では、千代田区内に2年以上居住している高齢者や障害者の方が住んでいる賃貸住宅が取壊しなどで退去しなければならない場合に、月額5万円まで、最長5年間の家賃助成や、礼金などを支払うための転居一時金の助成をする居住安定支援家賃助成という補助事業をつくっています。また、資料7のとおり、

資料7

東京都江戸川区でも障害者や75歳以上の高齢者の方に対する家賃補助の制度があります。そのほかにも、立ち退きを余儀なくされた障害者や高齢者、子育て世帯などを対象にした家賃補助をつくっている自治体は幾つかありますが、ほとんどの自治体ではこのような補助はなく、地域格差が生まれている状況です。
 マンションの建て替えを進めるのであれば、建て替えに伴って退去を余儀なくされる人たちの住まいの権利を保障するために国として家賃補助を考えるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(楠田幹人君)
 お答えいたします。
 マンションの建て替えを進めるに当たりましては、様々な事情で事業に反対し転出される方々に対しましても丁寧な対応を行うということが大変重要であるというふうに認識をいたしております。特に高齢者など住宅確保への配慮が必要な方々に対して、それぞれの住まいのニーズに応じた対応、大変重要だという、必要であるというふうに考えているところでございます。
 民間賃貸住宅の空き室も増加をしている中、まずは転出する区分所有者や借家人の方々に対し、組合が金銭面で適切な補償を実施をしつつ、それぞれのニーズに応じた住まいを適切に確保できるようデベロッパー等と連携をして対応することが必要であるというふうに考えております。
 さらに、転出者が住宅を確保しづらい個別の事情がある場合に備え、ニーズに適応する公的賃貸住宅や民間賃貸住宅の空き家、空き室に適切にアクセスできることも重要でございます。このため、地方公共団体や地域の居住支援法人等と連携し、組合等の施行者が住まいの確保に向けたきめ細やかな相談に対応できるよう、国としても体制強化に向けた助言等に努めてまいります。

○木村英子君
 国としてできることが地方公共団体や居住支援法人と連携して組合などに助言をすることというだけでは不十分であると思います。より具体的な施策がないと住宅確保が困難な人の居住の権利というのは守られないんではないかというふうに思います。
 このように住宅確保についても困難な状況ですが、本来、住宅だけではなく、配慮の必要な人たちにとっては交通や建物など、障害があることであらゆる場面において取り残されている状況は、一向に改善されていません。障害者があらゆる事柄から排除されてきた経過においては、社会参加の機会を失い、障害者への偏見や差別が助長されてきた現状の中で、私たちのことを私たち抜きに決めないでというスローガンが生まれてきたんです。
 障害者、高齢者など住宅確保が困難な方々が差別されず安心して家を借りることができる仕組みが早急に必要だと考えます。ですから、障害者の置かれている現状や障害者に必要な合理的配慮を理解してもらわなければ住宅確保の困難の解消はされないというふうに思います。
 そういった状況を改善するために、住宅に関する話合いにおいて当事者参画というものがもう絶対に必要だと考えます。しかし、令和五年に開かれた住宅確保要配慮者に対する居住支援機能等のあり方に関する検討会などにおいては、障害当事者は委員として参加していませんから、障害者に対する差別解消を図るには住宅確保に関する検討会に当事者委員を参画できるようにするべきだと考えます。
 国交省として、障害者や高齢者など配慮の必要な方の住まいの権利を保障するためにも、当事者を交えた検討会か意見交換会などを早急に開催していただきたいというふうに思いますが、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(中野洋昌君)
 木村委員にお答えを申し上げます。
 障害者や高齢者などの住宅確保要配慮者が安心して住まいを確保できる賃貸住宅市場の環境整備は重要でありまして、昨年、住宅セーフティーネット法を改正をしたところであります。
 この法改正に関しては、ご指摘の令和5年7月に国土交通省、厚生労働省及び法務省の三省合同で設置をした住宅確保要配慮者に対する居住支援機能等のあり方に関する検討会におきましては、委員として、障害者の居住支援にも関わる福祉関係団体や障害当事者から相談を受ける消費者団体の方も構成員として参画いただくとともに、令和5年10月と12月の2回にわたり関係当事者を含め広く意見を募集する機会を設けるなど、当事者や現場の御意見を踏まえた検討を実施をしております。
 さらに、今年10月の本改正法の施行に向けまして、省令や基本方針等の案に関するパブリックコメント等を通じ、障害当事者も含め、広く意見を募集する機会を設けながら準備を進めているところでございます。
 今後とも、低額所得者や高齢者、子育て世帯、障害者など様々な要配慮者の住まいに関するニーズにしっかりと対応できるように、当事者のご意見も丁寧に伺いながら、関係省庁と連携して住まいの確保の推進に取り組んでまいりたいと思います。

○木村英子君
 障害者は、常に支援をする側と受ける側で対等ではない関係が当たり前になっている現状ですから、国連からも当事者参画を進めるように提言されています。国交省として、住宅確保についても、障害当事者の委員としての参画による会議体をまず早急に検討していただきたいというふうに思います。
 また、当事者の参画が進んでいる中で、障害者を排除する欠格条項が多くの法律や制度に入ってきています。それが差別を助長する原因ではないかというふうに私は思っています。例えば、資料8のとおり、

資料8

国交省が出しているマンションの標準管理規約においても、精神の機能の障害により役員の職務を適正に執行するに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者は役員になれないという欠格条項が規定されています。
 このような欠格条項の内容については、成年後見人制度が改正された際にその代わりに設定された規定ですけれども、心身の障害、心身の故障という言葉や、標準管理規約においては精神の機能の障害というのが書かれています。精神の障害を理由として欠格条項を作るのは、明らかな差別であると思います。
 障害者差別解消法では行政や民間事業者の差別の禁止が規定されている中で、国土交通省からマンション標準管理規約にこのような差別的な欠格条項を示すことは、民間に対して差別を助長する行為に当たると思いますので、この規定を早急に削除していただきたいと思いますが、大臣のお答えをお願いいたします。

○国務大臣(中野洋昌君)
 お答えを申し上げます。
 成年被後見人等であることを理由に不当に差別されないよう、令和元年に成年被後見人等に係る欠格条項などの見直しが政府全体で行われまして、その一環としてマンション標準管理規約においても、委員ご指摘のような内容への見直しを行ったところであります。この規定については、管理組合の役員は、区分所有者から徴収する修繕積立金や管理費、共用部分などの個人の財産を適正に管理監督する責務を有することとなることを踏まえたものであると認識をしております。
 他方で、管理組合の役員については、組合員の判断により総会で選出をされているという側面もあることから、今後、標準管理規約の見直しを行う際には、こうした点にも留意しつつ、この規定の運用実態でありますとか関係者のご意見も踏まえながら必要な対応について検討してまいりたいというふうに思います。

○木村英子君
 様々な法律にこの欠格条項というのが入っておりますので、その差別的な条項が今後なくなるように当事者参画も進めていただきたいというふうに思いますが、今の、今までの答弁の中で、やっぱり住宅確保が難しい現状にありますので、障害者などの確保の困難も改善がこれから見込まれてほしいと思います。
 障害者や高齢者の住宅確保が難しい現状は改善されていない中で、マンションから追い出されてしまった方のその後の住まいの手当てが不十分な本法案には反対するしかないと思います。
 以上です。

\シェアしてね!/